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ドールは電気うなぎの夢を見るか? - (2007/06/11 (月) 23:19:00) のソース

<p>「ねぇジュン」<br>
「なんでしょうか? 真紅お嬢様」<br>
「いつか貴方が動かなくなる日は来るのだわ?」<br>
「……我々ロボットには明確な人間で言う死と言う物はありません」<br>
「……続けて頂戴」<br>
「もし死と言う物があるとすれば、壊れて動かなくなった時なのかもしれません<br>
もしくは、主が不必要と認識された時なのかもしれません」<br>
「壊れたら直せばいいのだわ<br>
主である私は、貴方が必要なのだわ」<br>
「ありがとうございます。しかし、何時しか終わりは来るのです。<br>
人であれ動物であれ……そう私の様なロボットであれ」<br>
「………ロボットに生命はないのだわ」<br>
「そうですね。私の様なロボットには生命はありません……<br>
あるのは電子回路にエネルギー供給装置。そして記憶チップ」<br>
「身体が壊れたら記憶チップだけを移せばいいのだわ」<br>
「そうですね。ですがね? お嬢様」<br>
「なんなのだわ?」<br>
「壊れた事にはかわりないのですよ」<br>
「は?」<br>
「記憶チップは所詮記憶なのです……お嬢様と共に過ごした記憶はあるでしょう……<br>
しかし、思い出は無いのです。記憶と思い出。それは似て似ないのです」<br>
「わからないのだわ」<br>
「……私にもわかりません。しかし記憶と思い出は、別のモノなのです」<br>
「そう……覚えておくのだわ」<br>
「はい」</p>
<hr width="100%" size="2">
<p>「ねぇジュン」<br>
「なんでしょうか? 真紅お嬢様」<br>
「貴方は夢を見るのだわ?」<br>
「……いえ、見る事はありません」<br>
「なら、貴方は何故毎晩魘されているのだわ?」<br>
「…………」<br>
「人間で言う悪夢を見ているのだわ? 違うのだわ?」<br>
「……真紅お嬢様。私は元々軍用兵器に開発され実際に戦争に参加したロボットです」<br>
「そんなの知っているのだわ」<br>
「その時に殺した同胞とその殺した感触が、永遠とリピートされるのです」<br>
「感触?」<br>
「実際、私に感触と言う機能はありません。ですが……その感触があるのです」<br>
「ふぅん……で、永遠とリピートされる訳なのだわ?」<br>
「はい。こうやって真紅お嬢様とお話している時ですら、そのデータがリピートされているのです」<br>
「なら、なんで魘されていないのだわ?」<br>
「……こうやって真紅お嬢様とお話しているからだと推測します」<br>
「そう……おかわりの紅茶を淹れて頂戴」<br>
「了解いたしました」</p>
<hr width="100%" size="2">
<p>「ジュン。ロボットに魂はあるのだわ?」<br>
「真紅お嬢様。宿題がめんどくさくなったからと言って私に話を振られても」<br>
「いいから答えるのだわ。宿題なんて何時でも出来るのだわ」<br>
「多分、存在すると思います」<br>
「機械なのに? 人間でも動物でもないのに?」<br>
「……機械だからこそ。人とも動物とも同じ魂があるのかもしれません」<br>
「無機物で作られているのに?」<br>
「……東方の国日本には、古来より九十九神と言う伝奇が残されております」<br>
「ふぅん……一体なんなのだわ? ツクモガミと言うのは?」<br>
「長き年月を経た道具達に魂が宿り、生き物が如く動き回るのです」<br>
「非現実的なのだわ」<br>
「そうかもしれません。ですが、それは私にも当てはまるのです」<br>
「別に、ジュンはそう長い年月を経ていないのだわ」<br>
「ですが、こうやって真紅お嬢様と話をしたり日々を生きております」<br>
「私と話すのは、プログラムによる返答なのだわ。それに日々を生きていると言うよりも動いているだけなのだわ」<br>
「………そうかもしれません。ですが………」<br>
「ですが? なんなのだわ?」<br>
「……いえ、なんでもありません。それより真紅お嬢様。紅茶のおかわりはいかがいたしますか?」<br>
「もらうのだわ」</p>
<p> </p>