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第一章『再開、混沌』 - (2006/03/09 (木) 17:43:54) の1つ前との変更点
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「いいかぁ、みんなー。二年生になってんますます勉強が忙しくなる、この一学期、ボケッと過ごしていたらあっという間においてかれるからなぁ。気を引き締め行くように!」<br>
気の抜けた返事をする生徒を他所に一人張り切る梅岡。いつもこうだ。<br>
「それとみんなんに知らせたいことがある!入ってきなさい」<br>
梅岡は一段とうれしそうな声で廊下に向かって話し掛ける。<br>
ガラァッ<br>
開いた扉の向こうにいたのは…<br>
「!し、真紅ぅ!?」<br>
「し、知ってるですか!?ちび人間」<br>
あの金色の髪に青い目、そして凛とした表情。間違いない、真紅だ。<br>
「紹介するぞ、新しくうちのクラスの仲間となる真紅だ」<br>
「宜しくなのだわ」<br>
「桜田~、知り合いなのか?」<br>
「えぇ、まぁ一応…」<br>
「それじゃあ真紅の席は桜田の隣だ」<br>
なんでだ?イギリスに行ってたんじゃ…<br>
「あらっ、帰ってきたのよ。久しぶりねジュン」<br>
読心された。そういえばこいつには隠し事できなかったよな…<br>
「よ、よぉ!久しぶり。戻ってきてたんだ」<br>
か、変わった?なんか、その…<br>
「どうしたの?ジュン」<br>
「い、いやなんでもない。ちょっと変わったかなって…」<br>
「あら、それは褒め言葉?ありがたくいただくわ」<br>
彼女はからかう様に言って教科書に目を落とした。<br>
(き、強敵ですぅ~~)<br>
休み時間のたびに教室は沸く。真紅が質問攻めにあってるのだ。<br>
「綺麗な髪~」<br>
「どこに住んでるの~?」<br>
「つ、付き合ってください!!」<br>
他愛のない質問は放課後まで続いた。</p>
<p>
放課後の鐘と同時に僕は下駄箱に向かう。いつも帰りは一人なのだが…<br>
「ジュン、一緒に帰りましょう」<br>
後ろから呼び止められる<br>
「何で僕が」<br>
「あら、私はこの辺の地理に詳しくないのだわ。そんなレディーをほっとくの?」<br>
「はいはい、わかったよ。ご主人様」<br>
「それでこそ私の下僕だわ」<br>
中学の時からこの何ともいえない主従関係は続いてるようだ<br>
真紅からイギリスの話を聞いてるうちに家の前まできていた。<br>
「うちここなんだけど、真紅のうちまで送っていこうか?」<br>
「大丈夫よ、そこの駅から電車に乗ってすぐのところだから」<br>
「そ、そう?なら大丈夫か。じゃっ、また明日な」<br>
「ええ、また明日」<br>
ねぇちゃん帰ってるかな?真紅のことはなしたら驚くかな?そう思いながら玄関の取っ手に手をかける。<br>
「ただいま」<br>
「あら、お帰りなさい。早かったのね」<br>
「寄り道しなかったしね」<br>
軽い会話を交わして二階の部屋に上がる。<br>
足をとめ耳を澄ます。聞こえてくるのは不快な鼾。胸糞が悪い。<br>
出来るだけ足音を立てずに自分の部屋に入る。着替えを済ませ、勉強に取り掛かる。<br>
十分、二十分、勉強に集中できない。頭の中ではまったくべつのことを考えている。<br>
どうして、どうしてねぇちゃんはあいつをこの家においとくんだ?何時までいるつもりなんだ?</p>
<p>
夕食は手作りのパスタだった。見た目も味も最高だ。姉の作る料理はとてもおいしい。<br>
「今日転校生がきたんだ」<br>
「へぇ~、女の子?」<br>
「それが聞いてよ、あの真紅だよ!イギリスから帰って来たんだって」<br>
「真紅ちゃん?ジュン君の仲良しだったわよね、よかったわね~♪」<br>
「ま、まぁ久しぶりに会えて素直にうれしいけどね」<br>
幸せだと思う。姉は優しいし、学校も楽しい。あいつさえいなければ…<br>
ガチャッ<br>
「……」<br>
「(糞ッ!)」<br>
「お、お酒ですか?」<br>
「……」<br>
