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    <title>咲-BATTLE ROYALE-</title>
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    <description>咲-BATTLE ROYALE-</description>

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    <title>漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-</title>
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    <description>
      ＊＊第２３話　漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-

世界はグレーで出来ている。

白か黒かで分けることは容易くないし、明確な白や黒など稀だ。
大半は、『白寄りのグレー』か『黒寄りのグレー』にカテゴライズされる。

グレーを見て、それを白・黒どちらと呼ぶかは、主観に依る所が大きい。

「…………っ！」

さて、それでは私は善人でしょうか、悪人でしょうか。
――私の主観では、私は悪人寄りのグレー、『クズ』に類するものだと思う。

人を殺したことなんてないし、リンチや暴行だって経験がない。
万引きの類やクスリやウリにだって手を出してないし、本物のマックロクロスケな悪人から見たら、悪人だなんて片腹痛いくらいの小物。

それでも、飲酒喫煙くらいだったら普通にしてるし、短絡的思考で嫌がらせのために盗みを働いたこともあった。
間違いなく『いい子』ではないし、人間性はお察しだ。

（いた……）

そんな私だが、今ちょっとした問題に巻き込まれている。
普段だったら何か問題に直面してもしれっと他人に丸投げして自分は逃走するか、適当に流しちゃうところなのだが、今回ばかりはそうもいかない。
何せ、かかっているのは自分の命だ。

（参加者……ッ！）

殺せ、と言われた。
生き残れるのは一人だけであり、他の者は殺さなくてはならないと。
ジョークの類と信じたかったが、あまりにリアルな死の匂いのする藤田プロの亡骸と、配られたショットガンがこれは現実と言っている。

引き金を引き、グロテスクな死体の山を築かない限り、家に帰ることすら許されないのだ。
……多分だけど、露骨な他殺体では、死体としても家には帰れないだろうし。
高確率で死体になっても帰宅は出来ない。

（マジで居やがった……！）

怖かった。
恐怖に押しつぶされそうだった。
実際恐怖でスタート直後に嘔吐した。
それはもう豪快に朝食べたスクランブルエッグを地面にぶちまけた。
藤田プロに対する思い出しゲロという側面もあったけど。

とにかく私は、この状況に文字通り吐くほどビビっていた。

（アイツは……）

さて、ここで問題です。
私は普段、人なんて殺しません。
先述の通り、まともな暴行一つ経験ありません。
そんな私は、人を殺そうと思うでしょうか。

（……撃たねえと……）

答え――『思います』だ。
だって自分が可愛いから。
人を殺すのは怖いけど、当然嫌に決まってるけど、自分が死ぬのはもっと嫌だから。

当然だろう？
私は決して、聖人君子じゃないんだ。
自分が可愛い、フツーの女子高生なんだ。

……フツーの女子高生だって、命がかかれば、人だって殺せるさ。
世の中にゃ、命がかかってなくても人を平気で殺せる奴もいる。
なら私は、別に狂っているわけではないだろう。
ましてや今回の殺し合いじゃ超法的措置が取られ、一切罪に問われない。
ついでに言えば「脅されていた」「そうしないと自分が死ぬ」という素晴らしい大義名分まである。

別に人を殺したいという欲望を持ってなくても、殺し合いに乗るのが普通ってもんだ。
きっと、この会場の奴も、今頃は殺し合いに乗りまくってることだろう。
現にすでに、何人かの死者が出ている。

（……おいおいおい、仲間いるのかよ）

だが――――全員が全員というわけじゃないらしい。
いわゆる『白』、『善人』な奴も０ではない。
大多数は善人を装っているだけで殺し合いに一歩踏み出す勇気の無かった馬鹿だろう。
要するに、黒寄りか白寄りかが違うだけで、私と同じ強い意志を持てない『クズ』だ。

だがしかし、突き抜けすぎてもはや善人としか言えない馬鹿も、確かに存在している。
真っ白な世界に生きているかのような、「きっとこういう奴が人から尊敬を集めるんだろうな」という感じのお人好し。
私のようなクズから見たら異端極まりないのだが、だからこそ、クズが群がるカリスマ足りえる。

（……そりゃそうか……何せ、この先には……）

例えば、龍門渕透華。
モニター越しにしか見たことのないソイツは、『突き抜けた馬鹿』だった。
私の目指している山頂、そこから殺し合いの中止を呼びかけている。

もちろん、そこに向かっているのは、仲間に入れてもらうためじゃない。
自分の居場所とメンバーをペラペラ喋るカモを狩りにいくのだ。
不意に呼びかけが聞こえた時は警戒したが、この頻度で何度も情報を垂れ流している所を見る限り、ただの真性らしい。

開始から６時間誰にも会わなかったため、武装は全く増えていない。
戦う気がない集団なんて、願ったり叶ったりだ。襲わない理由がない。
同じような考えを持った奴に警戒しながら進んでいるため、未だに辿り着いてはいないが。

（……集団に、勝てるか……？）

じわじわ目的地に進みながら、ずっとそのことを考えていた。
いくら相手がお人好しの集団とは言え、２～３人ぶっ殺せば、銃くらい取るだろう。
先程の呼びかけでも人数をぺらぺらと喋ってくれていたが、確かその数は５人程だった。
それだけの数が集まっているのだ、銃を持ってないはずがない。
いくら銃器以外も配られてるとはいえ、『５人全員が銃器以外を配られた』なんてこと、よほど運が悪くない限りありえないだろう。

だからといって、勝てないとは思わない。
何せ私の支給品は、銃の中でも“アタリ”の部類。
ウィンチェスターＭ１８９７――所謂『ショットガン』である。

１８９７と言う数字が示す通り、このショットガンが作られたのは今から１００年以上前。
どちらかというと骨董品のように思える。
しかしながら付属の説明書（ウィンチェスターという名前も、これに書いてあるから分かった）を読む限り、古いからと一概にハズレ扱いは出来なかった。

ポンプアクションとかいう名前の動作が必要であるなど、不便な点も確かにある。
しかしながら、ショットガンの中ではそれなりに信用度が高いらしく、米軍がかつて採用していたとの無駄な情報も載っていた。
撃つ度にガシャコンガシャコンするのは大変不便であるし、正直滅茶苦茶重たかったが、散弾銃の性質上、接近すればまず外さない。
そして何より、米軍が採用していたような『塹壕銃』として支給されていたのが大きい。

つまり、塹壕内の白兵戦で使用されていたこの銃には、先端に刃物が装備されているのだ。

これはかなり大きい。
一発撃ってポンプアクションしている間に取り押さえられる可能性が、こいつを軽く振り回すだけで一気に減るのだ。
刃物を前に物怖じしない者などいない。
ましてやこの島にいるのは、刃物と縁の無さそうな連中ばかりだ（自分と葉子の二人が一番刃物沙汰に近そうな位置にいるという自覚はある、実際は無縁だったのだけども）
下手な銃よりも威力や危険性を実感できるだけに、体が竦んでしまうだろう。
いざとなればこいつで刺し殺せるというのも大きい。

そう、ウィンチェスターは、集団相手に大暴れするのに最高に適しているのだ。
相手が五人いるからといって、勝ち目がないわけではない。
勿論、四人殺して自分も死ぬとかいう形もありえるし、確実に生き残れるわけではないのだけれども。

（いや、大丈夫……勝てるはず……勝てるはずだろ……）

だがしかし――分かっていても、体がうまく動かない。
獲物を発見したというのに、引き金を引くことが出来ない。
ウィンチェスターを構えることすら躊躇っている。

（撃てよ……撃つんだよっ……！）

今更撃たない理由なんて無いのに。
噛ませ犬として放り込まれたからって、黙って死ぬ気なんてないのに。

（何でだ……相手が……）

カタカタと震えている。
いつから私は震えていた？　ずっとか？
気付かれるんじゃないかと思うくらい震えが止まらない。

（原村だからか……？）

それは、相手が、顔見知りだからだろうか。

とはいえ別に仲が良かったわけじゃない。
むしろ嫌われているだろうし、応援はしていても、また会いたいとは思わなかった相手である。

なにせぬいぐるみを盗んで壊してしまった相手だ。
さすがの私にも罪悪感くらいはある。
なにせ普段なら避けていたはずの『露骨に他者に迷惑をかける犯罪行為』だ。
当時は徹夜明けかつ変なテンションだったので出来たが、冷静になると申し訳ない以外に言葉が見つからない。

だから、謝罪以降口を聞いたことはなかった。
原村の頭には、既に私に関する記憶が無い可能性すらある。
記憶があったとしても、盗人としての記憶しかないかもしれないので、いっそ忘れてくれていた方が有難いけども。

ともかく――そのくらい何も出来ずに原村の前に敗れ去った。
悔しいが、噛ませ犬と呼ばれても甘んじて受け入れるしかないくらいの力の差を見せつけられた。
調子に乗って井戸で踏ん反り返った蛙が、大海を知るシャチあたりに食い殺されただけの話。

それだけだ。
それだけの、間柄だ。

（顔見知りだから……撃てないのか……？）

なのに、たったそれだけのことで、体が動かなくなっている。
これから何人もの人間を殺さなくちゃいけないのに。
命乞いするだろう人も、殺し合いなんて間違ってると言う人も、みんなみんな、殺そうとしているのに。

『どーすんのよ、マジ』

――――友人ですら、殺さなくてはいけないのに。

『さっさと決めちゃってよ』

ヘラヘラとしたバカ面が、何故か脳裏によぎってくる。
後輩なのに敬意の欠片もない口調で無遠慮に喋りかけてくる、馬鹿な女の生意気なツラが。

アイツは、葉子は、友達というわけではない。

腕が立つが性格に難のある下級生。
『熱血真面目な堅物部長が苦手な者同士』なんていう格好のつかない共通点があったから、なんとなくでつるんでいただけだった。
互いにレギュラー候補故にレギュラー落ちが約束された奴らには妬まれていて、何となくそいつらとは遊びに行きづらかったというのもある。
上下関係とか面倒という点でも気があったし、よく一緒に練習をサボりカラオケ行ったりゲーセン行ったり――

ただそれだけの関係だ。
グレーの世界で日々を怠惰に過ごす際、何か隣に居ることが多かっただけの存在。
サボりといったクズの行いを安心して共に出来るクズ仲間。
本当にそれだけの、決してまともとは言えないただの連れ１号だ。

『いやぁ～たぁまには先輩らしいとこ見せて下さいよぉ～』
『気色悪いンだよ、都合いい時だけ後輩ヅラすんな！』
『いーからいーから、やっぱ夏はアイスっしょ』

友情なんて無かったし、別に好いてるわけでもない。
他に暇人がいないから、適当に呼び出したり呼び出されたりしただけ。
アイツが死のうと知ったこっちゃないし、多分互いが死んでも「マジで」の三文字で終わる。
葬式くらいは出たのかもしれないが、多分、涙は出なかっただろう。
葬式饅頭食いながら「いやー気の毒にねー」なんて言って、数分後にはテレビでバラエティ番組を見ながらゲラゲラ笑うこと請け合いだ。

所詮その程度。
その程度の間柄、その程度の知り合いだ。

命がかかった状況で、気にするような相手じゃない。
気にせずに、自分が助かることを考えればいいのだ。
あいつだって、間違いなくそうしている。

この場で原村達を殺り、出会ったら葉子も殺す。
それでいい。それでいいはずなのだ。

『次は奢れよこの野郎』
『えー、フッツーこういう時って後輩に奢ってやれとか言うもんなんじゃね』

なのにウィンチェスターの銃口は、未だに定まってくれない。
死にたくないのは確かなのに。

吐きそうなほど恐ろしい藤田プロの亡骸を思い返したら、何とか腕は持ち上がった。
恐怖に屈する弱い人間なのだから当然だ。
なのに持ち上げた銃口は、先程からカタカタと揺れ続け、ちっとも狙いを定めてくれない。
まるで筒の先端に突如巨大な錘でも現れたかのように、ウィンチェスターが重たく感じる。
呼吸をするのも忘れそうになり、額からは汗が流れ出ていた。

『うっせ。自分以外の奴に返っても自分が得しなきゃ意味ないっしょ』

かつて葉子に言った言葉が頭をよぎる。
あまりに醜いその言葉は、半分冗談だった。
数百円のアイス代だのが自分の元に返らなくても、別に大して困らない。
その分誰かに奢ってやってソイツと楽しくやればいいんじゃねえのと思う。

私は自分が一番だし、どうしようもないクソ野郎だが、前述の通り悪人というわけではないし、グレーの中でも真ん中寄りであり真っ黒寄りとまでは思ってない。
そんなどうでもいいことに目くじら立てる方が面倒臭いと思ってしまうし、そんなところでケチ臭いことを言いたくなかった。
面倒なことは考えず、その場凌ぎのように怠惰な日々を適当に楽しむ。
それが基本スタンスだ。

『うっわ、器小さ！』
『にんげんだもの。byみつを』

しかし――ごく普通のダメ人間のクソ野郎らしく、残りの半分は冗談でなく本心だった。
些細なことなら自分に返らなくてもいいが、一定以上のものになったら、自分が得なくては意味がない。
他人の幸せを喜んでやれるのは、その幸せがさほど羨ましくない時か、そもそも自分に関係ない話の時だけ。
付き合えるなんて思ってなかったアイドルが結婚したら素直に祝福も言えるが、ちょっといいなと思っていたクラスメートが交際を始めたら素直に喜べないようなもん。
『ちょっといいなって思ってた奴と一緒に遊園地に行ってた』くらいなら、まぁ、いいんじゃねーので終われたろうけど。

兎にも角にも、極々身近で、一定以上の幸福は自分が得てこそ意味があるのだ。
命なんてのは、身近で大きな存在の最たるもの。
数百円の利益と違い、断固として自分が得なくてはならないもの。

（撃つしかねぇ……じゃなきゃ死んじまうんだ……ッ）

だから、自分に言い聞かせる。
『嫌だけど、やるしかない』『仕方がない』と。
自分が今まで定めていた“真っ黒な人間になってしまうライン”を超える勇気を容易くは持てないから。
超えたくなくても、そうしなくてはいけないのだと自分に言い聞かせて。

（そうだ……戦う気になってる奴は、大勢いるんだ……！）

そして――『自分だけでなく皆そうだ』と自分に言い聞かせることで、良心の呵責を無理矢理抑え込む。
心が弱い、どこにでもいるただのクズだから。
一人でやるのは躊躇う行為も、「皆やってる」の一言で躊躇なくやれてしまう程度の愚衆の一人だから。
“やりたくない”の気持ちを殺して、引き金へと指を伸ばす。

（脱出なんて、出来るわけがねーんだよ……！）

例え先程呼びかけをしていた者が皆やる気のない真っ白な善人だったとしても、その善意ではこの現実に立ち向かえない。
放送で呼ばれた死人の数だけ、真っ黒に染まる覚悟をした人間がいるのだから。
人と遭遇した以上、もうグレーではいられないのだ。
そして、白に染まって無謀な戦いをする程の根性がない以上、黒に染まるしかないのだ。

『誰それ、知らねー』
『はあ！？　マジで！？』

結論の出ない、出るはずのない堂々巡り。
いや――結論は出ているのに、それに向かう一歩を踏み出す勇気がないための堂々巡り。
それが、ようやく終わる。
心のどこかで期待していた『躊躇っている間に原村がどこかに消える』という結末が、原村達が立ち止まることで木っ端微塵に打ち砕かれて。

『まーじかー、これがジェネレーションギャップかぁ？』
『んな大袈裟な。一つしか違わないじゃん』
『一歳差ってーのが結構デカいんだよ！』

震えて狙いは定まらないが、銃口は上を向いた。
添えるだけだとはいえ、引き金には指をかけた。
あとは引いてぶっ放し、そのまま戦闘に雪崩れ込むだけ。

なのに、やはり、引き金は引けなかった。

生き残りたくて仕方ないのに。
帰りたくて仕方ないのに。

『クソ、いいか、みつをってーのはなだな』
『あ、長くなりそうなら今度でいい？　そろそろ帰らねーと』
『んだよ、用事でもあんのか』

なのに、どうでもいいはずの馬鹿の顔と、いつだったかすら思い出せない日のやりとりが、先程からちらついて。
たった少し指に力を入れるだけのことが出来なくて。

『ヤンキー母校に帰るの再放送今見ててさー』
『てめぇこの野郎アイス奢った先輩の話よりドラマの再放送かよ！』
『今日の話めちゃ好きでさー』
『しかも見たことあるのかよ！』

そして、気付いた。
やっぱり私は、帰りたくて仕方がないんだ。
クズで我儘な私は、死にたくないだけじゃなく、帰りたいと望んでいるんだ。

『ったく……んじゃーな』
『うぃーっす、お疲れ！』

物理的な話でなく、もっと精神的な意味で。
私は、あいつと馬鹿をやってるだけの無為でくだらない日々に、どうしても帰りたいんだ。

『んじゃまた明日ー！』
『おう、またな』

たった一人しか帰れないって、それは叶わぬ夢だって、ほんとは理解出来ているのに。






　☆　　★　　☆　　★　　☆






ポーカーフェイスには自信がある。
だがしかし――それを過信は出来ない。

部活仲間である須賀京太郎を手に掛けた時、和は落ち着きを失った。
すぐに立ち上がり罠を仕掛けるべく動き出したとはいえ、嘔吐・号泣と、普段からは想像も出来ぬほどに動揺した。
如何に冷静なデジタル少女とはいえ、何だかんだでただの女子高生なのだ。
友人を手にかけて、平気でいられるわけがない。

勿論、既に二人の人間を手にかけて、漆黒の意思に身を染め悪となる覚悟は出来ている。
人を殺すということに抵抗感はあっても、問題なくやれるだろう。
殺害のためにポーカーフェイスで相手を騙す自信はある。

しかし――京太郎を殺した件については、動揺してしまう可能性が高い。
少なくとも、和はそう思っている。
京太郎殺害後の予想以上の肉体的動揺が、脳裏にこびり付いてしまっている。
だからこそ、和はまだ動けずにいた。

（さて……いい加減、優希達の居た場所からは大分距離を取れましたが……）

前を行く美穂子の背中を眺めながら、いつ動き出すかを考える。
美穂子の観察眼の凄さは、合宿で身を持って体験していた。
下手な動揺は見透かされる可能性が大きい。

（問題はいつ、どこで、どう切り出すかですね）

美穂子が本当にただの善人なら、この場で仕留めてサブマシンガンを奪い取るだけでいい。
しかし、美穂子が腹に黒いものを抱えているのだとしたら、後々のことを考えて同盟を結ぶ必要がある。
とはいえ、優勝を狙っているのだとしたら、同盟も容易いものではないだろう。
何せどこかで裏切り合うこと前提だし、裏切れば相手の武器を丸っと頂戴出来るのだ。
武器と天秤にかけられた末、あっさり同盟拒否を受けてもおかしくはない。

（ベストは足を止め向き合う前に彼女の腹の中を見極めることですが……）

美穂子はデジタル的な思考にも長けており、この殺し合いの参加者の中でも有数の『読み合いの強者』と言えるだろう。
正面から論争をして負けるとは思っていないが、何らかの理由で京太郎殺害関係の話になった際、動揺を彼女に看破されないとも限らない。
その動揺を心の弱さと断定され、切り捨てられる可能性が０ではないのだ。
あまり彼女と顔を合わせてやりとりはしたくない。
和は理屈を中心に考察するため、相手の表情をあまり気にしないというのもあるし、とにかくベストは自分が後ろを歩く今の構図のままで結論まで行くことである。
この立ち位置なら、美穂子と戦闘になっても、自分が圧倒的有利だし。

