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第一話 「言葉を失った少女、言葉になった少女」 - (2006/06/22 (木) 19:29:05) のソース

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第一話 「言葉を失った少女、言葉になった少女」<br></p>
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“麗“しく高貴な乙女、それに尽くす友達であり下僕の純粋な乙女。<br>

これは友達でありながら主従の関係の不思議な二人の物語。<br>

“麗“わしさを求める言葉を失った乙女は友であり下僕である乙女の<br>

助けをえながら生きていきます。<br>
そんな麗しく儚い思い出を暫しごらんあれ・・・。</p>
<br>
<p>何故私の前から大切な人が消えていくの?</p>
<p>ジュンの死後から一ヶ月ほど経ったある日。<br>
また蒼星石、翠星石の二人が亡くなり行われた葬式の日でもある。<br>

黒い服を纏い一人帰路を歩きながら真紅は考えていた。<br>
話によると蒼星石は通り魔の犯人であり翠星石を殺した後<br>

警察に囲まれる中自殺したらしい。</p>
<p>何故・・・?そんな悲しい事を・・・?</p>
<p>悲しい、悲しい、そればかりを思った。<br>
夕焼けが背中を照らす中背後から一人の女性が近づいてくる。</p>
<p>「真紅・・・。」<br>
「雛苺・・・。」</p>
<p>後ろを振り向かないまま答える。<br>
涙を見せたくないから。<br>
いつの間にか流れてた涙、私はそれを見せたくない。<br>
と言ってハンカチで涙を拭くとばれるので涙を流したままだ。</p>
<p>「一緒に・・・帰ろ・・?」</p>
<p>雛苺が問いかけてくる。<br>
親友であり、下僕である雛苺と帰るのに不満は無い。</p>
<p>「好きにしなさい。」</p>
<br>
<p>
私はそう言い再び歩き出す。雛苺もそれについてくる。<br>
お互い話しかけたりとかは無くずっと無言だった。<br>
そんな静寂を先に破ったのは雛苺だった。</p>
<p>「真紅は・・・悲しい・・?」</p>
<p>雛苺が泣きながら問いかける。</p>
<p>「ええ・・・凄く悲しいのだわ。」</p>
<p>本当に凄く悲しい、三人も友を失ったのだから。</p>
<p>「真紅は強いの・・・泣かないの・・。」</p>
<p>
そんな事はない。私はこうやって一人の時ずっと泣いている本当は弱い泣き虫。<br>

みんなには弱い姿を見られたくない強がり。<br>
今日もみんなの前で少し泣いたが無理してすぐ涙を拭いて堪えていた。。<br>

全然強くなんかない、“麗“わしくもない。</p>
<p>
「そんな事はないのだわ、私は強くなんかないのだわ。」<br>

「そんな事ないのー。真紅は慰めてくれたり優しくしてくれたりして<br>

 強いのー。みんなそう思ってるのー。」<br>
「・・・。」<br>
「だから・・いいのー!無理しなくていいのー!」<br>
「・・・?」<br>
「自分一人で・・悲しまなくていいのー。<br>
 真紅は一人で背負いすぎなのー。みんなと悲しみを分けたっていいのー。」</p>
<br>
<p>
・・・本当にこの子は一見子供っぽいが人の気持ちがよくわかる子だ。</p>
<p>「強いのは弱い所を見せるって事でもあるのー。<br>
 別に涙を見せたって恥ずかしくなんかないのー。」<br>
「・・・。」</p>
<p>雛苺の言葉が心に重く刺さる。<br>
弱い所を見せるのが・・・か。<br>
そんな事を考えながら初めて振り向く。</p>
<p>「・・・優しいのだわ。あなたは。」</p>
<p>
涙は拭かないまま、滅多に見せない涙を流したまま雛苺に近づく。</p>
<p>
「ふふ・・・たまにはあなたの隣で泣かさしてもらうのだわ。」<br>

