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lieber cocoa―屋上― - (2006/02/28 (火) 19:37:43) のソース

<p>lieber cocoa―屋上―</p>
<p>翠「はぁ…気持ち悪いですぅ」<br>
今は体育の時間なのだが、翠星石は気分が悪くて屋上に来ていた。<br>

普通なら保健室に行くべきだが、翠星石はどうも薬品臭い保健室に行く気がしなかった。</p>
<p>
翠星石が手すりにもたれかかっていると、背後で錆びた鉄のドアの開く音がした。<br>

翠「だれです?」<br>
翠星石が振り返ると、そこには体育に行っているはずのジュンの姿があった。<br>

J「あれ?翠星石。なんでいるの?」<br>
翠「ジュン!?それはこっちのセリフですぅ」<br>
翠(こんなとこでジュンに会えるなんて、なんかいけない香りがしますぅ)<br>

J「いや…今体育だからめんどいし…。翠星石もサボリか?」<br>

翠「ちび人間と一緒にするなですぅ。体調が悪いんですぅ」<br>

J「ふーん」<br>
ジュンはおもむろに手のひらを翠星石の額にあてた。<br>
翠「!!??」<br>
J「んー熱はないみたいだな。つか保健室行かなくて大丈夫か?」<br>

翠(ジュン…優しいですぅ。)<br>
翠「…保健室は嫌いです。」<br>
J「もしかして薬品の匂いがダメとか。俺もなんだよ。…でもここ寒いだろ、ほらっ」<br>

そう言ってジュンは自分の制服を脱いで翠星石に着せてやった。<br>

翠(…ジュンの匂いがするですぅ)<br>
J「これ俺の飲みかけだけど、よかったら飲むか?」<br>
ジュンはホットココアを差し出した。<br>
翠星石はコクッと小さく頷き、ブカブカの制服から両手を出して缶を受け取り、一口口に含んだ。<br>

そこで初めて間接キスだということを認識した。<br>
翠(ジュンとかっ、間接キスしちゃったですぅ。キャーッ)</p>
<p>J「…屋上…よく来るのか?」<br>
翠星石はまた小さく頷いた。<br>
J「へー、どんなとき?」<br>
翠「嬉しいときとか…。」<br>
J「そっか、じゃあ逆の気分のときも来るだろ?」<br>
その通りだった。むしろ悲しいときのほうがよく来ていたのだ。<br>

翠「…どうしてわかったです?」<br>
ジュンは顔に笑みを浮かべて言った。<br>
J「簡単だよ。俺だって同じだから。」<br>
翠「えっ!?ジュンもですか?」<br>
J「ああ。ここって上を見ると空しか目に入らないだろ。だからなんか自分も空の一部になった気がしてさ。嫌なことが空に溶けてく感じになるんだよな。…だから翠星石も俺と同じじゃないかなって思った。」<br>

翠(…ジュンと…同じ…)<br>
翠星石がそう思った瞬間、ある考えが脳裏によぎった。<br>
J「あっ、そう考えると俺達って似てるかもな。二人とも保健室嫌いだし。」<br>

翠星石はその言葉を聞いて、ドキッとした。今、翠星石が考えていたことと、全く一緒なのだ。<br>

翠「…すっ、翠星石とちび人間が似てるわけね~です!!自惚れるなです!!!」<br>

とっさに嘘が出た。<br>
こんなとき素直になれない自分が嫌になる。<br>
翠星石はそっとジュンを見る。<br>
だがジュンは至って普通だ。<br>
どうやらいつものことと思って気にしていないらしい。<br>
このときだけは自分の普段のジュンへの接し方に感謝した。</p>
<p>二人が会話を止めてから長い時間がたった。<br>
いや、実質は数分だったのだろうが、翠星石には永遠にも感じられた。<br>

ジュンは寝転がって空を見ている<br>
翠星石はそんなジュンの横で体育座りをしている。<br>
翠星石はなんとか沈黙を破ろうとしたが、適当な言葉が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返していた。<br>