「あの、原村さん」

しかし――和が切り出すより早く、美穂子が口を開いた。
依然足を進めてはいるし、こちらを振り返ることもない。
ただの雑談の可能性も考慮し、思わず掲げそうになったブローニングハイパワーを再び下ろす。

「何でしょうか」

そして、何でもないかのように淡々と言葉を返す。
割りと自然な声色だったと、和は自分で思った。
しかし、その冷静さも、美穂子の口から出てきた言葉で瓦解する。

「殺し合いに乗ってますよね……？」

一瞬、和の動きが硬直する。
それからほとんど反射的に、ブローニングハイパワーを持ち上げた。
だがしかし、「美穂子の本心を読まないといけない」と考え続けていたのもあって、すぐに撃つことは出来なかった。
もしも美穂子も自分と同じく『同盟を結ぼうとしてる殺人者』なのだとしたら、ここで潰し合うべきではないのだから。

「……」

和は言葉を返さない。返せない。
脊髄反射で答えるよりも返答内容を吟味すべきだと考えたというのもある。
ブローニングハイパワーを構えたのとほぼ同時に、美穂子はこちらを振り返っていたというのもある。

そして、その美穂子の両目は見開かれており、ウージーの銃口と共にこちらを向いていたということもある。

ウージーを持つ手は非情に安定しており、躊躇の類は見て取れない。
引き金にもしっかりと指がかけられており、いつでも発射できるということをアピールしている。
仮にこちらが美穂子を射殺出来たとしても、肉体の反応などでこちらも撃たれる可能性が大きい。
銃口は胸のあたりを狙っており、多少銃口がずれたところで身体の一部を持っていかれることに間違いはないだろう。

和は、それで理解した。
美穂子は漆黒の意思の元、このゲームに乗ることにした、こちら側の人間なのだと。



【残り２３人】

----

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|[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]|福路美穂子|―|    </description>
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    <title>開幕-ｾｷｷﾞﾒ-</title>
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    <description>
      **第００話　開幕-ｾｷｷﾞﾒ-

私は昼寝が好きだ。
だがしかし、勘違いしないで頂きたいことが１つある。
それは、『昼寝好き』と『居眠りが多い』は別ものであるということだ。
私のいう『昼寝』はきちんとした場所できちんと眠る体勢を整えてから眠ることであり、
決して授業中のような眠ってはいけないシチュエーションで夢の世界へ逃避することではない。
私は授業中に居眠りなんかしないし、友人が車を運転する横で無神経に眠りこけたりもしないのだ。

そう、眠っていたはずがない。
別に居眠りをするほど疲労してはいなかったのだし、居眠りする理由がない。
そもそも蒲原の運転は、居眠りを許すほど乗り心地のいいものではない。

「お、ゆみちんやっと起きたかー」
「センパイ、大丈夫っすか？」

では、気絶していたとでもいうのだろうか。
あれほど荒い運転だ、頭をぶつけ意識を失ったとしてもおかしくはない。
私を起こし不安そうに見つめてくるモモ達の表情を見ると、気絶していたで間違いないのではと思えてくる。

「モモか……ここはどこだ？」

だが、それもありえないのだ。
もしも車内で気絶したのだとしたら、車の中か車の傍で起こされなければおかしい。
運ばれたとしたら、布団なりソファなりに乗っているはず。
少なくとも、見ず知らずの体育館のような場所に寝かせるなんて真似はするまい。

「あ、加治木先輩、起きられたんですね」

声のした方に目をやると、津山が小走りに駆け寄ってきていた。
そんな津山を蒲原が脳天気な声で出迎える。

「おかえりー、どうだった」
「文堂さんに聞いたんですけど、やっぱり帰る途中からの記憶がないそうです」
「私達と、同じ……」

震える妹尾を蒲原が慰める。
そんな微笑ましくもある光景から視線を外し、周囲を見渡してみた。
この体育館には、どうやら私達以外にも数名がいるらしい。

津山の報告通り風越の５人がバスケゴールの下でコーチと思しき大人を中心に何やら話し合っている。
どうやらここには清澄や龍門渕といった合宿メンバー全員がいるようだ。
その他にも、合宿では見なかった顔が数名ほど見受けられる。

「あの……ちょっといいですか？」

声の方に顔を向けると、合宿で津山と親しくなったらしい文堂という少女が蒲原達に話しかけていた。
合宿で見なかった顔を観察している間に、こちらに歩み寄っていたらしい。
腰を上げ、その輪の中に私も加わることにした。

「何が何だか分かりませんけど、とりあえず皆で固まって様子をみようってことになりまして……
　よかったら、一緒に舞台の前にでも固まりませんか」

団体の代表である蒲原に、たどたどしく目的を伝える文堂。
……この手の真面目な話を蒲原にしても無駄だと思うが。

「ワッハッハ。小難しいことはよく分からないけど、どうせ他にやることもないし、了承しようかー」

ほらな。案の定軽いノリで決めた。意思確認も特にせず。
まあ、意思確認をしたところで満場一致で賛成になったと思うが。
訳のわからぬこの状況、一人でも多くの知り合いといたいと思うのは普通の感情だろう。

「ど、どうも～……」
「おじゃましま～す……」

若干、いやかなり気まずそうに入ってきた初対面の二人組を最後に、舞台前への集合が終わった。
知人が少ないのだろうか、二人組は隅っこの方で黙りこくっている。
実際私も彼女達を見るのは初めてだった。
他にも初めて見る相手はいたが、そのほとんどが私の見知った集団に最初から混ざっていた。

ちなみの彼女達の他にも、最初からグループに入っていなかった人はいる。ポニーテールの少女だ。
確か名を南浦といったか。
直接の面識はないが、個人戦で好成績を残していたので印象に残っている。
確か、津山も彼女にやられたはずだ。

他にも一人、孤立していた少女がいた。
目付きの悪い小柄な少女だ。
こちらは全く記憶にない。
が、彼女は早々に輪の中に入ってきていた。
まあ、不安でそうなるというのは、よく分かる話である。

「マリア様のこ～ころ～」
「！？」

話し合い（といっても、主に風越のコーチとキャプテンと吉留、それに久と原村と沢村くらいしか建設的な意見を出していなかった気がするが）の場が、突如流れてきた音楽により騒然となる。

「何？　何この歌？」
「華菜ちゃん知ってるし！　マリア様のこころだし！」
「そういうことを聞いてんじゃねえぞ池田ァァァ！！」
「一体どこから……」
「きっとあそこのスピーカーだじぇ！」

ざわつきを、バン、という大きな音が遮る。
するといつもの習性か、場はシンと静まり返った。
もっとも、バンという音は教師が机や黒板を叩いた音などではなく、体育館の扉を開けたものだったのだけれど。

「おいおい、扉は開かないんじゃなかったのか！？」
「決まってますわ！　中から開けられなかっただけ！　つまり――」

扉の向こうを注視しながら、龍門渕が呟く。

「私達を閉じ込めた方々なら、容易く扉を開けられてもおかしくないということですわ」

鬼が出るか蛇が出るか。
自分達をこんなところまで拉致してきて軟禁した奴なのだ、どんな犯罪者が来ようともそうそう驚きはしない。

「なッ……！？」

それでも驚いてしまったのは、扉から入ってきたのが大量の迷彩服の男性だったからではない。
まさか正規の軍隊ではないだろうし、これだけの人数の拉致を単独でやるのも無理だろうから、軍服に身を包んだ誘拐犯がたくさんいてもさほど大きな驚きはない。
異質なのは、軍服に囲まれ悠々と入ってきた男の姿。
頭の上に光る皿を乗せた（蛍光塗料でも塗っているのだろうか、うっすらと輝いている）その中年男性は、ゲームに出てくる聖職者のような衣服を身にまとっている。
その手には、街角で配られたこともある聖書が握られていた。

「貴女が私達をこんなところに連れてきたんですの！？」
「ここどこだし！」「何のつもりですか？」
「さっさと開放しやがれ！」「なんなんだよ！」
「っていうかこの首輪何なんですか？」「この首輪苦しいんですけど……」

皆口々に相手に言葉を投げつける。
集団心理というやつだろうか、自分達を拉致した相手だというのに強気である。
私はというと、とてもそんな恐ろしい真似は出来ずモモの手を握り締めているだけだった。
モモの手を握っていない方の手は、蒲原の腕を掴んでいる。
一緒になって野次を飛ばそうとした蒲原を止めたのだ。

「……コホン」

野次にも負けず、男性は壇上にまで上がっていった。
軍服が列を為していたのもあって、皆言葉はぶつけながらも肉体的な行動に出ることは出来ないでいた。
何ら妨害されることもなく壇上に辿り着いた男性は、咳払いをし、言い放った。

「グゥゥゥゥゥゥゥッモーニンっ！」

あまりの声の大きさとテンションの高さに、場がしんと静まり返る。
あの風越の池田でさえも、呆気に取られているようだった。

「ワタシが日本国に神のご加護をもたらすためにバチカンから派遣された宣教師『サンフランシスコ・ザフィケル』デス。
　皆サン気軽に『ザビィ』って呼んでくだサ～～～イ」
「はあ？　ふざけんじゃねーよ」
「付き合ってらんないね」

パイナップルのような頭の女子が、友人と思しき眼鏡の女子と一緒に出口へと向かっていく。
イカレてるのか？　この状況で……
何をされるか分からないこの状況でその行動は些か短慮に思えた。

「ハーイ、帰すわけにはいきまセーン。キミ達二人はァ、厳選な抽選の結果当て馬に選ばれたんデスから」
「当て馬ァ？」
「イエース」

当て馬という単語にカチンと来たのか、パイナップルがザフィケルとやらに突っかかる。
それに便乗し、再び野次が飛び交い始めた。

「なんだよその上から目線は！」
「いい加減帰してもらえませんこと！？」
「っていうか名前なんて聞いてないし！　ここどこだし！」
「ねえ、この首輪なんなの？」
「ハイしーずーかーにー」

パンパンと手を叩き、まるで教師がそうするかのように場を収めようとするザフィケル。
「今から全て説明しマス」の言葉で、ようやくざわつきは収まってきた。

「まず最初にィ……クイズで～～～す。君たちの共通点はなんでショ～～～～～ウか？」

共通点。
それがあるということは、この拉致には何か意味があるということだ。
一体、どういう目的だ？

「分かったし！　女子高生が共通点だし！」
「はい違いマース。貴女の後ろの方がジェーケーとか無理アリアリでーす」
「池田ァァ！　あんまり矢鱈滅多に答えるんじゃねーぞ！」

風越のコーチがいることを考えると、年齢縛りではない。
とすると、恐らくは――

「麻雀、かしら」

先に久が答えを呟く。
当て馬扱いされた二人は見たことがないが、恐らくは麻雀を齧るくらいはしているだろう。
ベスト４にも入っていない、だからこそ当て馬呼ばわりなのだと考えればつじつまが合う。

「ハイせいかーい。竹井サン、でしたネ。貴女に１０ポイーンツ！」

にこやかな笑顔を浮かべて、ザフィケルが拍手を送る。
何名か釣られるように拍手をしてたが、私はしないでおいた。

「更に言うト、基本は某麻雀合宿ＭＥＮＢＥＲデ～ス。
　そこに個人戦成績優秀者の南浦さんや当て馬数名を混ぜたのがこの集まりデース」

合宿のメンバーが、つまり、自分達が本命の狙いだったということ。
一体こいつは私達を拉致して何をするつもりなんだ？

「だから当て馬言うなっての」
「まぁまぁ、それより話を続けマスよー。
　皆サンはー言い換えるならば、未来の外交官の集まりなのデース」
「……は？」

思わず間の抜けた声が漏れてしまう。
周囲も当然ざわついていた。
外交官って……こいつは一体何を言っているんだ？

「無知なジャパニーズスチューデンツは知らなくても無理はありませんがァ……外交とは、本来麻雀で行われるものなのデース。
　勿論、強くなくては成り立たナイ……言ってること分かりマースかぁー？」
「全ッ然分かんないし！」

今回ばかりは池田に全面賛成だ。
正直何を言っているんだか分からない。

「要するに、外交とは他国と色々な物を賭けて麻雀をすることなのデス。
　麻雀強者の貴女方は、未来の外交官候補と言えマス」
「そんな外交、聞いたことがありませんわ！」
「いくら金持ちだからと言って、世界の全てを知れるわけではアリませぇ～～ん。
　自分の知る世界が世界の全てと思い込むなんてしてはダメですヨ～～～～～。
　それは視野を狭くしてしまい、外交官への道が遠ざかってしまいマぁ～～～～～ス」

誰も外交官になりたいなんて言ってないのだが……
全く、好き放題言ってくれる。

「オウ、何で自分達がって顔をしていマスね！　イイ質問ですねぇ。
　この国はァ、かつてない危機にひんしていマス！　何故か分かりますかァ？」
「…………」

場内が沈黙に包まれる。
当然だ、こんな無茶苦茶な話をする奴の理屈がわかるわけがないのだから。

「だめー。ハイだめー。まったく、ＹＯＵ達は素質があるのにダメダメですネー。
　いいですかー、日本はもうダメになってしまいまシター。　
　恐るべきナチスドイツとの戦いなどでエースを失いィ……強い雀士がいなくなったのです」
「なんだよナチスドイツって……」
「自民党時代ならば後続にも期待できましたがァ……民主党政権じゃそれも期待できませぇ～～～ん」

誰かの呟きも無視し、ザフィケルは話を進める。
ナチスドイツと戦うって、一体何の冗談だ。
第二次世界大戦中の話だったとしても、ナチスドイツは味方だっただろうに。

「ご存知、自民党は『マー“ジ”ャン“民”の“党”』の略デス……彼らは雀士育成に力を入れてマシタ……
　バットしかし民主党は『“みん”なでベイブレードゴー“シュートゥ！”』の略……
　何を血迷ったか新たな外交手段にベイブレードを推し、大失敗していマース。
　そんな彼らですからァ、麻雀の腕はカラッキシなわけデス」

血迷っているのはお前の頭だ。
話している内容は、イカレているとしか思えない。

「そこでェ……偉い人は相談して、急遽若者からセンスのある人間を外交官にすることに決めまシタ。
　首相の許可証もありマス」

場内が再びざわつく。
首相が拉致に一枚噛んでる？　タチの悪い冗談だろう？

「貴女方は並のプロよりセンスがアリまーす。能力の発現がその証拠デース。
　ＲＥＡＬ強者雀士は能力を身につけるモノ……その片鱗が貴女方には満載なのデス！」

能力なんてものはない。
そう反論してやりたかったが、私の袖を強く握るモモの存在を思い出し、一概に能力の存在を否定できなくなった。
超能力なんてものは存在しないと思っているが、麻雀におけるオカルトを能力と称するなら、実在してもおかしくないと思っている。

「難点は若さ故のメンタルの弱さ。そこで我々大人はァ……立派な外交官を作るために、強攻策に出ることにしました」

それが、拉致か。むりやり強化合宿でもさせる気なのか？
そんな考えは甘かったと、直後に思い知らされる。



「なので、今日はちょっと皆さんに、殺し合いをしてもらいます」



「……え？」
まるで『今日はサンマで打とうか』と提案するかのように軽いノリで伝えられたそれ。
それは理解の範疇を余裕で飛び出していた。
他のみんなもそうだったらしく、ざわめきが大きくなる。

「ルールは簡単。最後の一人になるまで殺し合い、最後まで生きていた人の勝ち。反則はありません。
　武器はランダムに食料や水と一緒に出発時に配りマース。
　当たり外れがありますが、それはまあ、配牌が悪かったものと思って頑張って下サーイ」

騒音にも負けず、ルール説明を続けるザフィケル。
本当なら他の連中に混ざって抗議すべきなのかもしれないが、私の頭はルールを叩き込むことだけに注力されていた。
ありえないと思っているのに、拉致の規模の大きさからかありえるかもと思っている自分もいる。
その自分が、きちんとルールは把握しておけと言ってくるのだ。

「えー……皆サンが嘘だろトカやっかましいのでぇ～～……ちょっと早いですが重大発表をしたいと思いマ～～ス」

実はドッキリでした、なんて淡い期待は、すぐに打ち砕かれた。
運び込まれてきたのは、縦に長いゴルフクラブを入れる袋のようなもの。
中には歪なものが入っているらしく、ところどころがパンパンに膨らんでいた。

「えー……本当はスムーズに進行してもらうタメに、皆サンと親しい藤田プロに進行をお願いしたかったのですが……」

軍服の連中が運んできた袋を床に起き、そのジッパーに手をかけた。
そして、ゆっくりとジッパーを下ろしていく。

「親しスギたのカ、反対されまシテ……
　最初はまあ、親睦を深めれば言う通りにしてクレると思って何人かで“仲良く”やろうとしたんですが、それでも全力で抵抗してきたノデ……」

開かれたジッパーから漏れ出したのは、赤い塗料。
ごつごつした中身は、肌色のキャンバスに赤を塗りたくったような悪趣味なオブジェだった。
いや、オブジェと化した藤田プロの肢体だった。

「だからソノ、まぁ、つまり――藤田プロには死んで頂いちゃいまシタ」

肢体はすっかり死体と呼ぶに相応しい光景になっている。
これがオモチャや特殊メイクの類ではないことは人目でわかる。
はみ出した“中身”の醜悪さやこの吐き気を催す臭いは、偽物には出せるまい。

「センパイ……」

袖を握る力を強められ、ようやく我に返る。
モモのその手はカタカタと震えていたというのに、全く気付いていなかった。
本当なら怯えるモモを励ましてやらねばならなかったのに。
私自身、衝撃の大きさに動揺しているということか。

「大丈夫だ、落ち着け、落ち着けモモ……」

何が大丈夫なのか。
冷静な自分が心の中で拙い言葉にツッコミを入れる。
しかしそれでも呆然としているよりはマシだったらしく、津山は少し落ち着いたようだった。
落ち着いたというよりも、縋る対象を見つけただけにも見えるけども。

「津山も、妹尾もだ。慌ててもどうにもならない。今はとりあえず落ち着こう

パニックになりかける妹尾へと声をかける蒲原の元へ歩み寄り、鶴賀の５人で再び固まり自体を見守ることにする。
人の死は正直言って衝撃的だが、そこまで悲しみの感情は湧かなかった。
私達への仕打ちに反対したらしい藤田プロには申し訳ないが、今は自分達のことが最優先だ。
蒲原の元へ行く途中に視界に入ってきたのだが、どうやら久も同じ考えらしい。
混乱する部員たちを宥めすかしているのが見えた。
藤田プロとは親しげだったというのに……相変わらず強い奴だ。

「は～～い静粛にぃ～～～～。藤田プロは残念でしたが、その犠牲を無駄にシないためにも立派な外交官になって下サイね～～～～」

怒りをグッと堪えて話を聴く。
風越の池田や龍門渕の天江衣が何かを言いそうだったが、福路や龍門渕が必至に押しとどめているのが見えた。

「ああ、ソウソウ、お友達に殺される以外にモォ～～～～、死んでしまう可能性がありマ～～～～～～～ス。
　それはズバリ！　いい加減お気づきでショウが、皆サンが付けているこの首輪デ～～～～～～～ス」

