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蒼星石短編25 - (2006/05/27 (土) 09:31:33) のソース

朝特有の肌寒さに揺らされて、目を覚ます。<br>
時計を見てみると、6時半を少し過ぎた頃。<br>
<br>
そろそろ起きなくちゃ。<br>
姉さんは朝が苦手だから、起こしてあげなきゃ。<br>
そして朝ご飯とお弁当も作って、あぁ、今日はゴミの日だったかな。<br>

<br>
そして目にはいるのは、枕元に転がった携帯電話。<br>
画面には、昨夜押しかけた番号の欠片が映っている。<br>
昨日も駄目だったんだなぁ、なんて、苦笑い。<br>
<br>
今日のお弁当は、少し多めに作ってみようかな。<br>
そして、作りすぎたからどうぞ。なんて、とてもありきたりだけど。<br>

あなたは唐揚げが大好きだったね。今から間に合うかな。<br>

時計を見る。7時に届きそう。<br>
今から作ればぎりぎりかな。姉さんを起こす時間は…ごめんね。<br>

<br>
「あと1分だけ。それで起きよう。」<br>
<br>
そう言い訳をして、2、3度寝返りを打っていると、<br>
ふと、お弁当ふたつ抱えて泣いている自分を思い浮かべる。<br>

<br>
「…やっぱり、あと3分。」<br>
<br>
すぐ起きていればよかったなぁ、なんて考えて、<br>
また苦笑い。<br>
<br>
あぁ、今日も臆病な僕は、いつでもあなたが大好きです。<br>

<br>
オハリ<br>
<br>
<br>
<hr>
<br>
<br>
<br>
<br>
あのときの胸の痛みを、まだ覚えている。<br>
僕を、女の子として見てくれるひとがいた。<br>
そのひとは姉が好きになったひとで。僕が好きになったひとでもあって。<br>

二人でそのことを話し合ったことは無かったけれど、なんとなく分かってしまった。<br>

あのときの胸の痛みを、まだ覚えている。<br>
幸せな彼の顔。幸せな姉の顔。そして僕の顔。<br>
三人で笑いあうことがとても楽しかった。でも、少しだけ切なかった。<br>

あのときの胸の痛みを、まだ覚えている。<br>
明日こそ彼に思いを伝えようと決めた日の放課後、校舎裏で互いを抱きしめあっていた彼と姉。<br>

二人は本当に幸せそうで、泣いていたのは僕だけだった。<br>

あのときの胸の痛みを、まだ覚えている。<br>
姉の幸せを願っていながら彼を手に入れたいという粘着質の黒い衝動。<br>

少しずつ落ち着いていって、自分に失望し、それでいて再び混沌の中に意識を沈める。<br>

ただ彼に抱きしめてもらいたい。ただ彼に僕が好きだと言ってもらいたい。彼に愛され、彼を愛したい。<br>

あのときの胸の痛みを、まだ覚えている。<br>
彼をあの校舎裏に呼んで、自分の気持ちを伝えたとき。<br>
伝えずに入られなかった。引き下がりたくなかった。だから伝えた。<br>

彼はただ一言“ごめん”と呟いて。僕は涙が止まらなくて。<br>

こらえきれずに彼の胸の中で泣いた。<br>
―――何年かが経って。<br>
今、彼は姉と幸せな家庭を築いている。<br>
僕にそれは無い。このまま独りでもいいと思う。けれど。<br>

<br>
この胸の痛みはまだ残っている。<br>
<br>
<br>
<br>
<hr>
<br>
<br>
<br>
<br>
蒼「お帰り、ジュン君」<br>
J「あれ、来てたのか」<br>
JUMがお風呂から上がって部屋に戻った時、ベッドの上にはパジャマ姿の蒼星石が居た。<br>

蒼「うん、ジュン君と一緒に寝ようと思って」<br>
J「…またか」<br>
JUMは思わずそうぼやいてしまった。<br>
この甘えたがりな幼馴染はよくこうして一緒に寝ようといってくるのだが、<br>

いくら幼馴染とはいえ、蒼星石は年頃の女の子だ。<br>
故に同じく年頃の男である自分と寝るという事に、JUMはどうしても抵抗を覚えてしまうのだ。<br>

蒼「うん、ダメ…?」<br>
蒼星石は少し寂しそうな顔を見せる。<br>
JUMはこれにからきし弱く、この顔を出されるとどうしてもイヤとは言えない。<br>

J「あ、いや、ダメじゃないけど…」<br>
蒼「本当? 良かった」<br>
そう言うと蒼星石はにっこりと笑顔を作った。<br>
J(僕も大概、蒼星石に弱いよなぁ…。でも、ま…)<br>
JUMは蒼星石の顔を見つめる。<br>
J(蒼星石がこういう事言うのは僕だけだしな、他じゃワガママとか言わない奴だし。<br>

