ルナチャイルド(レス)1
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「うー、寒い寒い寒い寒い」
温暖化の影響を受けていない幻想郷の冬は、外界の、それも滅多に雪の降らない地方出身の俺にはちょいと厳しい。
俺はコタツ布団に両手両足を突っ込み、背中を丸めていた。
「本格的な冬はこれからだっていうのに、今からそんなに寒い寒い言ってたら次の春は迎えられないわよ?」
そう言ったのは、コタツの向こうでコーヒーを飲んでいるルナチャイルドだ。俺はルナと呼んでいる。
「冬は嫌いじゃないが、寒いのは苦手なんだよ。早く春になって欲しいもんだ」
「じゃあ、いつかの異変みたいに春を集めてみたら?」
楽しそうにとんでもないことを言い出すな、この娘は。
「却下。他人に迷惑を掛けるのはダメだ。それ以前に、春の集め方なんて知ってるのか?」
「さあ? 分からないから、春は冬が終わるまでお預けね」
「そんなこったろうと思った。……ふう、冬来たりなば春遠からじとは言うけど、先は長いな」
冬の寒さに文句を言っても詮無いことだが、やはり春が遠いと思えば気が滅入る。
そんな俺を見て、ルナは妖精らしく悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「集め方は知らないけど、春を分けてあげるくらいなら出来るわよ?」
「春を分ける? どうやって?」
俺が尋ねると、ルナはチョイチョイと手招きをした。
この家には俺たちしかいないのに耳打ちもなかろうに、と思いつつもコタツの天板の上に身を乗り出す。
すると、ルナの顔が近づいてきて──
ちゅ。
──キスされた。
ルナの唇は温かく、コーヒーの香りがした。思わず、唇に手で触れる。
頬をほんのり桜色に染めて、ルナは笑った。
「どう? 『春が来た』……って感じがしない?」
「……ああ。まさに我が世の春、って感じだ。でも……」
俺はコタツの上に身を乗り出したままルナの脇腹を両手で掴み、膂力だけでその体を持ち上げた。
そのままルナの体を半回転させて、俺の胸を背もたれにするように座らせた。そして、その体を両腕でしっかりと抱える。
「こっちの方が暖かくて、もっと『春』って気がするな」
「……そうね」
少し驚いた様子のルナだったが、すぐに俺の胸に体を預けてきた。ルナの温もりがそのまま伝わってくる。
窓の外に見える風景には、ちらほらと雪が交じり始めていた。
「……春だな」
「……春よね」
外は雪化粧を始めていたが、この部屋の中だけは春爛漫だった。
どうやら今度の冬は、暖かく過ごせそうだ。俺は腕の中の『春』を強く抱きしめた。
21スレ目 >>450
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ルナチャイルドを膝に載せて抱っこしてたら、急に周りの音が聞こえなくなった
おそらく周りにも、音が伝わらなくなっているのだろう
「ね、○○」
普段のおっとりした様子とは違う、妙に大人っぽい顔で見上げてくるルナ
「愛してる、って言ってくれない?力いっぱい」
ふわふわした縦ロールの髪を弄びながら、
「ルナ、愛してる!!」
彼女にしか聞こえないとびきりの大声で、愛を叫んだ
29スレ目 >>762
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最終更新:2011年04月17日 12:07