背後からカチャカチャと音が聞こえてくる。
誰かが首輪に触れているのだろう。
危ないから触れないほうがいい、と小声でモモに耳打ちする。
津山も弄っているようだが、位置関係的に話しかけるには大きな動作が必要とされるので、自粛せざるを得なかった。
この状況では目立たずに様子を伺うことこそ最優先だと思っている。

「この首輪には爆弾と発振器が仕込まれてマース。
　……あ、安心していいデスよー。簡単に爆発なんてさせませんからー」

胡散臭いにこやかな笑顔が腹立たしい。
しかし誰も文句を言うものはいなかった。
ぼとり、と藤田プロの中身の一部が床に落ちた音だけが響き渡る。
それから、一息吐いて、言った。

「後で配布する地図にも書かれていマスが、この島は複数のＡＲＥＡに別れてイテ、各々に名前がついてマス。
　ソシテ、一定時間毎に、立ち入り禁止のＡＲＥＡが増やされてイクというわけデース。
　勿論立ち入ったら瞬時に首輪が爆発するので、一箇所に引き篭もったりはできますぇ～～～～ん。
　あ、それと、この体育館は今後本部として使いマスが、ＧＡＭＥ開始直後に立ち入り禁止になるので、絶対に近寄ったりしないで下サ～～～～イ。
　あと、無理やり外そうとしても爆発シマスから、ちゃんと戦って下サイね。
　誰も６時間死ななかった場合には全員の首輪が爆発するので、絶対にそんなことにならないようにネ☆」

もう誰も何も喋らない。
ただただ皆、この理不尽な人殺しゲームのルールを頭に叩き込んでいる。

「あ、立ち入り禁止のＡＲＥＡ――私達は『禁止エリア』と呼んでイルのですガ、これは６時間ゴトに島内放送でお知らせしマス。
　その際ついでにその６時間で死んでしまった雀士諸君の名前も教えてあげますから、名前を呼ばれないように張り切って下サ～～イ！」

そう言うと、ザフィケルはパンパンと手を叩いた。
すると、兵士たちが何やら黒塗りの箱を運んでくる。
縦長の箱は、人がすっぽり収まりそうな大きさはある。

「それでは、出発してもらいマスが、質問はありまスカ～？　ありませんネ～～～？」

こんな空気で質問など出来るわけがない。
それを自覚しているのか、早々に質問タイムを打ち切ってザフィケルは出発方法の説明へと入っていった。

「皆サンにはこれから、このＢＯＸに入ってもらいマス。
　お察しの通り、その後は我々でＳＴＡＲＴ地点に運ばせてもらいマスので、扉が空いたらＧＡＭＥ　ＳＴＡＲＴデス。
　どのＢＯＸがどこでＳＴＡＲＴかは決定済みですが内緒デ～ス。
　望み通り引けるカモ、一流の外交官には必要なＳＫＩＬＬなのデスヨ」

まるで棺桶だな。
そんな感想を不謹慎にも抱いてしまう。
まあ、藤田プロの様子を見る限り、これは棺桶と見てもほぼ正解だと思われるが。

「ちなみにＢＯＸはＳＨＵＦＦＬＥされるノデ、友人同士隣合ってもＳＴＡＲＴ地点が近いとは限りませんヨ。
　それじゃあ、先程クイズに正解した清澄の方からお好きなＢＯＸを選んでもらいまショウか」
「……選べるのが多いのって、苦手なんだけどねえ……」

苦笑いを浮かべながら、久が誰よりも先に一番近くのボックスへと足を運ぶ。
こちらを向いて箱の中に入り込み、大丈夫と言わんばかりに全員に向けてウインクをしてみせた。
その久を囲むように、清澄のメンバーが次々箱へと入って行く。

「デハ、ここからは学校名五十音順で行きマスよ～～～。
　お次は鶴賀の５人！　お好きなＢＯＸへどうぞー！」

津山や妹尾が心配そうにこちらを見てくる。
せいぜい言えるのは、当たり障りの無い励ましの言葉だけだ。
というか、私自身が励まされたい気分なのに、正直他者を励ます余裕なんて持ち合わせていない。

「……シャッフルされるということは、隣り合ったボックスほど近場に置かれ辛いということだ。極力離れて箱に入ろう」

唯一思いついた建設的意見に、皆納得してくれた。
本当は、助けを乞うような視線に耐えられなかったから考えた案なのに。
まったく、最低で卑怯者だな、私は……

「センパイ……」
「モモ……大丈夫だよ、モモ……きっとまた会える」

唯一、モモとも離れ離れになるのが心残りだった。
最後にぎゅっと手を握り返し、適当な箱へと足を運ぶ。
モモは、私の正面の箱を選んだ。
そして、他の連中が箱を選び終えるまで、ずっと手を振ってきていた。
死ぬのはやはり怖いのだろう。
動きが小さかったのは、きっとあのザフィケルに警告されないためだ。
それでも振り続けていたのは、私を慕ってくれているからか。
誰がどの箱を選んだのかなんて、気にしていたらモモが見えなくなっていただろう。
だから私は、蓋が降りてくるまでずっとモモを見続けた。
けれど、結局最後の最後まで手を振り返せなかった。

（やはり私は卑怯者だな――）

ガシャン、と音を立て、目の前が真っ暗になる。
そしてしばらく揺れを感じたあと、数分置いて箱の扉が開かれた。
それでも開放感などない。
待っているのは、死と絶望だけである。
















　　　　　　　　　　　　　　&amp;SIZE(26){&amp;color(red){咲-BATTLE ROYALE-　　　　　　　　　　　　開幕}}
















----

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|&amp;color(yellow){合宿帰り、蒲原の車の中}|加治木ゆみ|[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]|
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|&amp;color(yellow){任務、拝命}|サンフランシスコ・ザフィケル|[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、蒲原の車の中}|東横桃子|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、蒲原の車の中}|蒲原智美|[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、蒲原の車の中}|妹尾佳織|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、蒲原の車の中}|津山睦月|[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|宮永咲|[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|原村和|[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|片岡優希|[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|竹井久|[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|染谷まこ|[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|須賀京太郎|[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|
|&amp;color(yellow){ファミレスに向かう道中}|天江衣|―|
|&amp;color(yellow){ファミレスに向かう道中}|龍門渕透華|[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]|
|&amp;color(yellow){ファミレスに向かう道中}|国広一|[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){ファミレスに向かう道中}|井上純|[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|
|&amp;color(yellow){ファミレスに向かう道中}|沢村智紀|[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]|
|&amp;color(yellow){透華達を送り出した後、車内}|ハギヨシ|[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|
|&amp;color(yellow){透華達を送り出した後、車内}|杉乃歩|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|福路美穂子|[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|池田華菜|[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|吉留未春|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|文堂星夏|[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|深堀純代|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|久保貴子|―|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|夢乃マホ|[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|
|&amp;color(yellow){合宿帰り、電車の中}|室橋裕子|―|
|&amp;color(yellow){自宅}|南浦数絵|[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){カラオケボックス}|門松葉子|[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]|
|&amp;color(yellow){カラオケボックス}|田中舞|[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|
|&amp;color(yellow){下校中}|上柿恵|[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]|    </description>
    <dc:date>2014-01-15T02:47:35+09:00</dc:date>
    <utime>1389721655</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/47.html">
    <title>生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/47.html</link>
    <description>
      ＊＊第２０話　生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-

時間を割いた情報交換。
[[原村和]]にとって、それはとても重要なものだった。
和に強い力はない。だがしかし、論理的な思考能力がある。
そしてその能力は、情報を多く持てば持つほど発揮されるものなのだ。

（負けられない……どんな手段を使ったっていい……）

外道に堕ちる覚悟はとうに出来ている。
弱音も胃液も一人の時に吐き尽くした。
ただ冷徹に、機械のように冷静に、普段のように計算して、そして最高効率の答えを選び取るだけだ。

（殺してしまった須賀君の分まで、優希のために動かなくちゃいけませんからね……）

それは、なんてことない言葉だった。
最初に手にかけた少年は、優希と仲がとてもよかった。
だから、彼の分まで優希を守る――それだけの、本当にそれだけの言葉だった。

（優希を……“生き残らせなくちゃいけない”……？）

ただ、あらゆる要素を分析し立ち回り方を考えていた和の脳に、その単語は引っかかってしまった。
心のどこかに引っかかっていたことが、これをキッカケに表に引き摺り出されてくる。
心臓を鷲掴みにされたかのような感覚に、和は喉を詰まらせた。

（私は……優希を“生き残らせなくちゃいけない”と考えている……？）

思えば、ずっと和は優希のことを“生き残らせなくてはならない”と考えてきた。
何故か？
それは、一番の友人と呼べる相手が優希だからだ。
中学の頃からの友人だから。
転校などで友人を失っていった自分に残った数少ない友人だから。
だから。

――だから、一番大切な人なのだ。

（私は――優希を、宮永さんと天秤にかけている）

それは、否定のしようがない事実だった。
友人に優劣をつけるなどという卑劣なことはしたくなかったが、状況が状況なのだから仕方が無い。
その結果、京太郎らは切り捨て、一番の友人である咲と優希を助けるために動くことに決めたのだ。

（でも――違う。二人の扱いが、本当は、違う……）

しかし――和は、思ってしまっていたのだ。
優希は“生き残らせなくてはいけない”と。
“生き残らせたい”ではなく、だ。

――ならば。先ほどの言は、次のように言い換えるのが正しいのではないだろうか。

一番の友人と呼べる相手は優希“だった”と。
中学の頃からの友人だから。
転校などで友人を失っていった自分に残った数少ない友人だから。
だから、その恩義故に、“一番から引きずり落とすということが躊躇われた”と。

（私は、私は――――――）

その考えは、実はずっと心のどこかに眠っていた。
だからこそ、こうして些細なキッカケで叩き起こされ、どーんと心に居座るのだ。
そうして居座ったそれは、もう簡単には動かせない。
冷静な思考回路で導かれた結論は、客観的な事実として和の脳に刻みつけられる。



（宮永さんが、一番好きだったんだ――）



気付いてしまえば、簡単なことだった。
今までにも、ヒントは沢山あったのだ。

同列のように扱っていた咲と優希。
だがしかし、好きな理由を語ろうとすると、優希の方が長くなる。
しかしそれは、決して優希の方が好きだということを意味しているわけではない。
むしろその逆。
優希はそれだけ多くの理由付けをして、初めて咲に並べていたのだ。

勿論、優希が嫌いなわけではない。
優希のことは大好きである。
それこそ、一番の親友であるべき理由を挙げられるくらい大好きだ。
ただ、そんな親友を特別な理由もなく軽々追い抜いた、咲という少女が特別すぎるだけで。

（優希……）

ハンマーで後頭部を殴られたような衝撃を受けながら、和は優希をちらりと見やる。
やはり、優希のことは愛おしかった。
それでも、冷静に考えれば考える程、咲の方が愛おしいと感じてしまう。

「それで、あの……一ついいでしょうか？」

和の思考が中断される。
福路美穂子がおずおずと切り出したのは、自信の持っている情報を開示し終えた後だった。
申し訳なさそうに俯きながら、彼女は一つの提案をする。
いや――提案というよりも、それはむしろ“お願い”に近かったけど。

「別行動を、取らせてもらいたいのだけど……」

別行動、という単語を聞き、龍門渕透華が華奢な体をわなわなと震わせる。
「な、な……」などと意味不明な単語を発し、驚いたように目を見開いてた。
その言葉が、よほど意外でショックだったのだろう。

「ダメ、かしら」

申し訳なさ気な美穂子を見つめ、やれやれと言わんばかりに国広一は溜息を吐いた。
透華と違い、一にはこうなってしまう予感があった。
ハギヨシに至っては、今までここに居てくれただけ御の字だと思っている程である。

二人は、もう分かってる。
美穂子の意志が堅いことを。

「な、何で……」
「池田さん、ですか」

今度は、和が割り込む番。
和にとっても、この申し出は想定の範囲内だ。
だがしかし――美穂子という存在は、和にとってあまりに不明瞭な存在。
唯一、動向の読めない人物であると思っている。

「…………ええ」

和が透華達の前に姿を現したのは、到着して数分後の事だった。
まず木の影に身を隠し、呼びかけ人数を把握する。
そこに優希がいなかったため、最初は襲撃しようと思った。
だがしかし、サブマシンガンを持った者が居ることに気付き、躊躇いが生じたのだ。
そこで、狙撃後すぐに逃げ出せる位置に移動しようと画策。
しかし物音が発生し、一に銃を向けられたというわけだ。
あとは両手を上げて出ていき、味方のフリをする。
それが、和が合流した経緯。

――そして透華は、冗談交じりに言ったのだ。
そんな和の登場シーンが、美穂子のそれと被っている、と。

「来てくれるかもって思ってたけど……華菜、やっぱりまだ来られないみたいだから」

直接見ていたわけではない。
だがしかし、もし美穂子が自分と同じだとしたら？
自分と同じで、獲物を襲おうとして、見つかったのではないだろうか？

勿論、そうでない可能性の方が大きい。
普段を見る限り美穂子は極度の善人であるし、サブマシンガンを持っている以上見つかったからと素直に出ていく必要もない。
『池田華菜の情報を集めようとした結果』など、色々こじつけられたりはするけども。

「だから、私から迎えに行きたいの」

だから――確かめよう。
和は、決める。今後の立ち回りを。

「華菜は――大事な、後輩だから」
「そう、ですわよね……確かに、池田華菜のことは、なんとかしたいと思ってましたわ」

透華が、美穂子の言葉に同調する。
透華は、そもそも華菜をどうにかしたいと考えていた代表的人物だ。
華菜を救える可能性が美穂子にはある。
その美穂子を向かわせることに、反対する理由はない。

「でしたら、全員で――」
「呼びかけを続けるなら、さすがに全員で移動は出来ないんじゃないかなぁ」
「ですね。来ている人は、もうこの辺に来ているでしょうし」

一と和が立て続けに透華の意見を却下する。
確かに、と言わんばかりに、透華は口をつぐまされた。

「華菜以外にも、近くに居るのに声をかけられない人が居たら、声をかけて連れてくるわね」

にこり、と美穂子が笑む。
チームを二分することは、もはや決定事項といった流れであった。
問題は――どう、チームを分けるかというわけで。

「…………」

不意に、すっと手が上がる。
最初にそれに気が付いたのは、正面に居た美穂子だった。
掌から視線を下げると、そこにあるのは桃色の髪。
挙手をしたのは原村和。

「私も――」

和の心の中で、天使のような悪魔が微笑む。

「私も、行きます」

美穂子の腹が読めないなら、堂々読ませて貰えばいい。
二人っきりになることで、その正体を明かさせる。
乗っているなら、同盟を結ぶ。
乗っていないなら、サブマシンガンを奪い取る。
ただ、それだけだ。

「だ、だったら私も行くじぇ！」

そのためには、優希は絶対に来ては駄目だ。
優先順位が下がったとは言え、極力優希は生かしておきたい。
悪い言い方をすれば、[[宮永咲]]を失った時、彼女の“かわり”にするのだから。

「それはいけません」

だから、毅然としてその申し出を却下する。
美穂子が乗っていれば戻るが、乗っていなければここへはもう戻らない。
美穂子を、ついでに言えば華菜を殺す気でいる以上、透華達と敵対するのは間違いないと言えるだろう。
優希を、そんな危険に巻き込ませるわけにはいかない。

むしろ、敢えて自分と敵対する集団に属させることで、『自分のせいで親友が人を殺した』と思わなくさせるメリットがある。
まさか敵対している相手に守りたい人が居るだなんて思わないだろう。
……とはいえ、敵対する以上自分の攻撃で誤殺する可能性があり、優先順位が最上位だとこの戦法は怖くて取れないのだけれど。
敵対しようという決意は、優希と咲を順位付けした結果だった。

「染谷先輩を手にかけてしまったことを気に病んでいるようですし、
　そこにいきなり清澄の人間が二人も現れたら、逃げ出してしまうからもしれません」
「だったら、のどちゃんも行かない方がいいんじゃ……」
「私達清澄の人間への負い目だけで合流が出来ていないなら、彼女の事を許してあげる役目の人も必要ですから」

この言葉に嘘はない。
本当に華菜を受け入れる場合、和か優希のどちらか一人がついていくべきと考えている。
だからこそ言葉に説得力が出るし、優希を黙らせることが出来た。

「それに、聞きましたけど――優希は、確かまだ、許せるか分からないって言ってましたよね。
　別に、責めるつもりはないですし、それで普通だと思います。
　だから、優希の代わりに、私が行くんです」

そして、優希でなく自分が行くべきだという理由を説明する。
アドリブなので破綻しないよう気を回しながら言葉を紡ぐ。

「じゃあ、もう、許してるんだ？」
「ええ……痛みを感じれずに逝けただけよかったのかも、と思えてしまう程度には」

一の問いにも素直に答える。
好感度が下がるかもしれなかったが、今更一や透華の評価を気にする必要なんてない。
嘘で固めてボロが出ぬよう、嘘を吐く必要性の無い所では真実を語っていく。
それが、嘘を吐くコツだ。

「じゃ、じゃあ私が……」
「透華お嬢様は、呼びかけの仕事が残っていますよ」
「あんだけガンガン喋ってる人が不在なのは、ボクもちょっとどうかと思うな」

そして、透華の同行も従者二人に却下される。
和と行動したかったようだが、あれだけ人を呼んだ本人が不在というわけにもいくまい。
すると残りはハギヨシと一ということになるのだが――

「私は残りますよ。残った方々を守らなくてはなりませんから」

そう言って、カラシニコフをカチャリと鳴らす。
戦力比を考えると、妥当な所ではあった。
これで残すは一をどうするかということだけになったが――

「それで、どうしますか？」
「ボクは……うん、ボクも残るよ。さっき、透華を守るって言っちゃったばかりだし」

そう言って、武器のない透華を守るために使うと決めたコンバットマグナムを掲げる。
人数比だけで考えるなら一はついてくるべきだったが、戦力比を考えるなら残るのが妥当と言えた。

何せ、透華は武器を所持しておらず、優希の武器は２発だけのデリンジャーなのだから。
唯一高い威力を誇るカラシニコフはオート射撃ですぐ弾切れを起こすという弱点持ちなのだ。
つまり彼女らは連射が効かない集団であり、弾幕で足止めしながら逃走などは出来ないということになる。

となったら、援護がいるのは明白だ。
結局一は、サブマシンガンと拳銃のコンビなら大丈夫だろうと判断し残ることに決めたのだった。
……単純に透華の傍を離れたくない、という考えがあったことも、否定はしきれないのだけども。

「……本当に二人で大丈夫ですの？」

透華が不安そうな声を上げる。
仲間に死んでほしくない。そんな想いの現れだろう。

「大丈夫ですよ。武器だけなら、そちらよりも充実していますから」
「……武器を使うことになんて、ならなければいいんですけど」

はぁ、と透華が溜息を吐く。
その甘さに、和は内心唾を吐いた。
冷静に、論理的思考をしなくてはならないのに、透華は夢しか見ていない。

――透華は、殺害しておきたい人物のナンバーワンである。

本人は無能極まりなく、そのくせに影響力を持っている。
一やハギヨシと言った冷静に物事を考えられる連中を、愚策のために動かせてしまう。
更に一とハギヨシが透華の意見に絶対服従とした場合、実質彼女は多数決において三票を最初から有していることになる。
無能者の独裁政権――大切な友人を置いておくには、あまりに危ない環境に思えた。