そんなときジュンが急に口を開いた。<br>
J「あっ!」<br>
決して大きな声ではなかったが、翠星石を驚かすには充分だった。<br>

翠「ひっ!!」<br>
ジュンも驚いて翠星石を見る。<br>
J「…ごめん」</p>
<p>翠「いっいいですけど…」<br>
ジュン「考えたら翠星石と二人っきりってのも久しぶりだな…って思って。ってまたこんなこと言ったら怒るかw」<br>

翠「そっ、そんなことは…ね~です…よ。」<br>
翠星石は必死に自分の本当の気持ちを口に出そうとしていた。<br>

ジュンはいつもと違う翠星石に少し戸惑いを覚えたが、構わず続けた。<br>

ジュン「6ヶ月ぶりくらいかな…。ほらっ覚えてるか?夏にみんなで海行ったろ。そんで夜に肝試しやってさ、俺と翠星石がペアになったんだよな。」<br>

翠(…忘れられるわけね~ですよ)<br>
ジュンは上半身だけ起き上がり、翠星石の隣に直った。<br>

そのとき翠星石の体が一瞬ビクッと震えた。<br>
顔は俯いていてわからないが、耳まで真っ赤になっている。ジュンはそれに気付かない振りをして話を続ける。<br>

ジュン「あんときさ、翠星石は最初強がってたけど、進むにつれて俺の裾引っ張ってきたんだよな。…それで折り返し地点で、いきなり鳥が飛びたって…翠星石、お前腰抜かして歩けなくなったっけw。それで仕方なく俺がおぶって帰ったんだよ、たしか」<br>

翠(……あのときは嬉しかったですけど…、一体ジュンは何が言いたいですか…泣)<br>

翠「…あのときのことは…さっさと忘れ…やがれです…」<br>

翠星石は俯いたまま答えた。</p>
<p>
もちろんジュンには聞こえていたが、自分の話を続ける。<br>

J「あの肝試しのとき、初めて翠星石が女の子なんだな…って意識したよ」<br>

翠星石にはジュンの言ったことが理解出来なかった。<br>
J「それ以前は、男勝りの口の悪い喧嘩友達だったよ」<br>
翠(…えっ、初めて?以前は!?…ジュンは何を言ってるですか)<br>

J「意識し始めてからは早かったな…、翠星石が突っかかってくるのが嬉しかったし、翠星石の行動を目で追いかけたりもしたよ」<br>

ここまで言われたらいくら翠星石でも気づく。<br>
だが今度は、ジュンが自分のことを好きという事実が翠星石を更にあたふたさせた。<br>

翠(…じゅじゅじゅじゅ、ジュンがっ、翠星石のっ、ことすすすすす好き!!!???)<br>

J「…俺にとって、一番身近な女の子は、翠星石、お前だった」<br>

翠星石はジュンの言葉を一字一句聞き逃さないようにしながらも、頭のなかはとりあえず落ち着こうと必死だった。<br>

だがこれがよかったらしく、なんとか翠星石は状況を把握出来るようになった。<br>

翠(ちゃっ、チャンスですぅ。ここで翠星石も好きだと言えばっ…)<br>

J「………好きだ、翠星石。……よかったら…俺と付き合って欲しい……」<br>

その瞬間、翠星石の頭の中にベルが盛大に鳴り響いた。<br>
好きと言われただけで、嬉しくて倒れそうだったが、必死に意識を保ち、今までずっと言えなかった言葉を口にした…。<br>

翠「じゅっ、ジュン………実はっ……翠、星石もっ…前から、ずっと…………好きだった…で…すぅ…」<br>

それは、普段の翠星石からは考えられない程たどたどしかったが、確かに、はっきりとジュンに伝わった。<br>

ジュンはそれを穏やかな笑みを浮かべ聞いていた。<br>
翠(やっと…言えたです……)<br>
翠星石は両想いになれた嬉しさと、自分の気持ちを伝えられた安堵感から、泣きそうになっていた。<br>

