ローゼンメイデンが普通の女の子だったら @Wiki内検索 / 「世界は色で出来ている」で検索した結果

検索 :
  • 百合
    ...とクロスワード』 《世界は色で出来ている》 赤い靴履いてた女の子 【ある日の幕間】 あなたとみるゆめ 『奇妙な熱』 『Just believe in love』 sinineta biero パン派vsごはん派 ギャグ 「30分の休憩を…。」 友情?銀薔薇 『Lelien Maiden』 双子、銀薔薇、雛金 ユキイチゴ 雪華綺晶×雛苺 biero 水銀燈とめぐの夢 「水の翠に対する陰謀」 水銀燈×翠星石 今日は日曜日。 銀薔薇 花火とりんご飴と夏祭り。 双子 『貴女のとりこ』 雪華綺晶×巴 sinineta guroino 彼が見 双子で一応微エロすら無し little-sterns 双子 ~文化祭~ 蒼翠でサブで水真 寝過ごし蒼と翠 双子 『愛って、なんですか?』 蒼星石×めぐ sinineta 泣きながら二人、笑った。 真紅×雛苺 それは天気のいいある日のお話。 双子でほのぼの ...
  • ―/ライラック5
     この世界の、風が無かった。  だから思ったのだ。ああ、これはきっと夢なのだろうと。 『本当に、それは夢だったの?』  そう言われてしまえば確かな返事は出来ないのだけれど、そんなことを僕に聞いてくれ るひとも居ないから。  世界の中で、僕と君の二人きり。いつも自分が見ている風景と何ら変わりは無い筈なの に、何処かしら『何か違う』雰囲気が漂っているのは何故なのだろう。  硝子が。  上を見上げれば、空が青色を見せている素振りで。実は僕らに嘘をついていた。  世界が、嘘を、ついていた。 「世界は、硝子で出来ていたのよ。初めはみんな、透明だったのに。  ……ひとが。ひと、という存在が、それに色をつけただけ」  そんなことを語る君の言葉を信じることにしたのは。この世界で動いているものが、 僕ら以外に何もなかったから。もっとも、それ以前に。僕が君の言葉を、信じないこ となんて無いの...
  • 第十三話  『痛いくらい君があふれているよ』
    「うーん……どれが良いかなぁ」 ケーキが並ぶウィンドウを覗き込みながら、蒼星石の目は、ココロの動きそのままに彷徨う。 どれもこれも、とっても甘くて美味しそう。 だけど、水銀燈の好意に応えるためにも、翠星石に喜んでもらえるケーキを選びたかった。 「……よし、決めたっ。すみません、これと、これと……これを」 選んだのは、苺のショートケーキ。祖父母には、甘さ控えめなベイクド・チーズケーキを。 それと、絶対に外せないのは、姉妹と亡き両親を繋ぐ、思い出のケーキ。 甘~いマロングラッセをトッピングした、モンブランだった。 (これなら姉さんだって、少しくらい具合が悪くても、食べてくれるよね) そうでなければ、苦心して選んだ意味がない。 一緒に、ケーキを食べて……にこにこ微笑みながら、仲直りがしたいから。 いま、たったひとつ蒼星石が望むことは、それだけだった。 会計を済ませて、ケーキ屋のガラ...
  • s.d.1
      自分の店を持ちたい、というのが夢だった。ただ、それが実現出 来るのは相当自分も熟年に達してからだろうとは思っていたのだが。   自分の将来設計の為に(と言ってもあくまでマイペースで)普通に 働いていたところ、祖父の訃報が耳に入った。   もともと祖父は時計屋を営んでおり、その死をきっかけに店に空 きが出来た。   僕自身は時計を作ることに興味は無かったが、店にはよく遊びに 行っていた。おじいちゃんっ子、と言えばそうだろうか。 『僕もいつかお店を持ちたいんだ。喫茶店なんかいいな』   そうか、頑張れと。祖父は微笑みながら僕を応援してくれた。   哀しみにくれる僕に対し、祖父は遺言状を残していた。自分が死 んだあとは、時計屋の土地と建物を、僕に譲ると。その書状は、今 でも机の引き出しに大事にしまってある。   時計屋を改装して、客が佇めるス...
  • 最終話 生きる事は・・・
    「超機動戦記ローゼンガンダム 最終話 生きる事は・・・」     「これでよしっと・・・」 自室のドレッサーで薄く化粧をする少女がいた。軍部に身を置きながらも年頃の女の子。身だしなみは 忘れない。最も、今日はオフだからなのだが。彼女の名前は地球連合軍「Rozen Maiden」第六番大隊 隊長、柏葉巴中佐。11年前のアリスの乱からはじまった戦乱をレジスタンス「メイデン」の旗艦、サクラダの 副艦長として活躍し、現在はその手腕を買われて六番大隊の隊長に抜擢された。もっとも、彼女の場合は 戦闘のための隊長というより、ある人物の護衛。悪く言えばお守りとしての役割の方が大きい。 1年前、稀代の天才科学者ローゼンの作りし最高の人工知能「アリス」の暴走による戦乱は様々な レジスタンスによって鎮圧された。そのレジスタンスで最も活躍したとされるメイデンから因んで、現在連合軍は 自らを「Rozen Maid...
  • =さらば!我が愛しき日々よ=第十話
    世界は巡る。 しかし、ジュンの部屋だけが、まるで隔離されたかのように、動く者がいなかった。 ジ「な、何やってんだ?水銀燈。」 ジュンはなるべく今の心境をあらわにしないように、引きつった笑顔で尋ねた。 銀「あう・・・・。」  水銀燈は顔を真っ赤にしながら、後ずさりしていた。 ジ「それ、ぼ、僕の制服だよな・・・」  水銀燈は、何も言うことが出来ない。 銀「・・あう・・・うう・・・・・ふ、ふええ~ん。」 ジ「!!!!」  水銀燈はその場に座り込み、急に泣き出してしまった。 ジ「え、ちょなんで・・・」  ジュンはあたふたするしか出来ない。 そうこうするうちに、嫌な予感がジュンの頭の中をよぎった。 『ドドドドド、バァン!!』 ジ「!!!!」 真「水銀燈!どうしたの!?」  ジュンの部屋のドアを勢いよく開けたのは、真紅だった。後ろに雪華結晶もいる。 雪「まあ!水銀燈...
