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雛苺短編14 - (2007/09/07 (金) 19:31:18) の1つ前との変更点

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<p>鏡を覗くと昨日と同じ自分がいて少しため息をつく。<br> 変わらない背丈、相変わらずのふっくらした輪郭。<br> 童顔と呼ぶにも子供っぽすぎるパーツの一つ一つが、気持ちに呼応して悲しげな表情を作り出していく。<br> その顔すらもいじけた子供のそれに見えて、ますますため息は大きくなるばかりだ。<br> 彼はこんな私をどんな目で見てくれているだろうか?<br> 妹のような存在?それならまだいいほうだ。<br> 最近の彼の態度を思い出すと、娘くらいに思われていてもおかしくない気がする。<br> 私だってもう高校生だから、本当はもっと大人な付き合いを彼としてみたいといつも思ってる。<br> だけど彼の前に出ると舞い上がっちゃって子供みたいに甘えたり騒いだり…。<br> ふと気付くと鏡の中の自分はとてもいい笑顔でいるように見えた。<br> 彼のことを考えただけで自然と笑みがこぼれるなんてもはや重症だ。<br> 少し色のついたリップクリームを塗って私は鏡を閉じる。<br> 少しだけ目線が高くなったような錯覚を感じ自嘲気味にちょっと笑った。<br> 大人な自分を意識した今日は通学路を歩く早さも昨日とは違う気がする。<br> 鞄を持った左手だっていつもより上品だし、鼻唄だって今日ばかりは歌ったりしない。<br> ちょっと意識を変えれば私は少しだけでも大人になれるんだ<br> そう考えていると前を歩く彼の姿が見えた。<br> その瞬間私の中の大人はあっという間にだいなしになってしまって、<br> 『ジュン!おはようなの~』といつもの自分で彼に抱き着いていたのだった。<br> <br></p> <hr> <br> 「しゅくだい見てほしーのよー」<br> 雛苺が僕の前に夏休みの成果を積み上げる。<br> かったるいと想いながらも机にのったワークの一冊目を手に取った。<br> 同じものを七月中にやり終えていた僕は懐かしささえ感じて少しわらった。<br> 「よくできてるじゃないか、えらいぞ雛苺」<br> そういって頭を撫でてやると気持ち良さそうに身体を擦り寄せてきた。<br> <br> 「自由研究は…絵日記か」雛苺らしかったが中3で絵日記はどうかとも思った。<br> 「恥ずかしいからダメなの~」<br> 開けようとすると雛苺がモジモジと阻止しようと身を乗り出す。<br> 「少しくらい、いいじゃないかよ」<br> 空中高く掲げて雛苺の奪還を拒む。<br> 不可抗力なのだが顔全体で成長した雛苺の一部分を楽しむことになったりした。<br> <br> ひとしきり戦ったあと絵日記をパラパラとめくると、自分の顔がみるみるうちに血の気を失っていくのを感じた。<br> <br> 7月29日 晴<br> 今日は幼なじみのジュンと久しぶりに一緒にお風呂に入ったなの。<br> ジュンと洗いっこくすぐったかったけど楽しかったのよ。<br> <br> 8月7日 曇<br> 今日はジュンの家で映画を見たの。<br> 一人で寝るのが怖くなったから、ジュンのベッドで一緒に寝たの。<br> ジュンが抱きしめてくれたから安心して眠れましたなの。<br> <br> ほとんどの日記に登場する僕の名前と抽象的なのが逆に生々しい絵の数々。<br> こんなものを学校の連中に、いや特定女子軍団に見られたら…<br> 顔をあげて雛苺を見るとクスクスと小悪魔な笑みを浮かべていた。<br> その笑みを見て夏とは思えないほどの寒気に襲われた僕は、二学期はひきこもることを決めた。