だが、さらに嬉しい出来事が翠星石を襲った。</p>
<p>J「…キス…しよっか……」<br>
翠星石は自分の耳を疑った。<br>
そして今この世界が夢なんじゃないかとも思った。<br>
翠「…なっ、何言ってるんっ!!!???!?」<br>
翠星石の柔らかい唇をジュンのそれがほんの一瞬だけふさぐ。<br>

翠「………………」<br>
ほうけてる翠星石を見てジュンが笑みをこぼす。<br>
J「今度は間接じゃないなw」<br>
その言葉に翠星石が我に帰る。<br>
翠「まっ、まさかあれ…」<br>
そう、ココアだ。<br>
J「ん?何の話w?」<br>
ジュンは自分で言っておきながらとぼけた。<br>
翠星石はわなわなと震え、いきなりジュンに飛びかかった。<br>

J「うわっ!!」<br>
ちょうど、翠星石がジュンを押し倒す体勢になった。<br>
翠「許さんですぅ!!」<br>
一言そう言うと、自ら唇をジュンに押しあてた。<br>
ジュンも驚きはしたが、翠星石の行為を受け入れた。<br>
最初は唇が重なり合うだけのキスだったが、自然と舌を絡ませるようになった。<br>

翠「んっんん…ちゅ…あっんぅ…好きぃ…ちゅぱっ…んっ…ジュ…ン…はぁっ…んちゅ………………」<br>

どれくらいの時間がたったろう…。<br>
二人は手を繋ぎ、寝転がって空を仰ぎ見ている<br>
この幸せな時間もすぐに終わりを告げる。<br>
もう少しでお昼だ。<br>
そうなるとここにも人が来る。<br>
いつまでも寝ているわけにもいかない。<br>
こんなとき小説なら、屋上に人は来ないんだろうが、あいにくこの学校は開放してあるのだ。<br>

確かに寂しいが二人には時間がたくさんある。<br>
いや、時間すらも必要じゃないのかもしれない。<br>
二人に互いを想う気持ちがあればいつでもリンクしていられる。<br>

そんな彼らを受け入れるかのように、空はどこまでも青かった…。</p>
<p><br>
~Fin~</p>
<br>
<p>
--------------------------------------------------------------------------------</p>
<p>-続編-<br>
Gedachtnis-記憶-</p>
<p><br>
『肝試し』<br>
PM9:00<br>
J「花火も終わったし、そろそろ肝試しやるか」<br>
ベ「まじだったのか…」<br>
雛(&金)「いやー、怖いなの~(かしら~)」<br>
翠「お化けは小さい奴が好きですぅ。ちび人間やちびちび苺、ちびちび卵はさっさと食べられるがいいですぅ♪」<br>

蒼「翠星石!二人が怖がるじゃないか」<br>
銀「ちょっとぉ、早くペアを決めましょぉ」<br>
水「………九時にクジ引くw」<br>
場が白けるが、真紅は紅茶を飲んでいたため吹き出した。<br>

紅「ぶッ!!……ちょっと薔薇水晶!変なこと言わないでちょうだい!!」<br>

J「あ~もう!!ほらっみんなクジ引いて。ちなみに人数の関係で女性陣は一つだけ女性三人のグループができるから」</p>
<p>J「よし、みんな引いたな。…じゃあ一番の人?」<br>
ベ(&銀)「俺だ。(あたしぃ)」<br>
ベ(やった!!水銀燈だ)<br>
女性陣(やった!!ベジータ消えた!!!)<br>
銀「ちょっとぉ、あたしベジータなんて嫌よぉ。ジュンと代わってぇ」<br>