  だったら、たまの可愛いワガママ位は聞いてやるのが、僕の幼馴染としての勤めだよな…)<br>

JUMは心の中でそう結論付けると、スタスタと歩いて蒼星石の横に腰掛けた。<br>

J「一緒に寝るのはいいけど、少し待ってくれるか? 髪乾かないと寝れないから」<br>

蒼「うん、いくらでも待つよ」<br>
そんな蒼星石の言葉にJUMは思わず笑う。<br>
<br>
J「そんなにかからないって、髪が長いわけじゃないんだから」<br>

そう言って、JUMは自分の髪を軽くかき上げた。<br>
蒼(あっ…)<br>
J「ん、どうした?」<br>
蒼星石は少し赤い顔をして、JUMを見つめていた。<br>
蒼「ジュンくん、なんだかちょっと色っぽい…」<br>
J「はぁっ?」<br>
JUMは思わず妙な声を上げてしまう。<br>
蒼「お風呂上りだからかな、なんだかいつもと少し違う感じがする…」<br>

J「(色っぽいって、褒められてるのかどうか微妙だな…)…本当に違う人だったりしてな」<br>

JUMが冗談交じりにそう言うと、蒼星石は少し困った顔をした。<br>

蒼「…それは困るよ」<br>
J「困る? なんで?」<br>
蒼「だって、ジュンくんが違う人だったら一緒に寝れないじゃないか。<br>

  僕ジュンくん以外の人と一緒に寝るなんて出来ないし…」<br>

J「……ぷっっ」<br>
JUMはその答えに一瞬ポカンとし、その後声を押し殺して笑い出した。<br>

蒼「む、何が可笑しいのさ」<br>
J「っ、いや、ごめんごめん」<br>
JUMは指で目元を拭う。<br>
J「大丈夫だよ、僕はお前知ってる桜田ジュンだから。今までもこれからも変わらない、お前の幼馴染だから…」<br>

JUMは優しい声でそう告げた。<br>
蒼「…うん」<br>
そんなJUMに蒼星石は笑顔で返事を返した。<br>
<br>
JUMの髪が乾いたので、二人は電気を消しベッドの中に潜り込む。<br>

J「そういえば、蒼星石」<br>
蒼「なに?」<br>
J「前から思ってたんだけど、お前枕は要らないのか?」<br>

蒼「大丈夫だよ、ジュンくんが僕の枕だから」<br>
そう言うと、蒼星石はJUMの身体にしがみついた。<br>
蒼「ジュンくん枕は良く眠れるんだ…」<br>
J「…そっか」<br>
JUMは軽く笑いを漏らしながらそう言った。<br>
蒼「ふあ…。おやすみ、ジュンくん」<br>
J「おやすみ、蒼星石…」<br>
JUMは眼を閉じた蒼星石に優しくそう言った後、自分も眼を閉じた。<br>

<br>
二人はお互いの温かさに包まれて眠りへと落ちていった。<br>

<br>
<br>
/終わり<br>
<br>
<br>
<hr>
<br>
<br>
<br>
J「雨だな」<br>
蒼「雨だね」<br>
窓の外を眺めながら、二人はそう呟いた。<br>
J「最近、雨多いよな」<br>
蒼「うん、まだ梅雨には早いはずだけどね」<br>
JUMはだらーっとベッドへ体を倒した。<br>
J「折角の日曜に雨が降らなくてもいいのにな…」<br>
蒼星石はベッドに寝転んでいるJUMを上から覗き込んだ。<br>
蒼「…ジュン君は雨嫌い?」<br>
J「ん? 嫌いって事はないけど、好きじゃないな。特に休みの日の雨は」<br>

蒼「そうなんだ。どうして?」<br>
J「だって、雨が降ってたら何処にも行けないだろ?」<br>
蒼「そうだね。でも、僕は雨嫌いじゃないよ」<br>
J「なんで?」<br>
蒼「だって…」<br>
蒼星石はベッドに寝そべり、JUMに頬を擦り寄せた。<br>
蒼「雨の日はずっと、ジュンくんとこうしていられるじゃない」<br>

J「…でも、それは晴れの日でも出来るだろ?」<br>
JUMがそう言うと蒼星石はくすくす笑った。<br>
蒼「ううん、晴れの日だとこうして部屋の中にいるのがもったいなく感じちゃうでしょ?<br>

