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亡国のお姫様 - (2014/12/20 (土) 10:53:52) の1つ前との変更点

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&bold(){&sizex(3){亡国のお姫様}} 自分以外、誰の気配もしなかった部屋に、いつしか鳥の巣が作られるようになっていた。 追い出すにも、その巣はしっかりとしていて、見た目だけは華奢で可愛らしい雀が紫歩の家には住み着いていた。 とはいえ、仮の住まいだ。この雀は、身体がどれだけ傷つき、その倍は心が傷つこうと、あの家を離れることを選ばない。 鳥籠だ、と紫歩は思っている。雀を飼うなんて酔狂だとも。 「……本当、あんたって私の胸が好きよね」 「きもちいいもの、紫歩ちゃんの、ここ」 「息を吹きかけないで」 「うふふ、感じてるの? さっきよりもぷっくりしてるね」 セーラーの上着は脱がされて、下着も取り払われて。ベッドの上で、紫歩は涼海の膝枕をしている。大きい胸は涼海の口元に押し付けられて、舌でちろちろと先端を舐められては、唇が音を立てて吸い付いてくる。 「やっ、だ……」 「何も、出ないんだね。お姫様。お姫様なら、母乳くらい出ておかしくないのに」 「ばか、言わないでよ……っ……」 「顔、真っ赤だよ、紫歩ちゃん。気持ちいい、って顔してる」 「うるさい……」 キスされたまでは良かった。脱がされて、さあ、熱を分け合い傷を舐め合う時間が始まったと思いきや、涼海は延々と紫歩の胸を吸い続けている。 「そんな、ふうにされたら、っ……んっ……変になる……」 「変になる? うふふ、見せてよ。紫歩ちゃんの本当の姿。その強がりに隠された、弱くて脆くてひ弱なきみの姿」 ひときわ強く吸われ、そして甘噛みされる。腰が揺らめき、声が漏れ、身体の反応は明らかに感じてしまっている。 ちくり、痛みが胸に走った。 甘噛みなんてものではなく、噛みちぎるような。 「いっ、た……」 顔を歪め、泣きそうになる紫歩の顔を胸越しに見て、涼海はにんまり笑った。 紫歩はその顔に息を飲む。恐怖に顔を引きつらせる。 虚ろだった涼海の目はぎらぎらと、夕闇の中で輝いて、どんな夕焼けより朝焼けより邪悪さを孕んでいた。 血が滲み出した先端を、それでも涼海は歯を突き立てる。 「やめ、やめてってば……涼海、痛い、痛いよ……」 紫歩がほろほろと泣きながら止めても、涼海は執拗だった。 一瞬、口が離れた瞬間を狙って、紫歩は涼海を突き飛ばす。 唾液に混じって暗めの紅が紫歩の胸を彩る。 見つめていたら、背中から衝撃を感じ、ベッドの上にうつ伏せに押し倒された。予想外の力の強さに呻くしかない。 「……ねえ、紫歩。ぼくが何もできないと思ってる?」 「思ってない……思ってないってば……やめてよ、涼海……もう、やだ……」 鼻声の紫歩の剥き出しの生白い背に、その肩甲骨に、涼海はかぶりつく。 「ひっ」 舌で嬲り、まるで骨つきの鳥肉を食べるように、何度も何度も歯で皮膚を突き破り、紫歩の生きる源を世界に誘いだす。 ぐすぐすとシーツに涙を染み込ませる紫歩の手入れの行き届いた髪の毛を払い、その細い首筋に、手を伸ばす。 ぐ、っと力を込めて、両手で思い切り、気道を抑える。 「あ、……う、ぐっ……」 「紫歩。ぼく、きみのことが大嫌いなんだよ。なんでも持ってるお姫様なのに、どうして、ぼくよりも不幸なふりをするの? 君はすべて持っているのに、どうして? なんで? ぼくの気持ちが、きみにわかるわけがないよ、愚かなお姫様。亡国のお姫様。だったら、ぼくがきみからすべてを奪ってあげる。きみがありがたくもなんとも感じてない、きみの宝物たちを。きみは、ぼくの奴隷になってしまえばいい」 抵抗しようと紫歩はもがくが、背中に乗られ、首を絞められ、縊り殺されそうになっている中で、酸素が頭から身体から失われる中で、なにもできない。 