「第二話『水銀燈』」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
第二話『水銀燈』 - (2009/11/25 (水) 01:20:06) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<p> 黒煙の吹き上げる屋内。よほどの衝撃だったのか、通路の明かりは途切れ途切れにしか点いていない。 <br />
しかし、あたりに立ち込める臭いは火薬のような煤けたものではなく、濃密で、吐き気を催すような─死の臭いだった。 <br /><br /><br />
"The Unknown" <br />
第二話『水銀燈』 <br /><br /><br />
「この臭い…あまり長居はしたくないものね」 <br /><br />
真紅は呟きながら進む。事実は分からないが、様子を見る限りでは『半壊の原因』はよほどの大規模だったようで、人の気配などというものは感じられない。 <br />
しかし、前情報どおり半壊状態である建物内の進行には、十分な注意が必要だった。突然天井が崩落したり、壁の一部が倒壊したり。油断しているとミイラ取りがミイラになりかねない。 <br /><br />
「なんとか半分、といったところかしら」 <br /><br />
異教のものとはいえ教会。深奥部と目される地下礼拝堂まではほぼ一本道。ここまでは、大きな難もなく進むことが出来た。 <br /><br />
「この扉の先は… 地図どおりならカタコンベ(地下墓地)かしらね…」 <br /><br />
扉をあける際にギギッと嫌な音があたりに響く。カタコンベは、墓地ということもあってか、今まで通ったどの部屋よりも不気味に、冷たい空気を漂わせていた。<br />
教会自体がもはや打ち捨てられているため仕方のないことではあるが、暴かれた墓などがちらほら見える。主を失っても関係ない、というかのようにただ佇む墓標が<br />
なんともいえない気味の悪さを感じさせ、真紅は今一度、心を引き締める。 <br /><br />
「う、うぅ…」 <br /><br />
すると、すぐ横から悶えるような声が聞こえてきた。彼女がそちらに目をやると、先行した分隊の一人と思われる騎士が壁に背を預け、座り込んでいる。 <br />
体のいたるところから出血が認められ、よほどの攻撃を受けたことが伺える。再び、注意深くあたりを見回すと、暗闇の中にちらほらと死体が転がっていることが確認できた。 <br />
一般人のようでもあり、反政府主義者達のようでもあり、騎士団のようでもあり。真紅はそれらの死体の身元を確かめる必要を感じたが、頭部や腕がもげていたり、<br />
体中に大きな穴があいていたり、どの遺体も『死してなお攻撃をうけた』かのように欠損が激しく、遠目では分からない。 <br />
とりあえず、それらの確認は後回しにして、彼女はすぐ傍の生きている者に声をかけることにした。 <br /><br />
「大丈夫…ではないようね。立てる?」 <br />
「あ、あ…誰か、いるのか?」<br /><br />
どうやらその騎士は疲労のためか、失血のためか、目が見えていないようだった。真紅の姿を確認できないのだろう、非常におびえた表情で剣を構えている。<br /><br />
「騎士団の者よ。貴方達が帰ってこないとなって、派遣されたの」<br /><br />
真紅は彼を安心させるためにもまず、自分の身分を名乗る。騎士は一瞬安堵の表情を浮かべ、構えていた剣を下ろす。もはや精妙な力加減ができないのか、その振りは乱暴そのもので、<br />
その手がドサッ、と土を叩く音をたてたと同時に指は剣を手放してしまった。<br />
彼女は彼を一旦外に出そうと手を差し伸べたが、彼はすぐに思い直したように緊張した面持ちとなって、彼女に言葉を返した。<br /><br />
