蒼星石短編35
<p>銀「これだけ美少女がいるのに誰ともくっつかないジュンはゲイだわぁ」<br /> 翠「ですぅ。・・・早く翠星石に決めればいいのに」<br /> 紅「全く、優柔不断な男は見てられないのだわ」<br /><br /> ジ「ぶぇっくしょい!」<br /> 蒼「風邪かな? あったかくしなきゃ駄目だよ?」ギュッ<br /> ジ「蒼星石、あったかいや」<br /> 蒼「うふふ。僕の家の前まで、こうさせてね」<br /> ジ「はいはい」<br /> 蒼「これを皆がみたらどうなるんだろう」<br /> ジ「怖いこというなよ」</p> <p> </p> <hr /><p><br /> 前スレの車輪の唄に触発されて書いてみた、 反省はしてない<br /><br /><br /><br /> のんびりと夕飯を作っている彼女に、 ビールが飲みたいと言ったところ、 「自分で買いにいきなよ」と部屋を追い出された。<br /> 僕は君から借りた自転車に乗り、 近所のコンビニまで駆けてゆく。<br /> 冬が終わりを告げ、 新しい春の始まりを予感させる頃。<br /> コンビニは近くとは言え、 夜に薄着ではさすがに厳しい。帰り道には、 すっかり手足の先はかじかんでしまっていた。<br /> 僕は寒くて、 飛び込むように部屋に入る。 味見をしていた彼女は、 おかえりなさいとこちらを向いて「寒くないの?」と僕を笑わせたんだ。<br /><br /> 僕らはいつまでも、 笑いあっていたいと願うけれど、 旅立つ日が来るならば、 せめてこの時間よ、 止まれとは言わないよ。<br /> ゆっくり、 進め。<br /><br /> 僕は袋からビールとプリンを取り出して、 プリンを机に置く。<br /> いつも机の空き缶を片付けない僕の事を、 君はまだ怒っているのだろうか。<br /> 彼女は「どうして買ってくるのさ?」なんて笑いながらも「太ってもボクのせいじゃないからね?」と、 さっそく蓋を開けている。<br /> その横で僕は、 ただビールを飲んでいる。そう、 ただそれだけ。<br /><br /> 僕らはいつまでも、 些細な争いを出来るんだろうか。旅立つ日が迫って、 寂しさを胸の奥へ追いやろうと、 お互いに無理をするけれど。<br /><br /> なんだか切ないから、 テレビを着けてみても、 観るでもなく聴くでもなくて、 ふいにレンジが鳴る。<br /> パタパタと台所へ駆けて行く彼女を見ながら、 僕は缶に残ったビールを飲み干した。<br /><br /> さて……彼女――蒼星石が戻ってきたら、 さっそくゴハンを食べようか。<br /><br /><br /><br /><br /> 元ネタ…レミオロメン「ビールとプリン」</p> <hr /><p><br /><br /><br /> 『テイク5』<br /><br /><br /> 外したイヤホンから電子音が洩れる。息はまだ白い。<br /> 僕は音楽プレイヤーの電源を切って、ベランダから夜空を見上げる。<br /> 無音。肌を掠める冷たいけれども、心地よい風。天に輝く月に、その周りを彩る星たち。<br /> もう冬は終わろうとしている。<br /> それでもまだ星々は冬のかたちのままで爛々と輝き続けようとする。<br /> その様子は、何だか滑稽だけれど、僕はとても愛おしいものだと思う。<br /> しかし、彼らの努力も甲斐なく、一部は原型が分からなくなる程に形をゆがめていたり、<br /> またあるものは、最早見えなくなってしまっている。<br /><br /> 毎晩毎晩、眺め続けた、彼らの姿。<br /> 僕は彼らに恋焦がれていたと言っても、過言ではないかもしれない。<br /> 姉は、自分の趣味を棚に上げて<br /> 『星の中に好きな人でもできたのですかぁ?』<br /> 『せめて生き物にしやがれですよ』<br /> とからかうけれど、気にしない。<br /> 彼らは、毎日、毎日、ほんの少しずつだけれど、確実に姿を変えてゆく。<br /> でも、ただ眺めている限りは、姿が変わってゆく事に気付く事は難しい。<br /> 僕らに似ている。<br /> ある朝、目覚めてみれば、昨日より少しだけ身長が伸びている。<br /> お気に入りだった音楽も、あまり聴かなくなる。<br /> いつのまにか、『男女』とからかわれなくなる程度には、胸が膨らんでいる。<br /> 結果として観測すれば、その変化は容易に読み取れる。<br /> でも、それらはいきなり起こるわけじゃない。<br /> ちょっとずつ、ちょっとずつ、小さな変化が重なりあって、結果へとたどり着く。<br /> 夜の天空に撒き散らされた、彼らと同じ。<br /><br /> 今日も、大きな変化はありませんでしたよ。<br /> 僕は、大空で輝く彼らに報告をする。<br /> 成功も無い。失敗も無い。<br /> 絶望も無い。希望も無い。<br /> いつもと同じ。<br /> 退屈で、代わり映えしなくて、それでいて、たまらなく大事な日常。<br /> いつもと同じように学校に行き、友達と会話をし、食事をし、これから寝る。<br /> いつもと変わらない。これが幸福でなくてなんだろう。<br /> 日々を積み重ね、過ごす幸福。<br /> 僕はこの幸せを素直に享受し、ベッドに向かうことにする。<br /> 透き通って、何処までも見通せてしまいそうな空に、僕の星座たちに、今日の別れを告げる。<br /><br /><br /> 終</p>