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無題(ひかげ) - (2008/04/12 (土) 10:30:01) の編集履歴(バックアップ)



陵桜学園・桜藤祭 当日朝――

「すみません、あと5分で開演です!
 泉さん、最終チェックお願いします」
イベント当日特有の、ドタバタとした騒々しい空気の中、
どことなく緊迫した声音でみゆきさんの指示が飛ぶ。

「あいよー。かがみん手伝ってー」
「こっちがあれで……あれがそっちで……」
「無理、そろそろクラスに戻らないと」
「それがこっちで……これが……、あれー?」
「じゃあつかさ……、は無理か」
「ううー、ごめんねー……。わたし、手が遅くて」
「そもそも他人任せにするな、自分で頼まれたんだろうが」
「はいはいわかりましたよーっと
 クラスに戻ると言いつつまだ残ってるかがみん萌え」
「うう、うるさいわね、あんた達の方が心配だからよ!」

待ちに待った桜藤祭当日、開会直前の朝はこのように大混乱で迎えることとなった。
まあ寸前で修羅場ってる以上生徒に人を手伝える余裕なんてある訳はなく。
しかし確かに手の遅いつかささんの作業が特に残っているのは事実であって。
そして、俺の作業は一人でやればなんとかぎりぎり終わる量なわけで。
だから、隣で手伝ってくれている小さな人影に声をかけた。

「えっと、ひかげちゃん。よかったらつかささん手伝ってあげて!」
「うん、分かったよー」
元気よく答えてすぐさま駆けていく。
ひかげちゃんがコマネズミのように一生懸命走り回る様子は
なんだか見ていてくすぐったくて、微笑ましい。

「むっふっふー。やひとくーん、リアルろりーは犯罪だよー?」
「な、なにいってんのさこなたさん!」
ボンヤリとひかげちゃんの姿を目で追っていた俺に声をかけるこなたさん。
その顔にはからかうような笑みが浮かんでいる。

「んー、ロリっ子美少女に懐いてもらえるのは
 ギャルゲ勝ち組の条件だけどねー。
 まあバレない程度に自重汁って感じ?」
「だから……!」
別にひかげちゃんはそんなんじゃ……。
その言葉は口から吐き出されることなく霧散する
といっても深い心情的な意味なんかじゃなく、
物理的に遮られたからだけど。

「こらそこ二人っ! サボってんな!」
「わ、わわわ、崩れるよーっ!
 助けてー、こなちゃーん、やひとくーん!」
「みなさん、時間がありません! 急ぎましょう!」
「おおっと、やひとくんからかってる場合じゃないや」
「最初からそうだよ!」
かがみさんもようやく本腰を入れてくれるようで、
なんとか開会に間に合わせるために全員一丸となってスパートをかける。

「テープ、テープ」
「つかさ、そこは貼っちゃ駄目よ!」
「あ、そっか。お姉ちゃん、ありがと」
「口を動かす前に手を動かす! みゆき、時間は!?」
「あと……、30秒! 間に合いますか!?」
「それだけあれば上等!」
「わたしもおkおk~!」
「こっちもいけそうだよ!」
「え? え? えっと、えっと……!」
「つかささんはわたしがフォロー!」
「ナイス、ひかげちゃん!」
「nice loli!」
「あんたネタやる余裕があるなら!」
「手は動かしてるよん!
 かがみこそツッコむ余裕を作業に!」
「お前に言われんでもわかっとるわ!!!」
「みなさん、残り5秒です!」
みゆきさんの時報に続いて、非日常ゆえのテンションの高さか
自然にカウントダウンを口ずさんでしまう俺たち。

『4…、3…、2…、1…!』

そして、開会を告げる花火が上がった。