ローゼンメイデンが普通の女の子だったら @Wiki内検索 / 「賑やかな僕の家」で検索した結果

検索 :
  • 名前のない話
     夢でもし会えたら、とは恋愛ドラマやラブソングにありがちな詞で、浮かれた恋人たちにとってはお約束の会話だと思っている。  およそ僕なんかには無関係だなんて言うと、同情めいた眼を向けられて、少しばかり寂しい気持ちに苛まれてしまうのだが。  まあ、事実なんだから仕方がない。そう自身に言い聞かせて、今まで無理に納得してきた節がある。 「きみね、もう少し身なりに気を配った方がいいよ」  人が思い耽っているところに、このお節介な旧友は、いつも空気を読まず何かと指摘してくれる。それは実際のところ非常に恵まれたことなのだろうが、僕にとっては、まったくもって余計なお世話だ。  仕事の手を止めることなく横目に睨むと、白崎はいつものように薄ら笑い、肩を竦めて見せた。 「そういうのは感心しないよ、槐くん。客商売で愛想が悪いって、致命的だと思うんだけどね」 「……不景気な顔は生ま...
  • 第十八話  『さわやかな君の気持ち』
    窓の外は、紫紺の海。たなびく雲が白波のようで、黄昏空は大海を連想させた。 昼と夜が溶けあう束の間に、ふたつの影もまた、ひとつに重なる。 太陽の勤めが終わり、地を照らす仕事は、月が引き継いでいた。 月影が斜に病室の闇を分かつ中、密やかに流れる、健やかな息づかい。 ベッドでは時折、差し向かいで収まった二人が、もぞもぞと窮屈そうに身じろぎする。 まだ、夜は始まったばかり。いくら病人とは言っても、就寝するには早すぎた。 「そろそろ、夕食の時間みたいね」 廊下を行き交うさざめきを耳にして、巴が囁く。 蒼星石は「うん」と答えながら、心持ち、抱きしめる腕に力を込めた。 汗ばんだ肌が触れ合って、ぺたぺたと吸い付くけれど…… 真夏の満員電車で味わうような暑苦しさや、ジトジトした不快感は全くない。 ――むしろ、その逆。どうしようもなく、気持ちが良かった。 まるで酸と塩基が化学反応するかのように、ココロ...
  • 奇しき薔薇寮の乙女 第十話
    第十話 結局ソファーで寝るコトになったあの薔薇屋敷での妙な一日。 どうにかクリアして、じゃあ僕は自分ん家に帰るってコトになった。 そもそも、昨夜の宿泊もなし崩し的だった。 それも今朝で終わり、じゃあ朝飯を食べていってよと言われ、一応と御馳走になったワケだ。 んで、今が帰路。 玄関を出る前にすら、雛苺が乗っかってきたり翠星石がなんか言ったり、雪華綺晶は柱の陰だったり。 そういえば水銀燈がなんかブツブツ言ってたな。怖かった。 まァいつものような悶着があったけど、なんとか家に向かって歩いている。 「もしもし? なんか用?」 着うたが鳴り、ケータイのディスプレイには「ベジータ」の名が浮かんでいた。 通称愛称他称自称すべてベジータで成り立っている、高校からの友人である。 本名「斎矢部 陣太」、サイヤとベジータで構成されたような名前であるからベジータ。 安直な割に、本人は少し似ているから...
  • カムフラージュ 【2】
    てっきり、今日が初対面だとばかり思っていたけれど、彼女は違うと言う。 それは……いつ、どこで? 僕は、何度となく記憶を辿ってみた。 だが、どれだけ脳内検索を繰り返したところで、悉く空振りに終わった。 鳶色のロングヘアー。紺碧の双眸。容姿端麗。 これだけキーワードを並べれば、直撃はせずとも、少しぐらい掠るだろう―― そんな僕の認識は、この会場にあるどんなデザートよりも、甘かったらしい。 眉間に皺を寄せ、ジリジリと回想に耽るも、所詮は悪あがき。 程なく、僕は溜息まじりに両手を肩まで上げて、彼女に掌を見せた。「ごめん。降参だ」  「私のこと、ホントに思い出せないんですか?」  「うん。きみみたいに可愛い女の子を忘れるなんて、考え難いんだけど」 なんて言ってはいるが、あり得ないことでもないと、僕は思っている。 メイク、ヘアスタイル、衣装やアクセサリ、光の加減...
  • 【お酒と、雪と、お嬢様】
        雪がふる。  雪がふるよ。  静かできれい。あんまり静かで、眠ってしまいたくなる。けど今眠っちゃったら、多分しんでしまうから、しない。  ベランダに出てはく息は、周りがとてもくらいというのに、とてもはっきりと白く見える。部屋のカーテンから漏れる僅かなひかりが、空気を照らしているのだ、きっと。ほう、と手に吹き付ければ、ほのかにあたたかい。  くぴ、と。手に持っていた缶を傾ける。この年になって、この苦い炭酸を飲むのが大変ではなくなってきた。というよりはむしろ、すきになっているかもしれない。味もさることながら、多分こういったものは、喉越しを愉しむ物なのだろうという気がしている。だから、最初の一口目が多分いちばんおいしい。  そういえば、冷蔵庫のストックがついになくなった。これは元々僕が買ったものじゃない。前に遊びにきた『彼女』が大量に持ってきたものを、毎日毎日少しずつ消費して...
  • L/R.4
      L.― 白い部屋の会話 「――嬉しい。来てくれたのね」  僕の姿を見て、いの一番に発した声がそれであった。 「気まぐれだよ、ほんの」  本当に、ただの気まぐれ。僕はなるべく、此処へ着たくないと考えている。海の近い、この療養所へ。  病に罹るのが、恐ろしい? 流行りの、治る筈も無い病に。  ――違う。僕は、……もう、見ていられないのだ。病に罹ったら罹ったで、それが僕の人生なのであるし。今僕の口元に巻かれている布当てだって、すぐ取り去ってしまっても別に構わない。  彼女は前に見た時――もう随分、遠い日のことであったようにも思う――と同じ様に、温藉な表情を浮かべていた。  艶やかな黒髪と、色白だった肌が、更に顔色の白さを――幾分悪い方へ――強調している。少し痩せたろうか。何となくやつれているように、見えなくも無い。 「今日はね、調子がいいの。咳もあんまり出ないし」 「...
