princess-ss @ ウィキ内検索 / 「詩興夜話(前篇)」で検索した結果

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  • 詩興夜話(前篇)
    「起きろ」 短いことばとともに重々しい衣擦れのような音が聞こえ、日光が顔の上に落ちてくるのを感じた。 今日は久しぶりにいい天気なんだな、と瞼を閉じたままマテューはぼんやり思った。 できればずっとぼんやりしていたかったが、彼が身動きしないままでいると、いきなり鼻を強くつままれた。 離してくれそうな気配はない。 しぶしぶながらマテューは目を開けた。 自分と同じ褐色の双眸が冷ややかにこちらを覗き込んでいる。 「ひろいらないれすか、はにふえ」 「何がひどいか。聞こえているなら起きろ」 まなざしと同じくらいの冷淡さでそう言い放つと、来訪者はようやく鼻を解放してくれた。 しかし痛みはなかなか引かず、マテューは鼻柱を恐る恐るさすった。 「あんまり強くつかまないでください、兄上。  これが変形したらいろんなご婦人が悲しみます」 「鼻を力点におまえの全身を持ち上げようと試みなかっただけありがたいと思え」 そ...
  • お姫様SSリスト
    ...39 30.3kb 詩興夜話(前篇) [非エロ] ◆07-298 33.6kb 詩興夜話(後篇) ◆07-350 37.3kb 落花春宵 ◆07-399 26.8kb 残夜余香 [SM] ◆08-166 22.7kb 枕辺戯語 [SM] ◆08-266 43.4kb 花影幻燈(前篇) [鬱] ◆08-345 52.9kb 花影幻燈(中篇) [女攻][鬱] ◆09-278 35.3kb 花影幻燈(後篇1) [女攻][鬱] ◆09-366 31.6kb 花影幻燈(後篇2) [非エロ] ◆11-139 13.0kb 華燭浮沈(前篇) [非エロ] ◆11-174 51.5kb 華燭浮沈(後篇1) ◆11-187 華燭浮沈(後編2)容量オーバーのため分割 銀と橙 ◆08-296 04.3kb 銀と橙 [非エロ] ◆08-43...
  • 詩興夜話(後篇)
    (どうしたもんか) マテューはまた髪を掻きあげていた。 あまり褒められた癖ではないが、小さいころからの習いでどうしても抜けない。 窓から差し込む夕刻の光が滑らかな金髪の上をすべり、微妙な翳りと光沢をつくりだしては散っていく。 膝の上に置いた本は彼の陰になっているため、宵闇さしせまるこの部屋では文字はほとんど読み取れない。 マテューはぼんやりと頁をくくった。 惰性のような動作であり、内容は頭に入っていない。 新しい頁の章題は「国文学における頭韻法の発生と変遷」とかろうじて読み取ることができた。 マテューはふと本を閉じ、彼らしくもない深いためいきをついた。 あの日の午後、彼はふたたび書記官らを広間に招きいれ、ミュリエルと共に双方の財産目録の確認と検討を地道におこない、 実質的に資産配分の契約書である婚約文書の草稿を筆頭書記官にまとめさせた。 あとはこれを宮廷に持ち帰り、しかるべき審議機関を経て...
  • 華燭浮沈(前篇)
    ジュスティーヌは指折り数えながら待っていた。 これでもう五巡目になる。 あとほんの少ししたらあの扉が開かれ、それから彼女の人生は新境地へと導かれる。 それがどんな世界なのかは分からないが、 とにかく何か煌々しく清冽で、四肢がしびれるほどに胸を熱くさせてくれるもので満ち溢れているということだけは信じられる。 彼女がこれまで宮中の奥深くで読み漁ってきた恋物語の数々、 あるいは王室専属の詩人たちが優しい旋律に乗せて聞かせてくれた古よりの恋愛詩の数々は、 もれなくそれが事実だと保証してくれている。 すなわち、恋に落ちることこそ女が女として生を享けた意味を知る契機であり、 真の幸福に至る唯一無二の条件なのだと。 彼女が今迎え入れようとしているのは、正確には親がとりきめた結婚相手であって恋人ではないのだが、 そんなものは本質的な障壁にはなりえない、とジ...
