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真紅短編29 - (2007/09/07 (金) 19:33:14) の編集履歴(バックアップ)


滝のような夕立に打たれて、私は慌てて雨宿り出来る場所を探した。
お堂の軒下にようやく見つけた小さなスペース。
そこに慌てて飛び込むと荒いだ呼吸をゆっくり整え空をひと睨み。
まだまだ青を垣間見せるその空が悪びれもせず大きめの雨粒を降らせ続ける。
「まったく、ひどい目にあったのだわ」
私はずぶ濡れになったいつもより短めのスカートをしぼるように握る。
思った以上の量の水がしたたり落ち、スカートには少ししわができた。
「これも全部ジュンのせいなのだわ!」
同じように顔にシワを寄せてそうつぶやく。
私は10分前まで彼とともにいた。しかし彼は今ここにはいない。
お約束のくだらない口喧嘩で私は彼といた店を飛び出して、今の状況にいるのだから。

いや、くだらなくはない。私にとっては大きな問題だ。
私は視線を再びスカートに向ける。
白い生地に雨でぼやけた赤いケチャップの跡。
『いつもの赤いスカートなら目立たなかったのにな』
彼のその無神経な言葉を私は我慢できなかった。
いつもと同じが嫌だから私はこれを、今日こそ二人が別の関係になれたらと願って私はこれをはいたのに。

結局彼の目には私の決意は映らず、その怒りすらいつもと同じ癇癪に映ったことだろう。

雨音が止んだのに気付き私は沈み切った顔をあげると、ゆっくりとした動作で再び道を歩き始めた。
ふと気付くと長く延びる影のその先に彼の姿がある。
少し足を速めてびしょ濡れで立ち尽くす彼のもとにたどり着く。
『いつも通りそのまま帰って、捜し回ったりしなけりゃさ…』
『こんなに濡れずに済んだのかな?』
と彼は悪態をつき、私は『馬鹿ね』と彼を抱き寄せた。
夕暮れの中で少し鼓動を早めた心音が重なり、いつもと違うお互いを共に感じあっていた。 


J「おい、真紅」
真「なにかしら?」
J「ほっぺにごは(ry」
真「べ、別にあなたに『ご飯つぶつけて可愛いなぁ』なんて思われたい訳じゃないんだからね!」

J「(…こんなキャラだっけ?)」



『さよなら、はじめまして』

私たちにお別れのときがきている。
幼い日にであってから、兄妹のように育った私たちに。

彼は私にこういった。

「さよなら・・・」

さよなら、その言葉を心の中で復唱して少し切なくなる私。

「そして、はじめまして」

はじめまして、その言葉に幸せなこれからを感じてとてもあたたかくなる私。

さよなら、幼馴染だったあなた。
はじめまして、恋人になったあなた。

ちょっぴりはにかむようにして私も彼に出会いの喜びを伝える。

「はじめましてなのだわ、私のジュン」



ジ「何読んでんだ?真紅。」
紅「えぇ、ドイツ語の本よ…なかなかに興味深いのだわ。」
ジ「凄いよな。何書いてるか僕にはさっぱりだ…」
紅「解られてはこまるのだわ…。」ボソッ
ジ「ん?何か言ったか?」
紅「べ、別に何でもないのだわ!それより紅茶を淹れてきて頂戴!」
ジ「…へいへい。」




紅(ドイツ式バストアップ術の本だなんて言える訳ないのだわ…。)



真「ジュン、紅茶を。」
ジ「今手が離せないから自分でやってくれないか?」
真「何をやっているの?」
ジ「これだよ、知恵の輪。」
真「貸してみなさい。」
パッ
ジ「あっ、ちょっ……」
バキャッ
真「何が知恵の輪よ!これじゃ浅知恵の輪じゃない!!」
ジ「(゚Д゚)」



真「『小柄で巨乳』。そんな事が許されると思っているの?」
蒼「…真紅、誰に言ってるんだい?」
真「世の中の男達よ。だいたい…」

雛「ジュン登りなのー!」
ジ「ちょ、お前!胸が!胸があたって-!」


蒼「・・・あれは?」
真「ジーザス!!!」ガッ!



何かを確認するように鏡の前でくるりと回ってスカートを翻す。
久々に身につけた制服は丈が余るでもなく、窮屈でもなく、休み前と変わらぬままに私を包みこんだ。
長期休暇でも体型を維持できたのだと言えば聞こえはいいが、
成長期真っ只中の恋する乙女にとっては膨らんでいるべき所は膨らんで欲しいものなのである。

胸もとのスカーフを結びなおして三面鏡を閉じた。
最期に鏡に映っていた自分はとても暗い表情だったかもしれない。
これじゃあだめなのだわ、と頬をはたいて気合いをこめる。
家を出て5分ほど歩いた場所にある交差点。
まだ陽射しの強い太陽を避けるように電柱の影を定位置として彼を待つ。
休みに入る前と同じリズムで駆けてくる足音が聞こえる。
その音とシンクロするように高鳴る心臓を抑える深呼吸をひとつ。
ようやくたどり着いた彼が大きく肩で呼吸をしてから顔を上げた。
顔を見たとたんに飛び出してしまいそうになる感情を必死に抑えて。
夏休みというなかなか会えない日々の中で大きく膨らんでいた恋心を隠した、
小さな胸を大きくはって私は彼にこう言った。

「10分の遅刻なのだわジュン、罰として鞄を持ってちょうだい」

まだまだ素直になれない私だけれど、秋のころもがえには成長を実感してみせて、
きっと貴方に膨らんだ想いを伝えてみせると心に誓うと、ゆっくりと前を向いて歩き出した。
胸を飾った赤いスカーフが微かに揺れて、小さな風が吹いたのを私に感じさせた。



紅「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」
ジ「はいはい。で、お茶請けは何がいいんだ?」
紅「あなたの目いっぱいの愛が欲しいわ」
ジ「え? はぁ!? お前何言ってんだ!!?」
紅「…冗談よ」
ジ「び、びっくりさせるなよ」
紅「そっちは今夜たっぷり頂くことにしようかしら」
ジ「ほ、本気ですくぁwせdrfrgyふじこlp;」