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めぐ×水銀燈 - (2006/09/21 (木) 15:15:11) の編集履歴(バックアップ)



「つまんなぁい………」
 …学校にめぐが来ない。
 それ自体は、別に珍しいことでもなんでもない。
 体弱いから、よく風邪をひくし。多分、今日もそれだ。

「それでは水銀燈さん。 175Pを読んでください」
 ――――だけど最近の風邪は、性質が悪いって話だし。
 あの子は一人暮らしだし、こじらせていたら大変だ。
「水銀燈さん? 聞いてるんですか?」
 ……ああもう、勉強にも身が入らない。
 ただでさえ退屈な授業が、余計退屈になる。
 そうだ、適当にサボってめぐのところに行こう。

「すいませぇん、お腹が痛いんで、とっとと帰らせていただきまぁす」
 ちょっと苦しげなフリをしておけば、サボるのなんてちょろいものだ。
「ちょ、ちょっと水銀燈さん!?」
 …追求されるのも面倒だ。さっさと荷物をまとめて、駆けるように出ていった。


 所要時間およそ12分、めぐの家に到着。
 わざわざめぐに鍵を開けさせるのも面倒なので、自分で入ることにしよう。
 オーソドックスに、窓から入ろう。それが一番手っ取り早い。
 ……見れば、二階の窓が開いている。めぐの部屋だ。
 ちょうどいい、そこからお邪魔するとしよう。

「よいしょ…っと」
 塀の上に登り、そのままベランダへとジャンプ。
 とりあえず、靴は脱いでおいた。

「おはよう、水銀燈」
 窓の先には、満面の笑顔を浮かべるめぐが。
 …要するに、私がここから入ってくることを予想していた、というわけ?

「風邪ひいてるんだからぁ、ちゃぁんと寝ないとだめよぉ?」
「だって、こうしないと水銀燈が入ってこれないじゃない」
 ……めぐは、卑怯だ。そんなこと言われたら、注意する気なんてなくなってしまうに決まってる。

「それじゃあ、おかゆ作ってくるわぁ。体力つけないと、治るものもなおらないしぃ」
「…おなか減ってないから、いらない」
 やせ我慢じゃないのは見て取れたし、お腹が空いていないならわざわざ食べる必要もないだろう。

「……それより、水銀燈」
「なぁにぃ?」

「――――そばに、いて。 歌、歌って」
 …その声が、とても淋しそうだったから、
「めぐは甘えんぼうさんねぇ…」
 つよく、つよく抱きしめた。

 私の胸に、めぐの温もりが伝わってくる。
 少し、いつもより熱っぽい。
 …だけどそれが、暖かくて、いとおしくて。

 ……なんとなく、甘やかしてる自分がいる、というのはわかってたけど。
 ――――――――うん、やっぱり。
「めぐには、勝てないわぁ……」
 ただ純粋に、そう思った。
                                                                    /おしまい








 日曜日。今日も今日とていつものごとく、めぐの家に窓から侵入。
 …ちょっとしたおふざけでやってたことが、いつの間にか定番になってしまった。

 そのせいか、めぐが家にいる時はいつも窓が開いている。
 不用心なので、閉めさせるためにも私は毎日めぐの家に行かなくてはいけないのだ。
 ―――――それが建前だっていうのは、自分でもわかってるけど。

「ふぁぁ……おはよう、水銀燈」
 めぐは、テレビもラジオも寝ていた。…相変わらず不用心だ。
「おはよぉ、めぐ」
 ちなみに、時計の針は昼の1時。この子の二度寝癖にはもう慣れた。
 ……去年の修学旅行の時なんて、何度起こしたことか。
 まるで何処かのメガネ君の様な寝つきのよさを持っている、とその時学習した。


 どこの局だかわからないけど、こんな時間に天気予報をやっている。
 『明日はお日柄もよく、最高の天気です』との事。めぐが、ため息をこぼした。
「最高の天気、だって。 何もしたくなくなるわね」
「めぐぅ……それ、だめにんげんの発想よぉ…?」
 最近、『早く世界滅ばないかなー』という、多分めぐからの電波をよく受信する。
 …このままだと全身だめにんげん色に染まりそうで、少し怖い。



