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蒼星石短編18 - (2006/05/02 (火) 17:10:28) の編集履歴(バックアップ)


爺「おー、可愛いのう。」
J 「……。」
爺「おー、懐かしいのう。これはまだ蒼が幼稚園に行く前のやつじゃったのう。」
J 「…おい。爺。」
爺「おお、これは七五三の時か。めんこいのう。」
J 「おい、爺。聞こえないのか!」
爺「あー、わしの孫は可愛いのう。」
J 「聞け爺!遂に呆けたか。」
爺「さっきから五月蝿いぞ!小童!そんなでかい声を上げずとも聞こえておるわ。」
J「じゃあ、さっさと返事しろ。それよりさっきからこの部屋で何してるんだよ。」
爺「ここはわしの家じゃ。どこに居ても別に良いじゃろ。」
J「そうだな。ここはあんたの家だな。でもここは蒼星石の部屋だ。幾ら祖父でも勝手に入っちゃ駄目だろ。」
爺「く、ならば小僧は何故この部屋におるのじゃ。」
J「はん、決まってるだろ。僕は蒼星石に招待されたから居るんだよ。何たって僕は蒼星石の 彼 氏 だからね。」
爺「なんじゃと!わしは認めんぞ!お前のような小童に蒼は渡さん!」
J「へ、爺なんか関係無いね。僕と蒼星石は愛し合ってるんだから。
  それよりも蒼星石の事を蒼って呼ぶな!そう呼んで良いのは僕だけだ!」
爺「ふん、わしは蒼がおしめしてる時からこう呼んでおるんじゃ。今更変える気は無いわい。
  あーそれにしても小さい時の蒼は可愛いのう。おお、これは風呂に入れてやった時じゃな。」
J「さきっから何見てるかと思ったら、それは蒼が恥ずかしいから駄目って見せてくれないアルバム『幼年期編』じゃないか!
  爺、それを僕に渡せ!」
爺「嫌じゃ嫌じゃ。これには小さい頃の蒼がたくさん載ってるからのう。お前のような小童には見せてやらんわい。」
J 「何だと!爺良いから寄越せ!」
爺「…見たいか?小僧。」
J 「ああ、見たい。見せてくれ爺。」
爺「駄目じゃ駄目じゃ。これには小僧の知らない蒼が沢山写っておるからのう。絶対に見せてやらん。」
J 「なんだとー!この性悪爺!」
爺「はっはっは。お主とわしじゃ、年季が違うわい。わしは小僧の知らん蒼を沢山知っておるのじゃ!」
J「くそー!だがな爺。僕だって爺が知らない蒼星石の知ってるんだぞ。」
爺「何!どう言う意味じゃ!」
J 「ふっふっふ。恋人特権って奴さ。」

爺「貴様まさか!?」
J 「爺さん。蒼はしっかり者だよな?」
爺「当たり前じゃ!蒼はしっかり者でどこに出しても恥ずかしく無い孫じゃ。」
J「そうだよな。だからさ、家でも甘えたりしないだろ?」
爺「…そうなんじゃ。わしと婆さんはもっと甘えて欲しいんじゃがのう…。ま、まさか!」
J「そのまさかさ。蒼は僕と二人っきりになると「JUNくーん。」って甘えてくるのさ。」
爺「何ー!あの蒼が!?」
J 「ふっふっふ。僕の勝ちだな。」
爺「く、やるな。小童!だがなわしも負ける訳にはいかん!
  蒼は昔、翠星石に比べて舌が回らなくてのう。
  それなのに翠星石がわしの事を爺と言うのを真似しようとしてわしの事を「じぃじぃ」って呼んでおったのじゃ。
  今でも思い出すのう。「じぃじぃ。」と言ってわしの元に走って来る蒼を…。」
J 「うおーそれはたまらん!」
爺「そうじゃろそうじゃろ。」
J 「だがな僕も負ける訳にはいかない!」
爺「む!来るか小僧!」
J 「爺さん。蒼のベットにぬいぐるみがあるだろ。」
爺「あの犬のぬいぐるみじゃな。それが如何した!?」
J「あれはな。僕が蒼星石に作ってあげたんだけど。あれをあげた時、蒼は
 「ありがとう。JUN君。大切にするね。それと寝る時、このくんくんの事、…JUN君だと思って抱いて寝て良いかな?
  …一人だと寂しいけどこの子が居たらJUN君が居ない寂しさも少し紛れると思うんだ。ねえ?良いかな?」
  って聞いてきたんだぞ!上目使いで!?」
爺「なんじゃとーーーー!」
J 「ふっ、僕の勝ちだな。」
爺「なんのこれしき!まだまだじゃぞ小童!」

蒼(//////)
翠「何やってるです?あの二人?」
蒼(は、恥ずかしい。)
翠「全く彼女バカと孫バカが顔を合わすと始末が悪いです。翠星石はばーさんの手伝いでもしてるです。」
蒼「あ、まってよ。僕も。」
翠「じゃあ、頼むです。」
蒼「うん。」
翠「爺もJUNもよく食べるから今日は大変です。」
蒼「そうだね。でも楽しいね。こんな賑やかなのも。」
翠「うるせーだけです。でもまあ偶には良いかもです。」
蒼「ふふふ。」


爺「ぜーぜー、やるな。小童。」
J 「爺さんもな。」
爺「じゃがまだお主を蒼星石の彼氏として認めた訳ではないぞ。」
J「ふん、別に爺さんに認めて貰わなくても良いけど、爺さんに認めて貰って方が蒼星石も喜ぶからな。何時か認めさせるぜ。」
爺「ああ、何時でもかかって来い。」