  でも、雨の日ならそんな風感じないから、気兼ねなくこうして静かにのんびりいられるじゃない」<br>

J「…なるほど」<br>
JUMが左手で軽く蒼星石の髪を撫でると、蒼星石は気持ち良さそうな顔で笑った。<br>

こうして静かに蒼星石と過ごすのも幸せかもしれない、JUMはそう思った。<br>

J「そう考えると、雨も悪くないかもな…」<br>
蒼「うん」<br>
そうして二人は笑い合い、休日の時間を二人で静かに過ごした。<br>

<br>
/終わり<br>
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<hr>
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<br>
<br>
<dl>
<dd>J「ん~」<br>
JUMは手のひらで耳をポンポンと叩いている。<br>
蒼「どうしたのジュン君?」<br>
J「いや、なんか耳がスッキリしなくて」<br>
蒼「それじゃ、僕が耳掃除してあげようか?」<br>
J「う~ん、頼もうかな」<br>
JUMは耳掻きを取り出して、蒼星石に手渡した。<br>
蒼「じゃあ、ジュン君僕の膝に来て?」<br>
J「ああ」<br>
JUMは蒼星石の膝の上に頭を乗せた。<br>
蒼「それじゃ、優しくするけど痛かったら言ってね?」<br>
J「わかった」<br>
<br>
蒼「どう? 痛くない?」<br>
J「いや、気持ちいいよ(特に太腿が…/////)」<br>
蒼「そう、良かった」<br>
<br>
蒼「今度は反対ね、ジュン君こっち向いて?」<br>
J「ああ(なんか幸せだなぁ…/////)」<br>
<br></dd>
<dd><br>
<br>
蒼「はい、終わったよ」<br>
JUMは頭と身体を起こして、蒼星石に向き直った。<br>
J「ありがとな、おかげでスッキリしたよ(ちょっと名残惜しいけど…)」<br>

蒼「そう、良かった。それじゃあ、はい」<br>
蒼星石はJUMに耳掻きを渡し、<br>
蒼「えいっ♪」<br>
寝転がってJUMの膝の上に頭を乗せた。<br>
J「蒼星石…?」<br>
蒼「今度はジュン君が僕の耳掃除して?」<br>
下から上目遣いで自分を見上げる蒼星石の姿にJUMは軽く笑う。<br>

J「いいけど、あんまり上手くないぞ?」<br>
蒼「うん、でもあまり痛くしないでね?」<br>
そう言う蒼星石の姿があんまりにも可愛いものだから、JUMの口から自然と笑が漏れてしまう。<br>

J「努力するよ」<br>
<br>
JUMの耳掃除はそんなに上手くはなかったが、蒼星石はとても幸せそうな顔をしていた。<br>

<br>
<br>
/終わり<br>
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<hr>
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<br>
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<br>
<br>
蒼「…困ったね」<br>
翠「最悪ですぅ…」<br>
翠星石と蒼星石は下駄箱の入り口で立ち尽くしていた。<br>
その理由はザーザーと降りしきる雨。<br>
傘を持ってきていない二人は立ち尽くすしかなかった。。<br>

蒼「朝はあんなに晴れてたのにね」<br>
翠「まったくですぅ。いきなり降りやがるなんて、不意打ちもいいとこです!」<br>

翠星石は空をにらみつけるが、雨は一向に収まってくれそうもない。<br>

翠「こうなったら、全速力で突っ走って家まで帰るですぅ」<br>

蒼「そんなことしたら風邪引くよ? 翠星石」<br>
翠「このまま止むのを待ってたら日が暮れちまうです、覚悟を決めるです蒼星石」<br>

「お前ら傘忘れたのか?」<br>
後ろから声をかけられ、振り返るとそこに居たのはメガネの少年。<br>

蒼「ジュン君」<br>
翠「む、ジュンは傘持ってるですね」<br>
翠星石はJUMが持っている傘をにらみつけた。<br>
J「朝、天気予報見てこなかったのか? 昼からの降水率100%だったぞ?」<br>