<p>鏡を覗くと昨日と同じ自分がいて少しため息をつく。<br> 変わらない背丈、相変わらずのふっくらした輪郭。<br> 童顔と呼ぶにも子供っぽすぎるパーツの一つ一つが、気持ちに呼応して悲しげな表情を作り出していく。<br> その顔すらもいじけた子供のそれに見えて、ますますため息は大きくなるばかりだ。<br> 彼はこんな私をどんな目で見てくれているだろうか?<br> 妹のような存在?それならまだいいほうだ。<br> 最近の彼の態度を思い出すと、娘くらいに思われていてもおかしくない気がする。<br> 私だってもう高校生だから、本当はもっと大人な付き合いを彼としてみたいといつも思ってる。<br> だけど彼の前に出ると舞い上がっちゃって子供みたいに甘えたり騒いだり…。<br> ふと気付くと鏡の中の自分はとてもいい笑顔でいるように見えた。<br> 彼のことを考えただけで自然と笑みがこぼれるなんてもはや重症だ。<br> 少し色のついたリップクリームを塗って私は鏡を閉じる。<br> 少しだけ目線が高くなったような錯覚を感じ自嘲気味にちょっと笑った。<br> 大人な自分を意識した今日は通学路を歩く早さも昨日とは違う気がする。<br> 鞄を持った左手だっていつもより上品だし、鼻唄だって今日ばかりは歌ったりしない。<br> ちょっと意識を変えれば私は少しだけでも大人になれるんだ<br> そう考えていると前を歩く彼の姿が見えた。<br> その瞬間私の中の大人はあっという間にだいなしになってしまって、<br> 『ジュン!おはようなの~』といつもの自分で彼に抱き着いていたのだった。</p> <hr> <p><br> 「しゅくだい見てほしーのよー」<br> 雛苺が僕の前に夏休みの成果を積み上げる。<br> かったるいと想いながらも机にのったワークの一冊目を手に取った。<br> 同じものを七月中にやり終えていた僕は懐かしささえ感じて少しわらった。<br> 「よくできてるじゃないか、えらいぞ雛苺」<br> そういって頭を撫でてやると気持ち良さそうに身体を擦り寄せてきた。<br> <br> 「自由研究は…絵日記か」雛苺らしかったが中3で絵日記はどうかとも思った。<br> 「恥ずかしいからダメなの~」<br> 開けようとすると雛苺がモジモジと阻止しようと身を乗り出す。<br> 「少しくらい、いいじゃないかよ」<br> 空中高く掲げて雛苺の奪還を拒む。<br> 不可抗力なのだが顔全体で成長した雛苺の一部分を楽しむことになったりした。<br> <br> ひとしきり戦ったあと絵日記をパラパラとめくると、自分の顔がみるみるうちに血の気を失っていくのを感じた。<br> <br> 7月29日 晴<br> 今日は幼なじみのジュンと久しぶりに一緒にお風呂に入ったなの。<br> ジュンと洗いっこくすぐったかったけど楽しかったのよ。<br> <br> 8月7日 曇<br> 今日はジュンの家で映画を見たの。<br> 一人で寝るのが怖くなったから、ジュンのベッドで一緒に寝たの。<br> ジュンが抱きしめてくれたから安心して眠れましたなの。<br> <br> ほとんどの日記に登場する僕の名前と抽象的なのが逆に生々しい絵の数々。<br> こんなものを学校の連中に、いや特定女子軍団に見られたら…<br> 顔をあげて雛苺を見るとクスクスと小悪魔な笑みを浮かべていた。<br> その笑みを見て夏とは思えないほどの寒気に襲われた僕は、二学期はひきこもることを決めた。</p> <hr> <p> </p> <p>雛「うい!ジュンへのお礼のお手紙書けたのー!」<br> 翆「さっきから何を一生懸命書いてると思ったら…それじゃ象形文字と大差ないですぅ」<br> 雛「もー翆星石ったら意地悪なのねっ。あー早くお手紙取りに来てくれないかしらー♪」<br> 翆「誰がです?」<br> 雛「郵便屋さんの黒ヤギさんの『中の人』」<br> <br> 翆「…夢もへったくれもねーですね…」<br> 雛「ふっ、ヒナはもう現実を知って知ってしまったのよ…」</p>

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