「だ、ダメだ…早く、引き…返せ。『アレ』に…得体の知れない何かに…喰われる、ぞ…」<br />
「喰われる? 水銀燈とやらは猛獣でも飼っていたと?」<br />
「違う…そんなんじゃない…姿は、見えない、が…『アレ』に触れると、死んだ皆が…あ、あぁぁ…」<br /><br />
騎士は半狂乱に陥っていた。 <br /><br />
─たかが反政府主義者達が、訓練された騎士相手に一体何をやれたというの?─<br /><br />
真紅には彼がおびえる理由が分からない。しかし騎士の脅え様は常軌を逸しており、もはや彼女の声すら届いていないようだ。<br /><br />
「…? 要領を得ないわね。もう少し詳しく話して頂戴」<br />
「あ、あ…死にたく、ねぇ…母ちゃん…ミリア……あんなモンに…な、なりたく…」<br /><br />
そういい残して彼は頭を垂れる。あたりに、先ほどとはまるで違う、冷たい─墓場特有の─空気が立ち込めた。<br />
否、真紅がそう感じただけで最初からその空気は漂っていた。生き残りの存在がそれを鈍らせていただけにすぎない。<br /><br />
「…死んで、しまったのね。安らかにお眠りなさい」<br /><br />
宗教を信じていないとはいえ、死者への礼儀は忘れない。真紅は彼に向かって十字を切る。それは恐怖の中で命を失した者への、せめてもの手向けだった。<br />
だが、今は任務中。生存者ならまだしも、死者にいつまでも時間を割くわけにはいかない。無情ではあるがそう考えて、真紅は再度進行方向に向き直る。<br />
ところが、数歩進んだところで、後ろからチャリ…チャリ…と金属─鎧─同士が接触する音とともに『何かの気配』が漂い始めことに彼女は気がついた。<br />
細心の注意を払いながら、振り向くと…<br /><br />
「貴方、生きて… ……ッ!」<br />
「ア、アアアァァ…」<br /><br />
そこに立っていた『それ』は、最早人ではなかった。<br />
明らかに生気を失った目、たった数秒しか経っていないとは思えない程に土気色に変色した肌、普通とは思えない速度で腐り、剥がれ落ちる皮膚と肉。<br />
そして彼の口は、生者の肉を、血を求めるかのようにだらしなく涎を滴らせていた。<br /><br />
「…死者が蘇るなんて、御伽噺の中だけにして頂戴」<br /><br />
すらり、と真紅は脇の小剣を抜く。小剣とはいえ女性の身長には丁度良い大きさだ。<br />
その剣は─良く使い込まれ、何度も修繕されているのだろう─独特の鈍い光のなかに、確かな『重み』を湛えていた。 <br /><br />
もはや思考能力を失った『彼だったモノ』は真っ直ぐ真紅の方向へと突進してくる。動きは緩慢で、かわすことはそれほど難しくない。<br />
しかし、ソレの振りぬいた腕がすぐ側にあった墓標を砕いたとき、真紅は背筋をふるわせた。<br />
振り返る暇も与えずその背に、腕に、頭に真紅は剣を打ち込む。しかし、彼女の激しい連撃を受けながらも、ソレは振り返り、一歩一歩確かに歩みを進めてくる。<br />
真紅は続けて攻撃を加えながらも、後退を余儀なくされていることに気がついていた。このままでは、そこらにある墓標や死体で躓くことになるかもしれない。そうなれば一巻の終わりだ。<br />
この『騎士』、攻撃が効かぬのではない。─痛みを、感じていない─そういう動きをしている。<br />
剣を握る腕に込められる力は、自然と大きくなる。「痛み」で足を止めさせるのではなく、「体」で足を止めさせる。肉体の構造的に進むことのできないようなダメージを与えるしかない。<br />
体のいたるところに強烈な斬撃を受け、ソレの見てくれはどんどん惨たらしいものへと変化していった。<br /><br />
