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7月のなかごろ - (2007/09/03 (月) 01:37:45) のソース

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<div class="mes">『保守かしら』<br>
 2007年7月9日 はれ<br>
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今日もおねえちゃんはアトリエに篭りっきり。<br>
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なんとなく、地下のお父様の第二アトリエに行って、色々探してきたかしら。<br>
昨日の話ですごくおどろいたからかも…。<br>
前に槐さんから、大型の機材のことは聞いたけれど、それらの機材の並びをこえて、地下室の奥のほうを色々探してみたのよ。<br>
くもの巣とほこりがいっぱいで、ちょっと困ったけれど、もちろんへこたれなかったわ!<br>
人形さんの目(ヒビ入り)とか、怖かったかしら。<br>
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収かくだったのは、おねえちゃんの小さいときの肖像画と、紙粘土。<br>
おねえちゃんの肖像画を描いたのはお父様だったみたい。<br>
前の夜会のときのドレスは、この時からのイメージだったのね。<br>
やっぱり、おねえちゃんもお父様が大好きなのかしら。<br>
絵の中のおねえちゃんは、黒いドレスに黒い羽を生やして、まるで天使さんかしら。</div>
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紙粘土のほうも、きっとお父様の作ったもの。<br>
人形を作るのに紙粘土は使わないだろうから、簡単にイメージをまとめる<br>
ときに使ってたのかしら?<br>
いっぱい作り置きしてたみたいで、地下の一番奥のでっかい箱の中に小分け<br>
してたくさん入ってたかしら。ぶあついビニールにくるまれて、ちょっと変わった<br>
留め具置かれてた。たくさんくぼみがある長四角で、お父様のこだわりだったのかしら?<br>
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居間に戻ってから、紙粘土を作ってカナも人形を作ったかしら。<br>
(我ながら良いできばえかしらっ)って思ってたけれど、ヤクルト飲みに戻ってきた おねえちゃんに見せたら<br>
「本当によく出来てるわ、そのゾウさん」<br>
だって。<br>
「猫かしらー!?」ショックでさけんじゃった。<br>
「あ、ああ…そうそう猫よね、よくできてるわぁ」<br>
おねえちゃん顔が引きつってた。<br>
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おねえちゃんに引きつった笑顔でフォローしてもらえるのはカナぐらいのものかしらっ。<br>
…うれしくないわ…ピチカート…。</div>
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『保守かしら』<br>
2007年7月12日 はれとゆうだち<br>
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シシカバブとドルネケバブをばらしーちゃんと食べくらべしてたら、蒼星石が来たかしら。<br>
「ヴァイオリンのコンクールに出ることになって、めんどいかしらー。」<br>
って言ったら「僕も花のコンクール出品がめんどうだよー。」って言ってた。<br>
「どうせぽりっと地方予選敗退かしらー」<br>
「どうせ育てたのは姉さんで、僕は切っただけなんだよー」<br>
 二人して机にびろ~んと広がって、向き合って、めんどうかしらー、めんどうだよーって<br>
言いあってたら、ばらしーちゃんがあわあわしながら言ったかしら。<br>
「シ、シシカバブを食べましょー」<br>
顔が赤くなってて、とってもかわいかったかしら。 <br>
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 雨が止んで、蒼星石を中庭まで見送ったの。<br>
「なんだか、もっとぎこちなくなるかと思ったけれど、そうでもないね」<br>
廊下を歩きながら、蒼星石がぽつりとつぶやいたかしら。<br>
「カナはカナで、蒼星石は蒼星石かしら」<br>
蒼星石は遠くを見てた。<br>
「君は気にならないの、急に姉妹が増えて?」<br>
「色々考えたけれど、お昼寝して、一息ついたら、カナの大切な人もカナを大切に思って くれる人も減ってないなぁって。それならゆっくり考えればいいのかしら」<br>
「急ぐ必要はない、か」<br>
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中庭はすでにかんかん照りの太陽の力で、陽炎が立ち上ってた。<br>
コンクールで蒼星石の好きな曲を弾くわよ、って言ったら「じゃあ24の奇想曲で」だって。<br>
24の奇想曲はとてもじゃないけれど弾けない、とっても難しい曲。<br>
「よりによってかしらー」<br>
陽炎がゆらゆら揺れるなかで、蒼星石がいじわるそうに笑ったかしら。<br>
「冗談だよ」<br>
あたりは日ざしで真っ白で、ぼやけた風景の中に、つややかな蒼星石の笑顔だけがくっきり。<br>
なんだかどきどきしちゃった。</div>