「ずっと傍らに…激闘編 第七章～巴side～」の編集履歴（バックアップ）一覧に戻る
<p>蒼星石の携帯に桜田君が病院に運ばれたっていうメールは<br>
私の携帯にも送られてきていた。<br>
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私たちはお互い顔を見合わせた。<br>
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蒼「バスだ」<br>
巴「うん」<br>
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それぞれ家に連絡して、病院へ直行することにした。<br>
校門から少し離れた所にあるバス停へ猛ダッシュで向かう。<br>
ちょうどバスが出発しそうだったので、大きく両手を振って<br>
「待ってください」とサインを出すと、バスはそのまま停まってくれた。<br>
運転手の人に感謝。<br>
そして息を切らせつつ飛び乗った。<br>
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～～～～～<br>
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バスに乗ってからは私と蒼星石はお互い何も話さなかった。<br>
心の整理だけで精一杯だった。<br>
──桜田君、あの３人に殴られて運ばれたのかな…<br>
もしかして、私たちがあの３人を負かしたせい？<br>
それだけはイヤ…<br>
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それにしても、あの病院ってこんなに遠かったっけ…<br>
まだ最寄のバス停にも着かないなんて…<br>
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ア『次は～××病院下～』<br>
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のんびりとした喋りの自動アナウンスに、私は苛立ちを覚えつつ降車ボタンを押した。<br>
バス停に着くや否や、私たちは急いで降りてその病院まで必死で走った。<br>
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…バス停からは異常に遠く感じられた。<br>
もっと病院に近いところにバス停を置いてもいいでしょ？と思うくらいに…<br>
しかも、どれだけ走っても病院の入り口に辿り着けない──<br>
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息も絶え絶えに、ようやく病院の入り口に入ろうというあたりまで走ったころ、<br>
私たち２人はその玄関で立って待っている翠星石を見つけた。<br>
ロータリーを横切り急いで駆け寄ると、翠星石は痛そうに左頬をさすりながら<br>
「こっちです」と言って病院の中へサッと入っていった。<br>
私たちも急いで入る。<br>
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～～～～～<br>
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エレベーターの前まで早歩きで進み、そこからエレベーターで４階へ。<br>
着いた先は個室の病室…それも、集中治療室。<br>
窓の向こうに見える桜田君は、向こうを向いて眠っていた。<br>
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蒼「眠ってるねみたいだね…」<br>
巴「…そうね。ちょっと安心したかも」<br>
翠「…」<br>
蒼「翠星石…どうしたの？その左のほっぺた…痛そうにして…」<br>
翠「お母様に食らったです。これ以上の事はもう聞くなです」<br>
蒼「…」<br>
巴「あ、そうそう、のりさんとかはどうしてるの？」<br>
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今更ながら気づいたけど、私たちだけしか周りにいないのは変だ。<br>
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翠「この階の休憩所です。こっちですよ」<br>
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翠星石はそう言って私たちを案内した。<br>
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だんだん見えてくる座席群。<br>
背もたれの無いソファの集まり…<br>
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そのうちの１つのソファに、水銀燈がうな垂れて座っている。<br>
その後ろのソファに蒼星石たちの御両親が座っていて、<br>
水銀燈の隣に座っていたのりさんは涙をハンカチで拭っていた。<br>
まるで桜田君への処置が手遅れで行き詰ってるかのような嫌な雰囲気。<br>
やっぱり、さっきのは眠ってるんじゃなくて──<br>
不意に、動悸と軽い目眩が私を襲った。<br>
…ひとまずそこの席で休もう…<br>
……。<br>
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蒼「ジュン君の治療は上手くいったの？」<br>
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私の隣に座った蒼星石が、その隣に座っている翠星石に声を低くして訊いた。<br>
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翠「…まだ熱は引き切ってませんが…少しマシになったです。<br>
最初は意識が無かったんですよ？」<br>
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えっ…あ…殴られたんじゃないんだ…<br>
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銀「今は注射打たれてマシにはなってるはずなんだけど…」<br>
母「まぁ、命に別状はないって話なんだけどね」<br>
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私は、今まで縛り付けていた何かから解放された。<br>
でも、もしかすると…と思ったので思い切って聞いてみた。<br>
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巴「殴られた形跡はひとつも無かったの？」<br>
翠「は？」<br>
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当然の如く、翠星石は意味が判らないという顔で口をあんぐりと開けた。<br>
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蒼「例えば…リンチされた跡だとか」<br>