 聞きもしないラジオを付けて、つまんないテレビを見る。
 …最近の番組の、全体的な質の低下は否めない。
「つまんなぁい……ゲームとか、ないのぉ?」
「スペランカーがこの家で一番新しいゲームだけど、それでもやる?」
 …先生が相手じゃあ、どうしようもない。他には、『いっき』やら、『たけしの挑戦状』やら、『ビーストウォーズ』やら。
 全部クソゲーっていうのは、どういうこと?それより、インベーダーゲームの筐体なんて、いったい何処で?…正直、普通の家で見れるとは思ってなかった。

 この家で、めぐがどうやっていつも暇を潰しているのか、少し知りたい。
「そのうち、この空間にも慣れるわよ」
「ぜぇったい、慣れたくないわぁ…」
 というかそれは、人としての死を意味するんじゃなかろうか。
 死ぬ時は、私はせめて人としての尊厳を保ったまま死にたい。

「…でもね、水銀燈? わたし、時々思うの」
 めぐの思ったことというと、大抵がろくでもない。
「だらーっとした時間を過ごすのって、素敵なことだと思わない?」
 …今回も、やっぱりそうだったらしい。

「……あなたって、ほんとぉにだめなにんげんねぇ…」

 もう、今回ばかりはほんとに、呆れた。
 ……うん、だから。
「私が、そばにいてあげるわぁ…」
 そうでもしないと、危なっかしくてしょうがないもの。

 ――――――それが建前だっていうのは、多分、めぐにもわかってる。



め「ふぅー。」
銀「どうしたのぉ?ため息なんかついて。」
め「あっ水銀燈、あなたに謝らなければならないことがあるの。」
銀「なにそれ、なんかしたの?」
め「しつこく天使だなんていってごめんなさい。」
銀「ああ、ようやくわかってくれたのねぇ。私は普通の(ry」
め「天使じゃなくて神様だったの。」
銀「へ?」
め「あなたは魂を刈り取る神様、病魔と戦う私の魂を取りに来たの。」
銀「めぐ?」
め「そして私の魂は神の神殿に導かれ宴会にあけくれるの。」
銀「めぐ、あなた、酸素欠(ry」
め「嗚呼、ようやく私の戦いの日々が認められたのよ。」
銀「・・・・・・。」
め「召されるまでもてなしてくれるんでしょ?
  さ、こっちにいらして、採魂の女神様。」
銀「ちょ、待って、だから違うってば、アーッ。」






一緒に潜った布団の中で。

め 「水銀燈?起きてる?」
水 「…めぐぅ?そろそろ寝かせてくれてもいいじゃなぁい。」
め 「駄目。私が寝るまで待って。」
水 「もう夜中の3時よぉ?」
め 「…でも、眠れないものは眠れないの。」
水 「…あれだけお昼寝してれば当然よぉ。」
め 「…だって。」
水 「はぁ…もう寝るわよ。おやすみぃ…」
め 「∑あ、待って!話し相手がいなくちゃ寂しい…」
水 「すー…すー…」
め 「…本当に寝ちゃった。」
水 「すー…すー…」
め 「…寝ちゃった…」
水 「すー…」
め 「…くすん」
水 「∑………すー…」
め 「ひっく…一人ぼっち…うぇ…」
水 「∑わかったわよぉ!私が悪かったからぁ!」
め 「…やっぱり狸寝入り。」
水 「∑嘘泣き?図ったわね、めぐ…」
め 「水銀燈、私が泣いたら黙ってられないもんね。」
水 「…憎らしい子。いいわよ、本当に寝ちゃうんだからぁ…」
め 「…本当は寝たりしないでしょ?水銀燈優しいもの。」
水 「…やれやれ、ね。適わないわぁ。本当に。」

こんな風に私を振り回すけれど、やっぱり私が近くに居なきゃ、と思う。
それは私が優しいんじゃなくて、貴女のことが大切だから。
伝えられない気持ち。やっと寝息を立て始めた彼女の目尻に残る涙を、そっと小指で拭い取った。