「はぁ…あたりの遺体…はぁ…欠損が激しいのは、このため…か」<br /><br />
恐らく、ここらの無残な遺体は、すでに化け物と化し、生者に倒された『元人間』の成れの果て。目の前の彼も初めは油断したのだろう。<br />
ただ攻撃しただけでは足を止めないことに驚き、不覚をとり。そしてあれほどの傷を負う羽目になったのだ。他人と協力したのか、一人で全てを打ち倒したのかは定かでないが、<br />
とにかく、亡者どもを全滅させる頃には生きることを諦めざるを得なかったのだ。<br /><br />
最後の一撃が左足を砕くと、目の前のソレは糸が切れたかのように倒れこんだ。ここまでやってようやく、『たった一体』の敵を倒せたことに、真紅は安堵とともに言い知れぬ不安を覚えた。<br /><br />
「はぁ…はぁ…… これが何匹もいたんじゃ…騎士団では手も足も出ないはずだわ」<br /><br />
普通なら、真紅の剣を二、三度でも受ければ相手は膝をつく。しかし、『これら』はそんなことお構いなしに攻めてきた。<br />
二十名程度の『良く訓練されただけの』騎士がこんなものを大量に相手にして、生きて帰れる道理ではなかったのだ。<br /><br />
「とにかく…できるだけこいつらに見つからないように先に進まないと」<br /><br />
一対一ならば、時間と体力がかかるとはいえ真紅の勝利は揺るがない。<br />
しかし、もしこの『化物』が何匹も、何十匹も一度に襲い掛かってきたら?<br />
真紅は恐ろしい想像に身をふるわせる。<br /><br />
しかし彼女はその恐怖を抑え、進む。深奥部はもうじきだ。恐らく、あの広いカタコンベが『主な戦闘区域』となったのであろう。<br />
いくら進んでも次の死体にめぐり合うことはなかったのは、幸いだった。<br /><br />
そして深奥部に到達したとき、真紅は礼拝堂の扉が、わずかに開いていることに気がついた。<br />
彼女は息を潜めて近づき、そこから中の様子を伺う。中に居るのは二人の女性─黒い衣服を身にまとった銀髪の妖艶な女性と、精悍な顔立ちをした戦士と見られる女性。<br />
そして、一人の幼子だった。<br /><br />
「ぐうっ…」<br />
「水銀燈!」<br /><br />
水銀燈とよばれた銀髪の女性はなにやら苦しんでいる様子。戦士風の女性が、彼女に駆け寄る。<br />
しかし、水銀燈は差し伸べられた手を払いのけ、女に、はっきりとした口調で伝えた。<br /><br />
「もう、限界ね…巴、騎士団の犬が来る前に、雛苺を連れて逃げなさい」<br />
「………分かったわ。貴女も、早く…ね? …さあ、行くわよ。雛苺」<br />
「…!」<br /><br />
巴と呼ばれた女が幼子─雛苺─の手をとる。雛苺は少しばかり抵抗する様子を見せるが、ショックのせいで一時的な失語症にでも陥っているのか、言葉を発することができないと見える。<br />
巴は彼女を肩に抱え、急いでその場を走り去る。どこに向かったのか、どこから出て行ったのかは、小さな隙間からは確認できない。<br /><br />
「…ええ。私は『死なない』もの」<br /><br />
水銀燈はそう呟いて、真紅の潜む出入り口とは正反対─異教の神の像へと向き直る。その像は左手を、甲を見せるように掲げた女神のものだった。<br /><br />
「もう、雛苺しか…結菱侯爵、いえ…めぐ、貴女はそれでいいの? だって、あの娘は…」<br /><br />
真紅はその隙をついて室内に侵入する。彼女は抵抗の際に使われたらしい武器が散乱する中にボウガンを見つけ、それを手に取った。<br />
水銀燈は相変わらずこちらに気づいていない。チャンスは、今。<br /><br />
「手を頭の後ろで組んで、ゆっくりこっちを向きなさい」<br /><br />
