<p>とある雨降りの午後の日より。<br> 「紅茶でも飲まない?」<br> 真紅がその部屋にいたジュン・蒼星石・翠星石へと尋ねる。<br> 「いいね。」<br> 最初に返事をした蒼の子にのっかるように残りの二人も返事をした。<br> <br> 「そういえば。」<br> 真紅が紅茶を入れている間、蒼星石が何かを思い出したかのように鞄から何かを取り出す。<br> 「食べる?」<br> そういって取り出したのはキャンディの袋。<br> 「食べるですぅ。」「もらうよ。」<br> それから少し、真紅が戻ってくるまで会話も無く、外から聞こえる雨の音が静かに部屋へと響く<br> <br> 「お待ちどうさま。」<br> 紅茶を5つ乗せ部屋の奥から出てくる真紅。<br> はて?とジュンは尋ねた。<br> 「なんで5つなんだ?」</p> <p>「あの子、帰ってきたでしょう?」<br> あの子、というのは<br> 「あら皆そろってるじゃない。二人ほど欠けてるようだけどぉ。」<br> 「やあ水銀燈」<br> まぁ水銀燈なわけだが…。<br> 「貴女も紅茶、どう?」<br> 「もらうわよ。」<br> 即刻うなずくと、蒼星石の隣へと腰かけた。<br> 「ところで何食べてるの?」<br> 先ほどからキャンディを舐めている蒼星石へ向かって尋ねた。<br> 袋を軽く揺らしながら答える。<br> 「これ。」<br> 「ふーん。…ねえ、私にも頂戴。」<br> その時まではその言葉の意味を誰も気にしなかった。<br> 蒼星石は水銀燈の意味をちゃんと把握している上<br> 残りの3人は普通に袋から飴を取り出すものだと思っていたからだった。<br> <br> <br> チュ。<br> <br> …口付けに飴玉を口移し。一瞬部屋の空気が凍った。<br> 「ふふ。ありがとう。」<br> 「気にしないで。」<br> 最も二人のところは普通なわけだが、翠星石は顔を真っ赤にし、ジュンはそれを見て見ぬふりをした。<br> 真紅にいたっては<br> 「な、何をしてるのよ!」<br> とかなりご乱心。<br> 「あーら?貴女もしてほしいのぉ?」<br> 茶目っ気たっぷりの発言にも<br> 「そんなわけないでしょう!」<br> と返す。<br> 「私にとっては普通だしぃ…蒼星石もこうすることをわかってたんでしょう?」<br> 「え?・・・うん。まぁね。」<br> 「ならいいじゃない。」<br> そこから真紅が落ち着くまではかなりの時間を要したという。<br> <br> ・・・その様子を見ながらジュンがぽつりとつぶやいた。<br> 「この二人は似合うなぁ。」<br> その声を聞き取ったものは誰もいない。<br> <br> 雨降りの午後には多少似合わない光景。<br> たまにはこんなことがあってもいいだろう。たまには・・ね。</p> <p> </p> <p> </p> <hr> <p> </p> <p><br> 「……はぁ………」<br> <br> これで何度目の溜め息だろうか。<br> ここのところ、溜め息が多くなった様な気がする。<br> ――恐らく、彼女の事だろう。<br> 理由は分かっている。<br> だが決して、彼女が悪い訳ではない。<br> 自分が彼女の事を、一方的に思っているだけで。<br> ――同じ性別、云わば同性愛なのだけれど。<br> <br> 「……私はぁ…変態、なのかしらねぇ?」<br> <br> 呟きは、いつの間にか降っていた雨音に、書き消された。<br> 自分は、雨を遮る術を持っていない。<br> 段々と強くなっていく雨に、ただ打たれていた。<br> だが、突然雨に打たれる感覚が無くなった。<br> <br> 「何やってるの?水銀燈」<br> 「……蒼星石…?」 <br> <br> 後ろを振り向くと、先程まで自分が呟いていた彼女が、立っていた。<br> 持っていた傘で、雨を遮ってくれたらしい。<br> <br> 「風邪、ひいちゃうよ?」<br> 「……別に、ひいたって良いわよぉ…。死ぬわけじゃ無いんだしぃ……」<br> 「よ、良くないよ!それに、風邪は万病の元って言うよ……?」<br> <br> 確かに、そんな言葉を聞いた事がある様な、無い様な。<br> まぁ、ちょっとだけれど、寒気がする様な気がする。<br> <br> 「……――っくしゅん…!」<br> 「――ほら、早く帰ろう?家まで送っていくから……ね?」<br> 「……はいはい……」<br> <br> くしゃみして良かった、と、思ったのは…内緒よぉ?</p> <p> </p> <p> </p> <hr> <p> </p> <p><br> 銀「蒼星石ぃ…これ食べてみなさぁい」<br> 蒼「…チョコ?君が作ったのかい?」<br> 銀「バレンタインも近いでしょう?試しに作ってみたのぉ」<br> 蒼「…僕は毒味?」<br> 銀「味見って言いなさぁい」<br> 蒼「…うん、食べれなくはないかな…」<br> 銀「…言っとくけど義理だからねっ」<br> 蒼「なぜ照れる?ってゆーか義理…?」<br> 銀「今度は当日よぉ!覚悟してなさぁい!」<br> 蒼「…え?」<br> <br> 銀様は蒼い子に恋したようです<br> <br> 「完」</p>