princess-ss @ ウィキ内検索 / 「覇王の娘と勇者の末裔」で検索した結果

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  • 覇王の娘と勇者の末裔
    覇王の娘と勇者の末裔』 帝国の覇王として大陸を支配していた王が勇者達によって討たれた。 覇王が恐怖と権威で大陸全土を支配していた時代が終わりを告げた瞬間だった。 その勇者の軍勢は人間、ドワーフ、エルフ、有翼人、獣人という諸国の種族で混成された いわば、人々の象徴的な存在だった。 しかし、その勇者達を迎えたのは勝利の賛歌と祝福と感謝の言葉ではなかった。 帝国が滅ぶやいなや、傘下にあった諸国は分裂し、大陸の覇権をと血で血を洗う 群雄割拠の時代へと突入したのだ。 治安は崩壊し、無法者と化した帝国の残党や職にあぶれた兵隊崩れが群がり、 略奪や暴行が横行し、物流は完全に停止。 加えて近年の不作によって飢餓や疫病が蔓延した。 勇者達が取り戻したのは平和ではなく、騎馬のいななきと終わり無き戦いだけだった。 そして勇者達に向けられたのは憎悪と怒り、罵...
  • 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ バッドエンド編
    覇王の娘と勇者の末裔』 エピローグ 勇者バッドエンド 「姫様、一体、民達にどう説明をするおつもりですか!?」 城内の一室で長椅子に背を預ける女性に宰相である ヘスタトールが声を上げた。 しかし、その長椅子に腰掛ける女性は何も言わない。 「宰相、ティルフィード様はもう『姫様』ではありませんよ?」 補佐官であるヘスタプリンが宰相を嗜めるように言った。 「む…、失礼しました。女王陛下、大臣達は納得しても民達に――――――」 「民達の間には私と先王との間にもうけた子という噂が流れているのだろう ヘスタプリン補佐官?」 長椅子に腰掛けていた女王が静かな声で言った。 「はい。それはもう…」 ニコリと笑ってヘスタプリンは言った。 「で、ですが――――――」 「………つまるところ、夫は誰か?と」 ふぅ…と息をつき、女王は言った...
  • 覇王の娘と勇者の末裔3
    ...った。 当然だ。覇王の娘と勇者の末裔… 忠誠を誓う将に、また信頼する仲間に対して 裏切りともいえる行為を二人は行ったのだ。 「リューイは?」 再度、ティルフィードは問う。 「ああ……ちょっと乱暴な言い方かもしれないけど…す、好きになって 本当に好きになって…君を愛おしいと…この手に抱きたいと思った」 赤くなりながらもリューイはきっぱりと言った。 「私はこの身を……の、呪う…なぜ、このような形でしか出会えなかったのかと。 このような出会いでしか……うっ…うう…」 ティルフィードは消え入りそうな声で呟き、再びその瞳に涙を浮かべた。 リューイの胸に頬を寄せ、額と額を付き合わせた。 視線が先ほどの情事と同じように絡み合う。 「それは違うよ……きっとこんな形だから…出会えたんだと思う、 僕はそれでもいい…君に出会えたんだから…」 ...
  • お姫様SSリスト
    ...[陵辱?] 覇王の娘と勇者の末裔 ◆12-102 05.1kb 覇王の娘と勇者の末裔 [非エロ] ◆12-109 07.7kb 覇王の娘と勇者の末裔2 獣人×ワーキャット [獣人]  [姫以外] ◆12-119 11.3kb 覇王の娘と勇者の末裔3 ◆12-130 02.0kb 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ バッドエンド編 [非エロ] ◆12-213 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編1 [非エロ] ◆12-213 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編2 [非エロ] ◆12-213 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編3 覇王の娘と勇者の末裔 他キャラの番外編 ◆戦火の中犯される娘達スレ4-072 アリス陵辱(前編) [陵辱] [一部ショタ] ◆戦火の中犯される娘達スレ4-084 ...
  • 覇王の娘と勇者の末裔2 獣人×ワーキャット
    ティルフィードは次の日もその屋敷に行った。 「やあ、昨日の……一人?」 「リディアは宿の仕事だ……これを渡すようにと」 リュイナッツに封をした封書を渡す。 リディアとはワーキャットの事だ。 シノビという職業柄、名前はいくつも持っている。本名はイツファというらしい。 「………了解。ボス達は、仕事でね」 (仕事……イツファが言っていたように次に攻め入る地の偵察か) 「僕は留守番さ。そういえば、君の名前は?」 「わ…私は…ティル――――――」 危うく本名を口に仕掛けたティルフィードはその言葉を飲み込み、言った。 「私はティル」 「了解、ティル。僕のことはリューイって呼んでくれ、仲間達もそう呼んでる」 「………わかった」 そうしていると昨日のエルフの神官、確かアリスが二階から姿を現した。 「あら、昨日の……ちょうどいいわ、リューイ。食糧の...
  • 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編1
    覇王軍が大陸の大部分を掌握し、勇者軍討伐へと着々と侵攻していた。 が、帝都を激震させる事態が起こった。 『大陸の窓口』とよばれた西部の軍港を有する一大都市の『謀反』である。 覇王の遺児、ティルフィードに反発する者達が決起したのだ。 勇者軍討伐へと大陸の東部に主力部隊を配備していた覇王軍は 瞬く間に大陸西部を乗っ取られる形となった。 それだけならまだしも、謀反の主導者達が覇王軍の優秀な武将達であった事が さらに事態を重くした。 それに伴う東部での勇者軍の行動は素早く、また的確だった。 東部の小国ごとの解放にあたって対覇王軍の戦線構築させ、 さらに東部の重要都市を解放するまでに勢力を拡大させた。 帝都では苦渋の選択を迫られる事になった。 帝都:ヴァイアブリンデ 軍師の一人であるヘスタプリンは軍議の席に設けられた大陸図を指し、声を荒げた...
  • 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編2
    勇者軍サイド 「皆さんにお知らせする重大な事があります。覇王軍の皇女が我が軍に講和を求めてきました」 「覇王軍が講和を申し出てきただって!?」 侵攻作戦を議論する席に置いて、軍師であるティファニーの言葉に皆が驚いた。 「確かなのかい?」 腕組みしたまま動じないタオが軍師に問う。 「はい。正式な使者が昨日、この東部勢力の代表であるラズライト公の元に 皇女からの書簡を持ち、訪問したそうです。 念のため私が調べましたが、魔術や呪術を掛けた形跡はなく開封しました。 簡潔に内容を言いますと、 一、大陸西部で蜂起した新興勢力に対する共同戦線の構築。 一、勇者軍に対する物資補給・情報提供は覇王軍が全面的に支援する。 一、新興勢力殲滅後、正式に勇者軍との和平条約を結び、戦争の終結を宣言する。 とありました。他にも細部にわたる事項がありますが、まさ...