「……すずみ、ね、え……わたし、あなたのこと、すき、なのよ……」 その言葉に、涼海の手は弱まる。 けほけほと背中を反らせ、大きく肩で息をする。涙とも唾液ともつかないものに塗れた口元を拭い、シーツに擦れて胸がぴりぴり痛む。 「私に目をかけてくれているたくさんの人たちとは別に、私のことを憎んでいるだろう、あなたを選んだ意味を、わかってよ……」 息苦しさと、そして悔しさから紫歩は声をあげて泣く。涼海は、紫歩の背中から身を離した。 胃から、夕ご飯にと涼海と食べたファミレスのパフェが戻ってくる。胃液とごちゃ混ぜになって、食道を焼かれる。 紫歩はこの感覚を嫌という程、知っている。 口にはできる。胃の中にまでは持って行ける。それなのに戻ってくる。吐かないと気が済まない。トイレの中で何度、えずき、何度泣いたか。すんでのところで口からは溢れなかった。 嫌な味が広がる。 肩を震わせ、おののく紫歩。 「ごめんね……」 それを見て、形だけは囁くように謝りながら、涼海は紫歩の手を引き、身体を起こさせる。 真っ赤な顔で、真っ赤な目で、真っ赤な鼻で。胸だって痛々しく傷ついている。 綺麗だ、と思った。色がなかった少女が色づいている。 「私は、涼海のこと、好きなの……好き……好きなんだってば……」 「じゃあ、ちょうだい。紫歩を」 「身体を? 心を? 満足するまで、何でもあげるから、もう、そんな傷つかないで……」 スカートをまくりあげ、タイツを破いて、ショーツをずらして、濡れ切ったそこに涼海は細っこい指を突き立てる。 泣きながら、紫歩は嬌声をあげる。 「うふふ、何でもくれる、って言ったよね? うふふ」 −−だったら、全部もらうよ。きみのもの。 涼海の真っ暗な目に、紫歩は笑みを返した。そしてはっきりと告げる。 「一緒に生きたい人たちは別なの。だから、ねえ、一緒に死んでよ。涼海。私の命を、あんたにあげるわ」 涼海を抱きしめて、キスをして、紫歩はにんまりと笑う。 「……美馬なんて捨てて、一緒に死んで」 夜は終わらない。 羽根を折られた鳥は、飛び立てない。
&bold(){&sizex(4){亡国のお姫様}} 自分以外、誰の気配もしなかった部屋に、いつしか鳥の巣が作られるようになっていた。 追い出すにも、その巣はしっかりとしていて、見た目だけは華奢で可愛らしい雀が紫歩の家には住み着いていた。 とはいえ、仮の住まいだ。この雀は、身体がどれだけ傷つき、その倍は心が傷つこうと、あの家を離れることを選ばない。 鳥籠だ、と紫歩は思っている。雀を飼うなんて酔狂だとも。 「……本当、あんたって私の胸が好きよね」 「きもちいいもの、紫歩ちゃんの、ここ」 「息を吹きかけないで」 「うふふ、感じてるの? さっきよりもぷっくりしてるね」 セーラーの上着は脱がされて、下着も取り払われて。ベッドの上で、紫歩は涼海の膝枕をしている。大きい胸は涼海の口元に押し付けられて、舌でちろちろと先端を舐められては、唇が音を立てて吸い付いてくる。 「やっ、だ……」 「何も、出ないんだね。お姫様。お姫様なら、母乳くらい出ておかしくないのに」 「ばか、言わないでよ……っ……」 「顔、真っ赤だよ、紫歩ちゃん。気持ちいい、って顔してる」 「うるさい……」 キスされたまでは良かった。脱がされて、さあ、熱を分け合い傷を舐め合う時間が始まったと思いきや、涼海は延々と紫歩の胸を吸い続けている。 「そんな、ふうにされたら、っ……んっ……変になる……」 「変になる? うふふ、見せてよ。紫歩ちゃんの本当の姿。その強がりに隠された、弱くて脆くてひ弱なきみの姿」 ひときわ強く吸われ、そして甘噛みされる。腰が揺らめき、声が漏れ、身体の反応は明らかに感じてしまっている。 ちくり、痛みが胸に走った。 甘噛みなんてものではなく、噛みちぎるような。 「いっ、た……」 顔を歪め、泣きそうになる紫歩の顔を胸越しに見て、涼海はにんまり笑った。 紫歩はその顔に息を飲む。