  • 「あなたを呼ぶ」後日談5
    お盆休み、僕は、水銀燈を連れて故郷に帰ってきた。 ジ「や~っと着いた。長かった。」 銀「へぇ、もっと緑溢れるって感じを想像してたんだけど、   そうでもないわねぇ。」 ジ「都市ってわけでもないけど、田舎ってわけでもない。   まぁ、微妙なところだな……。   とりあえず、約束の場所に行こう」 銀「はぁい。あなた。」 そういいながら、彼女は腕を組んでくる。 さすがに、これだけは何時まで経ってもなれない。 ジ「なぁ、腕組むのやめてくれないか? 銀「あらぁ、いいじゃない。恋人同士なんだし。」 ジ「けれど、恥ずかしい……」 銀「もう、いい加減慣れなさいよぉ。」 そういいながら、彼女は放そうとしない。 道の途中で、知り合いとあった。 「よう、お帰り。  ってか、美人な奥さん連れやがって、  うらやましいぞ、この野郎」 水銀燈とは結婚まではいってない。 けれども、水銀燈は嬉しそうに、 銀「妻の水銀燈で...
  • 複数短編139
    それじゃあ保守代わりに短編を一つ JUM「おねぇちゃぁぁぁぁん!水銀燈に!水銀燈に追いつかれちゃうよぉぉぉぉ!」 翠星石「私がいたらチビ人間は逃れられないですぅ。一人で行くですチビ人間。あなたを逃がすのは蒼星石であり…真紅であり、あたしの父さん『ローゼン』…生き延びるです、あなたは『希望』!!ここは翠星石が食い止めるですぅ!」 JUM「だめだよ!一緒に逃げようよ!」 翠星石「ダメですチビ人間・・・来るです!水銀燈!スコーン・フリーィィィィィ!」 JUM「お・・・おねぇちゃぁぁぁぁん!!!」 翠星石「と、いう夢を見たですぅ」 JUM「何で僕がエンポリオなんだよ」 蒼星石「僕はアナスイなんだね・・・」 真紅「そんな・・・翠星石の夢の中でも貧乳なのだわ・・・ガッデム!」 水銀燈「私が神父?...
  • ずっと傍らに…激闘編 第二十三章~ジュンside~
    ──昨日水銀燈に話した翠星石のことを、今日も思い起こす。 そういや、手を繋がないと怒り出すのは、 それっぽいのが最近でもあった…かな。 街へ行った時、ケーキ屋に行く前に僕の腕にしがみついてた事とか…。 ふっ。 翠ちゃん…。 幼稚園の頃のあだ名。 ──今は昔…か。 他に思い出すといえば…おとといの話。 寝る前の翠星石との言い争いか。 僕は自殺しようという気なんてさらさら持ち合わせてなかったからな。 これだけは今でも自信を持って言い張れる。 ----- 翠「…こっんの大馬鹿者ぉ!!」 ジ「なんだよ…。さっきまで腰抜かして立てなかったくせに──」 翠「キィィィー!!」 蒼「2人ともやめようよ…」 翠「何で窓から飛び降りようとしたんですか!」 ジ「飛び降りるつもりはなかった。   自殺なんかしようとは思ってなかった。   ただそれだけだ」 翠「じゃあ何で──」 ジ「水銀燈から逃げる...
  • ある暑い日のこと
        「突然ですがババ抜き大会を始めます。」 じりじり。 夏の日差しが照りつけるのに逆らって冷房をガンガン効かせている僕の家。 真紅が紅茶を飲み干して、かろん、とコップの中の氷を鳴らす。 雛苺と金糸雀は寝ていた。おでこが、眩しい。 その隣で翠星石と蒼星石は眠った二人をいじって遊んでいる。 どこかほのぼのとした、初夏の休日のことだった。 何と言うか、この空気の中でそんな発言をした水銀燈が少し変人に思えたのは気のせいじゃないと思う。 「……いやだよ、めんどくさい。」 だって暑いし、暑いし、暑いから。 汗が吹き出る暑さじゃなくて、空気で感じる暑さなのだ。 ……自分で言っててよく分からなくなってきた。 「そーですよぉ、こんな日はのんびりまったり過ごすのが一番ですぅ。」 その通りだ翠星石。 「僕はいいけど、トランプよりスポーツがいいなぁ……」 雛苺の頬をぷにぷにとつつきながら蒼星石が言った。 翠...
  • L/R.3
    R.―  かなしいこと、かい?  ――どうだろう。世の中にかなしいことは、結構多いとは思うよ。けれど、僕はそうでも無い。かなしいことよりは、さみしいことの方が多いような気がするんだ。そこは君と一緒だね、きっと。ひとは、独りだとさみしい。……うん。それはとっても、さみしいことだから。  ――ああ。姉さんかい? うん。姉さんは僕に、そんな素振りは見せないんだ。人一倍さみしがりなんだろうけど。素直じゃない――ああ、それも確かに……ふふ、そうだね。不思議だな、何だか。……や、本当に不思議な気分だよ。  君と話しているのは、楽しいな。何だか気分が紛れる。――僕はね、結構我侭な方だと自分で思うんだ。誰かと話していたい、だなんて。普段は独りで居るとは好きなくせに、たまに考えたりもするんだよ。……君はどうだい。――うん……そうか。僕と君は、何処か似ているところがあるのかもしれない。  もう少し...
  • *プロローグ
         眼が。座ってるって。多分、こういうことを言う。  僕は震えている。怖い、というと僕がどうなっちゃうかわかったもんじゃないから言わないけどああもうどうすればいい?  その解答をくれるものが居ないというのなら、いつだって答えは僕の心の中に。そんなことを言いたいんじゃないんだよ。信じてよ。誰に語りかけてるんだろう僕?  普通に生きてると、自分が何処に居ようとたまに眼の前にお花畑が広がることがあるんだ、ってばっちゃじゃなくて薔薇水晶が言ってた。僕はなるべくならそんなもの見たくないんだけど。 「さくらだくん?」 「はい逆らいません」  手に持っていたものを差し出す。  注ぎこまれるのは透明だ。ちょっと色ついてるけど。  ああ、きれいだなあ。そうだよ透明って何もないことだよ。あるけど無い。哲学的だな。ほんと二律背反とかすきだなあいつら。  そういえば小学校の低学年時の出席って...
