<p>とある街の賑やかなメインストリート、その片隅に実に古ぼけたお店がありました。<br> お店の名前は『薔薇華園』<br> <br> 第3話【呼ばれてないけどこんにちは】後編<br> <br> <br> ソレは店に入ってすぐに気がついた。<br> 昨日と様子が違っている。<br> 調べてみると小物の配置が変わっていたり、椅子が動かしてあったり。<br> 最大の異変は冷蔵庫だった。<br> 日中はこの店で過ごしているので、それなりの食料をストックしている。<br> <br> ………どんな泥棒だよ。<br> <br> 中は綺麗なまでに空っぽだ。<br> 万が一の事を考えて西洋鎧の剣を拝借して、店内をくまなく探しては見たけど誰もいない。<br> 何か馬鹿らしくなって椅子に座り込んだ時だった。 <br> <br> <br> <br> 『貴方がこのお店のオーナー?』<br> <br> いきなり背後から声をかけられて驚いた拍子に椅子から落ちてしまった。<br> 痛む尻をさすりながら見上げると…何人もの女の子達が僕を見ている。<br> <br> 天井に逆さに立って。<br> <br> 「ぎぃゃああああああ!!!!!」<br> <br> 体からすうっと力が抜けて意識が遠のく…<br> <br> <br> <br> 『全くあれしきの事で気絶するなんて肝っ玉はマイクロサイズですぅ。』<br> 『そうね、もう少ししっかりしていると思ってたわ。』<br> 『でもやりすぎな気もするかしら…』<br> <br> 誰か遠くでごちゃごちゃ喋ってるな…<br> 目覚める時のぼやっとした感覚の中、額が冷たくて気持ちいいのに気がついた。<br> ゆっくりと目を開けると心配そうにのぞき込んでいる女の子達。<br> 金髪の巻き髪で大きなリボンの幼そうな子と、ショートカットで凛々しい女の子が額の濡れタオルを交換している。 <br> <br> <br> <br> 「う…あ…あれ?君達は…?」<br> 『さっきは驚かしてごめんね。キミは気を失って倒れてたんだよ。』<br> 『お化けがぁ~ってうなされてたの。でももう大丈夫なのよ。』<br> <br> 取り敢えず2人に礼を言って身を起こそうとしたら、突然上から人が降ってきた。<br> <br> 『ふぅん。色白で華奢だけどぉ、顔は可愛いわぁ。ちょっと好みかもぉ。』<br> 「うわぁぁあ!?だ、誰だよ!?」<br> <br> 馬乗りにされて逃げ出そうともがくと、左右から2人がかりで押さえつけられる。<br> <br> 『…捕獲完了…!』<br> 『観念なさいな。暴れたら茨で縛り上げますわよ?』<br> <br> 赤い少女が近寄って僕を見つめ、死刑執行命令をするかのごとく言い放った。<br> <br> 『もう1度聞くわ。貴方がこのお店のオーナーなの?』<br> 「ああ、そうだ。お前達こそ何者なんだよ?」<br> <br> こうして穏やかといえない雰囲気の中、僕は彼女達と出会ったんだ。<br> <br> つづく</p>