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BLACK ROSE 第二話 - (2009/09/14 (月) 01:19:48) のソース

<p>BLACK ROSE 第二話<br /><br />
「はぁっ!?」<br />
「真紅!何を、言ってるんだい?」<br /><br />
突然の事に驚いたが、驚いているのは私だけでは無い様だ。<br />
栗色の少女も、連れの突然の言葉に驚いている様だ。<br /><br />
「この娘を勧誘してるだけなのだわ。何か問題があるの?」<br />
「大有りだよ!」<br />
「ちょっとぉ…」<br /><br />
私の事など忘れて、彼女達は口論を始めている。<br />
突然の事に驚かされ、自分も何か言ってやりたいが、<br />
このままでは、次の日まで待たなければならないかもしれない。<br />
流石に、それは嫌なので、私は無視して家に帰ることにする。<br /><br /><br />
「真紅、彼女とは会って間もない。それに、他のメンバーには、どう説明するのさ」<br />
「まったく…貴女も頑固ね…って、水銀燈がいないのだわ!!」<br />
「やれやれ…真紅も頑固者だよ…」<br /><br /><br />
次の日の朝。水銀燈は目を覚まし、冒険者のもう一つの仕事をすることにする。<br />
道具や武具などのお得な物を見て回るのだ。<br /><br />
「ちょっと!貴方、これがこんなに高い筈無いわぁ。別の店では<br />
 もっと安いわよぉ!」<br /><br />
凄い剣幕で怒鳴る彼女に商人の男もオドオドしている。<br /><br />
「で、ですから…何度も申し上げてる様に、それの値段はこれ以上下げれません」<br />
「なんですってぇ!」<br /><br />
ヒィ、と情け無い声を上げる男が可哀想なので、助け舟を出すことにする。<br />
それにしても――この声はまさか――<br /><br />
「貴女、いい加減にしなさい。怯えてるじゃないの。…って、水銀燈じゃないの」<br />
「はぁっ?どこのどいつよぉ?――あらぁ、真紅、だったかしらぁ?何か用?」<br />
「まったく…貴女はこんなチンピラ紛いの事をいつもやっているの?」<br />
「ふんっ。そんなことある訳ないでしょ。おばかさぁん。」<br /><br />
突き放す様な態度を水銀燈は取っている。<br />
けど、顔がちょっとだけ、笑っている様に見えた。<br />
案外、私の第一印象は好感触だったのかもしれない。<br /><br />
「ふふっ。また会ったのも何かの縁だわ。昨日は聞けなかったけど、<br />
 答えを聞かせてくれないかしら?」<br /><br />
実際、真紅の予想は当たっていた。水銀燈は真紅を嫌っている訳ではない。<br />
一人での限界が身に染みてきたし、真紅は信用できる人間の様な気がする。</p>
<p>「水銀燈?」<br />
「……だけなら…」<br />
「え?」<br />
「少しの間だけなら入ってあげてもいいわって、言ったのよぉ!!」<br /><br />
言ってしまった。もう後戻りは出来ない。<br />
顔が熱い。恥ずかしさで死んでしまいそうだ。<br /><br />
「本当に!?アタックし続けた甲斐があったのだわ!」<br />
「…え?本当に、いいのぉ?」<br />
「何言ってるの!私は大歓迎よ!早速、他のメンバーにも紹介しなくちゃ!」<br /><br />
手をギュッと握り締められ、半ば引き摺られる形で連れて行かれる。<br />
彼女の手は柔らかく、温かかった。出来れば、ずっと――<br /><br />
(って、何を考えてるのよ私。おばかさん。)<br /><br />
心の中で言い聞かせても、顔がにやけている様な気がする。<br />
久し振りに人と手を繋いだからだと思う。<br />
真紅に声を掛けられ、目を覚ます。<br /><br />
「着いたわ、ここが私のチームの拠点よ」<br />
「うわ…結構大きいわねぇ…」<br />
「ふふっ、ありがと。さ、中に入って頂戴」<br />
「お邪魔しまぁす」<br /><br />
そんな言葉が自分の口から出てきたのには驚いた。<br />
真紅には受け入れられたものの、他の人に受け入れられるか、<br />
それが心配だからだろうか。柄でも無い。</p>
<p>「やぁーっと帰ってきやがったです。遅いですよ!真紅!…ん?そいつは誰ですか?」<br /><br />
緑色を基調としたその服装は、どうやら魔女のようだ。<br />
第一印象はその外見の通り、腹黒そうだ、と思った。<br />
そして、彼女の言葉と共に、他の人からも視線が集まる。<br /><br />
「初めまして。と言っても、知ってる人もいると思うけど。私は水銀燈よぉ。<br />
 職業は冒険者。私を貴方達のチームに入れてもらえないかしらぁ?」<br />
「はぁ…結局連れて来ちゃったんだね、真紅」<br />
「ふふっ、二日続けて会うなんて、何かあると思わない?」<br />
「偶然じゃないかな…」<br /><br />
昨日の栗色の少女は心底呆れている様だ。<br />
その時、奥の方から眼鏡を掛けた黒髪の少年が出てきた。<br /><br />
「真紅、その人が昨日言っていた、新しい仲間か?」<br />
「そうよ。一目見て分かったけど、彼女は腕が立つのだわ」<br />
「うん、僕もそう思う。僕は賛成でいいよ」<br />
「ジュンは賛成っと…。翠星石と蒼星石は?」<br /><br />
ジュン、と呼ばれたのが黒髪の少年だろう。<br />
後は、緑色の方が翠星石で、蒼い服を着ている方が蒼星石だろうか。<br />
他には見当たらないので、この三人が残りのメンバーであろう。<br /><br />
「翠星石は別にいいですよ。ジュンと真紅の二人が認めるんですから<br />
 信用に足る人物だと思うです」<br />
「うーん…そうだね、僕も賛成でいいよ。ただし、条件があるよ」<br />
「…その条件は?」</p>
<p>「今日は、迷宮に潜る予定なんだ。早速で悪いけど、<br />
 水銀燈にも加わってもらう。そこで、君がチームに<br />
 悪影響を与えるなら、辞めてもらう。厳しいと思うけど<br />
 僕は本当に信用できる人物じゃないと、一緒に戦う気にはなれない」<br />
「ホントに厳しいわねぇ…だけど、大丈夫よぉ。<br />
 心配しなくても、私はそんなに弱くない。貴方達に迷惑は掛けないわぁ」<br />
「うん、楽しみにしてるよ」<br /><br />
蒼星石はこっちを向いて微笑むのだが、それが逆に怖い。<br />
悪気は無いのだろうが…<br /><br />
「大変な事になったわね…けど、私は信じているわよ、水銀燈」<br />
「ええ、頑張るわ、真紅」<br />
「あの二人、昨日会ったばかりなのに、もう打ち解けてるです。<br />
 気が合うのかもしれないですね」<br />
「そうだな。真紅があんなにはしゃいでいるのを見たのも、久し振りだよ」<br /><br />
今から迷宮に潜るというのに、二人は、これからピクニックに行くかの様に見えた。<br />
口にはしないが、誰もが、頼もしい仲間が増えることを喜んでいた。</p>