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真紅短編13 - (2006/07/17 (月) 09:47:05) の編集履歴(バックアップ)





「こ、紅茶………紅茶を一杯頂戴…一杯だけ…」


彼女が真っ白のベットから手を伸ばし、僕の袖をぐいぐいと引っ張る。
駄目だよ、と窘めると彼女は今にも泣きそうな顔で僕を見つめる。
そんな顔をしないで真紅、君の為なんだ。

彼女が紅茶中毒と診断されたのはほんのひと月前の学校で、定例の健康診断の時だった。

医者から言われた言葉は、真紅の今後の人生を示唆していた。


「末期」


それは真紅の人生の終わりを示していた。
当時僕は彼女と交際をしていて、真紅の父親からその事を聞いた。
僕はいてもたってもいられず彼女の病室へと向かった、白い部屋のベッド横たわった彼女がいた。

「しん…」
「紅茶」
「…え?」
「紅茶を一杯頂戴…お願いなのだわ…紅茶…」
彼女は虚ろな目で僕を見つめ、紅茶紅茶と訴える。
夢だと思った。
けれどそれは現実で、彼女は紅茶中毒者だった。

医者はもう手の施しようがなく、ずっとこのままだと言っていた。
でも、変わらないのはそれだけじゃない。

真紅を愛してる。

放課後の自宅の玄関先で、突然君は現れ、勇気を振り絞って僕を好きと言ってくれた。
僕はずっとそばにいるよ。
例え君が僕を見ていなくても、僕は君を見ているから…

真紅、好きだよ、愛してる。











真「ジュン、何をしているの?」
ジ「テスト勉強だよ」
真「そうなの」
一人、読書を始める真紅

ジ「社会科系は暗記だから苦手なんだよ」←独り言

ジ「キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、仏教……ブツブツ」←呟きながら暗記中

ジ「えっと、キリスト教にヒンドゥー教、イスラムに仏教……」←暗唱中

ジ「ヒンドゥー教……仏教……」
真「……」
ジ「……ヒンヌー教……」
真「……」






紅「ジュン………あの、今日はお弁当を作って来てあげたのだわ、感謝しなさい。」
ジ「!!へ、へぇ~~~。あ、いや今日はあんまりお腹減ってないかなぁ?」
紅「そ、そうなの……なら、無理強いは………しないのだわ………」
ジ「あ……ちょい待ち!!」
紅「?……どうしたの?」
ジ「……やっぱ食べるよ。真紅の手作りだしな。」
紅「ジュン……!!し、仕方ないわね、食べさせてあげるのだわ……♪」
ジ「おう、んじゃいただきます!!」


その夜

ジ「大丈夫だ…………僕は大丈夫だ………きぼぢわるいのは………気のせい………」


ぐぎゅるるるぅぅぅ~~~


ジ「ほうわっ!!!!」








「涙を流すことに、……理由なんて、要らないのではないかしら」

 いつもの日常、いつもの部屋で。僕は君とティーカップを傾けている。
 ささやかな茶会の最中、話題になる内容は様々。どんなきっかけでそれが発展していくかはわからなかったし、それはそれで退屈はしない。
 今日は、゙哀しみ゙についての話。彼女がふと、『大切なひとを喪うと、やっぱり哀しいかしら』なんてことを言ったから。


 ゙哀しみ゙とは、自身を対象とする感情なのだと思う。畢竟、或る喪失について『自分が可哀想』だから……泣くのではないかと。そんなことを考えたりして。 だから僕は言ったのだ。
「さあ……涙は、ひとの為には流せないものなのかもしれないな」

 彼女はまた紅茶を口に付け、僕の言葉を黙って聞いていた。少し経って、口を開く。

「そうね。ただ、それは正直だけど……少しだけ我儘な話なのだわ」


 ゙其処゙に理由など要らないのではないか、と。そう付け加えてから、彼女はそれ以上は何も言わず、沈黙の時が流れる。
 彼女と出会って、僕の性格は大分変わったと思う。だけど、それでも。自分の何処かにまだ―――『感情は、自分の為だけに使うもの』という。心の底に沈んでいる澱のようなものがあるのかもしれない。
 ゆっくり、ゆっくりと。僕の『回復』に付き合ってくれた彼女。僕は彼女のことが大切で、その存在を喪ってしまったら、きっと―――


「飲まないの?」

 話しかけられて、僕の思考は断ち切られた。カップに口をつけると、もうすっかり中身がぬるくなってしまっている。

「いいんだ、猫舌だから」
 とっさに思い付いた、苦しい言い訳。もう香りを楽しめなくなった紅茶を、しかめ面で飲む僕を見て、君は穏やかに微笑んでいる。
 僕は、君と居られるだけで……良いのかもしれない。
 ただ、たまには君に紅茶を注いで欲しいんだけど、だなんて。そんなことも考えた……

 静かで、少しだけ我儘な。とある日の、午後の風景。








真紅「じ、ジュン! この本は何なの!?」
ジュン「げっ、真紅!?」
真紅「わ、私という者がありながら……不潔なのだわ!」
ジュン「待て真紅! 時に落ち着け! 確かに、僕にはお前という恋人がいる。
    けど、知ってるか? 昔の偉い人はこう言ったんだ……」

そ れ は そ れ

こ れ は こ れ

ジュン「……いや、『目には目を、歯に歯を』だったかも……まあいいや。
    とにかく、僕もたまには巨乳を堪能しても……」
真紅「地獄へ堕ちやがるのだわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


数時間後、真紅のリンチはジュンが物言わぬ肉塊になる寸前にまで至り、
エロ本を全て処分する事を約束して仲直りしたそうです。