  • 【お酒と河川敷と、お嬢様】
    「ジュン様は奥手すぎるのですっ! 大体ですね……」   さて、隣でやたら僕に絡んでくるこのお方の対処に、僕はほとほと困り 果てて居るのだった。どうしようかなあ……普段おしとやかでも、ひとっ てやっぱり変わるんだなあ……  かと言ってこのまま放置していく訳にもいかないし。一度腹を決めたのだ、 とことんまで付き合おうではないか。   僕の隣で、最早顔も真っ赤にしながら話し続けているのは雪華綺晶。この 辺りじゃ有名なお屋敷に住んでいるお嬢様である。夕暮れ時の光が、彼女の 顔をより一層赤く照らしているように見えた。 「あ、また無くなりましたわね……ジュン様、そちらの袋をおとり下さいますか」 「はいよ」   がちゃん、と音が重く響くほど中身の詰まった袋を、彼女に渡す。 「ゴミを持ち帰るのは、ひととしてのマナーですわ」   ...
  • L/R.1
    ―/― プロローグ  ――声が聴きたい。  思った。  きっと、声というものには、それを発したひとのたましいが込められるのだろうと。  時にそれは己を勇気付ける。  無ければ、少しさみしい。  ――そう。さみしいのだ。かなしい、のでは無い。  僕は受話器に手をかける。  あのひとの、声を聴くために。  声は、眼に見えるかたちで残らない。  だけど、それを聴いている最中。そう、その瞬間は、確かに。  それは僕のこころの中に、響き続ける―― ――――――――――  ――言葉を綴ろう。  思った。  きっと、言葉というものには、それを綴ったひとの想いが込められるのだろうと。  時にそれは深い感動を与えてくれる。  無ければ、少しかなしい。  ――そう。ほんの少し、かなしいだけ。  私はペンを手にとる。  何の為に、という問いがあったならば――それに答えることは出来ないだろう...
  • ―/― はじまりのうた――夢の続き
     色々なことを、思い出していた。学校での、出来事。保健室での出会い、思い出。それ よりももっと前の、曖昧な記憶。  雛苺が渡仏してから、年明けの春。あと半年とちょっともすれば、彼女は日本へ帰って くる。僕は高校二年生になって、来年は受験生だ。……といっても、大学を受験するつも りはないから、周りよりはある程度余裕ではある。そのことを伝えに、僕はこれからフラ ンスへ向かう。我ながら、相当大胆な行動に出たものだと思う。  出世払い……というとプレッシャーなのだけれど、今回の旅費については家のひとに相 当無理を言ってしまった。姉はなんだか喜んでいたみたいだったが。  本当はバイトをして自分で稼ぎたかったが、山奥の学校ではそれも敵わず。その辺りは、 流石に不便であると思う。 『卒業したらバイト始めなよ、桜田君。いいとこ紹介してあげるから』 『ジュンが働くなら、私も其処でバイトするわぁ』  ...
  • =さらば!我が愛しき日々よ=第七話
    見つめ合ったまま静かに時が過ぎていた。 そんな静寂を破ったのはリビングから騒音で起きて来た真紅だった。 『ガチャ』 真「うるさいわね。ジュン、何を騒いで・・・。その娘は誰?」 後半は凄みの聞いた声で僕に聞いてくる真紅。 ジ「え、だ、誰って・・・僕が知るわけ無いだろ!」 雪「初めまして。私は雪華結晶。薔薇乙女の7女ですわ。」 背後からいきなり声がしたので、僕は跳ね上がった。 真「7女?7女は薔薇水晶じゃなくて?」 雪華結晶は雷に打たれたような驚いた顔をして、 雪「えっ・・・、そ、そんな・・・。ひどいですわ・・・、私を、私を忘れるなんて・・・」 両手で顔を覆い泣き出してしまった。 そんなことを尻目に、 ジ「また増えるのかよ。」 と、発言したのが悪かったらしく、 雪「そんな・・・ジュン様まで・・・、ひどいですわ・・・、あんまりですわ・・・。」 雪華結晶は顔を上げて...
  • ずっと傍らに…激闘編 第二十章~ジュンside~
    の『ジュンく~ん、ご飯よぅ~』 ジ「はーい」 1階からねーちゃんの呼ぶ声がする。 波乱に満ちたGWもすっかり終わってしまった。 ABCに2回も邪魔されたことに恨めしさを感じるが、 僕の今の力では諦めるしかない。 だからといって逃げ惑いっぱなしでいると、 水銀燈に喝を入れられる始末… あんな奴らに太刀打ち出来るわけないだろっての。 ちくしょう。 水鉄砲で遊ぼうとした時にイヤというほどよく分かったよ。 ほんと、水銀燈も解ってないなぁ…。 やっぱり僕が一番解ってるんだよ。 ──こんな事、面と向かって言ってたら、もっとシバかれてたかな。 ほんと鬱だよ…まったく。 ~~~~~ の「じゃ、いってきまーす」 ジ「ん」 ねーちゃんを玄関から送り出したところで、 連休も明けたことだし、また引き篭もりライフを送ろうっかな~ …と自分の部屋へ戻る。 今日から学校へ行く前に翠星石、蒼星石、柏葉の...
  • s.d.1
      自分の店を持ちたい、というのが夢だった。ただ、それが実現出 来るのは相当自分も熟年に達してからだろうとは思っていたのだが。   自分の将来設計の為に(と言ってもあくまでマイペースで)普通に 働いていたところ、祖父の訃報が耳に入った。   もともと祖父は時計屋を営んでおり、その死をきっかけに店に空 きが出来た。   僕自身は時計を作ることに興味は無かったが、店にはよく遊びに 行っていた。おじいちゃんっ子、と言えばそうだろうか。 『僕もいつかお店を持ちたいんだ。喫茶店なんかいいな』   そうか、頑張れと。祖父は微笑みながら僕を応援してくれた。   哀しみにくれる僕に対し、祖父は遺言状を残していた。自分が死 んだあとは、時計屋の土地と建物を、僕に譲ると。その書状は、今 でも机の引き出しに大事にしまってある。   時計屋を改装して、客が佇めるス...