「……申し上げにくいのですが……」

ハギヨシが、歩み寄りながら和と美穂子に声をかける。
和にしてみれば、ハギヨシの言葉は聞く価値があるものが多い。
気分のいいものではないが、必要なことを言うのだろう。
そう思ったので、「何でしょう」とだけ返した。
透華の気分を極力害したくないのか、ちらりと透華の顔を覗い、それからハギヨシは言葉を紡ぐ。

「染谷まこ様のアタッシュケースを、回収してきて頂けますか？」

言われて、そこで始めてまこの分のアタッシュケースがここにはないことに気が付いた。
透華や一といった面々がアタッシュケースを割りと適当に置いていたため、どれが誰のものかなどが分かりにくく、それ故に数にまで意識がいかなかった。
一人に一つ、というのが分かりやすければ、もっと早くに“余りの数”に違和感を抱けたのだろうけど。
今見ると、明らかに数が合わない。

「どうしても、一度に持ち歩ける数には限界がありますからね」

ハギヨシは、同時に２個が限界だろうと思っている。
掌を空に向けた状態で、人差し指と中指に一つ目のアタッシュケースを引っ掛け、薬指と小指にニつ目をかける。
指が多少痛みはするが、その程度ならどうということはない。
親指にも引っ掛けられないことはないが、そうなるとアタッシュケース同士が密集しすぎてしまい移動の度にゴツゴツと音が鳴ってしまう可能性がある。
あまり推奨すべき数ではないだろう。

となると、両手で合計４つまでなら持ち歩けそうに思えるが――
両手をアタッシュケースで埋めるなんて行為、自殺行為以外の何者でもない。
実際は片手に武器を、そして片手に２つのアタッシュケースを持つのが限界だろう。

実際ハギヨシは、睦月と星夏のアタッシュケースを回収直後こそ持ち歩いていたが、結局途中で捨てて来ている。
死体から離れたブッシュの中で、中身だけを自身のアタッシュケースへと移し替えることにしたのだ。
一番体積の多い支給品に合わせてあるのか、アタッシュケースはかなりの容量を誇る。
２リットルのペットボトルを計４本移した後、食料品やナタと行った支給品まで放り込むことが出来た。
ハギヨシの収納術の賜物でもある。

一つのアタッシュケースに移した理由として、パッと見では複数人の荷物を持っていることが分からないようにしたというのが挙げられる。
殺し合いに乗っていると判断され襲われたら溜まったものではないのだから、それは当然と言えよう。
他にも、少しでも荷物を減らし射撃精度を高めたいという理由があった。
本来ハギヨシの支給品であるカラシニコフは、片手でバンバン撃つものではない。
故に戦闘になった際は素早くアタッシュケースを投げ捨て両手でカラシニコフを持つ必要がある。
荷物は少ない方がよかったというわけだ。

「それに――持っていくとは、切り出しにくい状況でしたから」

荷物を持っていく、と言っていたら、透華が苦言を呈していただろう。
あまり透華に嫌われて、別行動を取られでもしたら厄介である。
華菜を切り捨てた直後というのもあって、少しでも揉める可能性は減らしたかった。
かといってデリンジャーと違ってこっそり回収するというのも困難であり、放置してきたというわけだ。
デリンジャーさえ回収したら、後はもう２人分のゆとりがある水と食料しかない。それも回収を諦めた理由である。
リスクを犯してまで、回収すべきものではない。
いや、なかったというべきか。

「あまり、亡くなった人の荷物を奪うのは感心は出来ませんわ」
「ですが、必要なことです。心苦しいですが、どうか理解して下さい」

亡骸から奪い取ったデリンジャーが既に流れで利用することになっている今、荷物を利用させてもらうことへの抵抗は薄れている。
嫌な気分になることはあれど、猛反対は出来ないだろう。
だからこそ、このタイミングで荷物を回収してもらおうとハギヨシは考えた。
大所帯となる以上、水と食料に更なるゆとりを持たせたいという目論見もある。

「……分かってますわ」
「水や食料にゆとりがあるに超したことはないですからね」
「だじぇー。さすがに一人ペットボトル二本ぽっちじゃ少ないからなー」

籠城するには十分かもしれないが、山道を動き回る可能性を考えると、やはり二本では心もとない。
更に言えば、戦闘で傷ついて、傷口を洗わなければならない時が来るかもしれない。
そのためにも、和はペットボトルの確保には賛成だった。

「それなんですが……現在の余りの水、どういう風に分けましょうか」

現在、ここのメンバーは合計六人。
そして、余ったペットボトルは四本。
ここにニ本が加われば、合計六本。
華菜が仲間に加わって七人になると考えても、一人辺り一本弱余分に水を貰えるという計算になる。

「普通に一人一本くらいは大体行き渡るけど……？」
「それなんですが……」

和は、少し、躊躇う。
これを言うということは、目的が露見する可能性の急上昇を示している。
だが――

「先に貰ってもいいでしょうか」

言った。
水の入ったペットボトルを先にくれ、と。

「どうかしましたの……？」

透華が怪訝そうに尋ねてくる。
そりゃそうだ。
普通に考えたなら、華菜を拾って帰ってきた後で、水を分配すればいい。
それこそ、拠点を移す時までは別に分配しなくてもいいくらいだ。

「……正直に、言います。
　私がここに戻ってくると、断言することは出来ません」
「の、のどちゃん！？」

下手な嘘は通じない。
だからこそ、真実を告げる。
肝心要を隠しながら。

「こちらが襲撃にあって、帰りようがなくなる可能性もあります。
　私達が襲撃にあい、帰れなくなる可能性だってあります。
　それに――――」

最後の言葉を告げるのは、正直相当躊躇われた。
大好きな人に告げるに等しいことなのだ。
私の中で、貴女以上に大事な人が出来ました、と。

「宮永さんに関する情報が手に入ったら、私はそちらを優先すると思いますから」
「のどちゃん……」

それでも、言った。
水を頂戴する理由に、真実味を付加するためにも。
そして――親友である優希に対する優先順位を、明確に引き下げるために。
これは、いわば決意表明なのだ。

「なるほど。よく、分かりました。離脱も止めることは出来ないでしょう」
「まあ、出来れば帰ってきて欲しいけどね」

和の言葉に応えたのは、驚いた顔の透華でなく、その腹心二人だった。
これも、和にとっては想定の範囲内。
この二人は、理論的な言葉を返してくるだろう。
自分達の失うものを極力減らすべく、間違いなく水の供給に反対してくる。

「ですが……池田様と福路様は、無事な限り戻ってきて下さるのでしょう？」

こくり、と美穂子が頷く。
ハギヨシ達が全滅して合流できない可能性もあるのだが、そこについては触れても仕方ないので和もハギヨシも触れない。

和もハギヨシも、お互いがあくまで『理論的』な大義名分を掲げようとしていることに気付いている。
それ故に相手の出方が読みやすく、戦略を練りやすい。
ならば決定打以外は、予定調和にしておく方がいいというもの。
その方が、下準備をしやすいのだから。

「池田様と福路様が戻って来られて、原村様が抜けられたら、私達は６人になります」
「……そうですね」
「そして余分な水も、６本」
「ちょ、ハギヨシ……！」

透華が顔を顰める。
透華とて馬鹿ではない。
人数を挙げた理由くらいは理解できた。

「なるほど、切りよく分けられる、と……」
「はい。申し訳ありませんが、そこまでゆとりがあるわけでもありませんので……」
「悪いけど……回収したアタッシュケースはこっちに持ってきてもらっていいかな？」

一が、和にではなく美穂子に言う。
思わず、美穂子も「え、ええ」などと答えてしまった。
一の狙いは、最初から美穂子にあった。

ここで水の供給を断っても、一達のいないところで美穂子が和に水をあげたらそれまでだ。
美穂子の甘い性格上、まこも同じ清澄の後輩に譲りたいと思うがだろうから、などと言い出してもおかしくない。
しかしこうして持って帰ると言わせた以上、生真面目な美穂子はきちんと回収してくるだろう。
自身の水なら大丈夫と与える可能性もあったが――別に、“美穂子が最初から持っていた水”がなくなる分には一達は困らない。

「と、いうわけだから、悪いけど――」
「分かってます。貰えるとは、思っていません」

和とて、馬鹿ではない。
最初から一本丸々貰えるとは思ってなんかいなかった。
最初に無茶な要求をし、真の狙いを妥協点とすることで通りやすくする。
基本中の基本である。

「ですから……飲みかけの私の水と、新品のペットボトルを交換してもらってもいいですか」

これが、落とし所。
これならば、手間もかからず『ペットボトル１本にも満たない水』を得ることが出来る。
ハギヨシも一も、まあそうくるのであろうことは予想していた。

「それなら、まあ……」
「離れる恐れが高くても、仲間ですからね」

だから、その妥協点に敢えて乗る。
その先の手が分からぬが、無碍に断る理由も薄い。
断固として断った末に透華が乱入してくるようでは困るのだ。
きちんとデジタル的に道筋立ててやり取りをしている限りは、まだ不満そうにしながらも見守ってくれてはいるが、
結論ありきで論理性を少しでも欠けば和の方に肩入れするのは間違いない。
何せ透華は、和に死んでほしくないはずなのだから。

「そうですか、ありがとうございます」

にっこりと、和が微笑む。
そして、アタッシュケースを堂々と開いた。
一もハギヨシも一度中を見せてもらっていたが、その時は武器が隠されていないかのチェックに夢中で、ロクに水は見ていなかった。
目に飛び込んでたはずなのに、ラベル部分で残量が見難かったのもあって、記憶には残ってなかった。

「これは……」
「助かります、本当に。何せ、私の水はもうこれだけしかありませんでしたから」

ペットボトルの、およそ半分。
和は既に、それだけの水を消費してしまっていた。
ペットボトルのラベルのやや下の辺りで、水がちゃぷちゃぷと揺れている。

「……もうそんなに飲んじゃったの？」

一度許可を出した以上、トレードは覆らない。
苦々しげに、一は素直な疑問をぶつけた。

「山道が、きつかったもので」
「まあ、確かにきつかったけど、普通もうちょっと節約しようとか考えるんじゃ……」
「……あの拡声器、意外と高性能なんですよ」

水の配分という些事における狐と狸の化かし合い。
その勝利宣言をすべく、和は拡声器を見やる。

「この声が聞こえてから、ここにくるのに結構かかりましたから。
　普通の道なんて通るわけにもいきませんでしたし、優希に早く会いたくてたくさん走ったので――
　たくさん、汗もかきましたから」
「……あー」

美穂子ですら、優希ですら、そしてハギヨシが居たこともあるが透華ですら、
遮蔽物のない道の真ん中を通ることはしなかった。
皆が皆、険しい道を自ら選び、汗水を流し時間をかけて登ってきたのだ。

そして皆腰をおろし、ここで休息を取った。
今後を考え、必要最低限の水のみ摂取して。

「最初から、こっちの水をあてにしてたんですね」
「はい。水分補給は出来る時にしておきたかったですから」

和もしれっと答える。
嘘ではない。実際、透華達の水をあてにし水分補給を遠慮せずに行った。

――放送を聞いて友人を手に掛けたことを思い出し、盛大に嘔吐したということこそ、大量な水分補給の主な原因だったが。

いくら冷静を装って修羅になることを選んでも、和も所詮はただの女子高生。
震えをこらえてその手にかけるまではよかったが、それでもすぐに割り切れるほど大人にはなりきれない。
ハギヨシに比べ、のどかはまだ割り切りが甘かった。
殺害の事実を隠すため持っていくわけにもいかず、とりあえず腹に入れておくかと殺害した二人の水と食料を腹に入れていたのも、嘔吐の原因ではあるが。

「それに……これで証明できたのではないかと思っています」
「証明？」

一は、和の提案が水を大量に手に入れるものだったのかと納得した。
しかしハギヨシはそうではない。
たったそれだけのために、わざわざ提案してくるとは考えにくいと思っている。

これは、一とハギヨシの意識の差。
『人を実際に殺しているか』の差と言ってもいい。
ハギヨシは、この殺し合いの場において、冷徹に嘘を吐き合うということをリアルに想定できている。
何せ、実際に自分が嘘を吐き続けているのだから。
ただ目的をぼかすだけで嘘を吐いた試しのない一とは、嘘に対する警戒心に違いが出る。

そして和も、また手を汚し嘘を吐いて来た身として、全員をこんな子供騙しな勝利でだまくらかせると思っていない。
だから、真実を述べる。
嘘ではなく、数ある真実の一つを。

「はい。私が、頭脳派として非常に優秀ということを、です」
「随分自信満々な言い方をしますわね……」

透華が軽く目を丸くする。
普段の和の性格からは、あまり考えられない言葉だ。

「こんな状況ですし、自分を売る他ありませんから」
「生き残るための知恵、ですか」
「はい。運動神経は決して優秀ではないですが、戦略面で役立てることをお約束します」

やられた、とハギヨシは内心舌打ちをする。
和の狙いはもう読めた。
そして同時に理解したのだ、もう止めようがないことを。

「ですから、お願いがあります」

そもそも和は、こんなことをして優秀性をアピールする必要はない。
既に透華が仲間認定をしており、誰がとう見ても透華が和に入れ込んでるのは明らかだ。
和としても、全くそれに気が付いていないというわけではないだろう。

にも関わらず、反感を買うリスクがあるのにこんなことをした理由。
そんなのは、一つだけしか浮かばない。

和本人が既に透華の“仲間”であり“優先順位の極めて高い合流対象”である以上、
和のスキルを見せつけることで“有用だからと優先順位を引き上げられる”のは、和以外の誰かということになる。
和の親友の一人・優希は既に合流済みで透華のこれまでの行いから切り捨てられる心配はないだろうとなった以上、もう残る人物候補は一人だけ。

「宮永さんを見かけたら、どうか保護してあげて下さい」

宮永咲。
先程、和が優希よりも優先すると宣告した人物。
優秀な頭脳戦担当者である和を仲間にするためには、彼女を引き入れねばならないということだ。
龍門渕の“家族”と違い、ハギヨシ達にとってみれば無条件では信頼出来ない相手なのに、透華が贔屓している和のためには彼女を何としてでも引きこまなくてはならない。
ハギヨシが苦々しく思っても仕方ないだろう。
何せ相当面倒なことが増えたのだから。

「もし、恐怖で動転し過ちを犯していても、許してあげて下さい」
「……貴女方が池田様を許して下さったように、ですか」
「はい」

ハギヨシとしては、危険人物は排除していきたいのに、この状況はよろしくない。
華菜だって、本当なら発狂してしまう前に楽にしてやりたかったくらいだ。
そして、それを出来なかった理由は、勿論――――

「そんなの、言われなくても分かっていますわ！」

この、お人好しの君主のせい。
そして、和の狙いに勘付いても止めることは諦めた理由もまた、透華の存在だった。
別に、和はハギヨシ達に咲は生かしておくべきだと思わせたかったわけではない。
ただ、あくまで自然に、どれほど自分が咲を助けて欲しいのかを伝えることが目的だったのである。
その伝達の対象は、ハギヨシ達に指示を出せる唯一の少女。

「心配しなくても、宮永咲は絶対に私達が保護してさしあげますわ！」

これで、目出度くハギヨシ達は咲を殺せなくなったというわけだ。
例え咲が明確な殺意を持って襲ってきても、透華は恐らくトドメを刺すのに反対してくるだろう。
下手をしたら、反撃の発砲にすら抗議をしてくるかもしれない。

「ありがとうございます。これで、安心して行くことが出来ます」

ようやく事態に気がついて顔をしかめる一とは対照的に、和はにこりと笑みを浮かべる。
それは、勝利を確信した笑みだった。

ハギヨシは、和の意図に気が付いた際、一瞬だけ表情筋を硬直させた。
ハギヨシに狙いを絞り注意して観察していた和は、その一瞬を見逃さなかった。

そして和は確信する。
ハギヨシは、気付けるように公開した意図に“自ら気付いた”と思っているということを。
和は知ってる。自分自身が理論派だからこそ分かる。
理論派の、上を行く方法を。

（一度納得のいくロジックで謎を解き明かしたら、もうその謎は気にもとめない。
　何せもう、終わったことなんですから……くよくよせずに、次は負けないようにと思考をスパっと切り替える……）

だから和は餌を与えた。
咲の保護が目的だという、『真実の一部』を敢えて与えた。
そこに辿り着き、ハギヨシは“納得”を得た。
内側から疑念は霧散してしまった。
もう、ハギヨシの中にこの行動への疑念はない。
既に、解決したものとなったのだから。

（私の、勝ちです）

勿論咲を保護させたいというのもあるが、それが一番の目的ではない。
何せ、場合によっては美穂子を殺し一人離脱しようというのだ。
そう長いこと自分のために咲を優先してもらえるとも思えない。

だから、本当の目的は他に多数ある。
例えば、咲の保護の確約を目的としてると思わせることで、透華達を裏切るという可能性から目を背けさせる。
まさか、そんなに早く手を切られるとはハギヨシ達も思わないだろう。

（これで、乗っていてくれたら言う事はないんですけど）

チラリと美穂子の方を見やる。
もしも美穂子が殺し合いに乗っていた場合、事は円滑に進む。

自分が生き残ろうと美穂子が乗っていた場合、華菜を殺し適当に戻って来ればいい。
しかし真に助かるのは、和のように風越の誰かのために乗っていた場合だ。

その場合、華菜は生かして美穂子と一緒にここに帰す。
そして、大切な人の生還のために脱出を目指させる。
一方で和は咲の情報を得たとして別行動で人を減らし、脱出が可能となったら何食わぬ顔で美穂子達に合流する。
見敵必殺していけば人殺しとバレることもないだろうし、美穂子の受け入れに誰かが難色を示しても同盟を結んだ美穂子に味方してもらえばいい。

別行動を取るための説得力として、咲への入れ込みをアピールしたことも生きる。
自然にマシンガンを譲り受けて別行動することも可能だと言えよう。

「そろそろ、行きましょうか」
「ええ……」

和が、美穂子に声をかける。
殺し合いに乗ってるのかはゆっくり聞き出せばいい。
今は、ここを移動しよう。
あまりのんびりしては、優希に再び情が移ってしまいかねない。

「のどちゃん……」
「優希……」

心配そうに、優希が声をかけてくる。
元より弱っていたのに、ようやく出会えた親友が仲間相手に騙し討ちのようなことをしたのだ。
そのショックは大きいだろう。
更に、和とハギヨシ達との間に割って入って仲裁出来なかったことも、優希の心に影を落とす。
島中の争いを止める気でいるのに、自分はあまりに無力だと見せつけられてしまったようで。

和達のやり取りは、優希には困難すぎた。

「……また、会えるよね……？」
「……ええ」

不安げに見つめてくる優希の体を、そっと和が抱き寄せる。
自身の汚れを移したくないとでも言うのか、まるで脆いガラス細工を抱くように、優しくそして遠慮がちな抱擁。
布越しに感じる体温が、たまらなく愛おしかった。