J「無茶言うなよ…クジだろーが。じゃあ二番は?」<br>
斑(&蒼)「俺(僕)だけど…」<br>
蒼「よろしくね」<br>
斑「あっ、ああ…」<br>
斑(やっぱり可愛いな…)</p>
<p>J「じゃ三番」<br>
笹(&紅)「僕です…(私よ)」<br>
翠(やったです!ジュンがまだいるですぅ)<br>
J「んで四番は俺なんだけど…」<br>
翠(来たですぅ!!!!)<br>
翠「なんだ、ちび人間と一緒ですか…最悪ですぅ」<br>
J「…最悪で悪かったな、じゃあ悪いけど雛苺と金糸雀と薔薇水晶が一緒ってことで」<br>

雛(&金)「はいなのー(かしら~)、三人だから安心なのー(かしら~)」<br>

水(………水銀燈…)<br>
J「じゃあ十分ごとに出発な、地図通りに言ってお札を取って帰ってくる。わかった?」<br>

みんな「は~い」<br>
J「じゃ一番の二人は出発」</p>
<p>
一分ほど歩くと灯りが消え、頼りは懐中電灯一本になった。銀「さっ、流石に怖いわねぇ…ってベジータ!!あんた、あたしの後ろに隠れて歩いてんじゃないわよぉ。普通逆でしょ!?」<br>

ベ「…クライトココワイ…」<br>
ベジータは本当に縮まっている。<br>
これで王子などとほざくのだから笑いもんだ。<br>
銀「まぁったく…ほらっ、手ぐらいなら繋いであげるぅ」</p>
<p>J「じゃあ二番ペアスタートだ」<br>
蒼「行こう」<br>
蒼星石が手を差し出す。<br>
斑目は躊躇するも手を握った。<br>
蒼星石の手が震えている…やっぱり女の子だ。<br>
そんな不安を和らげるために、斑目は痛くない程度に強く握ってやった。<br>

斑「行くか、蒼星石」<br>
つとめて明るく話す。<br>
蒼星石は斑目の手と言葉にいくらか安心したのか、元気よく返事した。<br>

蒼「うんっ!!」<br>
J「んじゃ次は三番な」<br>
笹「真紅さん行こうか…ってあれ?真紅さんは?」<br>
ジュンがルートを指差す。<br>
J「お前置いてかれてんぞ…」<br>
見ると真紅はもう十メートルくらい先を懐中電灯も持たずに歩いている。<br>

笹「ああっ、真紅さん…放置プレイってやつですか?僕嬉しいです!!ゾクゾクッ」<br>

笹塚はキモいことを口走ると、真紅を追い掛けて行った。</p>
<p>
紅「ちょっと!早く懐中電灯貸しなさい。暗いじゃない」<br>

真紅は追いついた笹塚から強引に懐中電灯を奪う。<br>
そしてまた一人でスタスタ歩いて行ってしまった。<br>
笹塚はどう観ても喜んでいる…。</p>
<p>
スタート地点からその様子を観ていたジュンと翠星石は何も言うまいと心に決めていた。<br>

J「さて気を取り直して…翠星石行くぞ」<br>
翠星石は急に呼ばれてドキッとした。<br>
翠「いっ、いきなり呼ぶなですぅ、ちび人間!!」<br>
ジュンは翠星石のいきなりの変わりように疑問を抱いた。<br>

J「どした?……あっもしかしてお前怖いんだろw」<br>
翠星石は図星をつかれた。<br>
みんなの前では強がっていたのだが、自分の番になると、動揺を隠せなくなる。翠「そっ、そんなわけね~です!!お化けなんかこれっぽっちも怖くないですぅ~」<br>

だが体は正直だ。<br>
足がガクガク震えている。<br>
雛「うゆ~、大丈夫なの?翠星石ぃ…」<br>
翠「ちびちび苺もうるさいです!ジュン!!さっさと出発するですぅ」<br>

そう言うと置いてある懐中電灯を付けた。<br>
J「分かったよ、悪かった。じゃあ薔薇水晶、十分たったら出発してくれ。…さて、行くか翠星石」<br>

ジュンは歩きだす。<br>
翠星石は懐中電灯を持っていながら、ジュンの後ろを歩いている。</p>
<p>やがて何も見えなくなった。<br>
流石にジュンも足元が不安定になる。<br>
J「翠星石」<br>
翠「ひゃいっ!!」<br>
素っ頓狂な声を上げる翠星石。<br>
J「悪いんだけど、横に来て足元照らしてくれないか?」<br>