  • 覇王の娘と勇者の末裔 エピローグ ハッピーエンド編3
    長きにわたった戦乱の世が終わり、大陸に平穏が訪れた。 西部の新興勢力を壊滅させた勇者軍と覇王軍が和平条約を結び、戦争の終結を宣言したのだ。 覇王軍・勇者軍及び各地の軍組織は解体され、大陸軍として統合された。 大陸には議会制が設けられ、各国の代表達が話し合いという形で問題にあたる事になった。 各地の街は春の訪れとばかりに活気に溢れ、勇者達は祝福と感謝の賛歌と共に讃えられ、 連日を通してのお祭り騒ぎが続いた。 それは元・帝国であった領地でも同じであった。 商人が各地の産物を卸し、露店には食料品に生活雑貨がずらりと並べられ、 城下は活気にあふれていた。 「城下がこのようなにぎわいを見せるのは初めて見た気がする」 夜、月夜に照らされた城の一室で椅子に腰掛けた女性がふと呟いた。 意志の強そうな眼はどことなく柔らかく、温和な表情をみせている。 絹の...
  • 覇王の孫娘01
    「姫様―!姫様―!」 静かな昼下がりの午後、屋敷内を駆け回る一人の青年がいた。 「あ、キルシェ様。どうなさいました、大声を出されて」 廊下の反対側から、ワーウフルのメイド―――ティニアとアリアエル がティーポットとカップをのせたカートを押しながらやってきた。 「どうしたもこうしたもない!ティニー、アリア!姫様はどちらに行かれたんだ!」 青年はティニーの両肩をがしりとつかみ、凄まじい剣幕で両肩の脱臼を目論むが如く ガクンガクン揺らした。 「やめて下さい!やめて下さい!犯さないで!」 いきなり泣き叫ぶメイドに青年は怒鳴った。 「誰がだ!アリア、知らないか!」 青年はもう一人のメイドに激しい剣幕で振りむいた。 「え、ええっと…その…わかりません」 申し訳なさそうにもう一人のメイドが頭を下げた。 「ああ…一体、どちらに行かれたというのだ!?姫...
  • アリス陵辱(前編)
    帝国兵×勇者軍 陵辱 一部ショタ 前編 「……う…くっ」 太陽が眩しい。 ここ何ヶ月か薄暗く湿った地下牢で閉じこめられていたのだ 目が慣れていないのだろう。 「……ん」 もう痛みも麻痺してしまった秘部からドロリとした体液が 太腿をつたい、こぼれ落ちてきた。 私の名前はアリス。エルフの神官だ。 神官といってもかじった程度の医学と薬草学、 精霊術を使うぐらいしかできない未熟な神官である。 大陸を巻き込んで起こった二回目の大戦で 最終的に勝利したのは覇王の娘を有した新生帝国だった。 そして最期に敗北したのは私達、勇者の末裔だった。 光を冠する、正義を冠する、希望の戦士達は惨めたらしく負けたのだ。 子供の頃、読みふけった英雄の物語のようにはいかない、実にリアリティ溢れる残酷な物語だ。 勇んで挑んだ大戦、当初はうま...
  • 覇王の孫娘 学園編 前編
    私立アイリス女子学院は終戦後創立された女子高等学校である。 旧帝都には古い歴史をもち、伝統と格式を重んじる名門女子校なるお嬢様学校がある。 そこに通うのは大貴族、大財閥のご令嬢に大国のお姫様。 本来なら皇女であるリューティルもそこに通うべきなのだが、 宮廷晩餐会や諸々の行事などで見知り合いが多い。 よって旧帝国の皇女様が通う事になれば、 やれ貢ぎ物だ、やれおべっかだと毎日のようにつきまとわれるだろう。 そういった者達から『皇女様』『皇女様』とちやほやされるのが苦手なリューティルは 『帝都内にあるお嬢様学校だけは絶対イヤ!』と父王に言った。 困り果てた父王は王妃並びに宰相とあれこれと相談した。 その結果、マイステン家からほど近いこの女子学院に通うことになったのだ。 とはいえアイリス女子学院は平民が通う学校ではない。 私立校であるだけに学費、給食...
  • 覇王の孫娘02
    「海だー!海だよ!うみィ!いい風~最高だよ♪」 絵に描いたような青空の下に広がる青い海に少女は歓声を上げた。 白い砂浜に見える人々は何百人といるだろうが、それでも十分な間隔が開いている。 それだけこの砂浜が長大なのだろう。少女は麦わら帽子を被り、水着の上に白いシャツを着て 砂浜を駆けていった。海に入る直前、帽子とシャツをセイヴィアに向かって投げた。 『持っていてね』と叫び、そのまま波に向かってに突進していった。 「リュティ様、お一人では…」 後から付いてきた少年は肩に掛けたクーラボックスを置き、はぁ~とため息をついた。 「……大丈夫かな…」 「セイヴィアもキルシェさんの心配性が伝染したか?」 「そんな事はないよ――――――」 顔を赤くしながらセイヴィアはリーフェイから目をそらした。 「どうしてリーフェイも水着を着ているの?」 セイヴィアの...
  • 覇王の孫娘04
    「――――――何、またリューティルが?」 「…も、申し訳ございません。皇后陛下」 旧・帝国領の首都にそびえる城の一室で頭を垂れた騎士が恐縮した面持ちで答えた。 「ふむ……困ったものだな」 皇后は「はぁ…」と短いため息をつき、こめかみに手を当てた。 「私がキルシェをお目付役に推挙したのが間違いでした。な、何とお詫びすればよいか…」 その騎士のトレードマークでもある紅い髪がビクビクと震える様は見るからに哀れだ。 「いやいや、キルシェが悪いワケではない。あのじゃじゃ馬がよこす便りには よく仕えてくれていると毎回のように書かれている……我が娘ながら……人を見る眼は確かだ。 そなたが詫びる必要はない」 「は…で、ですが…」 「今回の件か?」 「は、はい」 皇后は事の詳細が記されている報告書に目を通した。 「ふむ……ヘスタプリン…いや、宰相はど...