それでも、離れなくてはならない。
和は、もう後戻り出来ないのだから。

「――――――――――」

最後に、一言。
優希の耳元で小さくメッセージを残す。
それを聞き、優希の表情が歪んだ。

「…………のどちゃん？」

和は表情を崩さない。
優希に“そんな顔”をされるのは辛かったが、言わねばならなかったのだ。

視線から逃れるようにくるりと背を向け、透華達と話していた美穂子へと歩み寄る。
それに気付いた美穂子が、アタッシュケースを手にとった。

「行きましょうか」

美穂子は最後に一礼して歩き出す。
和は、振り返らなかった。
振り返ると、優希を見ると、色々なものが揺らいでしまいそうだから。

「原村和！！」

そんな和の背中に向かい、透華が声を張り上げる。
本当に危機感がない、と和は内心苦言を呈した。

「私は貴女のライバルとして、この論理（デジタル）的思考力を持って、ハッピーエンドに導いてさしあげますわ！」

和は、数秒だけ立ち止まった。
しかしすぐに歩みは再開される。
振り返ることはない。

「妥協とか、つまらない現実とか、クソ食らえですわ」

戸惑いながら美穂子が後をついてくる。
いいのか、と言わんばかりの美穂子に、作り笑いを浮かべてやった。
そういう形の友情もあるとでも思ったのか、美穂子は特に何か言う事はなかった。

「勝利条件は役満上がることのみみたいな状況――でも、上がり目がないわけじゃない。
　心を折られてベタオリなんてさせませんわよ」

和の中で、透華への評価がほんの少しだけ変わる。
もしかすると、性善説のお人好しっぷりは、わざとやっているのかもしれない、と。
全員脱出という目的だけを見据えるからこそ、無謀とわかりつつその上がり条件に向かって、彼女なりに最も効率のいいやり方をしているのではないかと。

「ですから――ここにいる全員、宮永咲も含めて！
　私も！　貴女も！　一人残らず！」

だが――それももはやどうでもいいことだった。
どの道既に道は違えた。
運良く透華が首輪を解除し、和が罪を犯した過去を隠し通せた時以外、再び交わることもないだろう。

「生きて帰りますわよ、皆一緒にッ！」

きっと、それは叶わない。
そう思いながらも、胸が確かに締め付けられるのを感じながら、和は軽く腕を挙げて言葉に応えた。
咲に勝利を誓った時と比べると、随分虚しい虚仮威しなポーズだな、と自嘲する。
透華の声はそれを最後に途絶え、和と美穂子は気が付いたら山頂を脱していた。



――自分の信ずる勝利に向かい、各々が小さな一歩を積み重ねた。
それは確かに力を持ち、塵が積もって大きな山となりつつある。

だがしかし、山と山とは一つにならない。
目指す先が違うのだから、綺麗に共存なんて出来ない。

まるで崩されるために積み上げられた牌山のように、この先山は崩されていく。
“上がり”のために積み上げられた各々の行動は、“山を崩す”ために積み上げられたとも言える。
これは、そんな無慈悲なゲーム。

和と美穂子の別行動は、山崩しの号砲だ。
もう崩れるのは止められない。

――かくして崩壊は始まる。



【残り２５人】

----

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    <dc:date>2014-01-15T02:23:58+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/50.html">
    <title>運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-</title>
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    <description>
      ＊＊第２２話　運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-

国広一が主である龍門渕透華に抱いていた感情は、至極複雑なものだった。
敬愛の気持ちもあるし、友情に近い気持ちもあるし――その他諸々、ポジティブな想いでいっぱいだ。
一にとって、それほどまでに、透華は大きな存在だった。

『救い』と表現しても、大袈裟ではないかもしれない。

過ちにより友を失い、家族というものを精神的にはとっくに失っていた時、透華が再び友と家族を一に与えてくれた。
いや、与えてくれたというよりも――思い出させてくれたと言う方がいいかもしれない。

とにかく、“死んでいた”一を生き返らせてくれたのは、無茶で強引な第一印象しかなかった透華なのである。

「透華……透華ァ！」

その無茶苦茶な行動もあり、正直に言うと、透華の第一印象はそれほど良くはなかった。
それでも時を重ねるにつれ、透華の優しさや人格に触れるにつれ、徐々に透華という人間を好きになっていた。
やがて透華は一にとっての“すべて”となり、一は透華のためならば何でも出来ると思うようになる。

だが――心の底からそう思っても、透華のために悪事に手を染めたことはない。
というのも、一の心の構成要素の大多数を占めている要素として、透華以外に“過去のあやまち”が挙げられるからだ。

皆のためを想い、手を染め、その結果、大切なものを失った。
もう、そんなことは御免である。

「冗談やめてよ……全然……笑えないってば！」

あの時のことは、今思い出しても胸が痛くなる。
辛いだなんて言う資格はない。手を汚し、全てを台無しにしたのは自分自身なのだから。
――そう思っていても、あの事を思い出すと、胸の痛みを止められない。

皆と一緒に勝ちたくて、道を踏み外した。
本当はきっと、皆を理由に、楽な道を選ぼうとした、エゴの塊の動機だったのだろうけど。

ともかく道を間違えて、暗くて冷たい寂しい世界へ迷い込んでしまった。

「ねえ！」

何よりも悲しいのは、今でも彼女達が好きなのに、会いたくないと思ってしまうことだった。
何よりも悲しいのは、思い出すだけで笑顔になれていた思い出が、今では胸を締め付けるだけの辛いものになったことだ。

あんなにも心を救ってくれていた思い出達が、大切だった人達が、一の中で“変わってしまった”ということが、本当に辛い。
間違えたのは自分であり、彼女達も思い出も、何の非もなく何も変わっていないというのに。

「返事してよぉ！」

失ってしまうことは、離れられてしまうことは、置いて行かれることは――
自然に疎遠になることや、不可抗力で遠い存在になってしまうこととは違う。

後者ならば、その思い出や相手はずっと、あたたかいものとして、いつまでも心に残る。
けれども前者は、今まで心を救ってくれていたものが、一気に自分を苦しめる猛毒になってしまうのだ。

失ったという事実のせいで、未来のみならず過去までダメになってしまう。
その恐ろしさは、誰よりよく分かっているから。
だから一は、受け入れることができなかった。

「透華ァ……」

透華は、道を見失い歩くことをやめていた迷子の前に現れた、明かりのようなものなのだ。
透華こそが一の生きる指標であり、原動力。
彼女を失ってしまっては、どう生きていけばいいのかすら分からない。

なのにそれを、そんな人を、大切な灯火を、失ってしまったのだ。
しかも、ただ失っただけではない。
『もっと警戒していれば、防ぐことだってできた』――そんな状況で、失ったのだ。
受け入れられるわけがない。
ここで受け入れてしまったら、心がきっと壊れてしまう。

「……守れず、申し訳ございませんでした」

一方で、ハギヨシは、透華の死を受け入れた。
受け入れ難いという想いはある。

だがしかし――彼は、気を配ることに関しては一流だった。
気が利き過ぎた。

ハギヨシは、理解している。
一が心に負った傷の大きさを。
そして分かってしまっている。
一の方が、自分よりも辛い想いをしていると。

ハギヨシは、だから、透華の死を受け入れた。
避けては通れぬソレをするのは、自分の役目だと考え。
一では、真っ先にソレをすることは不可能だと考えて。

「……本当はもう、分かっているのでしょう？」

そっと一の肩に手を添える。
本当は、唇を噛み千切りたいくらいに悔しい。
それでもそれを表に出さず、言わねばならぬ現実を、一へと突きつける。

「透華お嬢様は――――もう、お亡くなりになったと」

透華は、もう、戻ってこない。
その現実を、言葉に出し、全員に認識させる。
一番辛いその仕事を、ハギヨシは請け負った。

「嘘、だ……」

ハギヨシの言葉には、何故だか説得力があった。
普段通りの口調の中に、悲しみや嘆き、優しさや覚悟が入り交じっているのが感じ取れたから。
その言葉から、現実から、逃げ出すことが出来なかった。

「透華が……し――――」

言葉に出せば、全てが決まってしまいそう。
言葉に出せば、もう受け入れるしか無くなる。

「死んだ……なんて……」

だけど一は、それを口にしてしまった。
感情を、現実を、あらゆるものを押し留めていたダムに自らヒビを入れてしまった。
瞬く間に小さな穴から押し込めていたものが溢れ、そして防波堤を壊しながら飛び出してくる。

一の心には、どうしようもない風穴が開いてしまったのだ。

その穴が、埋まることは二度と無い。
透華という救いを得ても、かつて裏切ってしまった友を思い返す時の胸の痛みは決して癒されなかったように。
透華を失った痛みは、もう、永遠に癒えない。

「う……ああっ……」

一の目から、久しく流していなかった涙が溢れ出てくる。
もう、一は、透華を思って暖かい気持ちになることすら出来ない。
大好きな人なのに、これからは彼女のことを思う度、悲しみや自分への怒り――その他諸々、冷たい気持ちで満たされるのだ。
一が焦がれ、大切に思っていたあの暖かさは、もう、どうやっても帰らない。

「うわああああああっ……」

子供のように、縋り付いて泣きじゃくる。
本来ならば、子供の年齢なのだ。
すでにメイドとして働き、しっかり者の風格を持てど、なんてことない普通の女子高生なのだ。

「そんな……」

優希は人懐っこい。
それも上っ面だけの広く浅くな交遊をするタイプではなく、好意を抱いた相手にはとことん信頼を寄せるタイプだ。
その好意を抱くためのハードルが異様に低く、それ故に人懐っこい性格と呼べた。
『彼女は“人”が大好きなのだ』とも言える。

そんな優希だから、透華のことも慕っていた。
合宿で少々絡んだだけの間柄ではあるが、この島に来て、誰よりも優希のことを想ってくれた。
誰よりも優しい心を持っていた。
短い付き合いだったけど、優希は透華が心の底から大好きになっていたのだ。

「りゅーもんぶちのお姉さん……」

そして――優希は一も好きになっていた。
理解のできないファッションセンスを持ってるし、性格が合うわけでもない。
それでもこの非情な島で最初に出会った人物であり、自分の無謀な作戦に付き合ってくれた仲間である。
優希は、一のことも、好きになった。

「なんで……」

その言葉は、何らかの考えあって出てきた言葉ではなかった。
透華という慕った友を失い、一という同志のような友が悲しみに暮れている。
そんな残酷な現実に、涙と共に思わず言葉が漏れたのだ。

「……なんで……？」

その言葉を、一が重く静かに復唱する。
静かに言われたはずなのに、その言葉からは今にも爆発しそうな感情を感じ取ることができた。

優希の口から漏れた言葉は、言うならば現実を受け入れたくない気持ちの現れ。
願望が、少し表現を変えて口から出て行っただけ。
一自身が口にしそうになった言葉でもある。
だけど、一は。

「なんで、だって……？」

悲しみに心を塗り潰された一は、その言葉を悪意を持って受け止めた。
……悪意を自覚したうえで、悪い意味で解釈したというわけではない。
単なる潜在意識レベルでの八つ当たり。
言葉尻を捉えての勝手で愚かな勘違い。
ありもしない優希の言葉の裏を読み取ってしまったのだ。

「なんでだって！？　わかんない！？
　なんでこんなことになったか、わかんない！？」

それは、自分がペットボトルの水を飲むのを止めなかったせい。
透華と合流できた後にも、危険と分かっている呼びかけを続けたせい。
――自分が、愚かだったせい。

「全部、全部――」

自分を責めた。
これ以上ないくらいに自分を責めた。

しかし怒りの矛先は、自分自身へは向かない。
激情で強化された言葉の剣は、自分の胸は貫かない。

言葉に出していく毎に、自己嫌悪の代わりとばかりに“奴”への憎悪が生まれる。
悲しみが、憎しみに書き変わる。

――確証のない単なる疑念が、一の中で、絶対的な真実に変わったから。

「[[原村和]]のせいじゃないかァ！」

原村和。
拡声器の呼び掛けでやってきた悪魔。
下手人は、彼女以外に考えられない。

「ちがっ……のどちゃんはそんなことしないじぇ！」

一の和犯人論は、他者へ怒りをぶつけるための理屈に欠けた結論ありきのものだ。
冷静に話せば、確固たる証拠が出るまで、和の犯人扱いは保留出来たかもしれない。

だがしかし――優希にそれは出来なかった。
元よりアホの子寄りの存在だったというのもあるが、何よりそんな精神状態ではないというのが大きい。
友を目の前で失った動揺冷めやまぬままに、親友がその下手人という話を突き付けられる。
何よりも感情部分が反射的にその話を拒絶した。
それを誰が責められようか。

「アイツしかいないんだよっ……ペットボトルに毒を入れたからっ……
　だから自ら別行動を望んだし、ペットボトルの交換なんてしていったんだ！」

激昂。
一にとって人生初のことである。
優希を責めても何にもならないことは分かってる。
それでも爆発した想いを止めることが出来ない。

「そ、そんなわけっ……だって……だってのどちゃんは私を心配して……」
「ああ、ああ。そうだね。そうだよ。そうだったんだ。
　原村和は自分が毒を盛ったから、わかってたんだよ！
　だから……だから友達を真っ先に手にかけないよう警告していったんだッ！」

もしも優希に相手の言葉を捩じ伏せるだけの頭があれば、まだ挽回は効いただろう。
「殺し合いに乗る気ならば、わざわざ警告する意味がない」など、疑惑は残れど決定付けられることはまだまだ回避する道はあった。
真実はさておいて、この場における結論付けを先延ばすことなら出来た。

だが――優希にはそれが出来ないのだ。
先程も言った通り、そんな知能も余裕もなかった。
それになにより、それが出来ず、でも友達を犯人だなんて言えないのが、片岡優希という少女なのだ。

「……殺してやる……」

下手人だと思う者の名を、言葉に出してしまったから。
その名前を聞いた時、否定するだろう立場にいる和の親友である優希が、言葉に詰まってしまったから。
一の中で、和への憎しみはどうにもならないところにまで膨れ上がった。
透華という明かりを見失った少女には、もう、自棄気味な殺意しか縋りつくものがないのだ。

「透華の仇をっ……取ってやる！」

一は決して馬鹿ではない。
間違えたこともあるとはいえ、ここまで全て先を見据えて行動してきた。

しかし今、その面影はどこにもない。
ただ怒りに身を任せようとしている。

『もう、なにもかもがどうでもいい』

そんな言葉が出てきそうなほど。
もう、一には、歩むべき道が見えない。
どちらに向かって歩きたいのかも分からない。

「そ、そんなことはさせないじょ！」

両手を広げ、慌てて優希が一の進路を塞ぐ。
一の足は、和達が姿を消した方に向いていた。

「……どいてよ」

一の言葉からは、数時間前とは違い、冷たさしか感じられない。
そこに、一蓮托生となって共に命を賭けた相棒の面影は、もはや残っていなかった。

「じゃなきゃ、撃つよ」

一に、優希を殺すつもりはない。
透華亡き今、憎き仇以外を殺す理由がないし、何より――

一にとっても、優希は友達だったから。

抱いた想いは、透華へのそれと比較したら遥かに少なかったけど。
過去のこともあり、上手く心を開くことはできなかったけど。
足手まといとは思ったし、もしも透華が優勝するから殺せと言えば、涙しながらも殺したろうけど。

それでも優希に抱いた想いは、友情と呼べるものだった。

「い、嫌だじぇ……」
「……お願いだから。ボクに友達を殺させないでよ」

殺す気がないからこそ、銃を向けるのに躊躇はない。
銃を撃ったことがあるという経歴や、狙って威嚇射撃が出来る程度には試射で慣れていたということが、僅かに残されていた『うっかり殺してしまうかも』という疑念から来る躊躇を掻き消している。
勿論、殺意がないのに気付かれるようなヘマはしない。
だが――

「嫌だじょ！　そんな……のどちゃんを殺すなんて……」

優希は、それでも決して退かなかった。
カタカタと震えている。
涙で濡れ、顔にも恐怖の色が出ている。
それでもなお、一の前に立ちはだかった。

「だいたい……のどちゃんが人を殺すはずなんて……」
「……それじゃあ……」

優希を殺すつもりなんて、未だにない。
けれども、一にとって『透華を殺した犯人』として確固たる地位を築いた和を、そのように言うことだけは許せなかった。
だから、とても残酷な言葉を、自虐と加虐の色を含んだ笑みと共に言う。

「それじゃあ――誰が殺したっていうのかな。福路さん？」

その言葉が、現実から目を背けていた優希の心に突き刺さる。
下手人が先程まで共にいた誰かなのかは、疑いようのない事実。
飲み掛けのペットボトルで死んだ以上、最初から毒入りのものが混ざっていたという可能性はないのだから。

「そんな……わけないじょ……風越のお姉さんは、本当に優しかったし……こんな残酷なこと……」
「うん、出来ないだろうね。それに彼女はしばらく見張ってたから分かるけど、毒を入れる暇なんてなかった」

和が来るまで、美穂子は一かハギヨシが常に監視をしていた。
彼女に毒を入れるチャンスはない。
ましてや彼女は節約としてか合流するまでペットボトルの封を一切切っていなかった。
事前に仕込んだという可能性もない。

「それとも――ボクか萩原さんが犯人なのかな？」

言いながら、心の中で自嘲する。
ハギヨシも自分も、龍門渕家に陶酔した身。殺すわけがない。
……無様に何も出来ないことで、間接的に殺したようなものだけど。

「……違うじょ……二人ともいい人だし……りゅーもんぶちのお姉さんと仲良かったし」
「……それじゃあ、犯人はどこに消えちゃったの？　ねえ。
　現にもう事件は起きてる。誰も犯人じゃないだなんて有り得ないんだよ」

勿論――まだ可能性はあり得る。
例えば、一にも思い浮かんだ、透華の自殺の可能性。
それならば生存者から犯人は出ない。

だが一はそれを口にはしなかった。
冗談でも透華をそんな風に言うことは出来なかった。
それに――もしも『生存者に犯人はいないはずなのでこれは自殺だ』なんて透華を冒涜した説を優希が支持しようものなら、それを強く推してきたら、我慢する自信がないから。
そうなればきっと、優希に殺意を抱いてしまうと思ったから。

「で、でも……のどちゃんはっ……すごく……優しいんだじぇ……
　エリートさんで……すごく、可愛くて……でも、鼻にもかけなくて……
　こんな私とも仲良くしてくれる、すっごく……優しい……」

言いながら、優希の目に涙が再び溢れてくる。
透華の死を悲しむ涙ではなく。
向けられた銃への怯えからくる涙でなく。
言葉にする度脳裏に浮かぶ、優しくて大好きな親友の顔に涙した。

「だから……のどちゃんが、こんな……」

その親友が、大事な友達を殺したと、優希も思ってしまったから。
そんな疑念を持った自分と、そんなことをしてしまった親友に涙した。

「……みんな、そうだったよ。
　透華はすごく優しかったし、良い奴だった。
　殺すような人じゃなかったし、殺されていい人でもなかった！」

紡いだ言葉が心の中を掻き乱す。
一度は一に戻りつつあった冷静さが、言葉と共に崩れていく。
崩れた箇所から、どんどん感情が溢れる。

「透華だけじゃない！　純君も！　衣も歩もともきーも！
　この島にいる誰も彼もが、殺し合いなんてするような人じゃなかった！
　こんなことで、死んでいい人じゃなかったッ！」