恐怖に顔を引きつらせる。 虚ろだった涼海の目はぎらぎらと、夕闇の中で輝いて、どんな夕焼けより朝焼けより邪悪さを孕んでいた。 血が滲み出した先端を、それでも涼海は歯を突き立てる。 「やめ、やめてってば……涼海、痛い、痛いよ……」 紫歩がほろほろと泣きながら止めても、涼海は執拗だった。 一瞬、口が離れた瞬間を狙って、紫歩は涼海を突き飛ばす。 唾液に混じって暗めの紅が紫歩の胸を彩る。 見つめていたら、背中から衝撃を感じ、ベッドの上にうつ伏せに押し倒された。予想外の力の強さに呻くしかない。 「……ねえ、紫歩。ぼくが何もできないと思ってる?」 「思ってない……思ってないってば……やめてよ、涼海……もう、やだ……」 鼻声の紫歩の剥き出しの生白い背に、その肩甲骨に、涼海はかぶりつく。 「ひっ」 舌で嬲り、まるで骨つきの鳥肉を食べるように、何度も何度も歯で皮膚を突き破り、紫歩の生きる源を世界に誘いだす。 ぐすぐすとシーツに涙を染み込ませる紫歩の手入れの行き届いた髪の毛を払い、その細い首筋に、手を伸ばす。 ぐ、っと力を込めて、両手で思い切り、気道を抑える。 「あ、……う、ぐっ……」 「紫歩。ぼく、きみのことが大嫌いなんだよ。なんでも持ってるお姫様なのに、どうして、ぼくよりも不幸なふりをするの? 君はすべて持っているのに、どうして? なんで? ぼくの気持ちが、きみにわかるわけがないよ、愚かなお姫様。亡国のお姫様。だったら、ぼくがきみからすべてを奪ってあげる。きみがありがたくもなんとも感じてない、きみの宝物たちを。きみは、ぼくの奴隷になってしまえばいい」 抵抗しようと紫歩はもがくが、背中に乗られ、首を絞められ、縊り殺されそうになっている中で、酸素が頭から身体から失われる中で、なにもできない。 「……すずみ、ね、え……わたし、あなたのこと、すき、なのよ……」 その言葉に、涼海の手は弱まる。 けほけほと背中を反らせ、大きく肩で息をする。涙とも唾液ともつかないものに塗れた口元を拭い、シーツに擦れて胸がぴりぴり痛む。 「私に目をかけてくれているたくさんの人たちとは別に、私のことを憎んでいるだろう、あなたを選んだ意味を、わかってよ……」 息苦しさと、そして悔しさから紫歩は声をあげて泣く。涼海は、紫歩の背中から身を離した。 胃から、夕ご飯にと涼海と食べたファミレスのパフェが戻ってくる。胃液とごちゃ混ぜになって、食道を焼かれる。 紫歩はこの感覚を嫌という程、知っている。 口にはできる。胃の中にまでは持って行ける。それなのに戻ってくる。吐かないと気が済まない。トイレの中で何度、えずき、何度泣いたか。すんでのところで口からは溢れなかった。 嫌な味が広がる。 肩を震わせ、おののく紫歩。 「ごめんね……」 それを見て、形だけは囁くように謝りながら、涼海は紫歩の手を引き、身体を起こさせる。 真っ赤な顔で、真っ赤な目で、真っ赤な鼻で。胸だって痛々しく傷ついている。 綺麗だ、と思った。色がなかった少女が色づいている。 「私は、涼海のこと、好きなの……好き……好きなんだってば……」 「じゃあ、ちょうだい。紫歩を」 「身体を? 心を? 満足するまで、何でもあげるから、もう、そんな傷つかないで……」 スカートをまくりあげ、タイツを破いて、ショーツをずらして、濡れ切ったそこに涼海は細っこい指を突き立てる。 泣きながら、紫歩は嬌声をあげる。 「うふふ、何でもくれる、って言ったよね? うふふ」 −−だったら、全部もらうよ。きみのもの。 涼海の真っ暗な目に、紫歩は笑みを返した。そしてはっきりと告げる。 「一緒に生きたい人たちは別なの。だから、ねえ、一緒に死んでよ。涼海。私の命を、あんたにあげるわ」 涼海を抱きしめて、キスをして、紫歩はにんまりと笑う。 「……美馬なんて捨てて、一緒に死んで」 夜は終わらない。 羽根を折られた鳥は、飛び立てない。

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