  • 覇王の孫娘 学園編 後編
    「おかえり、キルシェ」 「はい、ただいま戻りま――姫様!なぜ私の部屋に!?」 キルシェはリューティルが自分の私室にいることに驚いた。 侍女に見られては非常にまずい。 しかしリューティルは気にもかけず言った。 「キルシェ……股を開いてそこに座りなさい」 メガネをくいっと上げて皇女は言った。 「な、何を言っておられるのですか!?」 「座れ」 「は……は…はい」 リューティルの眼力に萎縮し、哀れな従者は力なく座った。 「足が疲れちゃったわ……揉んでくれる?」 「何を仰っておられるのですか!姫様の御足に触れるなど―――」 「昨日の夜は私の足にねっとり絡ませていたクセに」 「あ…あ…あぅ」 昨夜の情事のことを指摘され、キルシェはしぶしぶリューティルの 右足を手に取った。 「あ……んっ…そこ、もうちょっと強く」 「は、はい」 ...
  • 覇王の孫娘03
    「あれ、キルシェさんも来てたの」 宿の一階に下りるとカウンター越しに見慣れた顔の少女がこちらを見て声を上げた。 リューティルと同年代の少女で名前をエッジというワーキャットの少女だ。 ただその肌は褐色に日焼けしており、いかにも海の男ならぬ女の子。 ワーキャットのトレードマークである耳をピンッと立てて腕を組んだ。 「母ちゃんからは聞いてなかったけどなぁ?おーい、リーチェ、名簿」 少女がカウンターの奥に声を掛けると、名簿を抱えた女の子がやってきた。 こちらはエッジの妹のリーチェルだ。 「めいぼ、めいぼ、はい、エッジ姉ちゃん」 「よーし、んでキルシェさんは宿泊する?つーか、するよね? こんな時間だし。朝御飯付きにしとく?リュティと合わせて4名にしとけば割引で安くなるし。 リュティ達の宿泊期間はあと2日になってるけど、合わせるとさらに安くなってお得だよ?」...
  • 魔王とクォン
    森の辺に立ち並ぶ数え切れないほどの天幕。 夥しい数の幟がはためき、風を得た隼が大空を飛ぶ。 これほどの数の亜人、獣人、蛮人たちが大きな諍いも無く一箇所に長期集結するとは、古今にも例が無い。 二十万以上に上る闇の軍勢を収容する集結地は、いまや混沌とした都市の様を呈していた。 行軍中であれば、ここまでの陣地を設けることも無いし、 そもそも吹きさらしの風雨にも耐える亜人族は、陣屋など必要としない。 だが、攻撃目標はエルフ族の篭る「古く深き森」である。 長期戦になることを知った戦士たちは、少しでも己が寝起きの環境をマシにするべく 自発的にねぐらを作り始めた。 都合の良いことに、資材はすぐ傍に無尽蔵にある。 雑然とした街並が、駐屯を始めてから十日もかからぬうちに形作られた。 それは地上に収まり切らず、地底生活を好む種族が掘り始めた隧道によって地下にさえ広がっている。 攻撃開始から二ヶ月以上たった今、...
  • リュシル03
    正気に戻ると、リュシルは魔王城に設けられた居室のベッドに身を投げ出し、枕に頭を埋めてのたうち回った。 「し、死にたい……」 リュシルは紛れもなく一級の夜魔の血を引いている。身体に刻まれた淫蕩さは事実である。 それは、上位魔族ばかりが集う玉座の間で殆ど全ての魔族がリュシルの淫気に当てられて失神し、 今も人事不省の状態が続いていることからも明らかである。 だが、それとは別にリュシルのパーソナリティは夜魔の流儀に慣れていない。 リュシルは夜魔なら当然あってしかるべき男性経験もなく、また気高くありたいと言う望みも持っている。 ゆえに、衆人環視の下で自分の体液を啜るという行為を思い出して、死にたくなったのも当然というものであった。 「どうせ立身出世もできないし……」 「いや、そう悲観したものでもないぞ」 その時、ノックもなしに扉が開かれ、美しいながら...
  • 女たち
    「もとはと言えばな、そなたら毒姫は人に害を成すドラゴンを屠る為に考え出されたのよ」 朱天幕の床に胡坐をかき、ネリィに髪を梳らせながらティラナは語る。 人目の無いこの場所では、腰巻さえ履かない気楽な姿だ。 その後ろに坐って、ネリィは丁寧に櫛を入れる。 衣服を着るのは大嫌いなティラナも、毛繕いだけは欠かさない。 こうして身軽な格好で髪を梳かせるのは、ティラナにとって大のお気に入りの時間だった。 「太古の頃は、今よりもずっと竜種は世にのさばっておった。  ようやく殖え始めた人間族にとっては、奴らは逆立ちしても敵わぬ敵じゃった。  ゆえに人間どもは、奴らにしばしば生贄を差し出し、暴れる竜を宥めておったのよ。  生贄に供されるのは決まって、選び抜かれたうら若い生娘じゃった……  まあ、そちらは人間の美意識の話で、実際はドラゴンどもに生娘と経産婦の味さえ区別が付くと思えんがね」 「そんなに味が違うもの...
  • 牢獄の二人
    「ぎぃゃあぁぁぁぁぁ―――っ!!!」 地下牢中に女の絶叫が響き渡っても、拷問吏は手を止めなかった。 本来これだけの大音声を間近で聞いたのならば、普通の人間は耳を塞がざるを得なかったろう。 だが、彼らは微塵も動揺しなかった。 拷問吏たちは鼓膜を潰された『聾宦官』なのだから。 王族に近侍する宦官の中で、宮中で行われる密談を盗み聞きすることを不可能にするために、 その聴覚を破壊する風習がこの大陸の一部に存在していた。 耳が聞こえない彼らには、拷問を受ける囚人の苦痛の声も哀願も聞こえない。 囚人を責め苛むことにかけて彼らほどの適任者もいなかった。 「公女様っ! お話します! 全てお話しますから、なにとぞお許し下さいっ!!」 女囚の哀訴を聞き流し、公女はさらに続けるように身振りで伝えた。 それを見て、さらなる地獄を味合わせるために、拷問吏は鋸を女囚の指にあてがった。 「…いやぁあぁああ――!」 囚人...