  • 花影幻燈(前篇)
    一瞬、幻を見ているような錯覚に襲われた。 書斎へ向かう途中に通りかかった吹き抜けの渡り廊下からは、中庭がよく見渡せる。 中庭の入り口付近には小さいが精巧な仕掛けの噴水があり、 その正面に置かれた長椅子にはふたつの人影が寄り添うように座っていた。 噴水のしぶきが宙に生み出す虹を愛でているのだろうか、ときどきかろやかな歓声が上がっている。 緑陰にて夏の朝の清涼を楽しむふたりの貴婦人。それは宮中ではありふれた風景である。 だが、ふたりの顔かたちが鏡に映したように同じであるということだけが尋常ではなかった。 頭上に広がるポプラの枝葉から零れ落ちる陽光を散りばめた黒髪と、ときおりまぶしそうに細められる漆黒の瞳。 余人が彼女たちを目にしたら、その寸分違わぬ精緻な美しさに、 地上に降りた一対の守護天使のようだと評する者もいるかもしれない。 だがアランを襲ったのは何か軽い眩暈のようなものだった。 しかし一...
  • 薬(前)
    暑い。 さすがの北城も、夏の間は暑く過ごしにくい。 森に囲まれているからか、湿度も高い。 日中は熱を避けて人々は屋内で過ごし、活気があるのは明け方から昼までと、夕方から深夜、ということになる。 厩舎で馬たちに水を与えている手を止めて、アビゲイルは照りつける太陽を仰ぎ見た。 アビゲイルはこの夏のはじめに、特に命じられて新兵の訓練を担当した。 もともと兵を錬ることについては定評があった。 今度の城主は合理的な考えの持ち主らしく、適材適所であれば身分関係なく配置転換行うようである。 敬愛するロクは隙のない警備を買われ、北東の要、岩場の出城主として配置転換され、アビゲイルは中隊長に昇格し、北城を拠点として短期の野営野戦の実践訓練を行う日々を送っている。 涼しい山の砦が恋しい。 この次の野営訓練は山岳地帯を選ぶことにしよう。 2日後には国境偵察をかねて森林地帯に経験のない歩兵を50人ほど連れて行かね...
  • 花影幻燈(中篇)
    「こんばんは、お義兄様」 顔を上げると、いつのまに扉を開けて入ってきたのかエマニュエルのすらりとした輪郭が文机の雨に佇んでいた。 燭台から放たれる淡い光は書斎の闇の中にその滑らかな小麦色の肌を浮かび上がらせ、 礼拝堂の一角から信徒たちを見下ろす聖女像のようにおごそかな気品をまとわせていた。 「何を読んでいらっしゃるの?」 首を少しだけ前に傾けて義妹が問う。 湯浴みから上がって間もない洗い髪がアランの目の前で揺れ、白檀のゆかしい香りを惜しみなく漂わせる。 「この図解は黄道かしら。  そういえば、お義兄様は自然科学のなかでもとりわけ天文学をお好みなのだと、以前姉様からうかがったわ」 夜毎の訪問だけでなく自分という女の存在そのものを忌んでいる義兄が こういった問いに決して答えるはずがないことはよく分かっているので、 エマニュエルはひとりごとのように淡々とつづけてゆく。 アランは文机の上で両手を組...