  • ―/― はじまりのうた――夢の続き
     色々なことを、思い出していた。学校での、出来事。保健室での出会い、思い出。それ よりももっと前の、曖昧な記憶。  雛苺が渡仏してから、年明けの春。あと半年とちょっともすれば、彼女は日本へ帰って くる。僕は高校二年生になって、来年は受験生だ。……といっても、大学を受験するつも りはないから、周りよりはある程度余裕ではある。そのことを伝えに、僕はこれからフラ ンスへ向かう。我ながら、相当大胆な行動に出たものだと思う。  出世払い……というとプレッシャーなのだけれど、今回の旅費については家のひとに相 当無理を言ってしまった。姉はなんだか喜んでいたみたいだったが。  本当はバイトをして自分で稼ぎたかったが、山奥の学校ではそれも敵わず。その辺りは、 流石に不便であると思う。 『卒業したらバイト始めなよ、桜田君。いいとこ紹介してあげるから』 『ジュンが働くなら、私も其処でバイトするわぁ』  ...
  • 第18話  『あなたを感じていたい』
    逸るココロが、自然と足取りを軽くさせる。 募る想いが、蒼星石の背中を、グイグイ押してくる。 あの街に、姉さんが居るかも知れない。 もうすぐ……もう間もなく、大好きな翠星石に会えるかも知れない。 蒼星石の胸に込みあげる喜びは、留まることを知らない。 早く、触れ合いたい。 強く、抱きしめたい。 今の彼女を衝き動かしているのは、その想いだけだった。 「結菱さん! 早く早くっ!」 「気持ちは解るが、少し落ち着きたまえ、蒼星石。  そんなに慌てずとも、この世界は無くなったりしないよ」 苦笑する二葉の口振りは、春の日射しのように温かく、とても優しい。 蒼星石は、先生に叱られた小学生みたいに、ちろっと舌を出して頸を竦めた。 言われれば確かに、はしゃぎすぎだろう。 端から見れば、双子の姉妹が、再会を果たすだけのこと。 でも、逢いたい気持ちは止められない。蒼星石をフワフワとうわつかせる。 無邪気...
  • 第九話 命の天秤
      例えば私は本が好きで、それは自身に様々な知識を与えてくれた。   私は学校の知り合いにも思う様話しかけられない性格だったし、本来は友達付き合いで 学んでいけるようなことだって、本を読めばある程度は理解出来ていたつもりだったのだ と思う。   そこには物語があったし、それが人と人との関係の全てと言い切ってしまえば……その 辺りは言いすぎであるかもしれない。けれどどんなジャンルのお話であれ、一冊の本を読 めば一冊分の情報と知識は積み重なっていくものなのだと信じていたのだ。   あとは、大好きな姉の存在。私はお姉ちゃんにべったりだった。年が離れている訳では ないけれど、先に生まれたという事実だけで、私よりも数倍大人びていると感じられる。   いつでも、姉についていけば間違い無かった。幼い頃に自分に特別な力があるのだと気 付いてしまった姉と私。姉はまず...
  • 過去ログ4
    ひとりごと。過疎っていわれてちょっと凹みつつ。自分は新参だけど。ここのスレ、すごく好きだな。がんばります -- 名無しさん (2006-03-28 08 57 17) 俺もこのスレが好き、人間化できて普通に双子いちゃいちゃさせたりジュンと恋愛させたりみんなで遊ばせたりできるこのスレが大好きですなのでめげずにしてきます。保守を。ごめんごめん俺もSS書いてみるから石投げないで -- 名無しさん (2006-03-28 09 28 57) 新人さんも来てくれてるみたいでうれしい。僕もまだまだがんばるよ。 -- 名無しさん (2006-03-28 09 41 44) 誘導されてエロパロ行ってきたけど過疎だが良作が多いと言われていたつまり今の女の子スレは「漁より質」なんだよ!!! -- 名無しさん (2006-03-28 09 43 37) >漁より質 -- 名無しさん ...
  • 第四話 違和感
      さて、これで眼の前にあった脅威は回避出来た。 「真紅、大丈夫かしら……?」 「ん……眠くなって、きたの……だわ」 「そう……あとは"庭師"とジュンに任せて、ゆっくり休むかしら。  ……良い夢を、真紅」   最後の私の言葉に対する彼女の返事は無かった。そして、彼女の頭上に "世界"へ通じる穴が再び開く。 「眠っちゃったね、真紅ちゃん」 「この娘も……相当に強い精神力の持ち主かしら」 私は彼女の左手の薬指につけられている指輪を見る。これが真紅という少女 を縛る呪いの指輪だけど……ひょっとして、彼女を守ろうとする力も働いている?   私は、さっき彼女の指輪から紡ぎだされた糸のことを思う。   しかしながら、とりあえず。あとは中に居るジュン達の頑張り次第だ。出来るだ け最速で片付...
  • あの世に嫌われているけど何か質問ある?
    あの世に嫌われているけど何か質問ある?(あの世に嫌われている方々のお話) ねえ… 「ん?」 そういえば入院ばかりしているけど、単位は大丈夫なの? 「嫌なことを思い出させるな…ま、とりあえず先に取れるだけ取っておいたから問題ないと思うけど」 そうなんだ 「うん。じゃ、柿崎は?」 私? 私は問題ないよ。大学は今休学してるし 「そうなんだ」 そういえば… 「ん? 今度は何?」 今日新しい人が入院するらしいよ 「この病室に?」 この病室に 「へ~。誰かな?」 ラプラス「私ですよ!」 (゚д゚)「(゚д゚)」 …見なかったことにしようか… 看護婦「あ、ラプラスさん、そんな所にいらっしゃったんですか? ほら、あなたの病室はここじゃあありませんよ」 「…あいつ…初めて見たときにはどっかミステリアスな雰囲気を持ってたけど…」 認識を改めないとね… 「で、新しい...