  • Prince of Dark Snake 後半
    燃える蝋燭の薄明かりの中で、王の手がリラーの腰を撫でる。 鍛え抜かれた筋肉の存在が、指を介して伝わった。 労働もせず後宮に侍り、ただ主の訪ないを待つだけの美姫たちとは違う肉体だった。 娘子兵は身体が資本である。 三度の食事に事欠かぬどころか、食べて身体を作る事も任務のうちだ。 彼女達は、意図して戦闘用の身体を造る。 それは、剣闘興行が盛んに行われていたルームならではの発想であり、伝統だった。 パルティアでは未だに経験則でしかない事だが、西方の帝国では一歩も二歩も先を進んでいた。 強い筋肉と骨格を身に付けるための食餌法という概念を、ルーム人は技術として発達せしめた。 その技術は宮廷を護る近衛たちに受け継がれ、現在パルティアの王宮にも伝えれたのだ。 「はぅっ……」 しかし、彼女達とて肌まで作り変えられてしまった訳ではない。 男の愛撫を受ければ、普通の女と同じように反応する。 「ここが感じるのか...
  • レンと小さなお姫様3
    メイファの姿を認めた途端、えもいわれぬ気持ちで、胸が満たされる。  ──ああやっぱり、本物はいいな。自分に都合のいい想像の中のメイファより、  本物はずっと生き生きしてる。三日ぶりの実物に僕は、状況もわきまえずに  見惚れてしまう。  「メイファ。いつも寄り道は駄目だって言ってるのに、わざわざ寄ってくれたの?」  メイファは、眉をキッと釣り上げ、上目遣いに向かい側に座った僕を睨んで  見せた。いかにも、怒ってますよという表情だ。でもそこに、暗い怒りも侮蔑も  嘲りも含まれていない事に、僕は安堵する。  「違いますっ! 今日のわたしは、学院の遣いですっ!! 外出許可も通行証も、  学院側が用意してくれましたっ!!」  びしっ、と両手に朱印の押してある外出許可証と通行証を持って、高らかに言い放つ。  「ひとつ! 休んだ間の分の課題を提出すること!  ひとつ! 連絡が取れないと困るので、病欠以外...
  • 紅髪の騎士様と軍師様1
    軍師と女騎士モノ エロ無し 勇者軍と覇王軍が西部の新興勢力を殲滅し、両軍の間に和平条約が結ばれた。 帝国の領土が大幅に縮小され、自治権が東部の良心的な貴族達に与えられ、 その問題が済み次第、皇女様の正式な婚儀が執り行われるらしい。 宰相になった妹が送ってよこした便りには各地では祝祭が催され、活気が戻ったと 記されていたが、職を辞し、隠居した私にはもう関係ない。そう私には関係ないのだ。 そう思い書物を読み悠久な時間を送る日々を過ごしていると一人の騎士が私を訪ねてきた。 その者の手には皇女様のサインが入った委任状があった。 どこかで見た事のある紅い髪をたなびかせるその騎士…それは―――――― 『紅髪の騎士様と軍師様』 平穏…とは言えども水面下では、未だに燻り続けている戦争の爪痕。 その解決に旧帝国軍がそのまま運用される事...
  • 雪の女王
    雪洞の奥に、二人の女が相対していた。 一人は白金の装身具で身を飾り、新雪の様な白いドレスを纏った女。 その前に跪くのは、赤い魔術師のローブを纏った若い女だった。 「偉大なる氷雪の女王よ。古き誓約に従いて、世界の調和のために目覚めたまわんことを」 赤いローブの女の言上を、白いドレスの女は物憂げな気配で聞いていた。 ここは、大陸有数の高山地帯の最奥地である。 周囲は雪狼を初めとした冬の獣たちに護られ、吹雪と氷によって隠されている。 常人が入ってくる場所でも、入ってこられる場所でもない。 そもそも、あえてここを見出そうとする者が、この大陸でどれほど残っているだろうか? 学府の導師たちでさえ、大半の者は彼女のことを忘れている。 既に、彼女は古文書の挿絵の中にしか残らない存在であるのだ。 「叔父が闇の力に加担しているというのならば、わたくしも目覚めねばなりますまい。  同胞が世界の天秤を傾けんとする...
  • 和物
    寝所の戸を引くと、布団の傍らに小袖姿で座る女の姿があった。 誰も見ていないというのに背筋を伸ばし、虚空をじっと見つめている。 その顔が、こちらを向いた。 切れ長の涼やかな目元に、ほっそりとした顎。 黒々とした長い髪が、肩からさらりと流れて落ちる。 隆信はその前にどっかりと腰を下ろした。 「お待たせしましたかな」 「いいえ」 なるべく優しく言ったつもりだったが、女は表情を崩さなかった。 冴姫、という。その名の通り、峻烈な気性と冷ややかな美貌をしている。 「隆信どの。お話がございます」 「何でしょう」 一度目を伏せ、それから真っ直ぐに隆信を見る。射抜かれそうな強い視線だった。 「嫁いだからには、この胎はあなたのもの。あなたの子を産むことは、務めとして 果たします。それは約束しますが、わたしを手に入れたとは思わないで頂きたい」 「どうい...
  • 元帥とマートレット
    国にも人にも勢いというものが有る。 一度付いてしまった勢いを変える事は難しい。 いや、もう五年若かったならば、無理矢理にでも流れを変えようと試みただろう。 しかし、七十を過ぎた今の自分にその力は無い。 先達から後事を託され、光の陣営のために奔走して幾十年。 剣と成り盾と成り、王国を護ってきた自負が有る。 今となっては、それも空しい。 (長く生き過ぎたか……) 執務室に一人佇みながら、元帥はため息をついた。 寂寞の想いが胸中を去らなかった。 王国は残された兵力全てを注ぎ込んで、文字通り最後の決戦に臨もうとしている。 その兵力は民兵を含めて五万以下。 いくら魔王軍が古く深き森で消耗しているとはいえ、余りに頼りない。 (あの七万がここにあれば……) 愚にも付かない考えが、頭から離れないことが、すでに老いた証拠だった。 昨年失った精鋭を温存していたなら、勝つとまでは言わねども引き分けに持ち込む策は...