「…どうぞ…」<br>
無言で姉から酒を奪ったそれはもと来た道を引き返す。<br>
「…」<br>
「…」<br>
「何時までいるの?あいつ」<br>
「行くところがないのよ、あて先が見つかるまでは…」<br>
「でも…」<br>
「短かったけどお世話になった人なのよ?これぐらいは…」<br>
「…」<br>
食事中、それ以上の会話はなかった。<br>
また静かに二階に上がる。酒のにおいと、野球中継の音声が漏れている。<br>
全てが癪に障る。目障りな顔と体、耳障りな声に鼾…嫌だ、理由はあいつが存在すること。それがあいつを嫌う理由。</p>
<p>
いつのまにか朝になっていた。いつもの様に身支度をし、おいしい朝食をとって姉と一緒に家を出る。<br>
二人とも友達と待ち合わせているので途中で別れる。<br>
「おはようですぅ!」<br>
「おはよう、ジュン君」<br>
「おはよう、ジュン」<br>
いつものメンバーに今日は真紅が加わっていた。双子とは家が近いらしい。<br>
楽しそうに翠星石と真紅が話している。ちょっとだけ安心した。</p>
<p>一日もすぐに終わり、今日も真紅と帰る。<br>
「ジュン、覚えてる?私たちがはじめてあった時のこと」<br>
「うん、一応な。確か中一のマラソンの時だよな?」<br>
「えぇ、厳密には同じクラスなのだから入学式の時からだけども…」<br>
「それがどうした?」<br>
「いえ、ただ、またこうして合えたのも何かの運命かと思ったのだわ」<br>
「なんだよ突然」<br>
「デートしましょう」<br>
「あぁ、いいよ」<br>
いつものことだ、からかってるんだろう。その手には乗らないぞ<br>
「いつにする?」<br>
「そうだな、今度の日曜でどうだ?」<br>
「いいわ、じゃあ日曜の12時に迎えに来るのだわ」<br>
そう言うと顔を真っ赤にして走っていってしまった。<br>
「……」<br>
取り残された気がした。肩透かしを食らったような…<br>
あれ?俺嬉しがってる?まさか</p>
<p>「ただいま~」<br>
姉はまだのようだ、二階に上がる。<br>
隅の一室からラジオの音が漏れている。競馬だろうか?あいつお金ないんだよな?何で競馬なんかしてるんだ?<br>
くそっ、やめだやめ。あいつの事なんか詮索していても胸糞悪いだけだ。<br>
昨日全然勉強してないし、宿題もたまってきた。勉強道具を机に広げる。<br>
大学には行きたいが姉に負担をかけることになるので、国立の大学に通おうと思っている。<br>
私立よりは学費が安くて済む。それには人一倍勉強しなくては…</p>
<p>「おねぇちゃん?」<br>
夕食の時の姉は少し暗かった、<br>
「ジュン君、あの…」<br>
「何?」<br>
「(いえないわ、通帳のお金が減っているだなんて…)」<br>
「あいつの事?」<br>
「ち、違うわよ!」<br>
「やっぱり…、あいつが何したんだ!」<br>
「あの人と関係あるかは知らないけれども…、その、預金が減ってるの…よ」<br>
「!…あいつが取ってるの?」<br>
「そ、それはわからない…」<br>
糞ッ!どれだけ迷惑かければ済むんだ!しかも親の遺産に手をつけるだと?<br>
糞ッ!糞ッ!糞ッ!糞ッ!糞~ッ!<br>
「ジュン君!」<br>
姉に呼ばれはっとする。<br>
噛み締めた唇には血が滴っていた。握り締めたこぶしは真っ白で、手のひらにつめがめり込んでいる。眉は今にもくっつきそうだ<br>
「まだ、まだあの人と決まったわけじゃないから…」<br>
「……あいつ、夕方に競馬してた…」<br>
ポツリと呟き自分の部屋に向かおうとする。<br>
「ジュン君…」<br>
「…あいつに出て行ってもらえよ」<br>
強く扉を閉める。<br>
姉は弱みでも握られているんだろうか?あんな寄生虫なんてすぐに追い出せばいいだろ?</p>
<p>…もし、もし姉が弱みを握られてるとしたら?<br>
……僕がやるしかないのかな?<br>
やるって、何をやるんだよ…。<br>
心に片隅にどす黒い感情が湧いた。自分でも気づかないような、小さな小さな変化…<a title="saikaikonton"
name="saikaikonton"></a></p>