  • 第三十五話 真紅
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第三十五話 真紅」     「次弾装填!!ターゲット正面、各砲座砲撃を開始!!」 サクラダの残った発射管から一斉に弾が打ち出される。しかし、それも従来の勢いはない。 「損傷率計算終了。現在63%!危険域です・・・」 巴の声がする。しかし、JUMはそれでも引き下がるわけにはいかなかった。 「限界まで撃つんだ!敵機に撃たせるな!撃たせなきゃ当たる事もない!」 もはや無茶苦茶な理論。しかし、ある意味では全くの正論でもあった。 「敵艦からの砲撃きます!・・・・直撃します!」 「くっ・・・・回避!!!!」 ディアーズの主砲がサクラダを捕らえる。回避運動を行うがいかんせん間に合いそうにない。 「うおおおおおおおおおおおお!!!!!」 その射線上に金色に機体が割り込み、両手を掲げる。スーパーサイヤジンの腕部Iフィールドバリア。 バリアは主砲を防ぐものの、過度の負担により右...
  • 第七話 鏡の姉妹
    「……ねえ、お姉ちゃん」 「どうしましたか?」 「……私達のしたことは――間違い、……だったのかな」 「答えは誰にもわかりませんよ。この世の正しさを保障してくれる神様だって――   ひとの数だけ、居るのですから」   久しぶりの休暇――という訳でもないが。私達は久しぶりに、自宅でのんびりと した時を過ごしている。   しかし、仕事とあればすぐに飛んでいくし。妹もそのことは重々承知している筈。   窓の外には、新月に近くなっている細身の月が見えて。指輪の光のような白く艶かしい ひかりを放っている。折角良い眺めだからということで、部屋のカーテンは開け放してお いた。室内の照明は元より薄暗いものだったし、これならばご近所の迷惑になるというこ とも無いだろう。   眼の前には、グラスを持ちながら、これでもかと言うくらい顔をまっかっかにし...
  • ジュンと水銀燈が同居しているようです。
    ジュンと水銀燈が同居しているようです。 J「おい水銀燈。いい加減起きろよ」 水「(うるさいわねぇ………少し驚かしてやろうかしら)」 J「水銀燈遅刻s」 銀「私に触れるなっ!」 J「す、水銀燈?」 銀「朝からごちゃごちゃと五月蝿いわねぇ………ジャンクにするわよ?」 J「………ごめん」 銀「えっ?あっ、分かればいいのよぉ」 銀「(なんでそんな悲しそうな顔するのよぉ。いつもみたいに怒ればいいのにぃ………)」 J「じゃあ………先に学校行ってるから………」 銀「ちょ、ちょっとj」 バタン。 銀「………なによぉ。これじゃあ私が悪者じゃなぁい。ジュンのばかぁ………グスグス」   ジュンが水銀燈に謝るようです コンコン。 銀「誰ぇ?」 J「僕だ。入ってもいいか?」 銀「………好きにしなさぁい。」 銀「(今朝の事謝らないといけないわねぇ………)」 J「じゃあ入るぞ」 ガチャ。 銀「今朝はg」 J「今...
  • 第一話 真紅
      五月に入って、ここ数日は晴れ渡った空も顔を潜めている様子だ った。少し早い梅雨入りという訳ではないのだろうけど、まだ暫く はこの天気も続きそうな雰囲気。   何処までも広がる曇天に、霧のような小雨粒が宙を舞っている。 ひとによっては、雨そのものを憂鬱の象徴のように捉えてしまうら しいが、私はそれほど嫌いでは無い。   靄のように空間を満たす雨は静けさを増してくれるような気がし たし、庭の薔薇も潤してくれるから。   ジムノペディをかけた。ボリュームは大きくしない。屋根をうち つける雨粒が響く音と同じくらいか、ほんの少しだけそれを上回る 程度にしておく。   サティのピアノの旋律が、静かに踊る。こんな穏やかな午後には、 香りたつ紅茶がよく似合うものだ。 「ジュン、紅茶を淹れて頂戴」 「ん……そろそろ三時か。お茶請けもいるか?」 ...
  • 第三話 アリスの支配
    超機動戦記ローゼンガンダム 第三話 アリスの支配 「ピチカート起動!メイメイ照準!てぇーーー!!」 サクラダに迫り来るミサイルをレーザーが打ち落とし間髪要れずに6連装のミサイルが発射される。 未だに続く戦闘。背後の敵は翠星石と蒼星石が殲滅したものの、数に勝るアリス軍との戦闘は続いていた。 「っ・・・しつこい!」 白を基調にされたキラキショウがバーズにライフルを放つ。放たれた銃弾は頭部を撃ち抜くが撃墜には 至っていない。人工知能の詰まれたバーズにとって頭部などは飾りでしかない。至る所に装備されている センサーやカメラがある限りバーズは動き続ける。 バーズはセンサーで敵機を察知するビームライフルとマシンガンと二つ装備されている銃器のうち マシンガンを選択するとキラキショウへ銃口を向け連射する。パラララララと小刻みな音と共に弾が排出される。 キラキショウは回避運動をするが、いかんせんばら撒かれ...
  • エイプリルフール短編
    四月馬鹿。つまり、エイプリルフール。 僕はこの日が大嫌いだ。 というのも全て、ここ数年のアイツらに原因がある。 本当なら引き篭もってしまいたいけれど……始業式の日でもあるし、僕は仕方なく学校へと向かっていた。 その道中。 「あらぁ?相変わらず冴えない顔で歩いてるわねぇ?」 幼馴染の一人、水銀燈に朝から出くわしてしまった。 「……うるさいな……」 僕は彼女に不機嫌さを隠さない表情でそう告げ、これ以上関わらないように早足で歩く。 背後から「つまんないわねぇ」という声が聞こえてきたが、無視して歩く。 僕と、それから数メートル離れて水銀燈が、通学路を歩く。 嫌な予感が背中からひしひしと伝わってくるのが、何とも最悪な気分だ。 工事中と書かれた看板で封鎖された道を横目に、僕はいつもと同じ通学路を歩く。 途端に、足元が崩れ……僕は...
  • バーのある風景
    私の名は真紅。 普段は、紅茶を愛飲している。 けれども、たまにはお酒が飲みたくなるときがある。 そういうときは、いつものバーに行く事にしている。 駅のそばにあるビル中のひとつ、地下2階にその店はある。 取っ手のない漆黒の扉の中央に、Jade Sternと金色の小さな文字が刻まれている。 その分厚く、重い扉を押す。 「いらっしゃいませ」 名も知らない物憂げなジャズとともに、声が聞こえる。 けれども、薄暗い照明に目が慣れないため、すぐに動けない。 しばらく辺りを見渡す。 蒼と緑の灯りが所々にある。 数人が座れるカウンターに、テーブル。 店内に、植物は見当たらないが、カウンター奥の棚には、 長髪の女性の写真とともに、使い込まれた如雨露と鋏が飾られている。 あの不思議な扉のせいなのか、照明のせいなのか、店内の雰囲気のせいなのか どことなく、日常世界とバーの空間は別次元のような気がする。 ようやく、...