  • 蜃気楼(前編)
    最初から、どうもこれはまた厄介ごとの匂いがする、という始まりであった。 夜番の同僚に引継ぎを済ませ、一日の勤めを終えた女騎士アリューシアが、 主人──マルゴット第四王女にいとまを告げに行った時である。 姫の寝室を訪ねると、マルゴットは寝椅子に横たわり、手足を侍女に揉ませて くつろいでいるところであった。 アリューシアを見ると口元に微笑を浮かべ、持っていた扇でちょい、と手招きをする。 「アリューシア。こちらへ」 アリューシアは主のすぐ傍らへと歩み寄る。 マルゴットは今度は人差し指で「もっと側まで」と示した。 勿忘草の花のような青い瞳の目を細め、年下の可憐な王女は甘く緩んだ表情を浮かべている。 就寝前にやわらかく身体をもみ解されて、なんとも機嫌がよさそうであった。 寝椅子の横でアリューシアが慇懃に膝を折ると、マルゴットは上半身を起こして その肩に手を回した。 耳元にキスをするように、そっと女...
  • 桃色の鞠(前編)
    鞠が弾んだ。 セシリアは、縦横無尽に跳ねるそれを夢中で追いかけた。 力いっぱい壁に投げつければ、鞠は弾んで、思いもよらないところへ飛んでいく。 追いかけて捕まえて、また投げる。 その繰り返しだけで、日が暮れてしまいそうだった。 桃色の鞠を撫でながら、セシリアは考える。 マリアンヌが帰ってくる日は、いつだろう。 一人っ子の彼女にとって、一人遊びは得意とするところだ。 それでも、壁に向かって鞠を投げるより、 投げたらちゃんと返してくれる遊び相手が恋しかった。 セシリアは、額にかかった髪の毛を払うと、また鞠を放り投げた。 桃色の鞠は弾んで、彼方まで飛んでいった。      *** 記念祭二日目に催された園遊会では、 宮廷管弦楽団による野外音楽鑑賞会が行われていた。 集まった人々は、軽やかな演奏に聞き惚れ、 拍手の合間に批評家を気取り、各々の感想を口に乗せる。 けれども、中には不真面目な聴衆もいて...
  • アリス陵辱(前編)
    帝国兵×勇者軍 陵辱 一部ショタ 前編 「……う…くっ」 太陽が眩しい。 ここ何ヶ月か薄暗く湿った地下牢で閉じこめられていたのだ 目が慣れていないのだろう。 「……ん」 もう痛みも麻痺してしまった秘部からドロリとした体液が 太腿をつたい、こぼれ落ちてきた。 私の名前はアリス。エルフの神官だ。 神官といってもかじった程度の医学と薬草学、 精霊術を使うぐらいしかできない未熟な神官である。 大陸を巻き込んで起こった二回目の大戦で 最終的に勝利したのは覇王の娘を有した新生帝国だった。 そして最期に敗北したのは私達、勇者の末裔だった。 光を冠する、正義を冠する、希望の戦士達は惨めたらしく負けたのだ。 子供の頃、読みふけった英雄の物語のようにはいかない、実にリアリティ溢れる残酷な物語だ。 勇んで挑んだ大戦、当初はうま...
  • 女兵士SSリスト
    ファンタジー世界の女兵士総合スレ SSリスト 1~4スレの小説はhttp //vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/female_soldier/index.htmlに。 連作で途中からしか見当たらないといったものは上記サイトに掲載されています。 単発 ◆05-018 01.1kb タイトル未定 [陵辱] ◆05-022 10.2kb オブザーバ ◆05-042 10.5kb 隻眼のアーシャ [陵辱] ◆05-078 06.0kb 兵隊さん(陵辱もの) [陵辱][残酷] ◆06-092 01.9kb 保守小ネタ ◆06-172 00.8kb タイトル未定 [非エロ][未完] ◆06-194 25.9kb 魔法学園☆グランシール [非エロ] 作者:桃肉◆CrEK/Iu5PU ◆06-219 02.9kb タイトル未定 [非エロ] ◆06-2...