  • Princess of Dark Snake 8
    抜き身を下げたまま、ファルハードは夜の王宮の廻廊を走った。 宮廷のしきたりでは、許可無く王宮内で抜剣した者は笞打以上の刑に処せられる。 たとえ王太子であろうと、それは例外ではない。 だが、パルティア王国の歴史を紐解けば、武装した戦士たちがこの廻廊を往来した例は、 両手で数えられる程度に存在する。 それも表ざたになった事件だけでだ。 そういう事例の原因は、ほとんど決まっていた。 「ぁ……、ぁぁ……」 入り口の門扉の前で、王の私室を守る宦官兵たちが腰を抜かして床に坐り込んでいた。 普段なら、『自分の許しなくここを通る事は出来ない』とばかりに 不必要な程に威圧的な態度で扉の脇に直立している輩らだ。 だが今は、まるで瘧に罹ったかの如く震えてうわ言を上げている。 「……」 何事が起こったのか聞き出す事は出来ないと、ファルハードは即座に判断した。 明らかに正気を失っている彼らと話をする暇は、残念ながら...
  • Zephyr(後編)
    10.  柔らかな月の光に包まれて、2人は静かに抱き合っていた。ラティは既に泣き止んでおり、その 顔をアッシュの胸に埋めている。  離れるのが惜しかった。ずっとこの温もりを感じていたかった。  だがいつまでもこうしているわけにもいかない。まだまだ話し足りないこともあるし、何よりパーティー を抜け出して抱き合っているなどと知られでもしたら、ラティフィアにとってあまりよろしくない事態を招 きかねない。 「姫さま」  抱きしめる腕をほどき、ラティの肩を掴んで引き離そうとする。肩に触れられた瞬間ラティの肩が大 きく跳ねたが、離そうとしていることに気付くと、アッシュの背中に回した腕に力をいれ、アッシュの胸 板に一層強く鼻先を押し付けてくる。 「10年間」  ラティがくぐもった声で呟く。 「10年間、貴方が帰ってくるのをずっと待ってたわ。晴れの日も、...
  • 銀と橙
    「――そのお話は、お断り下さい」 窓の外を眺めたまま、淡いオレンジ色の髪が眩しい彼女は、柔らかくも芯の強い声で答えた。 「はっ……、ですが姫様。領土や文化的発展は若干見劣り致すかもしれませんが、  わが国との友好関係も長く、何より平和と品位を重んずる国民性は姫様の……」 「――宰相、わたくしに二度も同じことを言わせないで下さる?」 宰相が姫の居室に入ってから初めて、彼女は景色から視線をはずし宰相を見やった。 「国王夫妻に伝えなさい。お父上お母上の末娘を案ずる気持ち、とても有り難く存じますが、  最初にこの婚姻を決めたのはあなた方であり、それを受諾したのはわたくしです。  多少かの国で動乱があったからと言って今は鎮圧され秩序を取り戻しつつありますし、  わたくしはなんの心配も致しておりません」 口調はあくまで柔らかいものなのに、言葉の端々に鋭い棘が混じる。 いつもは潜められている激しい気性が...
  • 羽化
    「羽化」  蛎崎季広と言えば、あの南部晴政を下野させていつの間にか配下に加え、 更に東北地方を南へ南へ領地を広げる勢いのある大名である。季広の最初 の勝利の裏には、南部家の勇将を裏切らせた事が大いに寄与していると言 われている。裏切りを唆した武将は蛎崎繭と言う。蛎崎季広の長女だったが、 人材不足の父親の為に志願して武将となったのであった。  繭はその後も領地経営に外交の使者に大商人との商談にと多くの功績を 上げ、今では家老となった。実の娘と言う事で多少季広に過大評価されて いる所もあったが、功績については誰もが認めている。蛎崎繭、未だ20 歳にも達していない。  ただ、繭にも悩みがあった。繭の仕事ぶりはその若さと不釣合いな勢い で完成されていったが、どうしても越えられない壁が出始めた。短い間に よく成長したが、そこから先に更...
  • Princess of Dark Snake 9
    「王太子殿下、コリーナさまが産気付かれました」 「そうか…… 産湯を沸かすための水は足りているか?」 「は、なんとか」 「足りなければ、我の飲み水を使え」 「やっ、それは」 「よい。事ここに至った上で、今更水を惜しんで何になる?」 「殿下……」 「せめて生まれたばかりの我が子には、産湯くらい存分に使わせてやりたい」 頭を下げたまま、侍従はファルハードの前から去った。 寂寥に翳る主君の顔を見るのが、彼としても憚られたからだ。 ここはパルティア東部に建てられた小さな山塞である。 本来ならば、王家の人間が出産を行うような場所ではない。 ファルハードは、自分の初めての子の出産を、このような僻地で迎えようとしていた。 第二王子アタセルクスの弑逆により、パルティアは再び内戦状態に陥った。 アタセルクスの手にかかったのは、父王アルダシールと第一王子バハラームだけに留まらなかった。 父王の側室たちが生んだ...
  • オブザーバ
    ソロモン王の使う千里眼の魔法使いは二人と決められていて、国中から選抜されるのだった。 王は宮殿に居ながらにして、すべての事象を察知する。王の知るべき諸々のことを、 遠見の術の使い手たちは、地球の裏側から天上の世界まで、霊魂を飛ばして見に行くのだ。 王の使う千里眼の魔法使いは二人と決められている。しかしながら、 魂の旅に出るのは一度に一人。もう一人の術師はその場にあって他を補佐する。 超長距離を飛ぶ霊魂の旅には、常に失敗の危険が伴うという。 一時的に肉体を離れた魂は、いずれにしても帰るべき所に帰らねばならない。 しかし魔法の術によって遠く離れた魂は、帰るべき体を見失うことがあるといった。 そうなると、魂は帰ってこれなくなる。魂の行方は失われ、肉体は死ぬ。 そうならないために、二人。一人は儀式の場に残り、魂の帰路を守る必要があった。 王の千里眼の役には、もっとも有力な魔術師を二人、互いに対立す...
  • Zephyr(前編)
    1.  そこは、少女には見慣れない世界だった。右を見ても左を見ても、見える物は広大な草原。後ろ には少女がこれまで通ってきた道、前にはこれから少年が行く道。空も大地も、全てが夕日に赤く 染められ、オレンジのペンキをぶちまけられたかのようだった。  ――少女は見慣れない世界に来てしまった。  いつもなら心が躍る道の景色も、今は彼女の不安を煽る。  涙が止まらなかった。最後だから、もう二度と会えないから、だから、せめて最後くらいは笑顔で。 そう思えば思うほど、「最後」「2度と会えない」と言う言葉が胸に強くのしかかってきて、心の奥から 涙を引き摺り出してくる。 「姫さま、泣かないでくださいよぅ」  すっかり困った顔をした少年が、寂しそうに言う。まだ7つになったばかりのその少年の顔には、7 歳の少年が知るには早すぎる、諦観の念が浮かんでいた。  ごめ...