  • L/R.6
      L.― 電信  想い、かい?  伝えたいことを……伝えられなかった。そういうことかな。  ふふ、よく言われる。妙に鋭いって。  うん。それは多分、この世の中に、ままあることのひとつなのだと思う。……あ、いや、僕がそういうことに慣れている訳では、無くてね。ただ何となく、そう思うだけ。  だって、そうだろう? ひとの命には、限りがある。決められた時間、という奴だね。それはきっと、産まれた時に、既に決まっていたんだ。僕の場合も、そう。  ひとは何時までもいきていられないし、その中で……己の中で、考えることがあるとしよう。うん、何でも良いんだ。兎に角、己の中に思い浮かぶ、由無しごとさ。  その中で、己以外に、伝えたいと思えること。それはどの位あるだろうか。  五割? 七割?  そんなに多いかな。僕はもっともっと、少ないと考えるよ。言えないこと、言いたくないこと、...
  • ずっと傍らに…激闘編 第十九章~ジュンside~
    テ『トゥートゥートゥートゥートゥートゥットゥトゥー♪』 ゴールデンウィークもそろそろ終盤。 僕はいつものごとく翠星石の家に上がりこんで、 リビングでゴロゴロしていた。 翠星石たちの家は、今年のゴールデンウィークはそれぞれに忙しくて、 全員で揃って遊びに行くことはなかったらしい。 何か、僕が引き篭もりになったのも間接的に関わってるんじゃないのかと考えると、 ちょっと気持ちが沈む…。 翠星石と蒼星石は『関係ない!』って言ってくれたけれど…。 まぁ、今の僕に出来ることは、こいつらと一緒にいることだけだ。 …昼上がりの日差しが差し込んできて気持ちがいい。 今日の天気は快晴。風が少ない分、少し外は暑そうだ。 適当にテレビを見ている僕の背中の上で、 ばらしーが腹ばいで乗っかって、同じようにテレビを見ている。 ばらしーと雛苺はリビングのテーブルでお絵かき。 翠星石は庭で花の水遣り。 真紅は2...
  • 「roomshare」
    平日の昼下がり、空は雲一つ無い。 今僕は三人の女の子と同居している。三人とは大学に入学してすぐに知り合ったからもう二年と少しの付き合いになるが、全員が大学生というわけでもない。同い年は一人だけだ。 吸っていた煙草の火を消し、ベランダからリビングに戻ると同居人の一人である水銀燈がいた。パジャマを着替えもせずドラマの再放送を見ている。 「授業の無い日の大学生は暇そうねえ」 と馬鹿にしたように笑う彼女の前に鏡をもってきてやろうかと思った。25にもなって昼間からテレビにかじりついていることになんの自覚も無いのだろうか。 水銀燈は仕事をしていない。気が向いたら数カ月バイトをしてはまたダラダラした生活にもどる。 「ひとつの仕事を一生続けるってこと、いまいちピンと来ないのよねえ」 出会ったばかりのころそれを聞いた時はなんとなくわかる気...
  • 第四十四話 JUMとオープニングセレモニー
    「一つ屋根の下 第四十五話 JUMとオープニングセレモニー」     「いよいよ、今日から学校祭ねぇ~。」 学校祭一日目の朝、銀姉ちゃんが言う。ああ、ようやくって感じだなぁ。 「そういえば、姉ちゃん達アリスゲームっての出るんだよね?薔薇姉ちゃんと銀姉ちゃんが出るの?」 先日、べジータが言ってた事を思い出す。アリスゲームは学校祭のオープニングセレモニーの一つで、今日 あったはずだ。まぁ、ミスコンみたいなのに、真紅姉ちゃんや蒼姉ちゃんが出るとも思えない。 「……ごめん、僕も出る。というか、姉妹はみんな出る……」 ほらね、翠姉ちゃん辺りも恥ずかしがりだから……って…えええええ!!!?? 「ちょ、まっ!!みんな出るって!?」 「そうなのだわ。私も出るわ。何せ……アリスの称号を手に入れたものには……もれなくJUMが付いて来る のだもの。アリスゲームに出なければ姉妹に好き放題にされるJUMを見るだけな...
  • s.d.エピローグ
      君が"居なくなって"しまってから、八度目の夏がやってきた。   あの事故後の退院から。僕は相変わらず店を営業している毎日で ある。でも相当体力が落ちていたのか、すぐに疲れてしまってなか なか最初は思い通りにはいかなかった。   そんな僕を支えてくれたのは水銀燈で。夜は週四日だったシフト に更に一日加えるという行動に出た。それによって更に客が増えた というのは、まあしょうがないとして…… 『ここで一杯修行して、私も自分の店を持とうかしらぁ』 などと言っていた彼女。真面目に考えてみても、彼女なら実現出来 そうな感じがする。 『店の名前はどうしようかしらぁ。そうねぇ……』   今年の夏も、暑い。だけどこの公園のベンチの涼やかだけはずっ と変わらず。僕はあいかわらずここで休憩をとっている。   公園の子供たち...
  • エピローグ
      …………  目覚めるとそこは、真っ白い空間だった。だけどここは"九秒前の白"では無くて――― 僕が入院していた、病院の一室。 「……ジュン君~!」  目覚めて身体を起こすなり、いきなり抱きつかれる。……またかよ! 「ね、姉ちゃん……暫く身体動かしてないんだから……! ちょっ、痛い痛い!」  僕の抗議も空しく、姉は泣きながら抱きつくのをやめてくれない。―――僕が一応植物状 態みたいな状況に陥ってから、どれ位の時が経っていたのかはすぐにはわからなかったが。  やっぱり心配かけちゃったよな…… 「……ごめん、姉ちゃん。あと……ただいま」 「ひっく、……? ジュン君、ぐすっ、何処か、お出かけしてたのぉ?」 「うーん……ちょっと、夢の中で」 「……ふふっ、おかしなジュン君……」  うん、まあおかしいよなあ。……それにしても。僕が幽霊になる前は、あれほど激しく...