蒼「朝はちょっとバタバタしてたんだ(翠星石が寝坊して…)」<br>

J「そっか。…ほら」<br>
蒼「えっ?」<br>
JUMがいきなり傘を差し出してきたので、蒼星石は戸惑った。<br>

<br>
<br>
<br>
J「このままじゃ帰れないだろ、僕の傘貸してやるよ。明日返してくれればいいから」<br>

蒼「えっ、でも、それじゃ、ジュン君が…」<br>
J「大丈夫。僕は一応男だし、走って帰って風呂に入れば風邪も引かないって」<br>

蒼「でも、悪いよ…」<br>
J「…このままお前らほったらかして帰ると気分が悪いんだよ」<br>

蒼「でも…」<br>
互いに譲らない二人。<br>
そんな二人にイライラし始めた翠星石が、下駄箱に入ってきた一つの影を見つけて声を上げた。<br>

翠「笹塚っ!」<br>
笹「わっ! な、なんだよ…?」<br>
翠「お前、傘持ってきてるですか?」<br>
笹「傘? あるけど、それが?」<br>
翠「なら、決まりです」<br>
その返事を聞いて翠星石はニヤリと笑った。<br>
翠「笹塚、お前は翠星石を送っていくです」<br>
笹「えっ、なんで?」<br>
翠「いいから言う通りにするです!」<br>
笹「は、はい…」<br>
翠「そしてジュン、お前は蒼星石を送っていくです。これならみんな濡れずに帰れるですぅ」<br>

その提案を聞いたJUMと蒼星石は、それならと頷いて返した。<br>

<br>
<br>
翠「笹塚、もっと傘をこっちに寄せるです、翠星石が濡れちまうですぅ」<br>

笹「って、そんなに寄せたら、今度は僕が濡れるじゃないか」<br>

翠「男が細かいことグダグダ言うんじゃねぇです」<br>
笹「そんなぁ…」<br>
雨の中、先を行く翠星石と笹塚。<br>
その後ろのJUMと蒼星石は…<br>
<br>
<br>
<br>
J「蒼星石、濡れないか?」<br>
蒼「僕は大丈夫だけど、ジュン君の肩、濡れちゃってるよ…?」<br>

JUMは傘をやや蒼星石よりにしていたため、自分の肩が傘からはみ出してしまっていた。<br>

J「この位平気だ」<br>
蒼「でも…(あっ、そうだ)」<br>
蒼星石はいきなりJUMに身体を密着させた。<br>
J「っ!?////」<br>
蒼「…これで、ジュン君が濡れなくても大丈夫でしょ?////」<br>

J「え…? あ、ああ…////」<br>
そう言うとJUMは傘を少し自分に引き寄せた。<br>
J「……////」<br>
蒼「……////」<br>
二人は少しドキドキしながら、先を行く翠星石と笹塚を追いかけた。<br>

<br>
<br>
笹「酷い目に会ったな、桜田」<br>
二人を家に届けてから、笹塚はJUMにそう言った。<br>
すると、JUMは笑ってこう答えた。<br>
J「…そうでもないぜ」<br>
<br>
翠「まったく、とんだ目に会ったです。ねぇ、蒼星石?」<br>

家に帰った後、翠星石は蒼星石にそう言った。<br>
すると、蒼星石は笑ってこう答えた。<br>
蒼「…そうでもないよ」<br>
<br>
<br>
JUMと蒼星石の予想外の答えに、首を捻る笹塚と翠星石だった。<br>

<br>
/終わり<br>
<br>
<br>
<br>
<hr>
<br>
<br>
<br>
Q.貴方にとってJUM×蒼って何?<br>
A.ときめきの塊。<br>
<br>
<br>
<br>
蒼「うぅっ、えっぐっ、ぐすっ」<br>
小学校の裏庭で小さい僕が泣いている。<br>
理由は、授業中に僕が発表した将来の夢が『素敵なお嫁さん』だった事を、<br>

クラスメイトに「なれるわけない」とからかわれたからだ。<br>

そんな僕の隣には、小さいジュン君が居て僕を慰めてくれていた。<br>

J「…あんな奴の言うこと気にするなって」<br>
蒼「ぐすっ、だって…」<br>
J「あ~もう、泣くなって!」<br>
ジュン君は僕を何とか泣きやませようとするのだが、それでも小さい僕は泣き止もうとしない。<br>

そんな僕の様子にジュン君はため息をついてから、僕の頭に手を置いた。<br>

J「もしさ、お前が本当にお嫁に行けなかったら、僕がお嫁に貰ってやるよ…。だから、もう泣き止め…」<br>

蒼「ぐすっ、本当…?」<br>
J「ああ。ほら、これで涙拭け」<br>
蒼「うん、ありがとうジュンくん…」<br>
小さい僕はジュン君からハンカチを受け取って、涙を拭くとジュン君に笑顔を見せた。<br>