  • Prince of Dark Snake 前半
    誕生祝いと即位祭を前に、大勢の諸侯や貴族が王都に詰め掛けた。 彼らも参加した狩猟祭は、近年稀に見る盛大なものになった。 それはそうだろう。 未来のパルティア王の名の下に催される、初めての狩猟祭に加わるという栄誉に、 無関心でいられる貴族がいるはずも無い。 痛風で身体が動かぬ老諸侯は、自分の名代に息子達を寄越して顔と名前を売らせようと画策し、 下級貴族は参加名簿に何とか名前を連ねられないかと、密かに賄賂を使う始末。 そうして国中から選りすぐられた千人の貴族、武人を引き連れて、狩猟祭は行われた。 主催者が招かれた者たちと決定的に違うのは、 参加者が狩る立場ならば、主催者は獲物を狩らせる立場であることだ。 それは丁度、戦士と将帥の立場に似る。 主催者は物見を放って獲物の場所を探させ、勢子たちに獲物を追い立てるよう差配し、 腕を鳴らして待ち構えている参加者達にそれを狩らせる。 参加者たちが不平を抱...
  • DarkForce
    ソレンスタム共和国は、大陸北端に位置する、その名の通り共和制の国である。 王政が崩壊したのは三年前、隣国ベルイマン王国との戦争終結と同時だった。 十年にわたる戦争で人心が荒む中、最終的にベルイマン王国に領土を割譲する形で決着がついたことで、国民の不満は爆発。 王都において大規模な反乱が起こり、元老院と政務官、民会を中心とした共和制に移行、王家は一貴族に身を落とすことになった。 それから三年。 共和政下、戦争で荒廃した国土は再び緑を取り戻し、国民の生活も豊かになりつつあった。 が、異変が起こった。 突如、ベルイマン王国が国境付近で軍事行動を起こし、要衝の砦を制圧してしまったのだ。 ソレンスタム共和国首脳部はベルイマン王国を条約違反だと批判したが、そんなものはどこ吹く風で、王国は共和国に再度宣戦布告をした。 共和国は慌てて軍を編成したが、王国軍には優秀な指揮官と精兵の前に連敗を重ねた。 いまや...
  • 十日物語
    「あれに、ルース公の息女を娶わせようと思うのだが」 アランは恭しく視線を上げて父王を仰ぎ見た。 赤みがかった金髪と褐色の瞳は父方から継いだものながら、亡き王妃に生き写しのその瓏たけた面立ちには、 平素の理知的な冷淡さとはうらはらに非難と不服と困惑の色がかわるがわる浮かんでいく。 国王は王太子のそんな反応を見越していたかのように、淡々と、しかしやや弱気な調子でつづけた。 「実は昨年以来、先方から内々に打診があってのう。  国交を樹立したばかりではあるし、気候風俗も我等とはずいぶん異なる国柄ゆえ、 朕も当初は躊躇したのだが、先だって内務大臣のユペール卿より強く勧められてな。  近日中にルース公使に承諾の意を伝えるつもりなのだが、アラン、そなたはどう考える」 「畏れながら、父上」 アランは静かに口を開いた。 「わたくしは賛同いたしかねます。  申し上げるまでもないことですが、ルース公国は北辺の地...
  • 聖騎士の最期
    王国の北の最果て、そこは灰色の険しい岩山と、草木ひとつ見えない荒れ地だけの荒涼とした大地。 その非情きわまりない環境は、容易には人の侵入を許さない。これまでも、北方を目指した 幾多の冒険者を厳然と退け、さらに数多くの人間の命を、乾ききった荒野と 吹きすさぶ冷たい風の中に呑み込んできた……。 つらなる岩山の谷間、峻険な嶺々に護られるようにして、小さな洞窟が口をあけている。 洞窟の入口は岩肌のくぼみにひっそりと、人目を忍んでいるかのようだ。 傍目からとてもそうは見えないが、その洞窟こそ『封印の洞窟』、聖剣の祀られた神聖なる場所――。 洞窟へとつづく細い谷には、道と呼べるほどのものはない。取り巻く風物すべてが 灰白色で、生命の息吹もほとんど感じられない。そんな中を、濃紺のマントに全身を 包んだ小柄な人影が、険しい山肌にすがるように1人登っていく…。 谷は急勾配なだけでなく、こぶし大からはては人の...
  • Princess of Dark Snake 5
    「兄上、先日の一件が謹慎で済んだ事、まずは祝着……」 はなから弟に皮肉を浴びせられたバハラームは、心中の憤怒を何とか抑えた。 実際は祝着どころではない。 自分は何者かに陥れられて、後宮の女と密通したという濡れ衣を着せられたのだ。 下手をすれば廃嫡追放もありえたのだから、これは軽い処分とも言える。 だが、それも他聞をはばかる事件を隠蔽しようという意向の為であり、 無実が認められた訳では無い。 「あれは誰かに嵌められたのだ! 誰かにな」 ギロリと、その大きな目で睨みつけたバハラームであった。 その瞳は『お前の様な輩がやりそうな事だ』と言っているが、弟も一筋縄でいく人物ではない。 優越感を隠そうともせず、笑いながら切り返す。 「ひょっとしてこの私もお疑いで? まさかまさか!  敬愛する兄上をお嵌めするなど、天地がひっくり返ってもありえませんよ」 「ふんっ!」 バハラームは心中、『天地という代物は...
  • シンデレラ
    昔々、とある地方にシンデレラという名前のそれはそれは魅力的な伯爵令嬢がいました。 人々は「あれは神の御業に違いない。男神が美貌を与え、それに嫉妬した女神が彼女から思慮を奪ってしまった のだ」と噂しました。 そう、シンデレラは至って無邪気に色香を撒き散らすタイプの娘だったのです。 彼女が13歳になる頃には既に屋敷には夜這いが列を作るような有り様でした。 最初にシンデレラの蜜壺を開いたのは彼女の父親でした。 親子の午睡が恋人たちの抱擁になったのは彼女がわずかに12歳の時のこと。 シンデレラの母君がそれに気づいた時には既に彼女は肉の快楽の虜となっていました。 母君はそれを深く嘆き、父君をシンデレラから遠ざけると、彼女をそれは厳しく躾けようとなさったのです。 「もう!お母様ったらアレもだめコレもだめって!」 シンデレラは母君の部屋から出た途端にぶつぶつと文句を言い始めました。 それに相槌を打つのは...