真紅はボウガンを構え、静かに、しかし強い口調で言い放った。<br />
突然の言葉をかけられても水銀燈は微動だにせず、ゆっくりと手を組み、振り返る。<br />
その顔には怒りとも、焦りともとれる表情が浮かんでいた。<br /><br />
「…犬め…邪魔をしないでちょうだ…!」<br /><br />
真紅の姿を認めた途端、水銀燈の表情は驚きのそれへと変わり、さらに喜びのものへと変わっていく。気味の悪い感触が脳裏を掠めたが、<br />
彼女はそれを目の前の不気味な女に気取られぬよう自分を保ち、呼びかける。<br /><br />
「この状況は一体何? 死体が動くなんて…なにか未知の薬でも研究していたの?」<br /><br />
真紅は未だに自分が見たものを信じられないでいた。<br />
しかし、真紅の言葉を耳にした水銀燈はにやぁ、と口角をあげ、いやらしい笑みを浮かべる。それだけで、答えとしては十分だった。<br /><br />
「ざんねぇん、おお外れ。…でも、貴女はいいわ。…最高よ!」 <br />
「…!」<br /><br />
突然、組んでいた手を解き飛び掛る水銀燈。真紅はとっさにボウガンを放つ。<br />
その矢は無情に水銀燈の胸のど真ん中を打ち、突き刺さる。衝撃で水銀燈は後方へととび、そのまま仰向けに倒れた。<br /><br />
「馬鹿なことを…っ!」<br /><br />
真紅は用心しながら近づき、一応確認する。その瞳孔は開ききっており、脈もなし。彼女の死は明白であった。<br /><br />
「…殺してしまっては、雛苺様の行方が…」<br /><br />
とにかく、気を落としてはいられない。<br />
真紅はそう考え、急ぎ部屋の探索にとりかかった。出入り口は彼女の入ってきた扉だけ。ならば何らかの隠し扉が存在することは疑いようがない。<br /><br />
「今なら、まだあの巴という女に追いつける…!」<br /><br />
ここは地下。と、いうことは床に隠し扉がある可能性は低い。真紅は入念に壁を調べる。人の気配はすでになく、ターゲットを捕らえることに失敗は<br />
したが、真紅は少々、安堵し…… そして、油断した。<br /><br />
ふと、右後方で風を切る音。壁の方を向いていた真紅はとっさに左へと飛んだが、切っ先が彼女の右腕を掠め、傷口からは血が勢い良く噴出した。<br /><br />
体勢を建て直し、音のしたほうを見ると、そこに立っていたのは…先程矢に貫かれて死んだはずの、水銀燈。<br /><br />
「あなたも…不死者なの?」<br />
「…あんな出来損ないどもと一緒にしないでくれるぅ? 『不完全な死』なんてごめんよぉ」<br /><br />
そういって、水銀燈は未だ胸に突き刺さったままの矢に手をかけ、一気に引き抜いた。<br />
矢が抜けると共に、少量の鮮血があたりに飛び散る。<br /><br />
「…な!?」<br /><br />
しかし、彼女の胸元に開いた痛々しげな傷口はみるみるうちに塞がっていく。真紅はまたも、目の前で起きていることが信じられなかった。<br /><br />
「…残念だけど… 今…貴女の相手をしている時間はないの…」<br /><br />
そう言って、血の滴る唇を歪ませ、水銀燈は左手を掲げる。<br />
その甲に刻まれた逆十字が赤い光を放つと同時に、天井を突き破って一匹の猛獣が現れた。<br />
獅子の頭に羊の体躯、そして蛇の尻尾。その吐息は赤く熱を帯び、この世の生き物でないことを直感させる。<br /><br />
「…な、何なの、これは!?」<br />
「貴女の相手はそのキマイラちゃんがしてくれるわぁ…『魔の森』まで追ってきなさい。犬さぁん?」 <br /><br />
そう言い残し、水銀燈は女神像の横の壁を開いてその先へと消えて行く。やはり隠し扉はあったのだ。<br />