  • 三日目
    それぞれが違和感を抱えながら迎えた金曜日の朝。 夜に降られた雨に濡れているアスファルト。定休日の花屋。そんな景色。 「おはよう、翠星石。今日も一人か。」 「…」 「なぁ、蒼星石にちゃんと謝ってくれたか?」 「…ですか」 「何だ?どうしたんだ?」 何かが、翠星石の中で吹っ切れた。 「ジュンは…ジュンは、こーんなに元気のない翠星石よりも、蒼星石のことのほうが気になるのですか?」 皆から、物腰の柔らかい蒼星石からさえ「鈍感」と称される彼には、全く意味深な言葉だった。 「…は?何言ってるんだ?昨日から…お前何か変だぞ?」 「全く…ジュンはとっくの昔に気づいてると思っていましたけど…やっぱりお前は翠星石も驚くほどのニブチン野郎なのです!」 「だから…いったい何が」 「蒼星石もお前のことが好きなのです!」 ジュンは混乱していた。 単なる幼馴染、家も近く、小学校のころから一緒で。 そして今は、自分...
  • L/R.5
         L.― 電信  ――それは、難しいね。とても難しい話さ。  そうだなあ、例えば――君は、自分がしんでしまう時。……そう。最期に、どんな声を発するかなんて、考えたことがあるかい? 僕は近頃、よく思うよ。それで無くても、普段考えることなんて、それ程多くないから――ああ、ごめん。そんなつもりじゃ無かった。ありがとう、君は矢張り気遣い屋だね。  嘆きだとか、そういう少しかなしい考えは――自分でも驚く位起きないんだよ、僕の場合は。いつだって世の中は、在るがままに、在る。そうは思わないかな? 僕が、此処にこうして居る。君が、向こう側に居る。そして、お互い声を交わす。不思議だけど、これだって、どうしようもなく"在るがまま"さ。  ああ、それでね――うん。しんでしまう時。結局自分がどんな声を上げるか……答えは、出ないんだ。その時が来るまで、わからないことな...
  • 【ゆめの、あとさき】
     カタン、カタン――。電車は、揺れる。なんとなく、外を覗いてみた。  見慣れぬ、景色。しかしその色が、僕が本来もち得ない筈の郷愁の念を抱かせるような 気がした。長く都会に暮らしていると、こういった田舎風の情景に心惹かれる様になる― ―というのも、あながち否定出来ないのかもしれない。  周りを見れば、車内には殆どひとが居ない。殆ど貸切状態だった。ゆらぎを見せる電車 の中で、僕は何だか眠くなってくる。――このまま、眠ってしまっても、良いだろうか?  そうして、僕は夢を見る。僕の故郷と呼べる場所はそこそこ都会で、そこから出たこと など今まで一度も無かったように思う。そう、今こうやって、そんな場所に向かおうとす るまでは。  夢を見終わった後の記憶は、いつだって曖昧だ。だから、今願ってみよう。どうか、夢 を見るならば。いつか忘れてしまうようなものであっても――きっと優しいものであるよ うに、...
  • 【夕暮れと夜のノート】
        また、雨が降るのかしら。  しばらく晴れていた天気の合間に挟まるような雨が、昨日は降り続いていた。  そして明け方にはそれもやんで、今のところは空はまだ泣いていない。ただ、それが近付いている気配だけがする。  そうなると、もう森の中へは入れない。きっといつもの夕暮れと違い、森はその表情を変えてしまうだろうから。中に入れば、迷ってしまう。森の奥へ、誘われてしまうかもしれない。  ずきん、と、右腕が痛む。  それはそれで、と考えなくもないが、やはり怖い。自分の領域から出るのは、恐ろしいことだ。   「紅茶でも、淹れようかしらね」  珍しく、自分で淹れてみようという気になる。  立ち上がる。静かなこの部屋で、椅子から立ち上がるだけのカタンという音が、やけによく響いた。  それに加えて、あの娘が寝室に繋がるドアを開けた音も。 「真紅……紅茶の時間? 私が準備するわぁ」 「水...
  • ―/ライラック6
     暦の上ではもう既に夏は終わっていると言うのに、この暑さは一体何処からやってくる のだろうかと……長月の時期になれば毎年思ったりするのだ。  『月が出ている時間が長いから、長月だ』なんて古文の先生が言ってたっけなあ。名称 暗記なんて所詮こじつけにすぎないものだけれど、この覚え方は結構好きだったりする。 本当に月の出ている時間が長いのかは知らないが、秋は月が綺麗な季節なんてことは周知 の事実だったりするから。  今、壁にかけられたカレンダーは九月の頁になっている。部屋の灯りを消しているので 視認することは出来ない。  ただ、月明かりが。街から少し離れるだけで、こんなにも月のひかりが眩しく感じられ るだなんて、ここにくるまで知らなかった。  月が、こんなに綺麗だなんて。多分、当たり前のことを、僕は知らなかった。  知らないという事実は、……知ることによって覆される。当たり前だ。このふたつは、...
  • 『ひょひょいの憑依っ!』Act.9
      『ひょひょいの憑依っ!』Act.9 「死んだ人間は、人を好きになっちゃいけないの?  幸せを夢見ることすら、許されないの?」 金糸雀は、濡れた睫毛を鬱陶しそうに、指先で拭いました。 けれど、枯れることを知らない涙泉は、苦い雫を際限なく溢れさせます。 ――ジュン、お願い。言って。そんなコトないって。 問いかけた唇をキュッと引き結んだまま、瞳で縋りつく彼女。 どこまでも白く、透けるような白皙の頬を、なお蒼ざめさせながら…… ただただ、ジュンが答えるのを、待つばかり。 待ちかまえているのは、めぐも、そして水銀燈も、同じでした。 ジュンが、なんと答えるのか。金糸雀の想いに、どう応えるのか。 結果如何では……金糸雀の出方によっては、攻撃も辞さない。 そんな覚悟を胸に秘めたまま、固唾を呑んで、向かい合う二人を見守っていたのです。 「聞いてくれ……金糸雀」 ジュンの乾いた唇から、...
  • 一日目
    「おはよう、二人とも」 「おはようですぅ。今日もお前はチビですねぇ。」 「ちょっと翠星石…。自分の彼氏にその言い方は…。あ、ジュン君おはよう。」 いつもと同じ、ある水曜日の朝。 もう点滅しはじめている信号。傍らには花屋。そんな景色。 また3人で登校するようになって、もう一月くらいたつのかな。 ジュン君と翠星石が付き合い始めてから僕も遠慮してたけど… ちょっと前、また3人で通わないか、ってジュン君から誘われたんだ。 その二人だけど、翠星石もあんな事言っておきながらジュン君にベタベタなんだよね…。ほら。 「♪♪」 「ちょ、朝から腕組むなよ。」 「いいじゃないですかぁ♪恋人同士なのですよ?」 翠星石とジュン君が腕を組んで。僕がジュン君の横について。 日差しは、僕の側から降り注ぐ。でも、むしろ暗さを感じる。 二人に少し相槌を打ちながら、歩いていた。 ボーっとしていたからかもしれない。 ...
