<p align="left">ガラガラ…!<br /> 慌ただしい車輪の音が廊下に響く。それと共に、人の走る足音も重なってゆく。<br /> 「めぐ!めぐ!」<br /> 私は叫ぶ。叫びながら走る。それだけしか出来ないから、ただそれを繰り返す。<br /> 「すみません!ここからは付き添いは禁止されてます!」<br /> 「めぐぅー!!」<br /> しかし、それすら拒絶され、私は冷たい廊下にへたり込んだ。<br /> 同時に灯る、『手術中』のランプ。その緑色の光が、何故かとても不吉な予感を煽る。<br /><br /> ―止められなかった。<br /><br /> ―私なら出来たはずなのに。<br /><br /> ―私のせいだ。<br /><br /> 私は泣きながらそんな事を繰り返し繰り返し考た。だが所詮それはただの自虐であり、後悔したところで時は戻らない。その虚しさにまた涙が出た。<br /><br /> 『水銀燈。私…いつか鳥になりたい』<br /><br /> めぐがそう言った時、なんで私はもっと真剣に答えてあげなかったんだろう。もっと私が相談に乗ってあげれば…彼女だってこんなバカな事…<br /> 「付き添い人の方はあちらの控え室でお願いします」<br /> 看護師の言葉に反応する事も出来ず、殆ど引きずられながら控え室に移動する。<br /> 薄暗い部屋の中、私は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らしながら抑えきれない言葉を呟く他なかった…<br /><br /><br /> 「トリ餅は食べ物じゃないのよぉ…めぐぅ…」<br /><br /><br /> 【餅が…】【喉に…】</p>