  • 第十六話  『サヨナラは今もこの胸に居ます』
    どちらかを、選べ―― 右手は、大好きな姉に辿り着くための片道切符。 左手は、頑ななまでに蒼星石を繋ぎ止める、論詰という名の首輪。 本来なら、迷うハズがなかった。蒼星石は、翠星石に会うために、追いかけてきたのだから。 自らの羨望が生み出した、偶像の姉。彼女を選んでしまえば、目的は、ほぼ達成される。 左手を掴んでいる、姿の見えない者の声になど、耳を貸す義理も、謂われもない。 徐に、蒼星石は右手を挙げた。眼前に掲げられた、偶像の手を取るために。 でも――――本当に……これで、良いの? 指が触れる寸前、胸の奥から問いかける声が、蒼星石の腕を止めた。 それっきり、蒼星石の右手は、ビクともしなくなった。明らかな握手の拒絶。 置き去りにされる寂しさ、悲しさ、辛さをイヤと言うほど味わってきたからこそ、 祖父母や親友たちにまで、同じ想いをさせることに、罪悪感を抱いてしまったのだ。 たとえ、それ...
  • ―/ライラック1
     夏の訪れを感じさせる蒸し暑さの中、ここ最近降り続いている小雨がそれを助長してい る空気だった。雨の一粒一粒は、勿論冷たいもの。だけどそれは、ちっとも涼しさをもた らしてはくれない。  まあ、それでも。もともと小雨模様が嫌いではない僕にとっては別に気になるものでも ないし、何時も通りに今日も学校に向かえばいいだけの話。  悪く言えば、色々なことについて僕は無関心なのだと思う。昔(と言っても、僕自身それ ほど妙齢に達しているとは言えないが)好きだった服のデザインなどについても。思いつい たらその辺にある紙に書き散らしていたのをやめてしまったのは、一体いつからだろう。  デザイン画に付随した裁縫なんかも僕の趣味だったが、それが友人達に知れ渡ってしま ったときは、それはもう酷く気持ち悪がられたものだった。それが原因で学校に行きたく なくなってしまった時も確かにあって。何を食べても吐いてしまう...
  • 第三十四話 せめて、自分らしく
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第三十四話 せめて、自分らしく」     「レンピカ、スィドリーム照準!目標前方敵艦隊!てえええええ!!」 サクラダから2連装の副砲が放たれる。放たれた光は敵機を数機撃ち抜き空へ消えていく。 「砲撃、来ます!」 「ピチカート起動!ビームは回避しろ!」 サクラダの船体が傾きながら迎撃システムが作動する。飛来したミサイルの9割は打ち落とすが残りは 被弾する。ビームもある程度は威力が軽減されるものの、船体は破損箇所が増えてきた。 「ベリーベル4から8番沈黙!スィドリーム2番沈黙!損傷率は40%を越えました!味方機を 呼び戻しますか!?」 「いや、ここは僕らだけで食い止めるんだ!!メイメイ装填!うてええ!!」 今度は6連装のミサイルランチャーを放つ。ベルリンの空にいくつかの花火ができる。 「ちっ、キタネエ花火だ。JUM!無理はするな!」 サクラダに近づいてくる敵機を...
  • 第五話 魔術師
      "幸福"。……それを追い求めた男の、――昔話。   男は、思索を好む人間だった。哲学の本を貪る様に読んでは、"幸せ"とは、 一体何なのであろうか? ということを考えた。   自分の周りに置かれた環境は特に何の変哲も無く、それなりに幸せといえ ば幸せだったのかもしれなかったが、それを自覚することが出来ず、そして苦 悩した。   辺りを見渡せば、まともな職にもつけず、日々食べるのも困るような貧し さに苦しむ人はあまりにも多すぎた。   世の中すべての人々が、幸せになることを神は許してはくれない。いつし か男は、そんなことを考えるようになる。世界はもっと幸せに満ちてもよいの ではないか? だが、実際にそれが実現されることは無い。それはゆめやまぼ ろしの類だから。   男は勤勉で、しかも普通のひとには無い不思...
  • L/R.8
        L.―  眼が覚める。  ――此処は、何処だっけ。  ああ。また、眠ってしまったんだ。此処最近は、己の身体が己のものでは無いような気がする。てのひらを開いて、結んで。こうやって感じる何かで、とりあえず僕がまだ生きているという感覚を保つ。  姉さんと、話をしていたんだっけ。――彼の声も、聴こえたような気がしたんだけどなあ。何だか、不思議な感じ。  とりあえず、ベッドから身体を起こす。血を、沢山吐いた筈だったのだけれど。来ているものも、布敷きも、ぼんやりとした暗闇越しからわかる位に真っ白だった。  廊下へ出る。姉さんは、もう帰ってしまったのかな……声が、聴きたいな。  二階の廊下。階段とは反対の突き当たりに、電信が置いてある。新しもの好きの院長が、仕入れてくれたもの。これは僕にとって、とても大切な繋がりだった。  ……?  鳴って、居る。電信が。静かに、音が響く。  ...
  • 「彼氏彼女達の事情」
    『人様の事情に首を突っ込むな』とは人間が他人との生活の中の摩擦を経て得た尊い教訓の一つでしょう。触らぬ神に祟りはなく、親切心を働かせたところで自分が対応仕切れない問題事を背負いこむなど具の彫刻と言えるからです。 他者との距離に重きを置き、日頃より人付き合いの間合いを慎重に定め、心を鬼にして妹にも自立と成長を促すために距離を置く稀代の殊勝で努力家で正直者の教育者兼酒場の看板娘、つまりこのわたくしは、現在、世界樹で行われるアイビーリープの大会の練習真っ盛りです。 当然他人を気遣うどころか自分の事で精一杯なわたくしは、上記の精神にしだかい清く正しく美しく日々生活をしていました。 だから、わたくしの過失ではないのです。 例え手に余る事態を抱え込もうと、例えろくでもない事に巻き込まれようと。 何故ってだって、事情の方から足をはやしてわたくしを追いかけてきたので...