しかし、今は彼女を追うことはできない。目の前の怪物を打ち倒すことが先決だ。<br /><br />
「くっ…」<br /><br />
真紅は剣を構える。怪物は少しばかりの知能はあるのか、なかなか飛び掛ってこない。<br />
嫌な沈黙が、少しの間あたりを支配した。<br /><br />
「グルルルル…」<br /><br />
怪物がうなり声を発した刹那、真紅は悪寒を感じて近くにあった柱の裏へと避難する。<br />
途端、おぞましい咆哮とともに柱を炎が襲った。<br /><br />
「火炎の息…くらったら、ひとたまりもないわね…」<br /><br />
しかし、広範囲の攻撃をかわしながら近づくのは容易なことではない。<br />
かといって、このまま柱の裏から動けないのではまずい。もし、あの息を受け続ければ、炎にやられることはなくとも、熱が彼女の体力を奪い、どうにもならない状況に陥ることになる。<br />
しかし、かといってこうやって考えている間にも刻一刻と時間は進み、水銀燈達に逃げる時間を与えることになってしまう。<br /><br />
「こうなったら、一か八か…」<br /><br />
しばらく考えた後、真紅はあと一本だけ残った矢をボウガンに装填する。<br />
そして、何を思ったのか彼女は、怪物の前へと飛び出した。<br /><br />
「ガァァァッ!」 <br /><br />
再び口を開き、彼女を焼き尽くそうとする怪物。<br />
しかし、真紅はその隙を逃さず、怪物の口めがけてボウガンの矢を放った!<br /><br />
「グェェェッ!」<br /><br />
矢は確かに舌と顎を貫通し、突き刺さった。何が起こったのか分からなかったのだろう。怪物は大きく仰け反り、口へと前足を伸ばす。<br />
その瞬間、獲物を剣に持ち替え、真紅はすさまじい速度で距離を詰める!<br /><br />
「あと…ほんの少し賢ければ私を丸焼きにして食べられたかもね。…でも、残念でした」<br /><br />
移動の際に生じた勢いを利用し、真紅は持てる最大の力で右後方低めに構えた剣を振り上げる。切っ先は仰け反った怪物の腹を切り裂き、更にはその先にある下顎すらも粉砕した。<br />
そして、振り上げられた刃は自然な流れとして、振り下ろされる。怒涛の二撃目が、怪物の頭に打ち付けられた。<br />
その刃は怪物の眉間を見事に砕き、その命の炎を刈り取った。<br /><br />
「ガァァァァッ!!」<br /><br />
大きな咆哮とともに怪物はその場に崩れ落ちる。その途端、その体はおぞましい黒光を放ち、掻き消えた。<br /><br />
「はぁ……はぁ… 一体、何だというの?」<br /><br />
あまりの疲れに、真紅は今にも座り込みたい気持ちに駆られたが、そんな暇は許されていない。<br />
彼女は急いで、隠し扉から逃げた水銀燈を追いかける。<br /><br />
隠し扉の先は長い階段。恐らく、地上へ直通しているのだろう。<br />
行き当たりの扉を彼女を出迎えたのは…一面に広がる国一番の大河と、その向こうから昇り来る朝日だった。<br /><br />
「…逃げられた、わね。…『魔の森』か。この川沿いに、南西へ行けば…でも、少しだけ、休みたい、わ…」<br /><br />
真紅はその場へ座り込む。気が抜けた途端、我慢していた疲れがどっと彼女に押し寄せた。<br />
暖かな日の光がその体を癒し、爽やかな朝の風が疲れを取り去っていくかのように吹き抜けるのを、彼女はそのなめらかな白い肌で感じていた。<br /><br />
「おい! 真紅、大丈夫か!」<br /><br />
彼女の帰還を待っていたジュンが、その姿を見つけ、少々慌て気味に駆け寄る。<br />
長い長い夜が明け、『始まり』は、漸くその口火を切ったのだった。</p>