5-303氏 無題

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<咲視点> 最近よく言われるんだ。 「咲は変わったな」 って。 一昨日は晩御飯の途中に 「咲はもともと静かな方だけど、最近輪をかけて大人しいな。何か考え事でもしてるのか?」 お父さんからそう言われたし、今日も部活が始まる前、旧校舎に続く川べりの道で流れを見てたら 「よお咲、どうしたんだ? 前からぼーっとしてる奴ではあったけど、この頃その傾向が強いぞ」 いきなり京ちゃんに声を掛けられた。 二人だけじゃなくて、優希ちゃんにも、部長にも、染谷先輩にもそんなことを言われた気がする。 自分ではよくわからないけど、色々な人が口を揃えるから、そうなのかな。 (どうやら私は変わったらしい) (でも一体どこが変わったんだろう?) そんなことを考えながら歩いてたら、いつの間にか和ちゃんとお別れの挨拶をする場所に来てた。 「それじゃあまた明日、咲さん」 っていう言葉を聞くと、隙間風みたいに寂しさが入り込んで来る。 名残惜しいってきっとこういうことを言うんだと思う。 部活帰りの田舎道。 十字の交差点で立ち止まった私。 暮れなずむ空の下で、 「またね」 って何度も心の中で繰り返しながら、いつものように和ちゃんの背中が見えなくなるまで手を振る。 そう言えば、こんな風に誰かを見送るなんて今まで無かったっけ。 明日が待ち遠しくて溜らないなんて、いつ以来だろう。 私は変わったのかも知れないって、なんとなくそう思った。 和ちゃんの背中はもう見えなくなっていて、夕暮れ時の帰り道には電信柱の長い影が落ちているだけだった。 〈和視点〉 学校での席は窓際にあって、左に顔を傾けると校庭がよく見えます。 最近授業に身が入らない私は、もっぱら頬杖をついて窓越しにその景色を眺めるばかり。 丁度今は、他クラスの子達が体育の授業でサッカーをしているところ。 右から左に、左から右に飛んでいくボールをぼんやりと目で追う内に、 先生が黒板に書いている数学の公式なんて、いつしかどこかへ行ってしまいました。 大きく蹴り出したボールに走りこんだサッカー部の男の子がシュートを打って、 それがゴールの枠に当たって勢いよく跳ね返って、 私はふと窓に写るグランドにカモーネを重ねて、、、、、、 ――カモーネというのは咲さんと交換したお土産の名前―― 何となくボールを追ってみたり。 ゴール目掛けてシュートを打っても、窓に浮かぶボールはカモーネをすり抜けて行って、 それはなんだかよく出来た皮肉みたい。 (思った通りにゴール出来たらいいのに) そう思っても、中々自分の気持ちを伝えることは難しいのが現実です。 咲さんのことを思い浮かべながら、差し込む光にカモーレを透かして、 もう残っている筈のない彼女の手の温もりを探しますが、 けれど、いつものように手の中のカモーレは何も応えてくれません。 あの日を境に咲さんが私を名前で呼んでくれるようになったという事実の証として、そこにあるだけ。 名前よりももっと多くのことを咲さんに望み始めている私の胸に、嬉しさと悲しさの二つが満ちて、 (どうすればいいと思いますか、カモーレ?) そんなことを尋ねていました。

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