  • 奇しき薔薇寮の乙女 第一話
    第一話 「おはよう」 大体は、彼女のこの挨拶から朝が始まる。 最初は驚いた。 入学してから三日目、通学途中でいきなり声をかけられたんだから。 自分にかけられた挨拶だとも思わなかったし。 中学時代にあんな目に遭っていたから、高校では極力、誰とも接触を持たないようにしていたのに。 たった三日でブチ破られてしまった気さえしたな。 「ああ、おはよう」 最初は無視しようと思ったけど、それで二の舞になってもつまらない。 一応返事だけは返したんだけどね。 まさか、それが毎日続くようになるなんて思いもしなかった。 僕の計画はいきなりつまづき、それから2ヶ月の間、内心では混乱しっぱなしだ。 「今日も下ばかり向いちゃって。ツマラナイ男ね」 「じゃあ、なんで僕に構うんだよ」 関わり合いたくないという意思を含んで返した。 凄味は込められなくても、出来るだけ精一杯に。 少し悩むような仕草を...
  • 【たまにはこんな日曜日】
        どうして、こうなるのでしょう。  なんとなくわかってる。わかってるの。  材料よし。  器具よし。  今日は、今日と言う日は、なき言を言っている場合ではないのに。 「……」  今、はじめに考えていたのとは大分違う現実が、広がっている。 【たまにはこんな日曜日】 ―――――  ほんとうに、食べるのがすきだね。  何気ない一言だった。それを聞いたのは、駅前のラーメン大食い一番勝負の看板のかけられた店を瞬殺した直後のこと。あの店長さん、本当に眼をまるくしてた。比喩じゃなく、驚くとそうなるんだ、なんて思ったりしていた。 「……きっと食べるのがすきなら、作る方もいけるんじゃないかな」  正直、あんまり考えたことがなかった。そう言われてみれば、私の眼の前には『食の道』が果てなく続かんとばかりに、気付けば食べ物がある。  ただ、それはひとえに、自分の生活が恵ま...
  • 翠星石
    上にいくほど、最近に掲載された作品です。 冬の魔法 ですぅたちの夜 不思議の国のデスゥ もし『ですぅ』が無かったら 翠星石とペプシソ 傍に居る  (NG→sinineta guroino) ツンデレ道 素直になりたい 時代劇だよ 翠星石 【翠・どりぃむ】 灯台の下 あの日に時を戻して LUNA SEA 100万ドルの夜景よりもきれいな場所で ちょっと暑い、夏の日。 『春よ、来い』 「シャーロック・翠星石」 台風とバリケード 幼馴染みはおてんば姫 ジャイアニズム  『粉雪のドレス~聖夜の奇跡~』 ドッペルゲンガー 幼馴染 リップクリーム あなたを感じていたい 桜田ジュンの心霊体験 『織姫と彦星じゃないけれど』 翠星石が怒った日 翠星石が変わった日 「暗殺部隊-Rose Knight-」 妄想グリーン ある暑い日のこと 『また逢えたらいいね』 NGワード:SHININETA but JUN...
  • 第三十一話 失われた時へのレクイエム
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第三十一話 失われし時へのレクイエム」   「白崎、梅岡。そろそろだ・・・行くぞ・・・」 槐がスペリオルへ搭乗し、システムを起動させる。 「分かってるよ。しかし、僕らがここまで手こずるなんてねぇ・・・」 「ふふっ、いいじゃない。先生は逆に楽しみだよ。満ち溢れた希望を潰すのはこれ以上ない快感さ♪」 白崎と梅岡もそれぞれラプラス、プラムに搭乗する。 「アリス、お前も大丈夫か?」 「問題ない。貴様らが死のうと私は一人で彼奴等を討ち果たし、再びお父様が望んだ世界を作る。」 デッキで待ち構えているアリスガンダムから少女のような声が聞こえる。 「はははっ、それは頼もしい・・・」 「何なら、お前達は艦内にいても構わない。人間など脆いものだからな。私には至高の音に聞こえる 音が奴らには地獄からの誘いへ聞こえるらしい・・・ふふふっ・・・」 「成る程、音波兵器かい?確かに、以前「...
  • フラグメント/― 泡沫の夢
     彼の声は遠くなり、そして新しい声が聴こえ始める。  私は夢を見る。遠い昔の、彼女の記憶。 ―――――― 「あ、……ジュン。また頑張ってるのねー」 「え? ……うん。もう少しで出来るかな。全く人遣いが荒いよ」  そんなことを言いながらも、彼はとても嬉しそうだ。  真夜中。此処は、雛苺の家。土曜の夜、次の日の学校は休み。彼はその日、泊りがけで やらなければいけないことがあった。  決して強制された訳ではない。ただ、彼の心が。それを望んだだけのこと。  両親は既に、眠ってしまっている。いくら中学生とはいえ、男子の宿泊を認める辺り、 その辺に疎いところが何とも『らしい』というか……それだけ彼が、信用における人物 あると評価されているということだろうか? 「お姉ちゃんも、ずっとこっちにいればいいのにね」 「そういう訳にもいかないだろうな。それにしても雛苺、向こうのひとってのはあん...
  • 【恋愛百景】Waltz 第一話
     きっかけは、些細な事だった。クラスの中で若干浮いている僕に、彼女は話しかけて来た。只それだけ。  もしかしたら、その時には既に恋が始まっていたのかもしれない。今思うと、そうとしか思えないのだから。 【恋愛百景】Waltz  いつもの学校……僕は適当に授業を受ける。勿論、学生の本分が学業にあるのは承知の上だ。だが、周りの世界が妙に色あせて見えるんだ。小さいころ、僕の思い描いていた未来は色鮮やかであったのに、気がついたらその色は、いやに煤けた灰色になっていたんだ。  でも、そんな毎日がまた色を取り戻すことになったんだ。僕の世界が変わったのは、まさにその時だった。 「貴方って変わってるわよねぇ。」  不意に聞こえる声。僕は声の主の方向を見据えて、こう言い返した。 「ろくすっぽ話した事無い人に対する第一声がそれ?」 「そうでしょう? いつもぽけっとしてるし」 「……。」  そう言...
