第二章(エヴィル)

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#image(evil100.3.bmp)#image(evil100.4.bmp) 4月、ヘサムの元へ知らせが届いた。 エルラーニの領主、ペーター・パトラベムが独立を宣言したという。 聞けばパトラベムはほとんど野心のない人物だそうだ。ヘサムはとりあえずシュペテルクの宮城に向かった。  グリトラス「野心のないパトラベムが自分の意志で反乱するとは思えない。裏でジムリアが糸を引いているに違いない。」  ラスツェイル「エルラーニは首都の西隣です。これでは喉元に短刀を突きつけられたようなものです。」  グリトラス「敵にはなかなかの策士がいると見える。王に宮廷にスパイが潜んでいるかもしれないので注意していただくよう伝えさせよう。」 そこへもう一人の使者が駆け込んできた。  使者「申し上げます。パトラベムに続き、南のロイエンニのアシホット・ラベンハルト領主が独立しました。」  グリトラス「ご苦労。ところで、ロイエンニはエルラーニに隣接していたな。」  ラスツェイル「はい。この反乱もジムリアの差し金ですか?」  グリトラス「ラベンハルトはアシホットという名前からも分かるとおり混血だ。あの『エヴィル殺し』がラベンハルトを使うはずがない。どうせ住民に担ぎ出されただけだろう。」  ラスツェイル「なるほど。では鎮圧のための軍備を整えさせます。」 この後ヘサムの騎兵隊も訓練を命じられたが、この月は特に出陣の命令も下らず、戦いも目立ったものはなかった。 #image(evil100.5.PNG) 翌月、3万2千のウェルハイト軍がシュペテルクの西、カールリンゲンに侵入したという情報が入った。 ヘサムにも出陣命令が下り、カールリンゲン近郊で両軍は対峙した。メーメッツ軍6万4千の指揮官はフィリップ・アットドル大将、 高い人望を買われて首都で近衛軍の指揮を任されている人物だ。鋭い眼差しとその堂々たる巨体には周りを圧するものがあった。 上司のグリトラスとはまた違った威厳を漂わせている。 副将はディトリヒ・ベイシンツェイ中将。建国時から続く名門の出身で、ジムリア国との戦いで数々の武勲を立ててきた老将である。  ベイシンツェイ「敵はわが軍のほぼ半数です。」  アットドル「あんな寡兵でどうしようというのだ。まあいい、こちらも行くぞ。」 ウェルハイト軍の指揮官はウルリヒ・ビュバーグ元帥。老練な策士である。 元々ジムリア国からウェルハイト公の監視役として派遣されていたが、ローダンの反乱を機にウェルハイト公に独立を勧めたのは彼だというからかなり狡猾な男だ。 ウェルハイト軍の部隊が突撃してきた。ベイシンツェイ隊がそれに当たる。 ヘサム隊にも攻撃が許可された。左翼に配置されていたヘサムもその部隊への突撃を命じた。 部隊はエヴィル騎兵の速さに恐れをなしたらしく、全速力で後退していく。 ヘサム率いる7千のエヴィル騎兵は猛然とそれを追った。もう少しで追いつくというときだった。ヘサムは愕然とした。 敵の部隊がヘサム隊を囲むように進んできたのだ。ヘサムが後退を命じたときにはもう手遅れだった。 今まで逃げていた部隊も反転して迎撃態勢に入り、ヘサム隊は退却を余儀なくされた。ビュバーグの策にかかったのだ。 安全な場所まで後退すると、ヘサムは部隊の再編を開始した。隊列を組みなおし、小隊長が死んだ小隊は他の小隊と統合する。 相変わらず戦場では他の部隊が激しい戦闘を繰り広げている。再編が完了すると、ヘサムは再び突撃命令を出した。 遠くのほうをアットドルの近衛部隊が整然と行軍していく。全員が銀の甲冑を身にまとっている。ヘサム隊の突撃により、敵の一角が突き崩された。 そこへアットドルの本隊がとどめを刺した。敵軍は総崩れになった。 アットドルから全部隊に追撃の命令が出され、ヘサムもそれに従った。 やがてどこからか歓声が上がった。それまでは抵抗していた敵兵が背を見せて逃げていく。 近衛部隊がビュバーグを討ち取ったのだ。こうしてカールリンゲン南の戦いはメーメッツ軍の勝利に終わった。
[[これまでの主要人物>これまでの主要人物(エヴィル第2章)]] #image(evil100.3.bmp)#image(evil100.4.bmp) 4月、ヘサムの元へ知らせが届いた。 エルラーニの領主、ペーター・パトラベムが独立を宣言したという。 聞けばパトラベムはほとんど野心のない人物だそうだ。ヘサムはとりあえずシュペテルクの宮城に向かった。  グリトラス「野心のないパトラベムが自分の意志で反乱するとは思えない。裏でジムリアが糸を引いているに違いない。」  ラスツェイル「エルラーニは首都の西隣です。これでは喉元に短刀を突きつけられたようなものです。」  グリトラス「敵にはなかなかの策士がいると見える。王に宮廷にスパイが潜んでいるかもしれないので注意していただくよう伝えさせよう。」 