  • 第百二十四話 JUMと蒼姉ちゃん
    「一つ屋根の下 第百二十四話 JUMと蒼姉ちゃん」 翠姉ちゃんが僕の部屋から消えて一時間ほどたったのだろうか。僕は、未だに部屋に一人だった。 「蒼姉ちゃん……来ないのかな……」 次は順番通りでいけば、蒼姉ちゃんのはずである。でも、彼女はまだ姿を見せていなかった。でも、そんな時 だった。僕の携帯にメールが受信される。その送り主は蒼姉ちゃんだったんだ。 『JUM君、今から駅前来れないかなぁ?僕も向かうからさ。もし、家から出たくないんだったら僕が 家に行くけど……どうかな?』 そんな内容のメールだ。駅前?何故に?理由はさっぱり分からない。でもまぁ、このまま家でグチグチと 引き篭もっておくよりは、太陽の下にでも出たほうが多少はマシかもしれない。僕は、メールでOKの 返事を送ると、身支度をして家を出た。 そして駅前。まだ蒼姉ちゃんの姿は見えない。とりあえず、噴水の近くに座っておく。 そして、数分...
  • ―/ライラック5
     この世界の、風が無かった。  だから思ったのだ。ああ、これはきっと夢なのだろうと。 『本当に、それは夢だったの?』  そう言われてしまえば確かな返事は出来ないのだけれど、そんなことを僕に聞いてくれ るひとも居ないから。  世界の中で、僕と君の二人きり。いつも自分が見ている風景と何ら変わりは無い筈なの に、何処かしら『何か違う』雰囲気が漂っているのは何故なのだろう。  硝子が。  上を見上げれば、空が青色を見せている素振りで。実は僕らに嘘をついていた。  世界が、嘘を、ついていた。 「世界は、硝子で出来ていたのよ。初めはみんな、透明だったのに。  ……ひとが。ひと、という存在が、それに色をつけただけ」  そんなことを語る君の言葉を信じることにしたのは。この世界で動いているものが、 僕ら以外に何もなかったから。もっとも、それ以前に。僕が君の言葉を、信じないこ となんて無いの...
  • L/R.2
    L.― 電信2  そうだね――うん。平素、笑っていられるのは、とても大事なことだね。……大事さ。愛想を振りまけば良い、と言っているのではないよ? なんだろうね。ひとと話していて、いつもいつもしかめっ面じゃあ、何とも具合が悪いじゃないか。  怒っている――どうだろう。ああ、姉さんの場合はね。素直じゃあないんだ。でも、優しいひとだよ。――うん? ふふ、確かにそうかもしれない。僕達は、双子だから。多少悪いところを差っ引いても、贔屓目というのもないとは言えないかな。けれどね、これは本当のことなんだ。……そう。言うなら、たったひとりの姉だから――其処だけは、譲れないかもしれない。  僕はこうやって床に付しているからね、――ベッド、と言うのだよ、布団に木製の足が四本、付いているんだ。踏み台の広い奴で、布団がその上に載せられるような塩梅を考えてくれれば――想像が付かない? うん。僕もこの眼で見るま...
  • 第17話  『風が通り抜ける街へ』
    あの男の人は、何の目的があって、この丘の頂きに近付いてくるのだろう。 分からない。解らないから、怖くなる。 もしかしたら、ただの散歩かも知れない。 でも、もしかしたら蒼星石の姿を認めて、危害を加える腹づもりなのかも。 (どうしよう……もしも) 後者だったら――と思うと、足が竦んで、膝がカクカクと震えだした。 住み慣れた世界ならば気丈に振る舞えるけれど、今の蒼星石は、迷子の仔猫。 あらゆる物事に怯えながら、少しずつ知識を蓄え、自分の世界を広げていくしかない。 「こんな時、姉さんが居てくれたら」 蒼星石は、そう思わずにいられなかった。 知らず、挫けそうなココロが、弱音を吐き出させていた。 彼女だったら、どうするだろう? なんと言うだろう? 止まらない身体の震えを抑えつけるように、ギュッと両腕を掻き抱いて、考える。 答えは、拍子抜けするほど呆気なく、蒼星石の胸に当たった。 もし彼女だっ...
  • 【愛か】【夢か】
    「おかえりなさい」 夜更けの非常識な来客を、凪いだ海のように穏やかな声が出迎えてくれた。 僕の前に佇む君に、あどけない少女の面影は、もうない。 けれど、満面に浮かぶのは、あの頃と何ひとつ変わらぬ夏日のように眩しい笑顔で。 「疲れたでしょう? さあ、入って身体を休めるかしら」 そんなにも屈託なく笑えるのは、なぜ? 君が見せる優しさは、少なからず、僕を困惑させた。 ――どうして? 僕のわななく唇は、そんな短語さえも、きちんと紡がない。 でも、君は分かってくれた。 そして、躊躇う僕の手を握って、呆気ないほど簡単に答えをくれた。 「あなたを想い続けることが、カナにとっての夢だから」 なんで詰らないんだ? 罵倒してくれないんだ? 僕は君に、それだけのことをした。殴られようが刺されようが、文句も言えない仕打ちを。 ここに生き恥を曝...
  • 第二十九話 眠れぬ夜
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十九話 眠れぬ夜」     時間は既に22時を回っていた。JUMはどうにも寝付けずに艦内を歩いていた。 この3日間はひたすらに機械と睨めっこしていた。 損傷した各部を直し、残り5機となった切り札であるローゼンガンダムを最終調整し、 万全の準備を整えてきた。昼過ぎに準備が完了したメイデンは他のレジスタンスの 応援に入り、夕方には全レジスタンスの準備が完了、明日の作戦開始時刻まで ゆっくり休憩となっていたのである。 「喉かわいたな・・・食堂行くか・・・」 JUMが食堂に向かって歩いていく。カツンカツンとJUMの足音だけが廊下に響き渡っていた。 JUMは歩きながら物思いにふける。思えばこの10年は様々なことがあったな、と。 アリスの乱からはじまった動乱。短いながらも、真紅、のりと過ごした学生時代。(梅岡の存在は記憶から 抹消済み)メイデンに入り、今の仲間達との...