  • s.d.4
     「有難う御座いました。またのお越しを」 最後の客が店を出る。今日はそろそろ店仕舞いだ。 「お疲れさまぁ。今日も忙しかったわねぇ……」 肩をぐるぐると回している水銀燈。全くだ、今日は月曜日だと言う のに。評判というものは恐ろしいものだ。 「お疲れ様でした、水銀燈さん。お陰様で、今日も繁盛しました」 「私が居なかったらお店が潰れるってこと、無いわよねぇ」 ジト眼でこちらを見てくる彼女。 「お客様が来るも来ないも、僕はそれなりにやっていきますから。   ま……大丈夫でしょう」 その辺りについては、割とのほほんと構えている。何しろ今までそ れほど客が居ない状態でも、やってこれたのだ。 「楽観的なんだからぁ」 そんな台詞を残して、彼女は着替えのために奥に引っ込む。今日彼 女が仕事中に消費したお酒は、バーボンのボ...
  • 第二十七話 絶対防衛戦
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十七話 絶対防衛戦」   「やれやれ、何とかドイツは事なきを得たね。」 ベルリンの基地でアリスの幹部が集まっていた。 「でも、どうするんだい?確かにまだここには兵器は山ほどある。それでも完全に囲まれてるじゃないか。」 梅岡が言う。しかし、槐は目を瞑り考え事をしているようだ。そして、ゆっくり目を開いた。 「問題はない・・・あれだけの規模の戦闘をしたんだ。レジスタンスも補給がなければそうそう攻めてきまい。 増してや、ここは我々の本拠地。完全に準備をしてから来ると睨んで間違いない。」 槐の話に白崎と梅岡は聞き入っている。 「やつらの補給の拠り所は中国基地だろう。そして物資を運ぶには・・・どうすればいいと思う?」 「成る程・・・いい手段だね。補給線を切れば相手はむしろ袋のネズミか・・・」 白崎が槐の意図を読む。 「じゃあ、襲撃にいかないと♪、はっ、補給物資をちらつ...
  • 第十一話 旋律(二)
    『その力を使うのは、僕が傍についているときだけにした方がいい』   彼と組んで闘うようになってからすぐ、私が言われた言葉。一人で居るときは使わない、 またそれでなくても、みだりに回数を重ねて発揮するものではないと。   多分彼は、私の力の本質を。彼と組む以前に私が能力を使っている様子を見たときから、 看破していたのかもしれない。   その証拠に、と言うか。私と組もうと申し出てきたのは、彼の方からであった。   それはまだ、私が……組織に所属して間もない頃の話。 「全く酷いなあ、白崎君は」   私はそんな文句をぶつぶつ言いつつも。ある場所を目指して歩きながら、当時のことを 少しだけ思い出していた。 『めぐ、今回はちょっと昔の相方と行ってくるよ。少しだけ待っていて欲しい』   待っていて、と言われてもなあ。多分彼には彼なりの考え方があって、...
  • L/R.4
      L.― 白い部屋の会話 「――嬉しい。来てくれたのね」  僕の姿を見て、いの一番に発した声がそれであった。 「気まぐれだよ、ほんの」  本当に、ただの気まぐれ。僕はなるべく、此処へ着たくないと考えている。海の近い、この療養所へ。  病に罹るのが、恐ろしい? 流行りの、治る筈も無い病に。  ――違う。僕は、……もう、見ていられないのだ。病に罹ったら罹ったで、それが僕の人生なのであるし。今僕の口元に巻かれている布当てだって、すぐ取り去ってしまっても別に構わない。  彼女は前に見た時――もう随分、遠い日のことであったようにも思う――と同じ様に、温藉な表情を浮かべていた。  艶やかな黒髪と、色白だった肌が、更に顔色の白さを――幾分悪い方へ――強調している。少し痩せたろうか。何となくやつれているように、見えなくも無い。 「今日はね、調子がいいの。咳もあんまり出ないし」 「...
  • 【真っ白なノート】
        そこには、ノートがありました。  大事なことを、書き残すための、ノートです。  大事なこと。  それは様々な、思い出。  ですが、そのノートには、何も残りません。  いつまでも、いつまでも。  書いた端から、消えていきます。  魔法のかかったノートは。  ずっと真っ白な、ままでした。 【真っ白なノート】 ――――  不思議な森の外に、女の子が住んでいました。  不思議な森が、何故不思議であるかを、その女の子は知りませんでした。  知らなければ、そんな不思議も『無い』ことになります。  だから女の子は、ある日足を踏み入れてしまったのです。  絶対に入ってはいけないといわれていた森の中へ。  女の子はそして、迷ってしまい――  女の子は、森に呑まれてしまったのです。  それは。森にとって、大切なものが壊れてしまう、少し前の、お話。 ―――  森に...
  • 三話「司書の先生」
    短編「図書館」シリーズ三話「司書の先生」 突然だが、私、真紅は図書委員だ。 元々本が好きで、中一のときに初めて図書委員になり… 気が付けば図書室、そして図書委員の常連となり早3年。 その間に図書室仲間ともいうべく、同じく本の好きな友達連も出来て、 図書館をよく利用する人の顔もかなり覚えた。 これは、そんな私の図書室でのある日の話。 「真紅ちゃん、これ手伝ってくれる?」 奥の司書室から声がする。今は貸し出しも少ない放課後の時間帯。 私は、隣の金糸雀に声をかけてから立ち上がって奥へと向かった。 司書室内では、つみあがる新しい本にカバーを付ける司書の先生の姿が。 「はい。わかりましたなのだわ。先生」 「ああん、もう先生って言わないでみっちゃんって呼んで~」 …変な先生である。図書委員や、他の図書室常連の子達と仲の良い気さくな先生であるのだが、 何故だかみっちゃんと呼ばれたがる。私が...
  • 【明け空のノート】
        ひとつの始まりがあれば、必ず終わりがある。  けれど。  ひとつの終わりの後に、新しい始まりがあるとは限らない。  とても空気がつめたいな、と思う。つめたい空気はとてもきれいで、私はとてもすきだ。そりゃあ、長い間外に出ていれば耳が痛くなってしまうときもあるけれど、両の手に吐き出す息は、いつだってあたたかい。  森に雨が降ったあと、急にこんな、冬のようにつめたくなる日がある。  今の季節はよくわからなくて、きっと森の外に出れば……何かしらの花が咲いているのならば、今の時期がどのようなものか、知ることができるかもしれなかった。  けれど、ここは森の中。ずっと続く晴れの日もなく、いつまでも降り続く雨もない。昨日あがった雨、そして現れたお日さまは、新しい始まりを示すものなのだろうか?  さあ。冷えた空気を吸い込みすぎて、胸の中までつめたくなってしまわないように――もう家に入...