……<br>
<br>
<br>
僕は瞼を開いた。ここは高校の教室、それも放課後のようだ。<br>

どうやら、僕は教室で寝てしまっていたらしい。<br>
それにしても、あんな昔の事を夢に見るなんて…。<br>
「お、起きたか?」<br>
横から声がしたので、僕は視線を横へと向ける。<br>
するとそこに居たのは、<br>
蒼「ジュン、君…?」<br>
先ほどの夢にも出てきた、桜田ジュン君だった。<br>
何でジュン君が…? と思うのと同時に先ほどの夢を思い出し、思わず顔が熱くなってしまう。<br>

J「おはよ」<br>
蒼「あっ、うん、おはよう…」<br>
僕は釣られて返してしまったが、よくよく考えれば今時間帯には相応しくないんじゃないだろうか?<br>

そう思いながら教室にかかっている時計を見た。<br>
針は5時を刺している。<br>
蒼「ジュン君、こんな時間までどうしたの?」<br>
J「ん、ちょっと野暮用でな…」<br>
彼はそれ以上何も言わなかったので、僕は深く考えない事にした。<br>

J「お前も今から帰るのか?」<br>
蒼「うん、そのつもりだけど」<br>
J「…折角だから一緒に帰らないか?」<br>
蒼「えっ…?」<br>
突然の申し出に僕は少し戸惑ってしまうが、断る理由も特にないので、<br>

蒼「えと、うん、いいよ」<br>
と答えた。<br>
<br>
<br>
僕達は下駄箱で靴に履き替えて、外へと出る。<br>
すると、真紅が暗い顔をして歩いている姿が見えた。<br>
蒼「真紅?」<br>
僕の声に気付いた彼女はこっちを見て、僕達の存在に気付くと、逃げるように走り去ってしまった。<br>

蒼「真紅っ?」<br>
どうしたんだろう、彼女は…。<br>
そして、気付いてみれば、隣に居るジュン君もなんだか申し訳なさそうな顔をしている。<br>

蒼「ジュン君、どうかしたの?」<br>
J「えっ、あ、いや…」<br>
やはり様子がおかしい。<br>
蒼「もしかして、真紅と何かあったの?」<br>
ジュン君はあからさまな反応をした。どうやら図星らしい。<br>

そして、彼は息を吐いた後、ゆっくり口を開いた。<br>
J「…実はさっき、真紅に告白されたんだ」<br>
蒼「ええっ!?」<br>
僕は驚きで眼を見開いてしまう。<br>
真紅がジュン君に…!? 全然そんな風には見えなかったのに…。<br>

でも、真紅が告白して、暗い顔をしてるって事は…。<br>
J「でも、断った…」<br>
やっぱり…。でも…<br>
蒼「…どうして?」<br>
僕は生まれた疑問をそのまま口に出した。<br>
J「別に真紅の事は嫌いじゃないけど、友達としてしか見てなかったし…。それに…」<br>

蒼「それに…?」<br>
ジュン君は僕を真っ直ぐに見つめた後、首を軽く振った。<br>

J「…いや、なんでもない。とりあえず、この話、他の奴には内緒にしててくれるか?」<br>

蒼「あ、うん、わかった」<br>
僕もこんな事をだれかれ構わず広める気はない。<br>
<br>
<br>
<br>
J「…それじゃ、帰ろうぜ」<br>
そう言って彼がゆっくり歩き出したので、僕もそれについていった。<br>

…ジュン君、さっき僕を見て何かを言おうとした?<br>
そう考えた時、僕は先ほどの夢を思い出した。<br>
/J「もしさ、お前が本当にお嫁に行けなかったら、僕がお嫁に貰ってやるよ…」<br>

僕は隣の彼の顔を見る。<br>
もしかして、あの時の約束を覚えてる…?<br>
そう考えた瞬間、またも顔が熱くなる。<br>
そんなわけ無いと思いながらも、そうだったらいいなと期待している自分が居る。<br>

J「…どうした?」<br>
蒼「へっ!?」<br>
いきなり声をかけられたので、僕は変な声を上げてしまう。<br>

蒼「な、なにが…?」<br>
J「いや、なんか顔赤くないか? 風邪引いたか?」<br>
蒼「そ、そんな事ないよ! きっと夕日のせいでそう見えるだけだって!」<br>

僕は必死で言い繕う。<br>
J「そうか? ならいいけど」<br>
良かった、何とかごまかせたみたいだ…。<br>
だが、僕の顔の熱は中々引いてくれず、僕は赤い顔をしたまま夕日に染まる町を歩く事となった。<br>

<br>
<br>
/終わり<br>
<br>
<br>
おまけ<br>
<br>
次の日には真紅は元の調子に戻り、いつものようにジュン君をこき使っていた。<br>

<br>
<br></dd>
</dl>