「水銀燈短編31」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

水銀燈短編31 - (2009/01/14 (水) 14:30:34) のソース

<p align="left">ガラガラ…!<br />
慌ただしい車輪の音が廊下に響く。それと共に、人の走る足音も重なってゆく。<br />
「めぐ!めぐ!」<br />
私は叫ぶ。叫びながら走る。それだけしか出来ないから、ただそれを繰り返す。<br />
「すみません!ここからは付き添いは禁止されてます!」<br />
「めぐぅー!!」<br />
しかし、それすら拒絶され、私は冷たい廊下にへたり込んだ。<br />
同時に灯る、『手術中』のランプ。その緑色の光が、何故かとても不吉な予感を煽る。<br /><br />
―止められなかった。<br /><br />
―私なら出来たはずなのに。<br /><br />
―私のせいだ。<br /><br />
私は泣きながらそんな事を繰り返し繰り返し考た。だが所詮それはただの自虐であり、後悔したところで時は戻らない。その虚しさにまた涙が出た。<br /><br />
『水銀燈。私…いつか鳥になりたい』<br /><br />
めぐがそう言った時、なんで私はもっと真剣に答えてあげなかったんだろう。もっと私が相談に乗ってあげれば…彼女だってこんなバカな事…<br />
「付き添い人の方はあちらの控え室でお願いします」<br />
看護師の言葉に反応する事も出来ず、殆ど引きずられながら控え室に移動する。<br />
薄暗い部屋の中、私は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らしながら抑えきれない言葉を呟く他なかった…<br /><br /><br />
「トリ餅は食べ物じゃないのよぉ…めぐぅ…」<br /><br /><br />
【餅が…】【喉に…】</p>