  • あなたを感じていたい
    「とにかく、翠星石は僕がいない間に無茶苦茶するなよ。僕がいなくなったとたん にせいせいして、いろいろやんちゃしだすからな……」  ジュンはこれでもかというぐらいに私に釘を差す。 「うるさすぎるです、チビ人間」  本当にうるさい。  そこまで言わなくても分かっているですよ。  ――そんなに……しゃべらなくも……。 「また雛苺にいらないちょっかい掛けるなよ。雛苺から泣きの電話が入るのはうん ざりするのだからな」 「いちいちうるせえですよ!翠星石はそこまでひでえ奴じゃねえです」  ジュンのさらなる言葉に私は顔を膨らませた。 「ははは、本当に翠星石は可愛い奴だな」  そんな私の反応を見て吹き出すジュン。 「ジ、ジュンこそちょっかいかけてるじゃねえですか。だったらこうしてやるです」  私はそう言ってジュンの首元をくすぐる。 「ち、ちょっとやめてくれよ、ははは」 「もっとやってやるですぅ」  ...
  • 第十九話  『きっと忘れない』
    射し込む朝日を瞼に浴びせられて、蒼星石を包んでいた眠りの膜は、穏やかに取り払われた。 なんだか無理のある姿勢で寝ていたらしく、身体が疲労を訴えている。 ベッドが、いつもより手狭な気がした。それに、とても温かい。 まるで……もう一人、収まっているみたい。 もう一人? 朦朧とする頭にポッと浮かんだ取り留めない感想を、胸裡で反芻する。 ――なんとなく、ぽかぽか陽気の縁側に布団を敷いて昼寝した、子供の頃が思い出された。 あの時、背中に感じた姉の温もりと、今の温かさは、どこか似ている。 ココロのどこかで、まだ、翠星石を求め続けている証なのだろう。 (夢でもいい。姉さんに逢えるなら) もう少し、夢に浸ろう。蒼星石は目を閉じたまま、もそりと寝返りを打ち、朝日に背を向けた。 途端、そよ……と、微風に頬をくすぐられた。 それは一定の間隔で、蒼星石の細かな産毛を揺らしていく。 次第に、こそばゆさが募っ...
  • 第十話 旋律(一)
      私が今まで生きてきて、果たして妹にとって『善き姉』であったかという答えを、自分で出す ことは出来ないと思う。   妹は感情的な私よりもどちらかというと理知的で、些細なことで爆発しがちな私を諌めてくれ る存在だった。そんな妹のことは私は誇りに思っていたし、また自慢だった。   祖父から伝えられた、私達双子の姉妹の使命。それは"庭師"として、薔薇屋敷の当主を守るこ と。其処に住んでいた当主は、私に負けない位に結構辛辣な言葉を発する。最初は上手くやって いけるかどうか少し不安だったが、そんな誤解を解いてくれたのは妹の言葉。 『真紅は――優しいひとだよ。翠星石も、わかるよね?』   確かにその通りだった。妹の言葉を受けてから、私はもっと積極的に真紅に話しかけるように なった。そこで私は知るのだ、彼女の細やかな心遣いや、その言葉の裏に潜めら...
  • 【ある日の幕間】
     ――さて。    私は今の状況を、冷静に分析しようと試みる。  それが失敗に終わることは、勿論自覚していたのだ。手先は割かし器用な方だけれど、複雑なことを考えるのはとんと苦手だから、私は。  本当に、複雑な問題なのかしら?  改めて考えて、その自問にもやっぱり答えを出すことが出来ない。  ――少し、嘘をついている。  出すことが出来ない、ではなくて。出そうとしていない、だけじゃなのかも? 「槐さん、お茶が入りました」 「ああ、ありがとう」  私の思考を余所に、繰り広げられる幕間。 「みっちゃんさんも……はい、どうぞ」 「あ、ああ、ありがと」  優雅な仕草で私にお茶を差し出し、お盆を持っていそいそと奥の部屋へ戻る彼女。  今、時は夜中の十二時をまわったところ。  眼の前には、これまたこの上無いくらい上品な仕草で紅茶に口をつける彼。  一流の人形師ともなると、普段の仕草まで...
  • 【ゆめうつつ】~トロイメント~§4
    §4 ―――――――――  『トロイメント』は、相変らず私以外に客が居ない。  毎週決まった曜日と時間帯にここへ訪れる私は、もはや常連になっていると 言って何の差支えも無いと思う。今日はアッサムティーを注文して。多めのミル クを入れてから口をつける。 「それにしても。本当にお客が少ないのね、ここは」  たまに声に出てしまうのも失礼なのかもしれなかったのだが、どうにも事実な ので致し方ないと思う。  白崎さんとも大分親しくなり、私は大概のひとに接するときと同じような口調 で彼と話をするようになっていた。それに対する彼の話し方と言えば、相変らず なのだった。 「火曜は日が悪いようですね、真紅さん。まあもともとこの店は。  よく来て頂ける常連さんによって成り立っているようなものですから」 『例えば、あなたのような』。そんなことを話す彼の表情はいつも通り穏やかだ。 「ここは、ずっ...
  • 金糸雀短編29
    金「みっちゃんなんて大っ嫌いかしらー!」 み「………!!!」 金「いやそんなこの世の終わりみたいな顔しなくても、エイプリルフールかしら」 み「………」 金「みっちゃん?」 み「………」 金「死んでる…」 スーパー天才少女カナリア!!~数学編~ 小学生四年生時代 金「カナは円周率を覚えたかしら!」 ジ「えんしゅうりつって何だ?」 真「円の…何かでしょう」 銀「まだ習って無いのに凄いわねぇ」 薔「…やるじゃん」 金「かしらー!!」 中学一年生時代 金「カナは円周率を百桁まで言う事ができるかしらー!!」 ジ「何という才能の無駄遣いを…」 真「凄いのだけど、羨ましくないのだわ」 銀「その暗記力には頭が下がるけれどねぇ」 薔「…やるじゃん」 金「かしらー!!」 高校三年生現在 金「やったわ!!カナは…カナは遂に円周率を割り切っ...