ジュンは翠星石の声には敢えてふれない。翠「しょっ、しょうがない奴ですぅ。」<br>

翠星石が横に並ぶ。<br>
J「じゃあ改めて行きますか」<br>
ジュンが歩き出すと左袖が引っ張られる。何かと思って見ると、翠星石が俯きながら袖を引っ張っていた。<br>

どうやらジュンの横に来たので盾がなくなって動けないらしい。<br>

ジュンはそんな翠星石を見て驚いた。<br>
普段、人一倍気の強い翠星石がこんなにも縮まっている。<br>

だが、同時に驚きと同じくらい可愛く思えた。<br>
理性がなかったら、そのまま抱きしめていたかもしれない。<br>

ジュンは袖を力いっぱい握る翠星石の手を外し、代わりに左手で右手を握ってやった。<br>

翠星石は驚いて顔を上げたが、抵抗はしなかった。<br>
さらにジュンは翠星石から懐中電灯を取り、主に翠星石の足元を照らしてやった。<br>

J「さっ、行くか」<br>
優しい声だった。<br>
翠星石はゆっくり頷き、ジュンと共に歩き始めた。<br>
それからの翠星石は少し落ち着いたようだった。<br>
だが、いつもバカにしている(まあ愛情の裏返しですが…)ジュンに手を握られているのがよっぽど恥ずかしいらしく、一言も喋らず、ジュンの会話には首を振るだくで答えていた。<br>

ジュンはなるべく翠星石が怖くないように、いろいろ喋った。<br>

それこそ、急にしおらしくなった翠星石が可愛くてしょうがないらしい。<br>

二人が手を繋ぎ始めてから十分もすると、森の中のお墓の一つに昼間、自分で置いた札を発見した。しかし、二人でお札に近づくときに翠星石が空き缶を蹴飛ばし、大きな音に驚いた鳥達が一斉に飛びたった。</p>
<p>
これには二人とも驚き、握っていた手を放してしまった。<br>

ジュンは驚いただけですんだが、翠星石は地面に尻餅をついてしまった。<br>

J「大丈夫か!?」<br>
手を差し出す。<br>
しかし、翠星石は立てない。<br>
J「どうした?どっか怪我したか!?」<br>
翠星石は首を振る。<br>
翠「…怖くてこっ、腰が抜けちゃったみたいですぅ…」<br>
J「へっ?」<br>
翠「だから…腰が…抜けた…ですぅ…」<br>
翠星石が恥ずかしそうに答える。<br>
J「プッ…アハハハハwアハハハハハw」<br>
ジュンは盛大に吹き出した。<br>
翠「わっ、笑うなですぅ、ちび人間!!」<br>
それでもジュンの笑いはおさまらない。<br>
ツボに入ったようだ。<br>
翠星石は怒ってそっぽを向く。<br>
ひとしきり笑うと、ジュンは翠星石の前にしゃがみ込んだ。<br>

翠「何のつもりですか…」<br>
J「何のつもりって、おんぶだよ。翠星石は歩けないんだろ。だったらさっさと乗った、乗った」<br>

確かにこのままでは何時治るかわからない。<br>
翠星石はジュンの首に手をかけた。</p>
<p>翠星石は返事の代わりに腕に力を込めた。<br>
J「せーのっ!!」<br>
掛け声と共に一気に立ち上がる。<br>
おかげでおぶることには成功した。<br>
しかし…<br>
J「あれ?意外と…」ここまで言って口を紡ぐジュン。<br>

翠「なんです?」<br>
翠星石の当然の疑問にあたふたするジュン。<br>
J「いっ、いやっ、何でもないっ…よ!?」<br>
不審に思った翠星石はジュンの首を絞めた。<br>
翠「死にたくなかったら言いやがれです~!!」<br>
J「…ちょっ!?…翠…せ…いせ…き、わかっ…た。…言う…から…」<br>

