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【恋愛百景】Passione 第一話 - (2007/06/23 (土) 19:31:05) のソース

<p>【恋愛百景】Passione<br>
第一話</p>
<p> </p>
<p>別に情熱的じゃあない、擦れ違ったままのお話</p>
<p><br>
「蒼星石先生ーーーーッ! 何をしてるんですかーーーーッ! 脱走はともかく、理由を言って下さーーーーいッ!」<br>
失礼、僕は桃種出版の社員です<br>
えー、さっきの発言の通り…作家の蒼星石先生が『また』仕事場から脱走しようとしたのを見つけた訳で…<br>
最早日程になっていると思いつつつかまえに行く訳です<br>
「担当君、たまには見逃してよ~」<br>
「駄目です」<br>
「なんで?」<br>
「先生は毎度『波紋の修行』と称して遊んでいるのを僕が知らない訳ないでしょうが」<br>
「つまらないの…」<br>
「…はいはいわかりましたよ…じゃ、今日の原稿を仕上げたら遊びに出掛けても良いですよ…」<br>
…我ながら甘いな…こりゃ…<br>
これじゃあ担当失格だね。うん<br>
「了解了解」<br>
「早くして下さいよ。編集長がカンカンですから」<br>
「うげっ…分かったよ…」<br>
そう言うとすぐに机に向かう<br>
ま、この調子ならすぐに終わるや<br>
あの人、その気になると仕事が異様に早いからな</p>
<p><br>
「終わった~」<br>
「はい」<br>
全く…その気になれば二時間弱で終わるってのに…<br>
「ねぇ…担当君」<br>
「はい?」<br>
「どうして僕が作家になったか…知ってる?」<br>
作家になった理由?<br>
いや全く知らないな<br>
「それはね…」<br>
そう言いながら先生は自分の過去を語り始めた<br>
姉との決別、祖父の死など…<br>
「…つまり、人間ってとてもあっけない部分があるんだ。だから僕はそれを皆に伝えたい。だから作家になったんだよ」<br>
「そうなんですか。何だか意外ですね」<br>
「何処が?」<br>
「いえ、先生って意外とまともな理由で作家になったんだな…と」<br>
「そう?」<br>
「ええ、先生は僕からみれば単なる怠け者にしか見えませんからね」<br>
「う…」<br>
「でも、芯が強くて…たまにひん曲がってる所もあるけど、自分自身に正直な人だと思いますよ」<br>
これは事実だけどね<br>
「確かにね。僕はいつも君に迷惑かけてるもん…でも、そう思っていてくれると嬉しいな」<br>
「ふふ…ありがとうございます」<br>
「でも…君と僕って色んな意味でそっくりかな?」<br>
「何でですか?」<br>
「だって、女の子みたいなんだもん」<br>
「いや、確かに女顔って言われますけど…」<br>
「よく間違われるでしょ」<br>
…図星…<br>
確かに僕は女顔さ<br>
「僕もよく男の人に間違えられてたし」<br>
「…笑えない…」<br>
「本当だね」<br>
クスクスって先生が笑う<br>
うん、確かにそう言う意味では似てるかも<br>
「あ、もうこんな時間だ。夕飯、食べるよね」<br>
「ご馳走になります」<br>
「待っててね」<br>
…ちょっぴり怠け癖がある男の子っぽい作家と、色んな意味で真面目な女の子みたいな担当とのお話って題材、どっかの作家が喜んで買うだろうな</p>
<p> </p>
<p><br>
第一話・完</p>