  • ルージュ姫とラメル
    ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン……… 僕が向かうのは戦場。 僕と同じ貨物馬車に乗っているのは、西部で未だ抵抗を続ける勢力を平定する為に徴兵された若者ばかりだ。 戦況は予想外に激戦らしく、ろくな訓練もなしにこの貨物馬車に押し込められた。 装備はない。戦地で支給されるのだろうか? ガタン…ゴトン……ガタン………ゴトン……馬車の列が止まった。 ガララッ、薄暗い貨物馬車の扉が開き、まばゆい光と共に――― 「ぐあっ」 「うっ!?」 「ぎゃ!」 ――矢が雨のように降り注いだ。 「全員、降車!急げ!!」 矢が次々と貨物車に乗っていた者達に突き刺さる中、僕は転がるように貨物車から飛び出した。 その眼に飛び込んできた光景に僕は唖然とした。 枯れ果てた木々と泥と湿気にまみれる大地が一面に広がっていた。 その時、凛とした声が遥いた。 「貨物馬車を守れ!防盾隊は何をしている!」 一頭の馬に乗った黒い甲冑の騎士が叫...
  • 白いリボン
    とある昼下がり、セシリアは、長いこと掛かりきりだった刺繍の作品を ようやく完成させて上機嫌だった。 それは、白いリボンに白い絹糸で複雑な花模様をかがったもので、母親の祖国であるノイス王国の伝統的な嫁入り道具の一つだった。 とはいっても、まだセシリアには結婚する予定はない。 「まあ、素晴らしい。初めてとは思えない出来映えでしてよ」 侍女のトルテは、リボンを手に取り、花模様をなぞりながら、感嘆のため息をもらした。 「ええ、ありがとう。これで少しはお母様のがお気に召すといいのだけど」 手放しで褒められて、セシリアはにっこりと笑った。 実は、刺繍のような集中力のいる作業は大の苦手だった。 だいたい、このリヴァー王国では、刺繍をたしなむ良家の娘は数少ない。 しかし、母にノイスでは王女の当然のたしなみだと強要されれば、努力するしかなかった。 セシリアはフィールド公爵の一人娘だ。 公爵は、もともとは先々...
  • ティラナとネリィ
    朱天幕の中、にやついた笑みを浮かべながら、火の様に輝く黄金の髪をティラナは直していた。 鏡を覗き込みつつ、手櫛でしきりに髪を梳く。 そうしていたかと思えば、今度は眉の形を気にしてか、手の甲に唾を付けて顔を撫でる。 「うひひ、本当に久方ぶりじゃの。あ奴の訪いは」 どうやらこの野獣娘にも、雄の前では外面を気にかけるという本能が根付いているらしい。 ただ、これが身だしなみと呼べる範疇に入るかどうかは別としてだが。 「今宵はしっぽり楽しむぞよっ。なにせ、久方ぶり過ぎて股が干上がるかと思ったからの」 「……はしたないわよ、そんな言い方は」 「へへっ、おしとやかに寂しいよりも、はしたなくて気持ちいい方が良いのじゃ!」 「全くもう、付ける薬が無いわね」 居候の放埓さに苦笑しつつも、ネリィは酒肴の用意を続ける。 侍従を通じ、魔王が訪れると伝えられてティラナは喜びを露にしたが、嬉しいのは彼女も同じである。 ...
  • ヘタレな魔王の物語4
    王様ともなれば、臣民からの陳情を聞いたり、仕官を求めてやってくる騎士や学者が来たり、 はたまた時節のご機嫌伺いに顔を出す貴族が居たり、非常に人に会わねばならない機会が多い。 それも堅苦しい宮廷言葉でナンタラカンタラ喋る上に、ずっーと坐っていなければならないので、 僕みたいな王宮暮らしに慣れていない羊飼い上がりにとっては、もはや一種の苦行ですらある。 そのくせやる事といえば、もっともらしく頷いて適当に 『考慮してみよう』とか『後ほど返答しよう』やら『気持ちは受け取って置く』でお茶を濁す位なのだ。 (なぜかと言えば、難しい話をされても僕には判らないからなんだけど) で、そんな日常を何とかこなして居る内に、僕はふと思った。 考えてみれば、お決まりの台詞を喋るだけなら、 別に僕本人が玉座に坐って無くても良いんじゃないかと。 思い立ったが吉日。 さっそく試してみる事にした。 普通の王様たちなら、自分...
  • リュシル02
    魔王城。その名の示す通り、そこは魔界の長たる魔王の居城。 それは魔界で最も高い山の頂にあり、幾重もの堀と城壁に土塁、無数の砦によって囲まれ、 周囲には百を超える支城。道路などというものは存在せず、荒れ果てた大地に異常な数の関所が設けられ、 相互に監視し、さらに数多の警戒竜と対空砲が空を、砲台塔が地面を見つめる。 そこは世界の最北端に存在し、四季にかかわりなく気温は零下40度を超えることはない極寒の地。 更にさらに防御は続き…… 「って、立地条件も縄張りも明らかにおかしいですってばぁ!」 寒さに震えながらリュシルは叫ぶ。夜魔用の服は体に密着した薄手のもので、露出過剰である。 防寒の役には絶対に立たない。魔量で周囲の気温を上げるのをやめれば、直ちに凍死するだろう。 中位以下の魔族であれば一刻と持たず魔力を消費しきってしまう程の悪条件。上位の更に上位に位置...
  • Princess of Dark Snake 4
    百官が居並ぶパルティア王宮の大広間に、異国の一団が跪いている。 彼らは東のシンド国からやってきた大使たちだ。 『全ての王たちの王』を自称するアルダシールは昨年、東国へ使者を送った。 その返礼のために訪れたのが彼らだ。 ただし、国と国との威信を賭けた外交戦は、時に詰まらぬ意地の張り合いの様を呈することもある。 「さて繰り返しますが、シンド王よりの貢物は、  『おぞましく、人に害毒をもたらす物、  されどその中にあるは、大陸に二つと無き虹の果実』にございまする。  叡智の誉れ高きパルティアの賢者がたには、遠慮なさらず中身をお当て下されよ」 「うぬぬ……」 持ち込んだ献上品をダシに、大使は謎掛けを仕掛けてきた。 こういった座興は珍しくない。 先年アルダシールがシンドに使者を送った時も、彼らを試す意味で謎掛けを付けて贈った。 贈ったものは、『王侯から貧民まで、誰にも無くてはならぬ物。 そして罪人の...