もう、我慢出来なかった。
和への怒りというより、この殺し合いそのものへの感情を止められなかった。

「なのに死んだ！　死んだんだよ！　もう５人も死んでるんだ！
　殺されたんだよ！　殺しなんてするような人じゃない人に！」

肩で息をするくらいに。
大声は危ないなんて散々呈した苦言を忘れるくらいに。
一は叫んだ。

「もう……そんな人じゃないとか、そんなの言ってられないんだよぉ！」

一の叫んでいる内容を、優希はよく理解している。
清澄の皆は、合宿場で仲良くなった皆は、誰も彼も人を殺すような人じゃなかったし、殺されていい人じゃなかった。

だけど、現実的に人が死んでて。
殺人鬼が出てしまったことは疑いようがなくて。
良い人だったからと言って、殺し合いに乗らないというわけではないのだ。

――そんな、目を背けていた現実を、優希はとうとう突きつけられた。
それはとてつもない破壊力を伴い優希の頭に侵入し、ガッチリと腰を下ろす。
もう、認めざるを得なかった。

人を殺す人がいると受け入れて。
仕方なしだけど、親友が道を誤ったことを受け入れた。

「それでも……のどちゃんを殺すなんて、駄目だじぇ……」

それでも――仇討ちで一が和を殺すことだけは、受け入れることが出来なかった。
たとえ道を誤っても、和は親友だから。
道を正す可能性を捨てられない、その存在を見捨てられない、大好きな人だから。

「そんなことしても……りゅーもんぶちのお姉さんは帰ってこないし……
　何より、友達が人を殺すなんて、そんな所、もう見たくないじぇっ……！」

そして――友達に、人殺しになってほしくなかったから。
一が親友を失って深く傷ついたように、優希は親友に道を誤られて深く傷ついた。
だからこそ、もう、そんな目には遭いたくないのだ。
一には、道を誤らないでほしいのだ。

「五月蝿い五月蝿い五月蝿いッ！」

一には、分かってる。
こんなことしても、何にもならないことくらい。

一には、分かっている。聡明だから。
こんなことしたら、友人達が傷つくということくらい。

「りゅーもんぶちのお姉さんだって、生きてたら、そう言ったに違いないじぇ！」

一は――やはり、とっくに分かっていた。
透華は敵討ちなんてこと、望むわけがないということくらい。

当たり前だ。
だって一は、透華付きのメイドだから。

誰よりも透華を見てきたから。
誰よりも透華を想ってきたから。

分からないはずがない。

「りゅーもんぶちのお姉さんだって、人を殺してほしくないって思ってるはずだじぇ！」

それでも。
感情には抗えなくて。
駄々をこねる子供の域を抜け出せなくて。
明かりを失った今、復讐というゴールまで手放してしまったら、どうすればいいか分からなくて。

「お前にっ……お前に透華の何が分かるんだよっ！」

本当は、そんな言葉投げつけたいわけじゃない。
思っていたわけではない。

それでも一度吐いた唾は飲み込めない。
溢れ出した心にもない言葉は、その言葉が“本物”であるかのように、一を錯覚させていく。
その錯覚が、一の感情を更に不安定にする。

「分かるじぇ！　そのくらい、ちょっとでもりゅーもんぶちのお姉さんを知ってる人なら、誰にだって！」

優希は、説得を試みる。
理詰めが無理なら感情で。
一を追い詰め、諦めさせようとする。

「お前が透華を――――語るなァ！」

一は、その説得を聞き入れない。
相手の言葉を遮るように叫びながら、現実を拒絶する。

追い詰められて、わけがわからなくなって。
頭を振って、ムキになって。
どうしたらいいか分からずに、泣き叫んでしまいたくて。

そして、銃声が、突如響いて。

「――――――――え？」

一の目が見開かれた。

信じられない。信じたくない。
銃声がした。発生源はどこだろうか。確かめなくては。

体が固い。まるで動かない。呼吸すら上手く出来ない。喉が張り付き、息を吸うのも阻害する。
自棄糞気味に頭を振っていたために、視線は下を向いていた。
視界には、伸ばした腕と地面だけが映っている。

その腕の先の銃口から煙が出ていることなど信じたくない。
けれども、腕にあった反動が、それを信じさせようとする。

「何っ……！？」

なんで。
優希も思ったであろう単語を、一は頭いっぱいに展開する。

一に、殺意など、本当に、毛ほども存在してなかった。
反射的に引き金を引いてしまったのか、はたまた勢いというやつが知らぬ間に引かせたのか。
それとも汗で滑った結果引いたのか。
とにかくそれは、殺意によるものではなかった。

では、結局何故撃ったのか。
分からない。
何もかも分からないし、分かったところでどうにもならない。

起こったことは、もう変えられない。

「ち、違っ……」

違うんだ、これは。
こんなことを望んでいたわけじゃない。

そんな言葉を頭の中でぐるぐるさせる一の視界に、赤い液体が映り込む。
垂れてきているそれの上流を見るべく、顔を持ちあげないといけない。
自分が起こしたことなのだから、確認する義務がある。

なのに顎に錘でもぶら下げられたかのように、顔はまるで持ち上がらない。
小刻みに、カタカタとなら、動かすことが出来るのに。

でも、現実へ目を向けられない一に対し、現実はどこまでも冷たかった。
どさりという嫌でも意識させられる音と共に、優希の方から視界に映り込んでくる。
膝から落ちた優希は、その愛らしい顔面を重力にされるがまま地面に押し付けていた。

腕をかすめてしまっただとか、これは何かの間違いで銃弾は当たらなかっただとか、
そんな甘い願望は、無残にも打ち砕かれた。

「あ、あああっ……」

魔法が解けたかのように、急に体を縛り付けていた見えない鎖が掻き消される。
恐る恐る、それでもやや早足に、優希へと歩み寄る。
幸い、まだ亡骸にはなっていなかった。

「ごめっ……ボク……ボクっ……」

何故、こんなことになってしまったのだろう。
またしても、勢いだけで、取り返しのつかない過ちを犯した。
どうしていつもこうなるのだろう。

「ほんとにっ……撃つ気なんて……」

言い訳。
それは誰より一自身がよく分かっている。
撃っておいて『撃つ気はありませんでした』なんて、許されるはずがない。

少なくとも、和が「殺す気なんてなかったけど、うっかり透華を殺しちゃった」なんて言っても、一は和を許さない。
許せるはずがないのだ。

「……国広さん」

見ていてあまりに辛い光景。
表情を変えぬハギヨシですら、顔を歪めたくなる光景。

腹部から血を流して倒れる優希。
それに縋りうわ言のように文章にすらなっていない単語を乱雑に発する一。

両者の表情を伺えなくても、ハギヨシには、二人の表情が手に取るように分かった。分かってしまった。
……もっとも、ほとんどの人が、この場面なら分かってしまうのだろうけど。

「片岡様は――――」

だけど、ハギヨシはそんな“ほとんどの人”レベルなんかではない。
前述の通りあまりにも察しがよく、誰よりも周りを見ている、スーパー執事だ。
この場面で動揺し、何を言えばいいのか分からずオロオロするだけの愚者とは違う。

だから、告げる。
告げねばならぬ真実を。
避けては通れぬ現実を。

「――――もう、お助けすることができません」

その言葉に、一の体がビクンと震える。
それは、一が人殺しに身を落とすことを意味していた。
それは、一が、友達を殺してしまったことを意味した。

「う……あ……」

一は、まともに言葉を発する事ができない。
まだ息がある状態で、そんなことを宣告された被害者に、加害者がなんと声をかければいいのか。
そんなこと、分かるわけがなかった。

「……致命傷です」

明確に、言葉に出す。
ハギヨシは聡明すぎた。
一を傷つけるとわかりながら、そう言わねばならないことが理解できてしまっていた。

だから、告げる。
胸が痛まぬわけではないが、必要だからと己の心を押し込めて。

「ああああっ……」

自分はどうしたらいいのか、一には分からない。
透華にそうしたように、動揺のままに抱きしめる事もできない。
ハギヨシのように冷静になり、的確な行動を取ることすらできない。

何せ、自分が撃ったのだ。
触れる資格なんてない。
それに、口から血を吐いたのと違い、下手に触れると傷口が広がりかねない。
一はただ、己が壊れてしまわぬように、溜め込んだら心が壊れてしまいそうな混乱を、無意味な言葉の羅列として吐き出すことしかできなかった。

「……のど……ちゃ……」

優希は、くの字に体を折り曲げたまま、動くことが出来なかった。
体が熱い。とても痛い。
今にも瞼が降りてきてしまいそうだった。

「み……な……」

想う。
和を、咲を、久を。
――まこを、そして京太郎を。

皆のことが、大好きだった。
また皆に会いたかった。
だから、死ぬかもしれないと言われてでも、皆と会うため頑張ろうと思った。

だけど。
会えなかった友達がいる。
間に合わなかった友達がいる。
止めるチャンスはあったはずなのに、止められなかった親友がいる。

悔しかった。
悲しかった。
何も出来なかったことが。
こんなところで死んでしまうことが。

――悪い奴にでなく、友達に、殺されてしまうことが。

「……ご……ぇ……」

もう、まともに声も出ない。
ひゅうひゅうと掠れた息がかろうじて出るだけだ。

それでも優希は、謝罪の言葉を口にした。
何も出来ずにごめん、と。
諦めないで常に前を向こうと誓っていたのに、目を背けてしまってごめん、と。
その結果こんなことになってしまってごめん、と。

一が道を間違えたように。
優希もまた道を間違えてしまった。
少なくとも、優希自身は薄れる意識の中でそう思っていた。

「……きょ……ぁろー………」

瞼が降りる。
その目はもう、何も映さない。

ただ、最期に、馬鹿なことをしてしまっても笑って許してくれそうな――
頭を撫でて、からかいながらも慰めてくれそうな、大好きな人を、瞼の裏に映した。

それは都合のいい夢だと言えるけれど。
それでもその光景の中、優希は笑みを浮かべてみせた。
大好きな少年の手を取って、先輩も待っているだろう光の向こうへ、駆けて行く。
置いていかれないように、離れないように、しっかりと手を握りしめて。

「……え？」

優希の意識が光の向こうへ消えていっても、外見的な変化はない。
だから、思わず言葉が漏れ出た理由はそれではない。

一の声に含まれた動揺は、先程のものと毛色が少々変わっている。
動揺の対象が違う。
自分が優希を撃ってしまったことにでなく――――

「は、萩原さん……？」

ハギヨシが、優希の頭部にカラシニコフを突きつけていることに、動揺していた。

「……２つ、道があります」

淡々と、ハギヨシが言葉を紡ぐ。

「１つは、ここで私が片岡様の頭部を撃ち抜くことで、国広さんは手を汚さずに済む道です」

真実はどうあれ、少なくとも、トドメはハギヨシが刺したと思い込むことは出来る。
一が友達を殺したという事実から目を背けることが可能となる。
そんな、非道で甘美な道。

「もう１つは、このまま片岡様の死を受け入れる――即ち、自らの手で殺したことを受け入れ、背負っていく道です」

優希と一の口論の間に、ハギヨシは決意していた。
だから動揺を表に出すことなく、非道な選択を迫れる。

「ぼ……ボクは……」

一は、言葉に詰まった。
即答できるものではない。

「ボク、は……」

言葉に困り、俯きそうになり。
苦しい選択から目を背けるようにして、無意識に視線が動く。
優希にでなく、透華に。

「……透華……」

優希は友達だったけど。
けれどもやはり、追い込まれると、縋る先は透華だった。
優希に対する義理といったものよりも、透華に対してどちらの選択をすることが不義理になるかを考えてしまう。

「ボクは……ボクには、透華が全てだったから」

透華を言い訳にするような真似はしたくない。
だけど。

「だから――透華への想い余って暴走したのは紛れもないボクのミス。
　それを、なかったことになんて、できないよ……」

本当は、吐きそうだった。
消えゆく優希の呼吸音に、一度胃液は喉を通って押し寄せてきた。
それでも優希にそんなものをぶち撒けるわけにもいかず、ぐっとこらえ、飲み込んだ。

人を殺すなんて、簡単なことじゃないのだ。
今だって震えている。今だって再度吐き出しそうだ。

「吐きそうだけど。辛いけど。だけど。
　そこまでしちゃったくらい、ボクは透華が好きだったから」

けれども、一はそれを受け入れる。
優希を手に掛けた事実を否定してしまったら、それほどまでに透華を愛していた事実まで一緒に否定されてしまう気がしたから。
大きく道を誤らせるほど、透華は大事な人だったということが。

「それはよかった」

ハギヨシは、少なからずその答えに期待していた。
突如非常な二択を迫り、その二択だけに集中させることで、優希を撃ったこと自体への混乱と動揺を軽減する。
その狙いも的中し、そのうえ、望む選択肢を選んでくれた。
おかげで――――

「これで、私は、国広さんを手に掛けずに済みます」
「――――え？」

殺さずに済む。
そう言われ、決意と透華への想いで染まっていた一の目に、再び動揺の色が戻る。
顔を上げると、カラシニコフの銃口は、いつの間にか一へと向いていた。

「私は――龍門渕家に尽くします。透華お嬢様と、衣様に尽くします。
　だから、お二人が生還するためなら、何だってすると、決めたのです」

心の中で決めるだけと、それを実行に移すのとでは、天と地の開きがある。
しかしハギヨシという男は、それを実行出来る男だ。
躊躇はあったし、その後一度嘔吐感に苛まれもしたが、
それでもすでにハギヨシは、透華と衣のために、参加者を手にかけている。

「その透華お嬢様を、私は守ることが出来なかった」

ハギヨシは、感情を表に出さない。
本当なら、血が滲むくらい唇を噛み、握り拳を作りたいけれど、それをしない。
それが、『ハギヨシ』という、透華と衣の愛した執事なのだから。

人殺しという過ちを犯し、とっくに彼女達の愛した執事ではなくなってるので、
それが単なる自己満足の感傷的な行為に過ぎないことくらい、誰より自分が分かっていたけど。

「だから私は――――衣様を、優勝させます」

ハギヨシは、白旗を振った。
透華が挑み、優希が願ったハッピーエンドを諦めた。

むしろ――誰より真っ直ぐにそれを望み、行動に出た二人が志半ばで命を落としたからこそ、
衣という最後の守りたい人を守りながら成し遂げられる道ではないと考えたのだ。

元より無理だと思う気持ちが大半だったが、これを機に、完全に、その可能性を捨て去った。
もう、リスクを犯して脱出を目指す理由など、どこにもない。

「ですから、国広さん。
　私は、私自身も、そして貴女も、生かして帰す気はありません」

ハギヨシは――ある意味では、誰より先に全てを投げ出していた。
このような事態に巻き込まれることを防げなかった時点で、どこか自棄になっていた。

勿論、衣と透華を救おうという気持ちに嘘はなかったが、
聡明すぎたのもあって、皆での脱出なんてものは、最初から諦めていた。
脱出は、衣と透華が出来れば十分と思っていた。
それこそ、「必要とあらば手を汚すしか無いし、きっとその“必要”は何度でもやってくる」と考えていた。

だからこその、津山睦月と文堂星夏の射殺。
だからこその、池田華菜のあっさりとした切り捨て。

――だからこその、一と優希が行なっていた口論の静観。

「協力してくれませんか」

ハギヨシは、気配りのプロであり、場の空気を読むことに長けている。
一と優希を放っておけばこうなることは読めていた。
読めたうえで、放置したのだ。
優希が、こうして、一の手で命を落としてくれるように。

「……ボクは……」

そして、ハギヨシには、分かっている。
一が、既に手を汚し引き返せなくなった一が、首を横には振らないことを。

「……もう、透華にはどの道合わせる顔がないから」

体は、まだ震えている。
人を殺す前に「殺し合いに乗る」と口にするよりも、実際に手を汚してしまった今の方がよほど言葉にしづらい。
それでも、言う。言わねばならない。

「せめて、龍門渕の家に恩義を返せるように」

言い訳だろうと何であろうと。
自分を奮いたたせるため、引き返せぬよう自分自身を追い込むため。
恩のある、大好きな人の家の名前を口にする。

「ボクも――――衣を優勝させるため、殺し合いに、乗るよ」

ハギヨシの目をはっきり見つめ、一が言う。
それを見て、「そうですか」とだけ返すと、ハギヨシはカラシニコフを下ろした。

「では、急ぎましょう」
「え？」
「原村様に、追いつけなくなってしまいますよ」

和に追いつく。
そんなこと、ハギヨシにはどうでもよかった。

透華を殺された恨みはある。
だがしかし、殺し合いを進めていけば、嫌でも戦うことになるだろう。
故にハギヨシは、和を敢えて追いかけることに意義を見出していない。

勿論、どこかで命を落とされる可能性はあるだろう。
だがしかし、復讐の未達よりも、衣の生還という目的達成の方が大切なので大きな問題ではない。

「……今からでも追いつくのは難しいでしょうけど、それでも、これ以上遅くなるよりいいでしょう」

問題があるとすれば、一が、そしてハギヨシが、これ以上ここに居ると後ろ髪を引かれること。
透華の意思や人柄を想い、決意が鈍る可能性があること。
透華の亡霊に後ろ髪を引っ張られ、結局殺し合いに乗ることを放棄する――そうなってしまう可能性は０ではない。

だから、立ち去るよう促す。
これ以上、透華の――そして優希の傍にいると辛いから。
影響を受けてしまいそうだから。

「そうだね。行こう」

ちらりとだけ透華と優希に視線を向ける。
しかし一は、こみ上げてくるあらゆる感情を抑え、二人に背を向け歩き出した。
これ以上留まるともう歩き出せないことは、薄々一も気付いていたから。

「……私は、あちらに行きます」

少し歩き出したところで、ハギヨシが進行方向と別の方面を指さす。
指で指された方向は、一やハギヨシ、それに美穂子といったメンツが通っていないルートである。

「効率を考えるなら、二手に分かれた方がいいでしょう」

嘘を吐いていた可能性がある和の話を抜きにしても、３グループ分の情報をハギヨシ達は持っている。
その３グループの通ったエリアには、現状分かっている限り、華菜以外の人はいない。
呼びかけに反応した者が自分達と同じルートを来る可能性もなくはないが、
それらのルートにはもうほとんど人がいないと見て、まだ通っていないエリアに向かう方が効率的だ。

「……そう、だね」

勿論、戦闘になることを思えば、一緒に行動している方が安全だ。
先程まで自分達がそうしていたように、徒党を組んだ者は他にもいるかもしれない。

しかし、ハギヨシも一も、集団の相手をするのをそれほど厄介だとは思っていなかった。
大集団を形成するのは、戦う気がない者達だけだ。
不意を突ければ、一気にガタガタに出来るだろう。
ましてや一もハギヨシも射撃経験があり、既に発砲を済ませている。
人に対して発砲するのに躊躇がないというのも強みだ。

負ける気など、微塵もしない。

「じゃあ、ボクが、原村和を追わせてもらうよ」

それに――正直に言うと、死ぬかもしれないだとか、そういうのは、どうでもよかった。
もはや一に、失えるものなどない。
言ってしまえば、衣の生存すら『どうでもいい』ことと化している。
自分が死ぬのも怖くはない。
ただ――