そこへもう一人の使者が駆け込んできた。  使者「申し上げます。パトラベムに続き、南のロイエンニのアシホット・ラベンハルト領主が独立しました。」  グリトラス「ご苦労。ところで、ロイエンニはエルラーニに隣接していたな。」  ラスツェイル「はい。この反乱もジムリアの差し金ですか?」  グリトラス「ラベンハルトはアシホットという名前からも分かるとおり混血だ。あの『エヴィル殺し』がラベンハルトを使うはずがない。どうせ住民に担ぎ出されただけだろう。」  ラスツェイル「なるほど。では鎮圧のための軍備を整えさせます。」 この後ヘサムの騎兵隊も訓練を命じられたが、この月は特に出陣の命令も下らず、戦いも目立ったものはなかった。 #image(evil100.5.PNG) 翌月、3万2千のウェルハイト軍がシュペテルクの西、カールリンゲンに侵入したという情報が入った。 ヘサムにも出陣命令が下り、カールリンゲン近郊で両軍は対峙した。メーメッツ軍6万4千の指揮官はフィリップ・アットドル大将、 高い人望を買われて首都で近衛軍の指揮を任されている人物だ。鋭い眼差しとその堂々たる巨体には周りを圧するものがあった。 上司のグリトラスとはまた違った威厳を漂わせている。 副将はディトリヒ・ベイシンツェイ中将。建国時から続く名門の出身で、ジムリア国との戦いで数々の武勲を立ててきた老将である。  ベイシンツェイ「敵はわが軍のほぼ半数です。」  アットドル「あんな寡兵でどうしようというのだ。まあいい、こちらも行くぞ。」 ウェルハイト軍の指揮官はウルリヒ・ビュバーグ元帥。老練な策士である。 元々ジムリア国からウェルハイト公の監視役として派遣されていたが、ローダンの反乱を機にウェルハイト公に独立を勧めたのは彼だというからかなり狡猾な男だ。 ウェルハイト軍の部隊が突撃してきた。ベイシンツェイ隊がそれに当たる。 ヘサム隊にも攻撃が許可された。左翼に配置されていたヘサムもその部隊への突撃を命じた。 部隊はエヴィル騎兵の速さに恐れをなしたらしく、全速力で後退していく。 ヘサム率いる7千のエヴィル騎兵は猛然とそれを追った。もう少しで追いつくというときだった。ヘサムは愕然とした。 敵の部隊がヘサム隊を囲むように進んできたのだ。ヘサムが後退を命じたときにはもう手遅れだった。 今まで逃げていた部隊も反転して迎撃態勢に入り、ヘサム隊は退却を余儀なくされた。ビュバーグの策にかかったのだ。 安全な場所まで後退すると、ヘサムは部隊の再編を開始した。隊列を組みなおし、小隊長が死んだ小隊は他の小隊と統合する。 相変わらず戦場では他の部隊が激しい戦闘を繰り広げている。再編が完了すると、ヘサムは再び突撃命令を出した。 遠くのほうをアットドルの近衛部隊が整然と行軍していく。全員が銀の甲冑を身にまとっている。ヘサム隊の突撃により、敵の一角が突き崩された。 そこへアットドルの本隊がとどめを刺した。敵軍は総崩れになった。 アットドルから全部隊に追撃の命令が出され、ヘサムもそれに従った。 やがてどこからか歓声が上がった。それまでは抵抗していた敵兵が背を見せて逃げていく。 近衛部隊がビュバーグを討ち取ったのだ。こうしてカールリンゲン南の戦いはメーメッツ軍の勝利に終わった。 ---- シュペテルクに戻り、グリトラスに戦果を報告しようとすると、グリトラスは重大な発表があるという。 すべての武将がそろったところでグリトラスが口を開いた。  グリトラス「ジーククナー国が、ジムリア国の傘下に入った。」 一瞬場がどよめいたが、グリトラスはそれを手で押しとどめ、言葉を続けた。  グリトラス「ジーククナー国の領土をジムリア国が併呑すれば、ローダン国の首都ケルンバークは直接ジムリア国の脅威にさらされることになる。        ケルンバークが陥落すれば、ジムリアのエヴィルの反乱は終結、そのまま矛先をわが国に向けてくることだろう。」  ヘサム「ジムリア国はウェルハイト国を滅ぼすでしょうか。」  グリトラス「実際に戦争が行われなくても、策士ビュバーグを失ったウェルハイトが領土を差し出してジムリアに許しを請う可能性は十分にある。       そうなればわが国は間違いなくかなり苦しい状況に置かれる。」 それから3日後、首都ケスマルクの南隣、ビッテンブレの領主、オットー・フリントレンが独立したという報せが届いた。やはりジムリアの裏工作のようだ。 さらに2日後、4月にケスマルクの西で反乱を起こしたパトラベムが南のラベンハルトと合流したという情報も入った。  グリトラス「まさかラベンハルトにまでジムリアの息がかかっていたとは…」  ラスツェイル「これは早く鎮圧しなければ対ジムリア戦どころではありませんな。」  グリトラス「ああ…。王にもそう伝えさせる。」 議場には重苦しい雰囲気が漂っていた。 [[次へ>>>第三章(エヴィル)]]

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