蒼「JUN君、お爺さん。御飯だよーー。」

J 爺 「「今行くーー。」」





休日、蒼星石はJUMを誘って散歩に出かけた。

蒼「気持ちいいね」
J「ああ、たまには散歩もいいもんだな」
出る前は面倒くさがっていたJUMだが、気持ちよく晴れた空と髪を揺らす風に気分を良くして、今では散歩を楽しんでいた。
そんな様子を横で眺めていた蒼星石は思いついたように口を開く。
蒼「ねぇ、ちょっと公園に寄っていかない?」
蒼星石のその言葉により、二人は公園へと立ち寄る事にした。


J「…公園なんて、久しぶりだな」
公園には小さい子供達がきゃいきゃい言って遊ぶ姿と、それを少し離れた所で見ている母親の姿があった。
蒼「なんだか、懐かしいね。僕達も昔あんな風にしてここで遊んでたよね」
J「ああ、翠星石も一緒にな」
JUMは泥で作った団子を本気で食わされそうになった事を思い出して笑った。
蒼「このブランコ、塗装が新しくなってるね。前は赤だったのに」
蒼星石が青いブランコに近寄って呟く。
J「あれから何年も経ってるからな、塗装位変わるさ」
蒼「…そうだね」
蒼星石はそう言いながら、ブランコに腰掛けて漕ぎ出した。
蒼星石の漕ぐブランコはどんどん勢いを増していく。
蒼「あははっ」
J「楽しそうだな」
蒼「うん、楽しいよ。ジュン君もやってみたら?」
J「……そうだな」
JUMは少し考えた後、蒼星石の隣のブランコに腰掛けて漕ぎ出した。
初めはゆっくり、だが足を振る毎に振り子運動が加速してGがかかり、視点もグルグル移り変わる。
J「本当だ、確かに楽しいわコレ」
JUMは笑いながら呟いた。
蒼「でしょ?」
ただ振り子運動を繰り返すだけなのに何故かやってみると楽しい。子供の頃夢中になっていた理由が少しだけわかった。
J「…よーし」
そしてJUMは更に勢いをつけ、ブランコの前に進む力が最大になった瞬間、ブランコから飛び降りた。
JUMの体は宙に投げ出され、一瞬の無重力感の後、地面へと引っぱられる。
ずざーっ
JUMは見事に着地を決めて、後ろの蒼星石を振り返る。
すると、蒼星石もJUMと同じようにブランコから飛び降りた。
ずざーっ
蒼星石も見事に着地する、それもJUMの少し前に。
蒼「僕の勝ちだね」
笑ってJUMを見る蒼星石に、JUMも笑いながら答える。
J「昔は僕の方が、上手かったんだけどなぁ…」
蒼「ふふっ、そうだったね。それで僕達が競争してると翠星石が『そんな危ないマネはやめるです』ってずっと言ってたっけ」
J「あははっ、そんな事言ってたな。あっ」
その時JUMは自分の手を見て声を上げた。
蒼「どうしたの?」
JUMは右手を蒼星石に見せる、その手は赤茶色に汚れていた。
蒼「あ、僕もだ… 鉄臭いね」
J「これは石鹸使わないと完全に落ちないな、そろそろ帰るか」
蒼「そうだね」
そして二人は公園を後にした。


J「誘ってくれてありがとな」
家に帰る途中、JUMはそう言った。
蒼「どうしたの急に?」
J「いや、なんて言うか、楽しかったからさ」
蒼「僕も楽しかったよ」
二人して笑い合う。
J「また、誘ってくれよ」
蒼「うん」

幼い頃の事を思い出し、笑い合う。
そんな幼馴染な二人の休日。


/終わり




蒼「もうすぐ、GWだね」
J「そうだな」
蒼「…えーと、ジュン君は何か予定ある?」
J「いや、これと言って」
蒼「そうなんだ…」
J「?」
先ほどから蒼星石は何処か歯切れが悪い。
JUMはしばらくその理由を考えて、気付いた。そして心の中で笑う。
J「蒼星石は予定あるのか?」
蒼「えっ? な、無いよ」
そう答えた彼女の顔は少し赤くなっている。
それを見た後、JUMは笑って口を開く。
J「それじゃ、何処か行くか? 日帰りで」
JUMの言葉を聞いた蒼星石は、ぱぁっと顔を輝かせた。
蒼星石はGWにJUMとどこかに行きたかったのだが、自分から中々誘えなくてやきもきしていたのだ。
蒼「うん、行きたい」
J「よし、それじゃ僕の家で計画でも立てようか」
蒼「うんっ」
そして二人は笑いながら足を速めた。

GWは二人にとって、きっと楽しい思い出になる事だろう。






「それじゃもう行くよ・・・元気でな、蒼星石」

「・・・はやく行きなよ」

旅立ちの朝に
君の背中に花束のような言葉もかけず

僕はいつものように空を見上げる
どんなに強く想っても
雲は落ちてはこない

彼を失いたくないなら
今すぐに追いかければいい

わかってはいるけど
あきらめることに慣れていたんだ

僕は道を譲り続けてきた
どんなに笑顔をつくってもどこへも行けなかった
彼に出会って変われたと思っていたのに


「JUMくん!!」

気付けば名前を呼んでいた
でも僕は
もうためらわない