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その他短編29 - (2008/02/24 (日) 23:52:08) の編集履歴(バックアップ)


 ある日、一人で散歩してたときの事だ。人通りの少ない小道で、カウボーイハットを被った紙芝居屋のオヤジが蹲って苦しんでた。
近所で野垂れ死にされるのも嫌なので介抱したら、えらく感謝された。おまけに別れ際、3つの願いが叶うアイテムをくれたし。
昔話じゃあるまいし、もの凄く胡散臭いんだけど・・・物は試しだ。騙されたと思って一つ願ってみようか。

 翌日、願いが叶っていた。僕は一夜にして身長2mの大男に変わってた。
 学校に行くとクラス全員が僕を見上げて驚嘆の声をあげた。付いた綽名が桜田ファミリア。世界遺産じゃないっつーの。
だけど実にいい気分だ。僕はその晩、二つ目の願いをした。
 
 更に翌日、願いが叶っていた。僕のド近眼は見事に治ってた。これで鬱陶しいメガネともオサラバできる。
 学校に行くと、なんか周囲の視線が刺さってきて痛かった。綽名がドーピングコンソメ桜田に変わった。なんだっつーの。
 女子からは今まで向けられた覚えのない熱っぽい眼差し-
 男子からは、やっぱり今まで向けられた経験のない妬ましげな白眼-
 なんか居心地が悪くて落ち着かない。僕はその晩、三つ目の願いをした。

 もいっちょ翌日、願いが叶っていた。ぼやける視界。低い目線。すっかり元通りの僕が居た。
 学校に行くと誰もが僕の急変に驚き、それと同時に安堵してる様子だった。呼び方も、ただの桜田に戻った。
 やっぱり僕は今のままがいいのかな?自分じゃあまり気に入ってないんだけど・・・。
 
 HR前の数分、隣の席の真紅が僕を見て柔らかく笑った。
 「たった二日で元に戻ってしまったのね。残念かしら?」
 「安心してるよ。あのままだったら僕の頭がおかしくなってたかもしれないし」
 「そうね。変化が必ずしも良い事とは限らないものね」
 「真紅はどうなんだよ。僕が元に戻ったのが残念か?」
 「・・・いいえ。貴方には悪いのだけれど、これで良かったと思っているわ。こうして同じ目線で話が出来るもの。
  それに・・・・・・誰かに取られる心配をしなくて済むし」
 「え?今なんて-」
 
 聞き返した僕の声は、教室のドアが開かれる音に掻き消された。もう先生が来ちゃったか。
まあ取り敢えず・・・僕は今のままで良いみたいだ。
 僕はその晩、ゆっくり大人になっていこうと考えながら眠りに就いた。何故だか紙芝居屋のオヤジの夢を見た。