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【愛の行く末】第六話 - (2006/04/29 (土) 19:37:27) の1つ前との変更点

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<p>+++桜田ジュン(6/19PM4:40水銀燈自室)+++<br> 水銀燈の家を訪れた僕は彼女の部屋に案内された。別にリビングでもよかったんだけど<br> 水銀燈に半ば押しきられる形で部屋へと向かった。正直同年代の女の子の部屋に入るのは少し気恥ずかしい。<br> 部屋に入った僕は水銀燈が差し出したクッションの上に座った。<br> 机の反対側に座った水銀燈とはちょうど向かい合う形になった。<br> <br> 銀「うふふ♪ジュンが私の部屋に来るのは何年ぶりかしらぁ♪」<br> J「たしか三年くらいじゃないか」<br> 銀「ふぅん、もうそんなに経ってたのねぇ。それで今日はどうしたのぉ?」<br> J「え、それは……」<br> 銀「あっわかったぁ。私の事が心配になって来てくれたんでしょ」<br> <br> 違う。今日はそんな事のために来たんじゃない。<br> 僕は水銀燈との絆を完全に断ち切るためにここに来たんだ。<br> あの後、泣き止んだ薔薇水晶に水銀燈と今日の放課後に話をつけてくると宣言した。<br> 薔薇水晶は『別に明日でもいい』と言ってくれたけど、こういう事は先送りにしたらかえって状況を悪化させるだけだ。<br> そうなるくらいだったら思い立ったその時に行動した方がいい。<br> あんなことがあったから、水銀燈と顔を合わせづらいとも思った……<br> でもお互い前に進むためにはここで話しをつけないといけない。<br> たとえそれが原因で彼女を傷つけることになったとしても、けじめをつけないといけない。そう思ったからだ。<br> ここにくるまでは、僕が薔薇水晶と付き合っていることを伝え水銀燈との関係を清算しようと意気込んでいた。<br> でも……<br> <br> J「ああそうだよ。みんなもお前のこと心配してたぞ」<br> <br> 言えなかった……<br> <br> 銀「ありがとぉ。やっぱりジュンは私の事を一番に思ってくれてるのねぇ♪」<br> <br> 言えなかった。話をつけようとした決心も、関係を清算する決意も、<br> 彼女の顔を見た途端に何処かへ吹き飛んでしまいなにも言うことが出来ないでいた。<br> くそ、僕はなんて根性なしなんだ……<br> 僕は水銀燈の顔を見ることが出来ずに視線を泳がせていた。<br> そのときふとある物が目に止まった。<br> 勉強机の上、整頓された水銀燈の部屋には似合わない古くなった天使のぬいぐるみ。<br> 天使なのに羽が黒いそれは、水銀燈が子供のころに大事にしていたものだ。<br> <br> J「あれ、まだ持ってたんだな」<br> 銀「え、ああアレねぇ。捨てるわけないじゃなぁい。だってアレは私にとってすごぉく大切な物なんだもの」<br> <br> 小学一年のとき、あのぬいぐるみが一度壊れてしまったことがあった。元々あれは水銀燈が祖母から譲り受けた<br> 結構古い物だったので、きっと寿命だったんだろう。腕が取れてしまったぬいぐるみを抱えて、<br> 『ジャンクになっちゃった』と大泣きする水銀燈を見た僕は家の物置にあった裁縫箱を引っ張り出してきて、それを治してあげた。<br> その頃の僕は裁縫なんてしたことがなく何度も針を指に突き刺してしまったが、それでもなんとか何とか腕を繋げることは出来た。<br> ぬいぐるみを抱えて喜ぶ水銀燈を見て”こんな僕でも水銀燈を笑わせることができる”と嬉しく思ったものだ。<br> あとでそのことが母親にばれて”子供が針を使っちゃいけない”とひどく怒られたけど……<br> <br> <br> <br> 銀「私がジュンを好きになったのは、アレがきっかけかもしれないわぁ」<br> 銀「ジュン、私は今でもあなたが大好きよぉ」<br> <br> やめろよ水銀燈……余計に言いづらくなるじゃないか……<br> <br> 銀「ねえ、隣に行ってもいい?」<br> <br> 僕が答える前に水銀燈は隣に来て僕の体に寄りかかってきた。彼女の体の温もりが服ごしに伝わってくる。<br> <br> 銀「私はあなたが好きよぉ。大好きよぉ。あんなことがあったからあなたを諦めようとした<br>   忘れようともした、でもダメなの、ジュンを諦めるなんて私には出来ないの」<br> <br> 水銀燈は僕の首に腕をまわし、顔を近づけてきた。頬は紅潮し、その目は熱っぽく潤んでいる。<br> 今は互いの吐息がわかるくらいにまで近くなっている。<br> <br> 銀「ジュン、お願い私を……」<br> J「……ゴメン水銀燈」<br> <br> 僕は水銀燈を振り解くと、そのまま部屋を飛び出した<br> <br> 銀「え、ジュン待って!!」<br> <br> 後ろから聞こえる静止を振りきり、そのまま水銀燈の家を後にした。<br> もうそれ以上彼女の思いを聞くことに耐えられなかった。僕は水銀燈から逃げだしたんだ。<br> <br> <br> <br> それから僕は走った。水銀燈からできるだけ離れたかった。そのために僕は走った。息の続くかぎり走った。ただひたすらに、<br> 自分がいったいどこを走っているのかもわからなくなっていた。<br> もうどれくらい走ったんだろうか。気がつくと僕は近所の公園の前にいた。公園の中にあるベンチに腰掛けてこれからのことについて考えた。<br> <br> J(僕はどうしたらいいんだ……)<br> <br> 答えはとっくに出ている。水銀燈に一言「薔薇水晶と付き合ってるから僕にもう構わないでくれ」と言うだけだ。<br> でも、それが言えないでいた。どうして言えない?僕は水銀燈のことなんてなんとも思っちゃいないんだ。<br> 僕が好きなのは薔薇水晶なんだ!!なのになぜ言えない!!それにあの日からずっと感じているこのモヤモヤした気持ちはなんだ?<br> なんで水銀燈の顔が頭から離れない!!なんでなんだ!!なんで!?なんで!?なんで!?<br> ……そのときふとある考えが頭の中を横切った。確かにそう考えたら全てに説明がつく。でも今更それを認めるわけにはいかない。<br> 認めてしまったら薔薇水晶を、一番大切な人を不幸にしてしまう。だから認めるわけにはいかない。<br> <br> <br> 『僕は水銀燈が好きなんだ』なんてことは……。<br> <br> <br> <br> 僕は水銀燈と決別することが出来なかった。<br> <br> 続く<br> <br></p> <p><br></p>

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