「11月のおわり」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

11月のおわり - (2009/08/04 (火) 23:52:37) の編集履歴(バックアップ)


『保守かしら』
2007年11月3日 晴れ

 なんだか今日は色々あった日だったわ。
 授業とかはふつー。でも放課後ばらしーちゃんが急いで来て、音楽の先生がまたカナに会いに来るってわかったかしら。
 ばらしーちゃんにお礼を言って、それからカナは逃げたかしら。
 先生に捕まるといっつもお稽古をさせられちゃうから嫌なのに、お見舞いに行く時間も なくなっちゃうから絶対捕まりたくないの。
 でも玄関まできたら先生の足音が聞こえ始めて、カナは本当に困ったかしら。
 玄関から門まではけっこう放れてるのに見晴らしがいいから、カナが門を越えるまでに見つかって、音楽室に連れて行かれちゃう。
 でも校舎にも戻れないしカナは走って外に出ようとしたら、ぐうぜん玄関を出た所に蒼星石に会ったから、作戦変更。
 蒼星石の持ってたバッグの中に隠れさせてもらって、先生をけむに巻いたかしら。
 蒼星石は先生の信用されてるから、ばっちり。
 先生が言っちゃった後は、しばらく蒼星石と話したわ。蒼星石と話したのは真紅の事。
 やっぱり蒼星石も真紅の事は心配してたみたい。
 蒼星石は真紅を傷つけないように距離を置いてるみたい。前から思っていたけれど、蒼星石は
 たぶん私たちの中で一番優しい性格をしてるかしら。
 真紅の事を話してた時もすっごく真剣な顔してたし。
 きっとあんまり自分が何を考えてるか言いたがらないのも、他のみんなにエンリョしてるからなのかしら?

 それで蒼星石がチェスの技(殺し技って言うんだって)を教えてくれて、カナは意気揚々と真紅の所に行ったかしら。
 蒼星石のおかげで真紅にはじめてチェスで勝つ事ができたんだけれど、そしたら真紅が泣き出してしまったの。
 真紅はすっごく負けず嫌いだけれど、たぶんそれだけじゃないかしら。
 この入院中でも真紅は一回も弱音を吐かずに気合いでがんばってたから、どっと、疲れが出たんだと思う。
 でもそれがきっかけになって、真紅といろんな話ができたわ。今までずっと勝負とかしてないと 話ができなかったから、普通に話せる事がとっても嬉しかったかしら。

 小さなことから大切なことまで色んなことを話せたしね。ピチカート、何を話したか気になる?
 もちろんそれはヒミツ。教えてあげないかしら♪





2007年11月5日 いわし雲いっぱい

 今日も真紅のお見舞いに病院に行って来たかしら。
 真紅の声がしてたかしら。壁越しに耳に入っただけだから、おぼろげだけど多分こんなこと を言ってたかしら。
 「私が欠けた不完全な存在だとしても、それを埋めようとしてくれる人がいる…私というものは一つきりだと思っていたけれど、私が私でいるための要素、それを持っているのは私だけではなかったのだわ」
 それから、ちょっとだけ間があいたわ。
 「私はきっと幸せね」
 真紅の声が本当に幸せそうだったから、カナはノックしてお話の邪魔をするのもどうかなーと思って、
 しばらくドアの前で待ってみたの。でもそれ以上声が聞こえてこなかったから、そっとノックしてみたのね。
 それでも返事がないし、ちょびっとドアを開けて中をのぞいてみたかしら。
 そしたら、部屋には真紅とジュンがいたかしら。
 二人はとなりあってベッドの背もたれにもたれかかってて、足はかけ布団のなかに収まってた。
 ジュンの右手と真紅の左手は握り合ってて、二人は頭をお互いの方に傾けながら目を閉じていたわ。
 カナが真紅の声を聞いた時には、ジュンはもう寝てたのかしら?
 なんだか部屋中に安らぎと幸せがいっぱいにつまっている気がして、カナは邪魔しないようにドアを閉めて、
 買って来たお菓子をドアノブにかけたわ。

 今でもあの時の二人がすぐに思い出せるかしら…ねぇピチカート、愛って目に見える物なのね。