「真紅・・。」</p>
<p>雛苺は堪えていた涙を再び流す。</p>
<p>「真紅・・・お互い頑張るの・・・。」<br>
「ええ・・・。強い人になりましょ。」</p>
<p>泣きながら二人は手を繋ぎ家へと帰って行った。<br>
少し気分が楽になった気がした帰り道。</p>
<p>「強く・・・“麗“しくなるのだわ。」<br>
「うんなのー。」<br></p>
<br>
<p>-翌朝<br>
休日なので少し長くベッドに入っている。<br>
と言っても二時間程度長くだが。<br>
そしてやがていつも通り目が覚める。<br>
そしていつも朝に言う一言。</p>
<p>ジュン、紅茶を入れるのだわ。</p>
<p>
生前、友達であり下僕だった彼、ジュンの名を呼びそう言う。<br>

そして無論、声は返ってこなく自分の声だけが響いていた。<br>

それでいつも現実を再認識していた。<br>
しかし</p>
<p>「・・・?」</p>
<p>何かがおかしいと思った。<br>
何がおかしいかをよーく頭で考えてみる。<br>
そしてやっと気付く。</p>
<p>いつも部屋に響く自分の声が聞こえてなかったのだ。</p>
<br>
<p>声を出そうとする。</p>
<p>どういう事!!?</p>
<p>しかし現実は非情である。<br>
口は開くが声は出なかった。<br>
いつも冷静な自分だがこんな時ばかりは冷静でいられなかった。<br>

すぐさま一階へと走り降りていく。</p>
<p>お母様!</p>
<p>しかし声は出ていない。<br>
母も何がなんだかわからないようだ。<br>
真紅はテーブルに近づき上に置いてあるメモ帳に<br>
ペンで事情を書いていく。<br>
そのメモを見て母は顔を青ざめすぐさま真紅の手をとり<br>
病院へと連れて行く。<br>
きっと治る筈・・・そう信じて病院へと向かった。<br>
もう見慣れてしまった有栖川大学病院へ。</p>
<br>
<p>結果から言おう。<br>
医者の宣告は絶望を伴った物だった。<br>
ストレス、精神的ショックによるものだと言う。<br>
ショックから立ち直れたとしても直る可能性は少ないと言う。<br>

帰り道、あまりの事に母はショックで泣き<br>
私は涙さえも出なかった。</p>
<p>なぜこんなに悲しい事ばかりが起きるの・・?</p>
<p>私は嘆きながら考えた。<br>
しかし考えても沸き起こるのは悲しみ、<br>
真理を見つけれる事もなく悲しみが積もるばかりだった。<br>

そして家へと帰ると私は自分の部屋へと入り<br>
すぐさまドアに鍵をかけ孤独にとなる。<br>
一人になりようやく涙が込み上がって来た。<br>
ひたすら泣いた、声は出ない。<br>
無音の悲しみ、それが一層涙の量を増やす。<br>
私は絶望にへと身を任せ朽ちるがままに身を任す。</p>
<p>-思わず手にカッターナイフを握りそれを手首に</p>
<p>向けようとしたその時電話が鳴った。<br>
はっとなりカッターナイフを机に置き<br>
電話をとる。</p>
<br>
<p>もしもし?<br>
「もしもし?真紅いるのー?」<br>
いるわよ。どうかしたの雛苺。<br>
「もしもし?誰かいるのー?」</p>
<p>そうだ、声が出ないんだったのだわ・・・。</p>
<p>「もしもしー?誰かいるのー?」</p>
<p>
答えたいけど何も言えない、これほど悲しい事があるとは思わなかった。</p>
<p>「大丈夫なのー!誰かいるのー!?」</p>
<p>返事がしない事に対して本気で雛苺が心配しだした。<br>
だが何も出来ない。</p>
<p>「待っててね!今いくのー!」</p>
<p>今なんて?<br>
冗談じゃない、こんな状態の私を見られたくない。<br>
慌てて止めようとするが無論声が出ないので無理だ。<br>
気付いた時には電話が切れ、遠くから叫び声が聞こえてきた。</p>
<br>
<p>-五分後<br>
雛苺が家に来た。<br>
いきなり「大丈夫なのー!」と言ってノックもせず<br>
玄関に入ってきて私の部屋に雛苺が来た。</p>
<p>「大丈夫なのー!?真紅!」</p>
<p>
雛苺がひどく心配した表情で部屋のベッドに座っている私に言ってくる。<br>

