<p>「もうお昼ですわね…、お腹がすきましたわ…」グギギギギュルラリ~ホ~<br /><br /> 「…!!この芳しき香りは……!!」<br /><br /> 「良い感じですぅ、そろそろ引っくり返して……」<br /> 「お肉ぅぅぅ~~~!!」ゾルッ<br /> 「ヒィィィッ!?換気扇から雪華綺晶がァァァァ!?」<br /> 「ふ、二人共落ち着いて!!き、雪華綺晶まだ肉は生だよ!!」</p> <p> </p> <hr /><p><br /> ジ「う~ん、チョコ食べ過ぎたかなぁ。ちょっと太ったような…」<br /> 雪「くすくす…あと少し…」<br /> ジ「(°д°;)」<br /> の「ジュンく~ん!お姉ちゃんもチョコ作ったのよぅ。遅くなっちゃったけど食べてぇ~」<br /> ジ「え!?いや今はマズい…」<br /> の「はい、あ~ん♪」<br /> ジ「むぐぅ!?…ごくん」<br /> の「じゃあお姉ちゃん買い物行ってくるから帰ったら感想聞かせてね~」<br /> ジ「はあはあ…あんなデカイの食ったら晩メシなんて…」<br /> ポン<br /> ジ「ん?」<br /> 雪「おめでとうございます♪」ニッコリ<br /><br /><br /> の「ジュンくんだだいま~…あら?ジュンく~ん?ドコ~?」</p> <p> </p> <hr /><p><br /><br /> ひな祭りです<br /><br /> 雪「雛姉様はひな祭りにつきものと言えば何を思い付きますか?」<br /> 雛「うゆ…あ!ヒナアラレなの!のりが去年たぁ~くさんくれたの!」<br /> 「流石はのり様、GJですわ!では私達も作ってお返し致しましょう!きっとジュン様も喜びますわ!」<br /> 「だいさんせーなの!」<br /> 「それでは手作り雛苺アラレ、逝ってみましょー!」<br /> 「オーなの~!」<br /><br /> 「うふふふふ…では早速此方へ」<br /><br /> ドゴッ!<br /><br /> 「う…あ…」パタリ<br /> 「ば…ばらしー?」<br /> 「…うん、見張ってて正解…」ギュッキュッ<br /> 「うゆ…よくわかんないの…どうしてきらきーを縛っちゃうの?」<br /> 「…万が一の時は縛って吊しとけって…銀ちゃんと巴の指示…お姉ちゃんメンゴ…じゃ、行こう」スタスタ…<br /><br /><br /><br /> 「ほんの出来心なのに酷いですわ~!!」ブラーン</p> <hr /><p><br /> horror<br /><br /> 蒼星石がソファーでくつろいでいる。学校帰りで少し疲れていた。<br /> クッキーをかじりながら、普段は見ない夕方のワイドショーを何とはなしに見る。<br /> <br /> と、末の妹の雪華綺晶がやってきた。<br /> 「あら、あおねえさま。おかえりなさい」<br /> まだ5歳にもならないのに言葉がしっかりしているが、雪華綺晶は不思議なくらい無表情な子供だった。<br /> 末の妹の姿に蒼星石は頬を緩めた。<br /> 「ただいま雪華綺晶。クッキーを食べるかい?」<br /> 蒼星石は右手のクッキーを軽く振る。<br /> 「いただきます」<br /> 雪華綺晶が意外と食いしん坊なことは家族全員の常識である。<br /><br /> 蒼星石は雪華綺晶を抱え上げ、ソファーに座らせた。そこで気づく。<br /> 「どうしたんだい、服が濡れているね?」<br /> 「ふくのよごれをおとすために、さっきまでおふろにいました」<br /> ほんの少し、雪華綺晶の声音は不機嫌そうだった。<br /> <br /> 「くんくんでよごれてしまいました」<br /> 「酷くじゃれつかれたんだね。可哀想に」<br /> くんくんは真紅がこの前の誕生日にねだりにねだって買ってもらった自慢の室内犬だ。<br /> 茶色の体毛にこげ茶の斑点と利口そうなつぶらな瞳をしている。<br /> (真紅はくんくんは世界一賢いとか言ってたけれど、そうでもないんだな)<br /> 高飛車な一つ下の妹のことを考えて、蒼星石はくすりと笑った。<br /> 「くんくんはもうだめです。おもしろかったのですけれど」<br /> 「嫌いになったかい?」 <br /><br /> くんくんを真紅の次に気に入っていたのは雪華綺晶だ。<br /> 雪華綺晶はクッキーを一枚食べてから言った。<br /> 「せっかく、あかねえさまがはんぶんあげるっていってくれましたのに」<br /> 「ああ…ふふっ、そんなことを言っていたね」<br /> (くんくんをはんぶんください)<br /> 昨日の夕食時、雪華綺晶がそんな突拍子も無いことを言ったのだった。子供らしい突拍子も無い言葉に、<br /> みんな和やかに笑った。くんくんの事となると目の色が変わる真紅もあの時ばかりは、笑って「いいわよ」と許可していた。<br /> 雪華綺晶はクッキーをまた齧った。<br /> 「でもだめです。はんぶんにしたらおもしろくなくなってしまいました」<br /> <br /> 一瞬の間。<br /> 蒼星石はぞわりと背筋に悪寒を感じた。<br /> 「…なんだって?」<br /> 聞きながら、蒼星石は違和感に気づいた。<br /> よくみると、元々白かったはずの雪華綺晶の服が薄赤い。<br /> 「せっかくいただいたのに、はんぶんにしたらおもしろくなくなってしまいました」<br /> 雪華綺晶は2枚目のクッキーを嚥下し、3枚目に手を伸ばした。<br /> 「しっぱいです」<br /> 蒼星石は水道水のカルキに混じった、微かな鉄の匂いを嗅いだ。<br /> 少し震えた声で蒼星石が聞く。<br /> 「面白くなかったのが、失敗なのかい?」<br /> 三枚目を頬張っていたので答えは無い。ただ、雪華綺晶は蒼星石を見返した。<br /> なぜそんな当然の事を聞くのかと言いたげに。<br /> 微かに、不思議そうに。<br /><br /> ――あああああ!!<br /> 2階から真紅の叫び声が聞こえて、弾かれた様に蒼星石は駆け出した。<br /> 自分が何をしたのかわかっていない妹を置いて。</p>