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蒼星石も急に興味が湧いたように翠星石に訊いた。<br>
もしかすると同じことを考えていたのかもしれない。<br>
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翠「そんな事は無かったですよ。翠星石はこの目でずっと見てたんですから」<br>
蒼「え？見てるだけ？」<br>
翠「そうです。あいつらがずっと罵声を発してたところを…」<br>
蒼「何で追い払おうとしなかったのさ！？」<br>
翠「だって…３対１じゃ勝ち目ないですよ？この馬鹿ちん！」<br>
銀「コラ！静かにしなさい。ここが病院ってこと…忘れてるんじゃないのっ？」<br>
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冷静に話を聞こうと思ったけど、先に蒼星石の方が熱くなってしまった。<br>
向かいに座っていた水銀燈は口論を始めた２人をイライラとした口調で叱った。<br>
その目からは涙がこぼれていた。<br>
水銀燈が泣いてるなんて…<br>
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そういや、桜田君が苛められてから、あの２人の間にすきま風が吹いてる気がする。<br>
お互いを傷つけ合ってるようにさえ見えてくる。<br>
変だよ…こんな２人…<br>
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…そうやって見ていると水銀燈は私に俯き気味にボソッと言った。<br>
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銀「巴…翠星石から聞いた？」<br>
巴「え？」<br>
銀「倒れたのは…高熱のせいだって…ただの風邪かどうかは聞かされてないけど」<br>
巴「…熱？」<br>
母「40度も出たら…ねぇ」<br>
の「もっと…早くに気づいていたら…こんな事には…」<br>
銀「のりのせいじゃないわ。だって朝は元気だったんでしょ？ジュンくん…」<br>
の「…うぅっ…」<br>
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そうよ。いきなり倒れるなんて私も驚いたし…<br>
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…もらい泣きしそうになりつつ、必死にこらえる私。<br>
桜田君…ほんとに大丈夫かなぁ…<br>
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～～～～～～<br>
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20時半。外ももうすっかり真っ暗だ。<br>
明日学校だからということで、蒼星石たちのお母さんだけが病院に残り、<br>
私たちは家に帰ることとなった。<br>
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蒼「はぁ…僕もちゃんとメール送っておけば…」<br>
巴「え？何の事？」<br>
蒼「…あ、いや…何でもない…」<br>
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ボソボソっと呟く蒼星石。<br>
私はそれをそこまで気に留めることもなく、病院の玄関から夜の空をぼんやり眺めていた。<br>
明日には元気になってくれるかなぁ…<br>
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？「あ、柿崎さん。今日も面会ですか？」<br>
？「えぇ、そうなんですよ。めぐがいつもお世話になっております…」<br>
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後ろから聞こえてくるやりとりにハッとして、思わずその声のする方向へ振り返った。<br>
ピシッとスーツを着こなした男の人と受付の人が話している。<br>
柿崎…めぐ……<br>
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巴「あっ」<br>
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私は一切の躊躇もなく、そのおじさんの元へ走り出していた。<br>
幼稚園の頃いつも一緒だったあの子…<br>
最近メールの返信が来なくて心配したあの子…<br>
もしかして…<br>
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蒼「ちょっと！どこ行くの？」<br>
翠「巴…」<br>
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後ろから聞こえる声にも反応せずに──<br>
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巴「すみません！」<br>
父「？」<br>
巴「柿崎めぐの友達なんですけど…」<br>
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ちょっと驚いた顔で私を見つめるめぐのお父さん。<br>
やがてその顔から笑みがこぼれた。<br>
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父「あぁ！巴ちゃん？…巴ちゃんだよな？」<br>
巴「そうです」<br>
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中学に入ってからは全然会ってないのに、覚えてくれてたんだ…<br>
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父「おぉ…うちのめぐがご迷惑をお掛けして──」<br>
巴「いえいえ、そんな…でも、どうして今こちらに…？」<br>
父「…」<br>
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めぐのお父さんからフッと笑みが消え、険しい顔になった。<br>
最終確認のために聞こうというのは浅はかな考えだったのかもしれない。<br>
私は人の日記帳を見てしまったかのような罪悪感に囚われた。<br>
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巴「すみません…聞いてはいけないものを──」<br>
父「いやいや、いいんだ。ちょっとあってな…」<br>
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めぐのお父さんは少し言い辛そうにして口を開いた。<br>
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父「めぐは…入院してるんだ──」</p>