しかし私は何も答えられない。</p>
<p>「どうしたのー!?真紅ー!」</p>
<p>私に抱きつきながら涙目で聞いてくる。<br>
私は近くにあったメモ帳とペンをとると</p>
<p>事情を話すから少し待って、心配させて御免なさい</p>
<p>
と書いた。それを渡すと私は驚いて二階にへと上がってきた母を説得する。<br>

慌ててメモ帳に事情を書いて母に見せると母は少し安心したように溜息をついて<br>

一階へと降りていった。<br>
そしてここからが大変だ。<br>
見られたく、知られたくなかったものの仕方が無い。<br>
私はメモ帳に事情を書くと雛苺に見せた。</p>
<br>
<p>
メモ帳に書かれた事を見せると雛苺は青ざめ涙をこぼし始めた。<br>

私もつられたように涙が出る。<br>
私はメモ帳にこう書く。</p>
<p>“心配させてごめんなさい“</p>
<p>それを見ると雛苺は口を開く。</p>
<p>
「こちらこそごめんなのー。いきなり真紅が辛い状態なのに来てごめんなのー。」<br>

“もういいのだわ、しかしやはり声が出ないと悲しいわね・・。“</p>
<p>雛苺が答える度メモ帳に返事を書く。<br>
そして悲しみの余りこんな事を書いてしまう。</p>
<p>“私ジャンクね、“麗“しくもない、醜い女ね<br>
 生きてる価値、あるの・・?“</p>
<p>そう書くと雛苺は怒り出した。</p>
<p>
「真紅はジャンクなんかじゃないのー!醜くなんかないのー!」</p>
<p>
彼女がこんなに怒る姿は初めて見る。呆気にとられた私に<br>

雛苺が次々と言葉をかける。</p>
<p>
「価値がないものなんてないのー!真紅はヒナにとっても皆にとっても<br>

 大切な女の子なのー!」</p>
<br>
<p>
“けど・・・もう声も出ないし、あなた達に迷惑をかけるしか出来ないろくでないだわ<br>

 死んだほうがいいのよ。“<br>
「違う!」</p>
<p>雛苺が再び強く抱きしめる。</p>
<p>
「真紅は少し落ち込んでいるだけ・・・だからそう思っちゃうの・・・。<br>

 迷惑なんかないの・・・。真紅が居ないと寂しいの・・・。<br>

 真紅だってわかるよね・・ジュンや蒼星石、翠星石が居なくなって皆悲しいの。<br>

 真紅だって同じなの・・・。だから・・・居なくならないで・・・。」<br>

“・・・本当に必要とされてるの?“<br>
「当たり前なのー!真紅は居なくちゃならない存在なのー!」</p>
<p>・・・馬鹿なのだわ、私。<br>
声が出なくなっただけでも心配をかけるのに<br>
この子にさらに悲しい思いをさせてしまった。</p>
<p>“・・・ごめんね。こんなことを言って。“</p>
<p>自分の言った事を反省しメモ帳にそう書く。</p>
<p>「いいの・・・だから・・・もう言わないで・・。」</p>
<p>雛苺が号泣して抱きつきながら喋る。</p>
<br>
<p>
“でも・・・どうしよう?これから皆に迷惑をかけるから大変なのだわ。“</p>
<p>雛苺が涙を拭いて精一杯の声を上げてこう言う。</p>
<p>
「ヒナが真紅の声になる!友達として!下僕として真紅の声になるのー!」</p>
<p>真紅は雛苺の目を見た。<br>
真っ直ぐで強い意志を持った目だ。<br>
この子は本気で言ってるのだ。<br>
私はメモ帳にただ一言書くと雛苺を再び強く抱きしめた。</p>
<p>“ありがとう“</p>
<br>
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