  • 『ひょひょいの憑依っ!』Act.8
      『ひょひょいの憑依っ!』Act.8 カナ縛りに捕縛された真紅は、声ひとつ出せず、指の一本すら動かせず…… 出来ることと言えば、にじり寄るビスクドールに、恐怖の眼差しを向けることだけ。 「来たわ来たわ来たわ。ついに、この時が来ちゃったかしらー!」 人形に取り憑いた金糸雀が、嬉々として、言葉を紡ぎだします。 地縛霊として、ずっとアパートの一室に閉じこめられていた彼女にしてみれば、 自分の意志で思いどおりに歩き回れることは、この上ない喜びでした。 でも、所詮は人形の身。まだまだ、不便なことが多々あります。 「苦節5年――やっと手に入れた自由だもの。これを活用しない手はないかしら」 わけても『死』という烙印は、とてつもなく重い枷でした。 自由になりたい。胸を焦がす渇望を潤したいのに……独りでは、何もできなかった日々。 でも、自由への扉を開く鍵――真紅の身体――は、今、目の前に転がっ...
  • 四日目―始まりの景色
    昨日はあれから、大変だったな。 結局姉さんがジュン君を泊めちゃったんだ。 「お前は蒼星石と一つのベッドで寝てろですぅ♪邪魔するほど翠星石は野暮じゃないですよ♪」 とか言っちゃって。 結局、ジュン君はリビングで寝たんだけどね。 はぁ…ちょっと残念かな…って!僕は何を考えてるんだ! いや、でも、ジュン君と一緒に寝たかったけど、そういうのにはまだ早くて…!つまり僕は…ああっ! こほん。 今日はバスケの大会の日。 僕ら3人は、みんなで朝早く家を出た。 姉さんの、初めての手作りのお弁当を持って。 「♪♪」 僕らの先を歩く翠星石。 素直じゃなくて、でも強くて真っ直ぐな、僕の姉さん。 新しいところに進むときは、いつも手を引いてくれた。 「翠星石!車来てる!」 慌てて翠星石の腕を引くジュン君。 僕の愛する人。この一言に尽きるんだと思う。 「あ、ありがとですぅ…」 ああ、二人して見つめあったりな...
  • 四話「水銀燈」
    短編「図書館」シリーズ四話「水銀燈」 突然だが、私、真紅は図書委員だ。 元々本が好きで、中一のときに初めて図書委員になり… 気が付けば図書室、そして図書委員の常連となり早3年。 その間に図書室仲間ともいうべく、同じく本の好きな友達連も出来て、 図書館をよく利用する人の顔もかなり覚えた。 これは、そんな私の図書室でのある日の話。 昼休みも中盤に入ってくる頃、入り口の扉から入ってくる人影。 目立つ銀髪に赤い瞳…高等部一年の先輩、水銀燈だ。 彼女は私の姿をカウンター内に見つけて、近寄ってきた。 銀「あらぁ、今日の当番は真紅なのねぇ…お疲れさまぁ」 そしてにっこり微笑む。少し頬が熱くなるのがわかったが、私はできる限り気にしないようにして、 要件だけを言う。 紅「返却の本は?」 銀「はい、これよぉ」 手渡されたのは美麗なイラストに彩られた表紙の文庫本。要はライトノベル、といわれる類の本...
  • ―/― おわりのうた
     彼女は言った。たった一枚の絵を、描きたいのだと。頭の中に曖昧に浮かんでいる絵を かたちにする為に、筆を走らせていたっけ。  それは、何処か遠い遠いところにある景色のようなものらしい。小さい頃から、ずっと 一緒だったけど。実際のところ、それが果たしてどんな景色なのか、それとも本当に『景 色』であるのかすら僕にはわからなくて……ともかく、彼女が『描きたい』と願うものを 僕は知らない。  言葉で伝えられても、僕にはそれを正確にトレースすることは出来ないから。それは当 然と言えば当然のことだったし。それでいて、少しだけ寂しいこと。  また、彼女は言った。この世界には、世界を作り上げるからくりがあって、そして物語 があるのだと。その物語は、少なくとも。それこそこの世界に生きる人々の数だけ、綴ら れていることは確かなのだと思う。  世界のからくりが、物語の中に物語を内包する。だからその数は、実...
  • 過去ログ27
    梅雄花の回収に参りました。 -- 名無しさん (2006-06-24 00 48 46) カナリアベさんが後から 襲 っ て く る -- 名無しさん (2006-06-24 02 21 09) さて・・・ローザミスティカで思ったことがあるんだが・・・ローザミスティカ1個=生きてる人間一人で出来るんじゃね?・・・予想だが -- 名無しさん (2006-06-24 03 02 42) ローザミスティカの解析結果ローザミスティカの85%は厳しさで出来ています(後略)すごく…厳しいです… -- 名無しさん (2006-06-24 05 55 18) もしかして鯖落ちしてる? -- 名無しさん (2006-06-24 06 54 21) シベリア行ってみたが重いから、また経路障害じゃね?とりあえず運営逝ってみるがなww -- 名無しさん (2006-06-24 ...
  • 第十一話  『かけがえのないもの』
    夕食の席に、見慣れた姉の姿はなく―― (どうしてなの?) 蒼星石の心は、言いようのない虚しさに包まれていた。 瞼を閉じると姉の寂しげな顔が浮かんできて、なんとなく、食欲も湧かない。 「翠ちゃん、具合悪いって言ってたけど……大丈夫かしらねぇ」 「近頃、めっきり寒くなってきたからのぉ。風邪でもひいたんじゃろう」 心配そうに呟いた祖父母が、揃って天井を見上げた。 それが、今、翠星石がここに居ない理由。 彼女は気分が優れないからと告げて、食事もせず部屋に籠もってしまったのだ。 もちろん、そんな言い訳がましい戯言を、鵜呑みにする蒼星石ではない。 昨夜の自分の行為が、姉をひどく傷付けてしまったと察して、胸を痛めていた。 (でも……あれは姉さんが、ボクから離れていっちゃうから) 引き留めたくて、焦っただけ。ほんの少し、擦れ違っただけ。 全ては、些細な誤解。落ち着いて話をすれば、きっと解り合...
  • @wiki全体から「世界は色で出来ている」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索