  • 【愛の行く末】第一話
    第一話 薔「映画面白かったね、ジュン」 J「ああ、アニメっていうからてっきり子供向けかと   思ってたけどなかなか良かったな」 僕の名前は桜田ジュン。裁縫が得意なごく普通の高校三年生だ。 隣にいるのは恋人の薔薇水晶。僕たちは付き合い始めてちょうど一ヶ月になる。 今日は薔薇水晶が前から見たいと言っていた映画を見に行った。今はその帰りだ。 薔「それは偏見…アニメ=子供向けって決めつけるのはいくない」 J「でも周りは子供の方が多かったぞ。なんか僕らは浮いてるみたいだったし」 薔「え…じゃあジュンは私とデートしても楽しくなかったの?」 J「え、いっいやそういうわけじゃ…」 薔「ジュンは……ヒック、私といても……グスッ、楽しくないんだあ」 女の涙というものはずるい。それは相手がどれだけ悪くても、それを見せた途端に こっちが悪く思えてしまう。それにここは表通りから外れているとはいえ道のど真ん中だ。...
  • 『誰より好きなのに』
      『誰より好きなのに』  ■ 前編 【瞳を逸らさないで】-ごめんなさい-  ■ 中編 【ささやかな愛情を】-ありがとう-  ■ 後編 【此処を守るのだわ】-だいすき-  ■     エピローグ
  • 複数短編138
    真「ただいまなのだわ」 雛「あっおかえりなの真紅~」ニャー 真「雛苺、紅茶をお願いするわ…って今何か聞こえなかった?」 雛「そうそう、雛ね、さっき捨て猫さんを拾ってきたの~」 雛苺の後ろから顔を出す小ぶりの三毛猫 真「あああああああああああああああああっ!!!   やめてぇええええええ!!雛苺何でこんな事をするの私に何の恨みがあるの   もうこき使ったりしないわ紅茶も自分で淹れるわミサイルも撃たないわ   お望みなら私は貴女の下僕になるわだからどうかお引取願って頂戴雛苺ぉぉぉ」 雛「うゅ?でもこんなに可愛いのよ?真紅も抱っこする?」 雛苺はうずくまる真紅の目の前に猫を抱えて差し出す 真「kdjg;faくkfあせdfふじこkkfdsa」 自室に逃れる真紅 雛「う~いくら猫さんが嫌いだからってあれは異常なの…猫さん、洗ってあげるの~」 猫「ニャ」 一時間後、紅茶を...
  • 大人と子供
    「月が綺麗……」 電話の向こう側で彼女がなにげなく呟いた。 長々と電話をして、ふと会話が途切れる瞬間。 気まずさが出ない程度の短い沈黙を使ってなんてことない事を言 ってきた。 「そうか?」と僕が聞き返すと「そうよ」と一言。 携帯電話を片手に冬のすこし曇った窓を手のひらでクリアにして、 空を見上げてみる。 一点の曇りも無い純白の月が周りの星々をかき消して燦然として いていた。 いつからだろう。 これを綺麗と感じなくなったのは。 小学校の頃はなんにでも興味を持てたのに、今はあらゆる物がく だらない。 星だって、月だって、街のネオンだって、それこそ車のライトだ って。 あらゆる物が素晴らしかった。 でも何故だろう。 今はそうじゃない。 「そうでもないよ」 急に寂しさに苛まれた僕は少しむきになってしま...
  • *序盤戦
       「大丈夫よ、ジュン。国によって飲酒は16歳から認められるわ」 「もう早く始めましょうよぉ。何か隠し玉でもあるのかしらぁ?」  真紅、ここは日本だ。  あと水銀燈。お前は酒がすきすぎる。ボトル抱えるな。 「いえいえ、本当に無理はなさらぬよう。しかしながら、皆様もう大学生。昨年よりは羽目を多少外したところで、お酒の神様も見逃してくれるでしょう」  白崎さん……無責任なこと言わないでください……  昨年、というのは。丁度僕が独りだけ大学に落っこちたものの、とりもあえず高校は卒業したんだということで、ちまりとお酒なんかも出されたりもしたのだった。  それでもまだ、当時は結構平和的に行われていた筈のそれ――ごめん、ちょっと嘘ついた。  今回は一体どうなってしまうのだろう。  会場となった我が家の居間。妙に広い間取りがこういうときばかりは役に立つ。入ろうと思えば入れる空間。 ...
  • 日直日誌  ~あるクラスの記録
    梅岡だよ!みんな、大好きだぞ! こんな爽やかな先生他の学校にはいないと思うぞ! ハッハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!! あ、そうだ!中途半端な時期からだけど、これから一週間単位で記録してくよ! 筆で表せきれないと思ったらやめるけどな!!! ハハハハハハハハハハハハ!!!   日直の仕事 5月21日~5月25日分  5月28日~六月一日分
  • カムフラージュ 【1】
     1. その瞬間、思わず息を呑んでいた。 ありがちなドラマのワンシーンみたいに。 息を弾ませ、控え室であるホテルの一室に飛び込んできた、可憐にして鮮烈な印象の乙女。 予想だにしていなかった衝撃で、言葉は疎か、瞬きさえも忘れてしまった僕は、 ただただマヌケに口を開いたまま、彼女の美しさに見惚れるばかりだった。 足元が覚束ないのは、立ち眩みだろうか。 それとも、この胸に感じる、締めつけるような鈍痛のせい?  「あ……えっと」 泳いでいた彼女の瞳が、僕を捉えた。躊躇いがちに、ぎこちなく笑いかけてくる。 奥ゆかしく、初々しい。けれど、どこか得体の知れなさを感じさせる仕種だ。  「すみません。あの……こちらに行くよう言われて……来ました」  「あ、ああ。待ってたよ。僕は――」  「知ってます」 彼女は、歯切れよく続ける。「現在、注...