（原村和……お前は、絶対に……っ！）

ただ、原村和を殺せないことは、受け入れられないことだった。
和を殺すという漆黒の意思だけが、今の一を動かしている。
結局の所、透華という道標を失ってしまった一は、復讐という杖をついてしか歩き出せなかったのだ。

だから、和を知らない場所で死なせるわけにはいかない。
ハギヨシと違い、和への殺意がなければ、存在意義を失ってしまうのだから。

「それじゃ……お互い、頑張ろうね」
「……はい」

一は、和の去った方へと駆け出した。
透華や優希にそうしたように、振り返ることは、もうしない。
ハギヨシにはもう一瞥もくれず、一は誤った道を歩み始めた。

――否。歩み始めたというよりも、転がり落ち始めた、か。

運命の輪っかはもう、転落を始めてしまった。
ごろごろ。くるくる。

一度斜面を下った車輪は、勢いを増し、暴走していく。
ごろごろごろ。くるくるくるくる。

もう、車輪は、止まらない。
止まり方など、車輪自身にも、分からなかった。



ごろごろごろごろくるくるくるくるくる――――――



&amp;color(red){【片岡優希　死亡】}
&amp;color(red){【残り２３人】}

----

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|[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]|&amp;color(red){片岡優希}|&amp;color(red){ハコテン}|
|[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]|ハギヨシ|―|
|[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]|&amp;color(red){龍門淵透華}|―|    </description>
    <dc:date>2014-01-15T02:10:32+09:00</dc:date>
    <utime>1389719432</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/15.html">
    <title>キャラ別登場話リスト</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/15.html</link>
    <description>
      ＊＊キャラ別登場話リスト

#treemenu(title=通称『追跡表』の形態選択,
[[五十音順（配布名簿での記載順）&gt;キャラ別登場話リスト#aiueo]],
[[所属学校順（順序は独断と偏見）&gt;キャラ別登場話リスト#school]],
block,
treeline=1)

----

**&amp;aname(aiueo)キャラ別登場話リスト（配布された名簿順・五十音順）

&amp;bold(){【プログラム参加者】}
|キャラクター|所属学校|登場話|登場話数|
|天江衣|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|２話|
|池田華菜|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|４話|
|井上純|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|３話|
|加治木ゆみ|鶴賀学園高等部|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|３話|
|片岡優希|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]、[[第１１話&gt;慟哭、そして……-ﾅｷ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|門松葉子|今宮女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|３話|
|上柿恵|千曲東高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|４話|
|蒲原智美|鶴賀学園高等部|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|２話|
|国広一|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]、[[第１１話&gt;慟哭、そして……-ﾅｷ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|久保貴子|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|２話|
|沢村智紀|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|３話|
|須賀京太郎|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|２話|
|杉乃歩|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|妹尾佳織|鶴賀学園高等部|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|染谷まこ|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|４話|
|竹井久|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|２話|
|田中舞|今宮女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|２話|
|津山睦月|鶴賀学園高等部|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|３話|
|東横桃子|鶴賀学園高等部|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|南浦数絵|平滝高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|３話|
|ハギヨシ|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|[[原村和]]|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|６話|
|深堀純代|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|福路美穂子|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|６話|
|文堂星夏|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|３話|
|宮永咲|清澄高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|４話|
|室橋裕子|高遠原中学校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|夢乃マホ|高遠原中学校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|２話|
|吉留未春|風越女子高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|龍門渕透華|龍門渕高校|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|

&amp;bold(){【プログラム運営側】}
|サンフランシスコ・ザフィケル|司会進行|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]|３話|
|藤田靖子|みせしめ役|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|

&amp;bold(){【番外編登場キャラクター】}
|佐々野いちご|鹿老渡高校|[[第１６話&gt;Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|
|愛宕洋榎|姫松高校|[[第１６話&gt;Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|

----

**&amp;aname(school)キャラ別登場話リスト（学校ソート）

&amp;bold(){【清澄高校】}
|宮永咲|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|４話|
|原村和|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|６話|
|片岡優希|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]、[[第１１話&gt;慟哭、そして……-ﾅｷ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|竹井久|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|２話|
|染谷まこ|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|４話|
|須賀京太郎|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|２話|

&amp;bold(){【龍門渕高校】}
|天江衣|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|２話|
|龍門渕透華|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|国広一|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０２話&gt;序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]、[[第１１話&gt;慟哭、そして……-ﾅｷ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|井上純|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|３話|
|沢村智紀|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|３話|
|ハギヨシ|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２１話&gt;チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]、[[第２２話&gt;運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|９話|
|杉乃歩|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|

&amp;bold(){【風越女子高校】}
|福路美穂子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１４話&gt;Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]、[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]、[[第２０話&gt;生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|６話|
|池田華菜|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０９話&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]、[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]、[[第１７話&gt;廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|４話|
|吉留未春|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|文堂星夏|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|３話|
|深堀純代|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|久保貴子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１８話&gt;Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|２話|

&amp;bold(){【鶴賀学園高等部】}
|加治木ゆみ|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０１話&gt;卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|３話|
|東横桃子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|
|蒲原智美|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|３話|
|妹尾佳織||０話|
|津山睦月|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０３話&gt;津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]、[[第０６話&gt;黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|３話|

&amp;bold(){【高遠原中学】}
|夢乃マホ|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０７話&gt;爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|２話|
|室橋裕子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|

&amp;bold(){【平滝高校】}
|南浦数絵|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|３話|

&amp;bold(){【今宮女子高校】}
|門松葉子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０８話&gt;３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|３話|
|田中舞|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第２３話&gt;漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|２話|

&amp;bold(){【千曲東高校】}
|上柿恵|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第０５話&gt;ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]、[[第１５話&gt;暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|４話|

&amp;bold(){【プログラム担当官】}
|サンフランシスコ・ザフィケル|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]、[[第１０話&gt;中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]、[[第１３話&gt;失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]|３話|
|藤田靖子|[[第００話&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|１話|

&amp;bold(){【鹿老渡高校】}
|佐々野いちご|[[第１６話&gt;Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|

&amp;bold(){【姫松高校】}
|愛宕洋榎|[[第１６話&gt;Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|

----

※登場キャラクターには、描写が一定以上あるキャラクターなら全て含んでいます。 
　回想・死体・幻覚での登場ということもあります。 
　これは「好きなキャラクターが書かれてる話だけ読みたい」という人に合わせて作ったものだからです。 
　また、上記のような形で登場するキャラクターで、既に死亡話が投下されているキャラクターは、赤字で表記されています。     </description>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/13.html">
    <title>目次</title>
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    <description>
      **咲-BATTLE ROYALE-　目次

|第００話|[[開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|
|第０１話|[[卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]|
|第０２話|[[序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]|
|第０３話|[[津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]|
|第０４話|[[確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|
|第０５話|[[ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]|
|第０６話|[[黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|
|第０７話|[[爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|
|第０８話|[[３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]|
|第０９話|[[常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]|
|第１０話|[[中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|
|第１１話|[[慟哭、そして……-ﾅｷ-]]|
|第１２話|[[ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]|
|第１３話|[[失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]|
|第１４話|[[Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]|
|第１５話|[[暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|
|第１６話|[[Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|
|第１７話|[[廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|
|第１８話|[[Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|
|第１９話|[[のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]|
|第２０話|[[生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]|
|第２１話|[[チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]|
|第２２話|[[運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|
|第２３話|[[漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|
|第２４話|[[]]|
|第２５話|[[]]|    </description>
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  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/14.html">
    <title>ネタバレ目次</title>
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    <description>
      **咲-BATTLE ROYALE-　目次（ネタバレ）

|話数|タイトル|登場キャラクター|
|第００話|[[開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|加治木ゆみ、藤田靖子、サンフランシスコ・ザフィケル、その他全員|
|第０１話|[[卑怯者-ｻｲｺﾛﾏﾜﾚ-]]|加治木ゆみ、沢村智紀|
|第０２話|[[序盤戦-ﾄﾝｲｯｷｮｸ-]]|片岡優希、国広一|
|第０３話|[[津山の夜-ﾍﾞﾀｵﾘ-]]|津山睦月、文堂星夏|
|第０４話|[[確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|井上純、[[原村和]]、須賀京太郎|
|第０５話|[[ノーガール・ノークライ-ｱﾝﾊﾟｲ-]]|上柿恵、[[宮永咲]]|
|第０６話|[[黒い海-ﾄﾋﾞ-]]|津山睦月、文堂星夏、ハギヨシ|
|第０７話|[[爆弾が落っこちる時-ｱｸﾏﾁ-]]|竹井久、夢乃マホ|
|第０８話|[[３色の夜明けに-ｻﾝｼｮｸ-]]|蒲原智美、南浦数絵、門松葉子|
|第０９話|[[常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]&amp;br()[[そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--&gt;常勝の風越に暗黒期をもたらした女の子が、運命的女の子と出会う。そしてその子のために、バトルロワイアル脱出するために頑張る話-ｲｯﾂ--]]|池田華菜、染谷まこ、龍門渕透華|
|第１０話|[[中盤戦-ﾄﾝﾆｷｮｸ-]]|加治木ゆみ、沢村智紀、&amp;color(blue){サンフランシスコ・ザフィケル}|
|第１１話|[[慟哭、そして……-ﾅｷ-]]|片岡優希、国広一|
|第１２話|[[ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]|池田華菜、龍門渕透華、&amp;color(blue){片岡優希}、&amp;color(blue){国広一}、ハギヨシ、&amp;color(red){染谷まこ}|
|第１３話|[[失われた世界-ｸｽﾞﾃ-]]|上柿恵、宮永咲、&amp;color(blue){サンフランシスコ・ザフィケル}|
|第１４話|[[Ｖやねん！透華ーズ-ｽｯﾀﾝ-]]|片岡優希、国広一、龍門渕透華、ハギヨシ、福路美穂子|
|第１５話|[[暗闇に火をつけろ-ﾄﾞｳｺｳ-]]|上柿恵、宮永咲、南浦数絵、門松葉子、蒲原智美|
|第１６話|[[Re:START-ｾﾞﾝｺｸﾀｲｶｲ-]]|佐々野いちご、愛宕洋榎、姫松高校一同、鹿老渡高校一同（※オリキャラ）|
|第１７話|[[廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-]]|池田華菜、&amp;color(blue){龍門渕透華}、&amp;color(blue){ハギヨシ}、&amp;color(blue){福路美穂子}、&amp;color(blue){原村和}、&amp;color(red){染谷まこ}|
|第１８話|[[Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-]]|天江衣、久保貴子、&amp;color(red){井上純}|
|第１９話|[[のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]|原村和、龍門淵透華、福路美穂子、国広一、片岡優希、ハギヨシ|
|第２０話|[[生きて帰ろう、皆一緒に-ﾊｲﾔﾏｸｽﾞｼ-]]|原村和、龍門淵透華、福路美穂子、国広一、片岡優希、ハギヨシ|
|第２１話|[[チェインスター-ﾘｭｳﾓﾝﾌﾞﾁﾄｳｶ-]]|龍門渕透華、国広一、片岡優希、ハギヨシ|
|第２２話|[[運命の輪-ﾀﾞｲｼｬﾘﾝ-]]|国広一、片岡優希、ハギヨシ、&amp;color(red){龍門渕透華}|
|第２３話|[[漆黒の意思-ﾁｮｳｺｳ-]]|田中舞、原村和、福路美穂子|
|第２４話|[[]]||
|第２５話|[[]]||


※登場キャラクターには、描写が一定以上あるキャラクターなら全て含んでいます。
　回想・死体・幻覚での登場ということも、声のみの登場ということもあります。
　これは「好きなキャラクターが書かれてる話・出ている話なら読みたい」「死後も含めて追跡したい」という人に合わせて作ったものだからです。
　また、上記のような形で登場するキャラクターで、既に死亡話が投下されているキャラクターは、赤字で表記されています。
　同様に、声のみの登場キャラクターは青字で表記されています。    </description>
    <dc:date>2014-01-15T00:50:15+09:00</dc:date>
    <utime>1389714615</utime>
  </item>
    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/43.html">
    <title>Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/43.html</link>
    <description>
      **第１８話　Stay young-ｷｬﾝﾄﾞﾝﾎｰ-

天江衣は一人だった。
より正確に言うと、彼女の心はずっと独り法師だった。

ずっとと言っても、６年前に両親を亡くしてからのことである。
それでも齢１６の少女にとって、６年とは無限に等しい長さであった。

――とはいえ、物理的に独りだったわけではない。
確かに家では隔離をされ、学校では友達一人いなかった。
けれども家には、従姉妹の龍門渕透華や執事のハギヨシ、そしてメイド達がいた。

しかしそれでも、衣の心はずっと独り法師だった。
ハギヨシやメイド達が自分に優しくしてくれるのは、それが仕事だからだ。
国広一ら友人達も、透華が衣の友達になるように頼んでくれただけである。
要するに、そういう理由で友達をやってくれているだけの間柄。
その透華も、優しかったが従姉妹の域を出ていない。

所詮自分は煢独なのだ――そう、ずっと思っていた。
麻雀をしない自分なんて、誰からも必要とはされないのに、誰も自分と麻雀を打って楽しいとは思わない。
そんな自分は、どこまで行っても孤独なのだと、ずっとずっと考えていた。

「純……？」

でも、違った。
衣は独りなんかじゃなかった。

――――じゃあ俺たちは友達じゃないってのかよ。

切っ掛けなんて関係ない。
そう言ってくれた。

「純……」

ずっとずっと傍に居てくれた大切な人達は、家族であり、ちゃんと友達だったのだ。
なのに、衣は、ずっと彼女達のことを疑っていた。
どうせ友達ではないのだと不貞腐れて、どこか距離を取っていた。

「何……やってるんだ……」

ようやく、友達として新たなスタートを切ったのに。
大事な友達として、接し始めたところなのに。
殺し合いなんてふざけきったイベントで、全てをぶち壊されてしまった。

「純……」

この殺し合いの場において、衣は初めて物理的に独り法師になってしまった。
いつもそばに居てくれたハギヨシですら傍にいない、完全無欠な独り法師。

それでも心は独り法師には程遠かった。
自力で家族を、友達を探すべく、山の中を探索して歩いた。

暗くて誰も見つけることが出来なかったが――
こうして、目立つ建物の一つ・学校へと辿り着いたのだ。

「起きろ……」

そして、そこに会いたい人は居た。
ここに辿り着く前に、定時放送で名前を呼ばれた唯一の家族――井上純。
それは、家族の死を意味していた。

両親が死んだあの時と同じ。
死んだとだけ伝えられ、実感の湧かぬまま時だけが過ぎていく。
そして徐々に、喪失感に心を蝕まれるのだ。

「純っ……！」

ふらふらと、さまよった。
そして辿り着いた学校。
そこで、再開してしまった。

冷たくなった、家族と。

「う……うわああああああああああ」

純の体に縋りつく。
濁ったその目は天井に向けられており、今は何も映していない。
逞しい肩の間に銀色の矢が生えており、その付け根からは赤い塗料が流れ出ていた。

完全に、死んでいた。

目の当たりにした家族の死体に、実感が一気に襲い来る。
涙と声が止まらなかった。

危険なことは分かっている。
それでも。
友達の、家族の死に、泣かずにはいられない。

「純……純っ……！」

――――かたすぎんだよおまえは。

甘えられない自分に対し、優しく言葉をかけてくれた。
皆が本当の家族に、友達になれたあの日あの時。
真っ先に自分を見つけてくれた人の、優しい言葉が頭の中で何度も流れる。

――――少しは自分をダマせよ。

もう、あの言葉は聞けないのだ。
頭の中で、記憶を頼りに流すだけ。
本人からは、二度と聞けない。

「嫌だ……嫌だっ……！　純っ……純！」

年上だから甘えられないとか、そんな理屈はかなぐり捨てる。
自分をダマして、思いっきり甘えるから。
素直な気持ちを伝えるから。

だから、だから――――

「目を開けろぉっ……純……！」



「諦めろ。そいつはもう、死んでいる」



「な――――！？」

不覚。
危険なのは分かっていたのに。
接近を許してしまった。

「お前が……純を殺したのか……？」

血にまみれた衣服を纏う女性は、ボーガンを手にしている。
それをこちらに向けていた。

「……もしそうなら、どうするんだ。殺すか？　私を」

もうすっかり明るくなった日差しの差す血塗れの廊下。
その向こうに立つのは、スーツ姿の女性。
彼女は高校生ではない。
風越女子高校でコーチを務めている。

名を、久保貴子といった。

「……どうも、しない」

怒りは、ある。
けれど、立ち向かおうとは思わなかった。
武器を持っていないというのもあったけど。
それ以上に、怒りに任せて突っ込んで死ぬだなんて死に方したら、皆に合わせる顔がないから。

「だから……聞かせてほしい。何で、殺したんだ……？」

純は、人を殺すような奴じゃない。
襲いかかるような悪い奴じゃない。
なのに何で、殺したのか。
それだけが、気になった。

「……そういうルールだろう、これは。殺し合いだ。
　お前は、どうする気でいるんだ？　ただ座って泣いているだけか？」

そういう、ルール。
確かに、これは殺し合いだ。
殺さなくちゃ、殺される。
だけど――

「……衣は……断固としてこんな巫山戯た催しには乗らないっ……！」

ようやく、分かったんだ。
衣にも友達が出来るということが。
世界は、こんなにも楽しいということが。

「だけど……衣は家族をもう失うつもりはないし……誰も死なせたくない……」

だから、殺さない。
だけど、逃げない。

「衣は……立ち向かう……黙って泣くなんて無様は決して晒さない……！」

死んでしまった、純のためにも。
何もせずに、死んでしまうなんてできない。

「だから――お願いだ。そのボーガンを下ろしてくれ」
「…………は？」
「衣は戦いたくなんてない。戦わせたくなんか無い。
　だから――言葉で、立ち向かう。お願いだ、武器を下ろしてくれ」

純の脇に膝をついたまま、頭だけをゆっくりと下げる。
所謂『土下座』のポーズだ。
金色の髪の毛を、純の血が汚していく。
それでも気にせず、額を擦り付け続けた。

「……具体的に脱出案でもあるのか？」
「…………ない」
「それで、殺し合いに乗った奴を止められると思っているのか？」
「厳しいことは、分かっている」

止めた所で、今のままでは未来がない。
全員仲良く首を飛ばされるのがオチだ。

分かっている、そんなことは。
それでも。

「だからといって、忍び難きを忍ぶつもりは毛頭ない……
　可能性が極小だからと言い訳をして武器を手に取るくらいなら、衣は衣の立ち向かい方をして死にたい」

死ぬ気は、ない。
だがそれ以上に、殺し合いをする気はない。
どちらかを選べと言われたら、衣は死を選ぶつもりだ。

そのくらい衣は殺し合いというものが憎かった。
両親を失った時の喪失感を皆に与える殺し合いが憎かった。
自分から純を奪った殺し合いが憎かった。

手を染めた本人よりも、殺し合いというものそのものが、憎かった。
そして、そんなものが存在していることが、たまらなく悲しかった。

「何度でも、言う。お願いだ、衣に力を貸してくれ」
「…………」
「衣の裏切りが怖いなら、手を撃ってくれて構わない。足でもいい。
　痛いのは嫌だけど……それでも、殺し合うよりずっといい」