  • 紅髪の騎士様と軍師様2
    宰相の思惑によって私はこの駐屯地でしばらくの間、 キエルヴァの参謀として共に任務を遂行していく立場となった。 この駐屯地で過ごすうちにまず問題となったのはその食事だ。 もっと規模の大きな駐屯地なら別だが、このような小規模な駐屯地に食堂などない。 帝国軍の主食は7割がパンを締めているのだが困った事にパンは日持ちせず、貯蓄できない。 小麦粉を貯蓄してはいるものの、それをパンに仕上げ焼く設備が無いのだ。 しかもいくら物量が多い帝国軍でも天候などによって補給が滞る事もあり 基本的に駐屯地で取る食事は乾物や缶詰が中心だ。 穀物粥や乾燥豆を主食にメインディッシュの缶詰、デザートのドライフルーツ。 そして飲料は代用コーヒー、代用ココア、粉末ティーに傷んだビールのローテーション。 決まり切った味の連食は食傷になりかねないので兵士は単調な味の食事が 少しでも美味く...
  • 貴族令嬢
    王城にひるがえる侵略者の黒い旗は、初夏の青空に不釣り合いな禍々しさをまき散らし て見えた。  聖王国タウフェジット敗北。  その現実を否応なく突きつけられ、マルガレティアは耐えきれず窓際から離れた。  大きく息をし、落ち着きを得ようとしても、すぐに心は焦燥でいっぱいになる。  父は、兄は怪我などしていないか。  王妃様は、王女様はご無事であろうか。 「……ヒ様……」  心の奥底に閉じこめた名を呟き、マルガレティアは唇を噛んだ。  聖王と世継ぎの聖太子は戦死、国を守る聖騎士団も壊滅。地方領主が次々と離反してい く中で、タウフェジット聖王妃は苦渋の決断を下した。  降伏の宣言である。  その結果をマルガレティアは知らない。館を異国の兵士が取り囲み、彼女は一人、自室 に閉じこめられたからだ。  身の回りの世話をさせる使用人をと訴えても返って...
  • Princess of Dark Snake 6 前半
    パルティア西方の山岳地帯。 第三王子ファルハードは自軍を離れてそこに居た。 山地の麓には、現在もパルティア軍とルーム軍団がにらみ合っている。 先だって、ファルハード王子はマーザンダラーン遠征軍を率いて、まず北方のエフタウル族を叩いた。 痛烈な反撃を喰らった遊牧戦士たちは、来たときと同じように風の如く退いていった。 平時なれば、再び侵攻する力を奪うためにも追撃戦を仕掛けるところだが、 同時に三国を相手取って戦うパルティアにその余力は無い。 王都へ戻る間もなく、ファルハードは南に進軍方向を変え、対シンド戦に合流した。 シンドの誇る戦象部隊に苦戦を強いられながら、彼の率いる兵は果敢に敵本陣に突撃を繰り返し、 ついにシンド軍を撤退させることに成功する。 だが、それで終わりではない。 最後に残ったルーム軍が、迎撃に出たパルティア勢を破り西方国境を深く踏み越えてきたのだ。 不退転の命令を与えられていた...
  • 帝国の皇子と小国の姫1
    「嫌ですよ父上。そもそも、今回の外交が『お見合い』だって僕は聞いていませんでしたし」 「それでも何人かいただろう?ラズライト公の姫など、適任だと思うが……パーティでも 向こうから話しかけて来たそうじゃないか?」 「えーえー、確かにハイエルフのお姫様は清楚な感じで綺麗な人でしたよ」 「そうだろう、そうだろう」 うんうんと実に満足気に王は頷いた。 「でも、その姫が頬を赤らめながら『あの…皇子様…わたくし… 実はとんでもないマゾヒストなのでも、もし…一緒になった暁には… あの…その…毎晩…は、激しく虐めて、破壊して下さい』 って言った瞬間……僕の絶望感がどれほどだったか……想像できます?」 「……え?」 王は皇子の言葉に一瞬、時が止まった。 「その前に行った国の王女なんて 『皇子様、1日に何回くらい自慰しますか?私は1日に3回はしてしまいますの。 今も…皇子様の事を思うだけで手が勝手に…』とか…...
  • 双蜜月(ハネムーン)の夜
    昔々の話です。ある国に、それは信じられないほど可愛らしいお姫様がいました。 真っ直ぐな髪の毛が黒曜石みたく輝き、同じく黒目がちの大きな瞳はまるで星を宿す夜空のようです。 そしてそれらをひときわ際立たせるのが、一度も陽の光に当たったことがないかに思える、抜けるように真っ白な 肌でした。 お姫様の名はリリィ姫と言いましたが、人々はまさしく白百合の高貴と清廉を表す名前とは思いつつも、 もっぱら美しい肌を称して白雪姫、と呼んでいました。 そんな白雪姫には同じほど抜きん出た容姿を持つお母様がおりました。といっても、実の母親ではなく、 父王様が一年前に娶(めと)いになったのです。 この方はシェラ王女と言い、年のころは不明ですが二十代前半にも見えるようなきめの細かい肌や 清純な風貌で、白雪姫と比べて全く劣らない、思わず目を疑うほどの美しさをお持ちになっているのでした。 また、外見の他にも大変すばらしい方...
  • アニーとクリフ 中編
    部屋の中を右往左往するアニーを見ながら、まるで冬眠前の熊だなとシャルは笑う。 夜だと言うのに友人のところへ突然押し掛けてきて、何やらパニックを起こした挙げ句、服を貸してくれと言う。 アニーに似た体格のシャルだが、衣装持ちで有名なのだ。 こりゃあ男だね、と密かに笑う。 だが、そのものずばり尋ねても、絶対口を割らないだろうし。いっそ、酒で酔い潰して訊いてみようか? だがアニーも、どこぞで飲んできたようだし。 「で、どこに行くのよ?」 「分からん……ただ、馬で出掛けようと言われ――!!」 ここでようやく、自分が逢い引きを白状したも同然だと気付いたようだ。 鈍い、鈍すぎる。 「で、誰? アーサー准将? それとも、リチャード男爵の次男? まさかロンデル大尉じゃないよね?」 「違うよ」 赤くなってそっぽを向く。 可愛い。こんなアニーを見ることができるとは。 鬼神だ、魔神だと...
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