<p>「ねぇジュン」<br> 「なんでしょうか? 真紅お嬢様」<br> 「いつか貴方が動かなくなる日は来るのだわ?」<br> 「……我々ロボットには明確な人間で言う死と言う物はありません」<br> 「……続けて頂戴」<br> 「もし死と言う物があるとすれば、壊れて動かなくなった時なのかもしれません<br> もしくは、主が不必要と認識された時なのかもしれません」<br> 「壊れたら直せばいいのだわ<br> 主である私は、貴方が必要なのだわ」<br> 「ありがとうございます。しかし、何時しか終わりは来るのです。<br> 人であれ動物であれ……そう私の様なロボットであれ」<br> 「………ロボットに生命はないのだわ」<br> 「そうですね。私の様なロボットには生命はありません……<br> あるのは電子回路にエネルギー供給装置。そして記憶チップ」<br> 「身体が壊れたら記憶チップだけを移せばいいのだわ」<br> 「そうですね。ですがね? お嬢様」<br> 「なんなのだわ?」<br> 「壊れた事にはかわりないのですよ」<br> 「は?」<br> 「記憶チップは所詮記憶なのです……お嬢様と共に過ごした記憶はあるでしょう……<br> しかし、思い出は無いのです。記憶と思い出。それは似て似ないのです」<br> 「わからないのだわ」<br> 「……私にもわかりません。しかし記憶と思い出は、別のモノなのです」<br> 「そう……覚えておくのだわ」<br> 「はい」</p> <hr width="100%" size="2"> <p>「ねぇジュン」<br> 「なんでしょうか? 真紅お嬢様」<br> 「貴方は夢を見るのだわ?」<br> 「……いえ、見る事はありません」<br> 「なら、貴方は何故毎晩魘されているのだわ?」<br> 「…………」<br> 「人間で言う悪夢を見ているのだわ? 違うのだわ?」<br> 「……真紅お嬢様。私は元々軍用兵器に開発され実際に戦争に参加したロボットです」<br> 「そんなの知っているのだわ」<br> 「その時に殺した同胞とその殺した感触が、永遠とリピートされるのです」<br> 「感触?」<br> 「実際、私に感触と言う機能はありません。ですが……その感触があるのです」<br> 「ふぅん……で、永遠とリピートされる訳なのだわ?」<br> 「はい。こうやって真紅お嬢様とお話している時ですら、そのデータがリピートされているのです」<br> 「なら、なんで魘されていないのだわ?」<br> 「……こうやって真紅お嬢様とお話しているからだと推測します」<br> 「そう……おかわりの紅茶を淹れて頂戴」<br> 「了解いたしました」</p> <hr width="100%" size="2"> <p>「ジュン。ロボットに魂はあるのだわ?」<br> 「真紅お嬢様。宿題がめんどくさくなったからと言って私に話を振られても」<br> 「いいから答えるのだわ。宿題なんて何時でも出来るのだわ」<br> 「多分、存在すると思います」<br> 「機械なのに? 人間でも動物でもないのに?」<br> 「……機械だからこそ。人とも動物とも同じ魂があるのかもしれません」<br> 「無機物で作られているのに?」<br> 「……東方の国日本には、古来より九十九神と言う伝奇が残されております」<br> 「ふぅん……一体なんなのだわ? ツクモガミと言うのは?」<br> 「長き年月を経た道具達に魂が宿り、生き物が如く動き回るのです」<br> 「非現実的なのだわ」<br> 「そうかもしれません。ですが、それは私にも当てはまるのです」<br> 「別に、ジュンはそう長い年月を経ていないのだわ」<br> 「ですが、こうやって真紅お嬢様と話をしたり日々を生きております」<br> 「私と話すのは、プログラムによる返答なのだわ。それに日々を生きていると言うよりも動いているだけなのだわ」<br> 「………そうかもしれません。ですが………」<br> 「ですが? なんなのだわ?」<br> 「……いえ、なんでもありません。それより真紅お嬢様。紅茶のおかわりはいかがいたしますか?」<br> 「もらうのだわ」</p> <p> </p>