苦しそうな言葉を聞いて絞めを緩める。<br>
J「ゲホッゲホッ…ハァ…ハァ…だから、思ってたよりも翠星石が軽いなっ…て思っただけだよ。言うと怒ると思ったし…」<br>

翠星石は内心ホッとした。<br>
重いと思われると心配していたからだ。<br>
翠「あっ、当たりめ~です。翠星石は42キロですよ」<br>
J「へぇ~、軽いんだな。」<br>
翠「おっ、お世辞はいいからさっさと歩きやがれですぅ…」<br>

明らかな照れ隠し。<br>
ジュンはここにも翠星石の女の子らしさを見つけた。<br>
思えば、今までにもこんな態度はあったかもしれない。<br>
だが見落としていた。<br>
ジュンは自分の鈍さを恥じた。<br>
翠星石はずっと気が強く、口の悪い奴としか思っていなかったのだ。<br>

しかし、現実には翠星石は誰よりも女の子らしかった。</p>
<p>J「ごめんな…」<br>
自然と口に出た。<br>
だが、至極小さかったため、風で木々が揺れる音にかき消された。<br>

翠「??何か言ったです?」<br>
J「…何も…」<br>
翠「???」<br>
翠星石は不思議そうにしていたが、それ以上は聞こうとしなかった。</p>
<p><br>
五分ほど歩くと、急に翠星石がジュンに体を預ける様にもたれかかって来た。<br>

J「!!!???」<br>
乙女達の中でも一番大きい(まあ、ほかの六人がないだけだが…)がジュンの背中に押しつけられる。ジュンは体をこわばらせた。<br>

翠星石が大胆な行動に出たのだろうか?<br>
それとも…<br>
彼女のいない高校生には刺激的すぎる行為に、ジュンは必死に思考を巡らせた。<br>

そのとき森はジュンの心とは正反対に、風が止み、静寂が訪れた。<br>

そのおかげてやっとジュンは翠星石の行為の意味を知ることが出来た。<br>

翠「スー…スー……」<br>
小さな寝息だ。<br>
翠星石が寝ていることを知ったジュンはドッと体の力が抜けた。<br>

J「はぁ~…何だよ、期待させといて…」<br>
そうは言うものの、ジュンは普段突っかかってくるおてんば娘が、自分の背中で寝ているという状況をとても微笑ましく感じていた。</p>
<br>
<p>屋上にて<br>
J「あのときはめちゃくちゃ疲れたんだぜ?腰が痛くて、痛くてしょうがなかったよ」<br>

翠「ジュンは鍛えてね~からですぅ。今だって体育サボってるですしぃ…なさけね~ですよ。なったばかりとはいえ、翠星石の…かっ、彼氏なのですから、しっかり鍛えるですぅ」<br>

J「ったく…わかりましたよ。鍛えますよ。」</p>
<p>J「…でもさぁ…」<br>
ジュンが思い出したようにつぶやいた。<br>
翠「なんです?」<br>
J「あんときの寝顔可愛かったよw」<br>
ジュンの笑った顔が翠星石の恥ずかしさをアップさせる。<br>

翠星石は火がついたように顔を赤らめた。<br>
翠「そっ、それは言わない約束ですぅ!!早く忘れろです!!!」<br>

J「…約束?いつしたっけ、そんなの…」<br>
翠「……いっ、今です!翠星石が一人でしたですぅ!!だから言うなですぅ!!」<br>

ジュンは少し考えて、逃げる体勢になった。<br>
J「やーだよっ。あんなに可愛い翠星石を忘れられっか!」<br>

言い切るとすぐにジュンは逃げた。<br>
翠「あっ!!待つです!!ジューン!!!」<br>
翠星石も追いかける。<br>
二人にはこんな関係が一番いいのだろう。<br>
屋上には暖かい日差しが降り注いでいた…</p>
<p>~Fin~</p>