  • 【ゆめうつつ】~トロイメント~§4
    §4 ―――――――――  『トロイメント』は、相変らず私以外に客が居ない。  毎週決まった曜日と時間帯にここへ訪れる私は、もはや常連になっていると 言って何の差支えも無いと思う。今日はアッサムティーを注文して。多めのミル クを入れてから口をつける。 「それにしても。本当にお客が少ないのね、ここは」  たまに声に出てしまうのも失礼なのかもしれなかったのだが、どうにも事実な ので致し方ないと思う。  白崎さんとも大分親しくなり、私は大概のひとに接するときと同じような口調 で彼と話をするようになっていた。それに対する彼の話し方と言えば、相変らず なのだった。 「火曜は日が悪いようですね、真紅さん。まあもともとこの店は。  よく来て頂ける常連さんによって成り立っているようなものですから」 『例えば、あなたのような』。そんなことを話す彼の表情はいつも通り穏やかだ。 「ここは、ずっ...
  • 第二十二話 麗らかな日に
    「超機動戦記ローゼンガンダム 第二十二話 麗らかな日に」   「JUM、紅茶を入れて頂戴。」 「JUM~、私はヤクルトォ~。」 「あー、もう五月蝿いな。はいはい。」 JUMは真紅と水銀燈に言われたとおりに紅茶を入れ、冷蔵庫からヤクルトを取って来る。 「ありがとう、JUM・・・にしても、平和ね。」 真紅が上品に紅茶を口に運ぶ。 「そうねぇ・・もしかしたら嵐の前の・・・って奴かもよぉ?」 水銀燈はお茶菓子に手を運んでいる。 「まぁ、実際そうだろうな。僕らがモスクワに来てもう1週間くらいかな。レジスタンスもかなり集まって来てるし 他の集合基地では小競り合いが始まってるらしいよ。」 JUMもそう言って自分の為に入れた紅茶を飲む。 「そう・・・なら恐らく戦争が終わるまで休みはなしね。嫌だわ。」 「私もぉ。あんまり働きすぎるとお肌が悪くなるし老けちゃうわぁ~。ねぇ、JUM。それで私の貰い手が なかった...
  • カムフラージュ 【4】
     5. ラストオーダーは、最初と同じカクテルを注文した。 これで、楽しかった宴も、おしまい。 消えゆく幸せな時間を名残り惜しむように……僕らはゆっくりと、それを飲み干した。 たおやかに奏でられる旋律に、耳を傾けながら―― その曲がドビュッシー作の『夢』だと知ったのは、この数日後だった。  「だいぶ、酔ったな」  「……ですねぇ」 来たとき同様、足どりの怪しい薔薇水晶を支えつつ、控え室まで戻る。 彼女が、「どうしても着替えて帰る」と言い張ったから、仕方なくだ。  「そのドレス、着たままタクシーで帰ってもいいよ」 クリスマスだし、プレゼントすると言ったけれど、聞き入れられなかった。 薔薇水晶は頑として、首を縦に振ろうとしない。 僕のデザインしたドレスなんか、どうせ、もらったって嬉しくないよな…… なんて、ヘソを曲げたフリで困らせ...
  • 【ゆめうつつ】~トロイメント~§エピローグ
    §エピローグ  冬は、全てが眠りにつく季節だと思う。ついこの間まであんなに美しい彩り を見せていた樹々の葉が、いつの間にか枯れ木になり。今はその枝を冬風に揺 らしている。  きっと春になればまた新緑は芽吹き、穏やかな風が吹くだろう。今はその為 の準備期間。たとえ眠っていても、時間はこうやって進んでいるから。  街はひかりで彩られ、賑わいを見せている。その理由は簡単で、もう少しで クリスマスがやってくるから。  大きな通りに、ツリーが飾られている。イルミネーションの電飾が、きらき らと輝いていて美しい。人々は何処かうきうきとした様子で歩いている。    この季節だけ見ることの出来る、一瞬の景色。  冬に眠りについた人々が見ている、束の間の夢。  そんな中で独り、私は歩いている。細い小道に入ると、煌びやかだった電飾 は幾分ささやかなものになり、道を照らしていた。  店に辿り着き、...
  • 【お酒と、お正月と、お嬢様】
       新年明けたからといって、別段何の感慨も沸かないというのが、僕の常だった。  特にテレビを観るわけでもなし、どうせ観たところで下らないし。そう思って、僕は相も変わらず、年越しの瞬間から、ずっとネットに繋いでいるだけだった。  年が変わってから暫くして、ぶぶぶ、と携帯電話が身を震わせ、メールが届いたことを僕に知らせてくれる。日付の変更から二、三十分経っているのは、それだけ元旦と共にメールを飛ばした輩が多いせいだろう。センター大忙し。お疲れ様。  どれもこれも、友人からだった。  『あけましておめでとう!』『今年もよろしくお願いします』……  ――そもそものところ、こういったメールが届くこと自体、何も悪くないだろうとも思う。むしろ有難いこと。彩りのある絵文字が満載された文面を見やりながら、考える。一昔前の自分ならば、そんな思いも抱かないに違いなかった。新年を祝ってくれる、そうい...
  • 奇しき薔薇寮の乙女 第九話
    第九話 「……………………」 暑い、眠れない。 クーラーは……止まってるのね。 確か、3時間タイマーをかけていたのだったわ。 薄いタオルケットを腕で払いながら、枕もとを探る。 こつ、と指先に当たる固い何か。 豆電球を付けているけど、寝起きだからよく見えないわ。 手のひらで握るように感触を確かめて、ようやくそれが携帯電話だと思いだす。 時間は、ええと。深夜1時半。 いやな時間だわ、早く寝たい。 けど、ノドが渇いてしまった。 本当はこのまま寝てしまいたいけれど、自覚してしまったらそうもいかない。 あんまり動きたくないけど、冷蔵庫まで行って飲み物だけでも。 どうせこの時間なら、誰も起きてはいないだろうし。 お肌にも悪いから、早く済ませて寝てしまおう。 明日は休みだけど、規則正しい生活を送らないと淑女とは言えないわ。 「う……」 何が原因なのか知らないけれど、私は昔から暗い場所が苦...
  • @wiki全体から「賑やかな僕の家」で調べる

更新順にページ一覧表示 | 作成順にページ一覧表示 | ページ名順にページ一覧表示 | wiki内検索