  • Zephyr(前編)
    1.  そこは、少女には見慣れない世界だった。右を見ても左を見ても、見える物は広大な草原。後ろ には少女がこれまで通ってきた道、前にはこれから少年が行く道。空も大地も、全てが夕日に赤く 染められ、オレンジのペンキをぶちまけられたかのようだった。  ――少女は見慣れない世界に来てしまった。  いつもなら心が躍る道の景色も、今は彼女の不安を煽る。  涙が止まらなかった。最後だから、もう二度と会えないから、だから、せめて最後くらいは笑顔で。 そう思えば思うほど、「最後」「2度と会えない」と言う言葉が胸に強くのしかかってきて、心の奥から 涙を引き摺り出してくる。 「姫さま、泣かないでくださいよぅ」  すっかり困った顔をした少年が、寂しそうに言う。まだ7つになったばかりのその少年の顔には、7 歳の少年が知るには早すぎる、諦観の念が浮かんでいた。  ごめ...
  • ロアとリュカ(前編)
     夢を見た。とても素敵な、夢のような夢だ。  悪い魔法使いに囚われていたお姫様を、本当に王子様が助けに来てくれたのだ。  …ちょっとガラが悪くて品性にも劣る、図体でかい黒馬の王子様だが。 まどろみの中に朝陽を感じて、気だるさに瞼を持ち上げる。 とても素敵な夢を見た気がしたが、いつまでも惰眠を貪るわけにもいかない。 山城の朝は早いからと、やたら眠いながら起きようとして、 ――目の前のチョコレート色の壁に気がついた。 「おはよ、リュカ」 …甘く耳をくすぐる声に、『ああこれは夢の続きなのか』と、極めて自然に得心する。 そうして再び瞼を閉じた。 何かやたらと温かい、目の前のあんかのような温もりもまた夢の証拠だろう。 全裸の肌寒さに熱を求め、当然の道理としてそれに抱きつく。 届く心音のような拍動も、眠りを誘うに心地よい。 …が、同時に酷く喉が渇く、ヒリヒリのあまり唾を飲むのさえ痛いのに気がついた。...
  • 副長の日々3.5(前編)
    女同士メイン、しかしレズとも百合とも言い難い何か。今回のエロに直接副長や男は絡みません。 今回の投下分と直接的に時系列で繋がっている二年前の前回投下分は、保管庫に個別の形では収録されておりません。 http //vs8.f-t-s.com/~pinkprincess/female_soldier/05-2.html の314から入っておりますので、よろしければこちらを参照してご確認ください。 ○1 「旗印が見えたぞ!」 物見櫓に立つ歩哨の叫びが、砦の空気をわっと沸かせた。たちまち手すきの兵士たちが戦友の無事をこの目で確かめんと、一斉に城壁へ駆け上がる。 出撃した守備隊主力不在時の留守を預かる副長、ユアン・ランパートもその人の流れの中にいた。さっとに手をかざすと、木々の合間の地平線から現れてくる友軍の姿を確認する。 威風堂々と凱旋してくるその兵士らの隊列に欠けがないこ...
  • いぬのおひめさま(前編)
    「近寄らないでください!」 空を切り裂いた鋭い平手が、しかし虚しくも受け止められる。 「おーおーつれないねぇ、お姫様は」 そのまま暴れる女を軽々といなし、男は軽薄な笑いを漏らした。   時は帝国暦の414年。   帝国の南の要であり、祖帝による大陸統一時からの名城だったゼズ城は、   今まさに建国以来の未曾有の変事に晒されていた。   南方の蛮夷、オルブ族。   中央の民からは赤鬼(せきき)とも蔑称される、粗野で野蛮な未開人達が、   大挙して南方のヴェンチサ要塞に押し寄せるとこれを陥落、   そのままの勢いでヴェンチサ地方の領主館であるこのゼズ城を攻め立てたのである。   ヴェンチサ侯フェリウスは猛将として知られる英傑であり、   過去20年間、幾度にも渡ってヴェンチサ要塞の防衛に成功していた戦上手だったが、   それでも今回は持ちこたえるべき要塞の陥落があまりにも早すぎた。   慌てて...
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