銀「めぐチューチュー」
めぐ「………」
銀「(゚д゚)ウマー」
めぐ「……」
銀「ニヤニヤ」
めぐ「…なに?」
銀「ん?別にぃ」
めぐ「…私が残したヤクルトをチューチュー言いながら飲んでいるのに「別にぃ」って……ありえない」
銀「ありえないはありえなぁい」
めぐ「…水銀燈って、ほんとにほんとにジャンクなのね」
銀「…ジャンクなんて…ジャンクなんて言うもんじゃないわ…」
めぐ「(ムカッ)うるさい!!!水銀燈のバカ!!!くんくんのことバラすぞ!!!」
銀「(ムカッ) 犯すぞゴラァ!!!」
めぐ「(((;゚д゚)))ガクガクブルブル」
銀「………………ごめん、本音出ちゃった…」
めぐ「…もらしちゃった…佐原さん呼んでくるね…」








 目を閉じたまま、意識が覚醒するのを感じる。
 最後の記憶は何だっただろう。そうだ、たしか胸が苦しくなってナースコールしたんだっけ。
 ということは手術でもしたのかな。日付を確認しようとして目を開ける。
 そのまま体を起こそうとしたが、ベッドに顔を伏せている人間がいるのを見つけた。
 こんなきれいな銀髪は、私の知る限り一人しかいない。
「水銀燈……」
 起こさないよう、小さい声で彼女の名前を呼ぶ。
 髪の乱れ具合からしてよほど慌てていたのだろうことがわかる。
 そういえばいつからだろう。口癖のように言っていた「死にたい」の言葉が出なくなったのは。
「きっとあなたと出会ってからね」
 そっと体を起こし、その髪を撫でる。
 やがて小さく身じろぎした。目を覚ましたのだろうか。
「めぐぅ……、死なないでぇ……」
 どうやらただの寝言らしい。夢の中でも私のことを思ってくれているのだろうか。
 顔を覗けば涙の跡がのこっている。どうやら、本当に心配をかけてしまったらしい。
「ありがとう、水銀燈」
 かつて同じような状況で目を覚ました彼女に謝罪の言葉を言った私に対し「こういうときはありがとうと言うものよぉ」と教えてくれた天使。
「ん……めぐ? 起きたの?」
「おはよう、水銀燈」
 心配してくれてありがとう、という私に「親友だし当然よぉ」と笑顔で答えてくれた。
「早く良くなるといいわね」
 疲れているはずなのに、それを見せない綺麗な笑顔。
 この心臓がいつまでもつかはわからない。それでも、あともう少しだけ頑張ってみようと思った。








めぐ「ねえ水銀燈、キスしない?」
水銀燈「ぶふぅっ! や、ヤクルトが気管に……」
めぐ「大丈夫?」
水銀燈「め、めぐがいきなり変なこと言うからよぉ」
めぐ「仕方ないでしょ、キスしたくなっちゃったんだもん」
水銀燈「だから、何でよぉ」
めぐ「だって、ほら。天使さんとキスすれば、マウス・トゥ・マウスで私の
   命を吸い取ってくれるかな、って」
水銀燈「ば、ばっかみたぁい。そんなことあるわけないでしょぉ」
めぐ「そう? 残念、私はしたかったのに」
水銀燈「……私は天使なんかじゃないし、めぐの命なんか吸い取れないわよぉ。
    それに、よしんば吸い取れたとしても、絶対にごめんだわぁ」
めぐ「ふうん……まあ、そう言うと思ってた」
水銀燈「そうよ、貴女なんかそのうちコロッとイッちゃいそうなのに、何で
    そんな貴女の命なんか貰わなくちゃいけないのぉ?」
めぐ「わかった、じゃあいいわ。命は吸い取らなくていいから、キスしよう?」
水銀燈「な、何でキスはしようとするのよぉ!?」
めぐ「好きだから。大好きだから。水銀燈のことが大好きだから」
水銀燈「な……何恥ずかしいこと言ってるのよ、お馬鹿さぁん」
めぐ「……ダメ?」
水銀燈「~~~っ! わかったわよぉ! キスしてあげればいいんでしょぉ!?」
めぐ「そうそう、初めから素直になればいいの。大好きよ、水銀燈」
水銀燈「……めぐのお馬鹿さぁん、私も大好きよぉ」