そう言って、顔を上げる。
瞳に映った久保の顔が、僅かに笑みの形を作った。
それも一瞬で、すぐにまた仏頂面へと戻される。

「お前の気持ちはよく分かった。安心しな……私は殺し合いに乗っていない」
「え……？」
「そいつを殺したのは私じゃないと言ったんだ」

言うと、久保はボーガンを下ろした。
そして顎で窓の方を指し示す。
それから、続けた。

「このボーガンはそこの木に括りつけられてたやつだ。
　恐らく……そいつは罠にかかって命を落としたんだろう」
「罠……」

衣も、既に罠には引っかかっている。
足首にうっすら滲む血液は、純の亡骸に駆け寄ろうとして糸に引っかかった際生まれたものだ。
おかげで純まで辿り着くのに苦労させられた。

「それと……トイレで一人死んでいた。須賀、という奴だろうな」
「……そう、か」

胸が痛む。
放送で呼ばれていた名だし、会話もしたことない相手だ。
それでも、きっとその友人は純を失った自分くらい悲しんでいるだろうから。
友を知った衣にはその辛さが分かるから、誰かの死がとても悲しく感じられた。

「須賀の方もボーガンだ。あっちはトラップでも何でもなく殺されていた。
　……このボーガンの矢は、その死体から回収させてもらったものだ」
「…………」

つい、反射的に嫌な顔をしてしまう。
あまりに露骨だったことに、しまったと衣は思った。
しかし久保は、気にする様子もなく淡々と言葉を続けた。

「ボーガンは残していったが、矢は全部持っていかれていたからな……
　恐らくどこかで破棄されているんだろう」
「まぁ、利用されたら困るだろうからな……」
「だから、死体から矢を回収せざるを得ない。今はまだ二本だけだ」

そして、言った。
衣にとって、残酷な一言を。

「だから、次はソイツから回収する。嫌な光景だ、向こうを向いていろ」
「なッ……！？」

死体を、蹂躙する。
要するに、そういうことを言っていた。

「や、やめろ！　こら！」
「私には武器がいるんでな……悪く思うな」
「放せ！　純を放せぇ～～～～っ！」

膝を付くと、久保は矢に手をかけた。
纏わり付く衣を全く意に介さず、グリグリと矢を引き抜いていく。
純の血でてらてらと光る銀の矢が抜けた穴から、再びどろりと血が流れ出した。
その光景に、衣は顔をくしゃくしゃに歪める。

純の身体が、冒涜された。

そんなような気がして。
思わず涙が零れ落ちた。

「……耐えられないか？」
「…………」
「安心しろ、それが普通だ」

ぽたぽたと床に涙が落ちて行く。
しゃくりあげても、なかなか止まってくれなかった。

「だが、悪いな。
　――私は普通じゃないんだよ」

ポケットから、久保はハンカチを取り出す。
それを衣に差し出すことはなかった。
血塗れの矢尻をハンカチで拭い、血液を落とす。

「だから――ここでサヨナラだ。同行なんて無理だろう」

久保は、大人だ。
生き残るために、死体から無理やり矢を引き抜いている。
それで服が血塗れになるのも厭わない、冷静な“大人”だ。

分かっている。正しいのは久保の方だと。
それでもそうすぐ割り切れるほど衣は大人ではなかった。
けれどもそれを理由に対立してしまうほど、衣も幼くはない。

「そんな顔をするな。
　首輪を止めた時互いに生きてりゃまた会える」
「でも……ひっぐ」
「……あんまグズグズしてんじゃねーぞ。
　この程度で下向いてて、言葉で立ち向かうだなんていう最高難度のことが出来るか」

その言葉にハッとなる。
そして、涙を拭い、衣は言った。

「大丈夫だ、もう泣かない。純のためにも、死んでしまった皆のためにも」

その目に確かな力強さを宿して。

「……いいだろう。こいつをやる」

そう言って、久保は何やら四角い黒い物体を差し出す。
それは、小型の機械のようだった。

「これは……？」
「一言で言えば、首輪探知機だ。
　こいつがあれば、参加者の位置がわかる。
　先手を取れるようになるし、説得もしやすいだろうよ」

現に久保は、探知機を使いこの学校までやってきた。
そこで純の死体を見つけ、エリアを拡大し京太郎の死体も見つけた。
純の体の矢を真っ先に引き抜こうとしなかったのは、潜んでいるもう一人の罠という可能性を考慮して先に確認に行ったからである。
衣の接近に気が付いたのも、探知機のおかげだ。

「何で、衣に……？」
「見たところ、丸腰だからな」
「そうじゃなくて……どうして衣にそこまでしてくれるんだ？」

衣の問いに、久保が小さく舌打ちする。

（施しが、些か露骨すぎたか。）

観念したかのように、久保が言葉を発する。
嘘を吐いても仕方があるまいとでも考えているのだろう、その声色に、嘘は感じ取れなかった。

「お前は……あの人のお気に入りだったからな」
「あの人……？」
「……気にするな」

聞いたところで、衣にはよく分からなかった。
だけど、これだけは分かる。

「理由は、とりあえず分かった……でも、衣がそれを貰うわけにはいかない」

探知機は、自分が貰うべきではない。

「あ？　正気か？　こいつがあればお前の目的は達成しやすくなるんだぞ？
「だけど……それをすると、お前が死にやすくなってしまうじゃないか」

いくら純の死体を冒涜したとはいえ、衣は久保に生きていてほしかった。
少なくとも久保は敵ではないし、こうしてこちらを想ってくれてる。
そんな人間を、自分のせいで危険な目にはあわせられない。

「それに……衣はまだ何も出来ていない。
　何の実績も上げてない者が、依怙贔屓で貰っていいようなアイテムではない。違うか？」
「…………」
「第一、それはきっとお前の方が上手く使いこなせるからな……
　衣は、その申し出を固辞させて貰う」

衣の言葉に、久保は少々苛立ったように「いいのか？」と声をかけた。
衣は黙って首を上下にゆっくり動かす。
久保は、また少し憎らしげに舌打ちをした。

「バカが……そのせいで死んだら承知しねぇぞ」
「大丈夫だ、分かっている」
「……自信の根拠は？」
「無い」

呆れたのか、はたまた衣の確固たる意志に気圧されたのか、久保は衣から視線を外す。
そして、衣のアタッシュケースへと目を向けた。

「しかし、丸腰だが……中身は一体何だったんだ？」
「麻雀牌だ。高級なやつ。でも、こんな状況じゃ大ハズレだな」

苦笑いを衣は浮かべる。
しかし一方、久保はやや驚愕を顔に浮かべた。

「驚いたな……さすがというべきか……」
「どうかしたのか……？」
「お前は運がいい。ハズレどころか、大アタリだよその武器は」
「ふえ？」

衣には理解が出来なかった。
身を守れるわけでもない、戦えるわけでもない、そして誰かを救えるでもない――
そんな高級麻雀牌の、どこがアタリだというのか。

「これは、そもそも麻雀能力向上のためのクソ企画だ。
　１万人の中から選りすぐりの化物を選び出すための全国大会のシステムと同じ、異能者を見つけ育てるためにあると言ってもいい」
「……あまり全国大会と一緒にはされたくないな」
「……つまり、だ。ある一定の基準をクリアした麻雀力さえ見せつければ、生還の目はあるってことだ」

衣の指摘をスルーして、久保は言葉を続ける。
ふざけたことを、大真面目に喋っていく。

「過去にも、複数人で脱出した事例がある。
　一応、首輪が最後の一人と認識するまで殺し合う必要があるが……」
「それで、それでどうやって脱出したんだ！？」

過去の事例と聞いて、衣が食い付く。
是が非でも聞いておきたい内容だった。
過去の事例を知ることによって、説得の幅は広がるのだから。

「工学知識のあるヤツが、首輪を解除し、最後の一人が決まったように見せかける――それだけだ」
「なるほど……でも、それが麻雀牌とどういう繋がりがあるんだ？」
「そいつらは……麻雀で殺し合いを経験していた。
　この首輪には、上がりで相手に攻撃を与える擬似超人麻雀システムが組み込まれているからな。
　上がることで電撃を浴びせ、戦うことができるんだ」

冗談に聞こえるが、大真面目な話である。
衣は息を飲みながら、己の首輪にそっと触れた。
通電性の良さそうなシンプル・フォルムのその首輪は、確かに電撃を浴びせるにはもってこいの道具に思えた。

「それで……結論から言うと、そいつらはこっそり脱出することに失敗した。
　主催の船に忍び込んで取っ捕まったんだ」
「そ、それで……？」
「そこまで生き延びたハングリー精神や船に忍び込むだけの大胆さ、そして見つかってからもテンパらない肝の座りっぷり……
　そして何より麻雀対決で見せた異能麻雀の片鱗を買われ、全員帰してもらったんだ。
　合格点に達していたということでな」

にわかには信じがたい。
けれども、麻雀牌が支給されている以上、嘘だと断じることもできない。
そんな不思議な話だった。

「だからお前は運がいい。お前の腕なら、すぐに異能麻雀の才能も開花するだろう。
　いや、ひょっとすると、お前はすでに開花しているのかもしれない。
　そいつで麻雀を打っておけば、首輪の解除さえ出来たら帰宅が約束されたようなものだ。
　見つかっても、合格点だと言われて許されるだろうからな」
「……何かやけに詳しいが……何でなんだ？」

衣の言葉を右から左に聞き流し、久保は端末を弄る。
その画面には、いくつもの光点が映っていた。
拡大縮小機能を使い、上手く情報を収集していく。
バッテリーに限りがあるという点を除き、完全無欠のアイテムであった。

「……北西だ」
「え？」
「そこに、参加者が移動している。理由は分からないが……
　まあ、恐らく大きな音でも出しているんだろう」

光点の動きから、島で起きている事情を大まかに理解しているのだろう。
久保は更に言葉を続けた。

「私はコイツを片手にまっすぐ北西へと向かう。危険が当然伴うが、ま、コイツがあるんだ、何とかなるだろう」

そう言って、軽く探知機を掲げてみせた。

「当然出会った奴には声をかけていく。お前のことも伝えてやる」

その言葉は、衣と別れて行動する前提で語られている。
当然だ、さっきの件で相容れないと分かったのだから。
衣としても、それはとっくに理解している。

「……一緒に行くのは、やっぱり無しか？」

それでも、聞いた。
話し合いで全てを救うと決めたから。
無理だなんて決めつけて、話し合いを放棄する気はなかったから。
もう一度、聞いてみた。

「無理だな。生憎私は、もうお前ほど若くない」

だが――返って来た言葉は、淡々とした拒絶の言葉。
鋭かった瞳が、懐かしむような色を帯びる。
衣には、その意味が分からなかった。

「衣は子供じゃない！　もう立派な大人でもいい年齢だ！」
「……道を違えたってことだ」

はあ、とため息をついて、久保が言い回しを変える。
それで、衣もすんなり引き下がった。
本番の説得では、こんな簡単に引き下がったりしない。
だが今回は、すでに仲間となること自体には成功している。
相反する行動を選んだ人間相手に、『仲間にはなるが別行動』という妥協点を見つけたと言い換えてもいい。
これは、十分すぎる成果と言えた。
欲を出して揉めてしまい、時間を食うのは下策と言えよう。

「とにかく……地図を出せ。書きこんでやる」

衣は地図を取り出して、それから久保に手渡した。
身長差があるせいか、久保は屈むはめになる。
それがまた少し小馬鹿にされているようで、衣にはちょっと気に入らなかった。

「このルート――西にまず行くルートを、お前には行って欲しい」
「何かあるのか？」
「ああ……あんまり動いてない、だけども第一回放送後に少し動いた光点がある所だ」

久保は、己の地図に光点の大まかな位置をメモっていた。
そして、その移動経路もメモっている。
島全体を映すと光点の位置がアバウトになりすぎてしまうのが欠点だが、それでもこの情報は参考になるだろう。
そしてそのメモと現在の光点を照らし合わせ、ひとつの結論を久保は出している。

「こいつは恐らく、怯えているだけの参加者だ。
　だから基本動かないし、放送で死人が告げられたり近辺が禁止エリアになったらビビって少しだけ動く」
「そして、また留まる――と？」
「ああ。そいつの説得に行ってくれ。そういう奴の説得こそ、お前の選んだ立ち回り方の真骨頂だろ？」

断る理由などなかった。
確実に、怯えた少女とエンカウント出来るコースを辿れと言われたのだ。
恐らく、他の者とはエンカウントもし辛いコースでもあるだろう。
安全で、なおかつやりたいことを為せる道。
それを、提示されたのだ。

「……分かった。すまないな、私ばかり借りを作ってしまって」
「気にするな。それが大人の仕事だ」
「衣は……」

子供じゃない、子供扱いするんじゃない。
そう言おうとするも、先に久保に言葉を続けられてしまう。

「だが――もし、私に借りがあると思ってて、それを返したいと思うなら……
　ウチのを――風越の連中を、頼む」

その目は、真剣そのもので。
衣も、思わず言葉を止めてしまった。

「出来たらで、いい。無理して命を捨てることはない。
　だが、もしも出来そうなんだったら――仮に襲って来たとしても、見捨てずに説得してやってくれ」
「あ、当たり前だっ！　衣は誰も見捨てない！」
「そうか……頼んだぞ」

そう言うと、久保は玄関へと向かう。
ワイヤーを慣れた動作で跨いで行き、あっという間にゴールまで辿り着いた。

「そろそろ、行くぞ。時間が惜しい」
「あ、ああ！」

慌てて衣も後を追う。
そんな衣を待つでもなく、久保はどんどん先に進んだ。

「ぜ、絶対……絶対生きてまた会うぞっ……！」

このままもう別れる気だ。
そう悟り、衣は声を張り上げる。
その言葉に、返ってくる言葉はない。

ただ軽く挙げた手が、「ああ、わかった」と言ってくるようだった。






　☆　　★　　☆　　★　　☆






久保貴子が天江衣と早々に別れた理由は、彼女自身のエゴにあった。
衣とあまり居たくない、というのが本音だったのである。

（チッ……何て目ぇしてやがるんだ）

久保が気に入らなかったのは、衣の無垢で力強い目。
それは、自分がとうに無くしてしまったものだった。
そして――

（私も、あんな目をしていたのか？）

同じように『話し合いで解決しよう』なんて戯言を宣っていた、学生時代の自分自身と同じ目だった。
それはまるで鏡を見ているようで。
無力だった自分が思い出されて、何だか苛立ってしまうのだ。

「……くそっ」

だが――同時に、期待している自分もいる。
確かに衣は、自分と同じく何も出来ずに終わる可能性が高い。
だがしかし、衣の麻雀力ならば、自分では出来なかった形の“上がり”を見せてくれる――そんな気もしているのだ。

似ているからこそ、自分に成せなかったことをしてくれと期待してしまう。
それもまた、エゴなのだと分かっているけど。

（私はもう、“大人”なんだよ――）

もう、無邪気な瞳で全員揃って脱出なんて夢は見られない。
話し合いで片を付けようなんて言えない。

今の自分には、守るべきものが多すぎるから。
そのために、自分は手を汚さねばならない。
必要と有らば、悪にだってならねばならない。

だって自分は、“大人”なのだから。

（ウチの連中は無事だろうな……
　あいつ、ああ見えて繊細だし、ぶっ壊れてやしねーか……）

無理矢理に思考を切り替え、久保は再び移動を始める。
その目に探知機を映して。

（福路の奴もへこたれてそうだしな……ったく、面倒な奴らの保護者になったもんだ）

久保は、少しだけ後悔している。
最初の６時間を、探知機の使い方の実験や、光点の移動経路を書き写すのに使ったことを。
探知機のバッテリーをケチった末に、何名かとニアミスしたということを。
――まあ、ニアミスについては、車にでも乗っていたのか相手が予想以上のスピードだったということで、仕方のない側面もあったのだけれど。
それで、複数人で立て籠もっているのだと思った学校が比較的安全そうだと判断し、行き先にしたことを。

おかげで、無駄な時間を過ごしたせいで、教え子を一人死なせてしまった。

（貴女も、こんな気持ちだったんですか、キャプテン――――）

思い返すは、学生時代憧れていたキャプテン。
笑顔が素敵で、麻雀が強く、皆から慕われていた。
責任感の強さ故、何でも一人で背負い込む悪い癖があったけども。

（結局……私一人になっちまったな……）

キャプテンは、ずっとこの殺し合いに反対していた。
レジスタンスに入ったという噂を聞いただけで、しばらく音信不通になってしまっていたキャプテン。
再会したのは、額に入った写真とだった。
仲間を失った辛さを、たった三人の“生き残り”を失った悲しさを、藤田プロと二人で酌を交わしながら慰め合ったものである。

（……貴女も……先に逝ってしまうんですね）

その藤田も、今はもうこの世にいない。
今回の殺し合いに反対し、命を落としてしまった。
呆気無さすぎる幕切れ。
あの人は、殺しても死ななさそうだと思っていたのに。

（殺し合いに反対すればどうなるかなんて、分かりきっていたでしょうに）

それでも彼女は反対した。
それはきっと、衣という存在がいたからだ。

それほどまでに、大切なものだったのだろう。

（死ぬなよ、天江衣――お前は絶対、生きて帰す）

死んでしまった、藤田の分も。

決意を胸に、久保は光点を目指す。
この時久保はまだ知らない。
自分が到着できる時、すでに事態は大きくなっていることに。
穏便に済ませるには、少し遅いということに。



【残り２５人】

----

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|[[&amp;color(blue){対局開始}&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|天江衣|―|
|[[&amp;color(blue){対局開始}&gt;開幕-ｾｷｷﾞﾒ-]]|久保貴子|―|
|[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|COLOR(red):井上純|―|    </description>
    <dc:date>2013-12-10T01:12:24+09:00</dc:date>
    <utime>1386605544</utime>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/17.html">
    <title>廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-</title>
    <link>https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/17.html</link>
    <description>
      **第１７話　廃人一歩手前交差点-ﾁｰﾄｲﾂ-

膝を抱え込んだまま、鼻から下を足に埋める。
この目に生気は無いだろう。
虚ろな瞳は宙を映すが、頭の中には何ひとつ入ってこない。
『虚空を眺める』と表現するのが相応しいように思えた。
下唇を噛みながら、しかめっ面で駄々をこねた子供のように座り続ける。

私――池田華菜は、もうずっと長い間こうしていた。

（うう……）

私は、卑怯だ。そんでもって、どうしようもなく弱虫だ。
分かっている。そんなことは自覚している。
図々しくも開き直って歩み始める――それすら出来ない哀れな存在。
それが、今の私である。

（誰か……助けてよ……）

膝を抱える腕に一層力が篭る。
私は、最低な意味で図々しかった。
開き直ることさえ出来ずにいるくせに、救いを求めてしまっている。
そして、誰も救ってくれないことに、八つ当たりめいた感情を抱いているのだ。

――底抜けに明るいやっちゃのう。

思い出される、パーマヘアーの少女が浮かべた苦笑い。
メガネをかけたその少女――染谷まこが言っていた程、私は強い人間じゃなかった。
伏せた視界の隅に映る、染谷まこの細く白い手。
それを辿って視線を上げると、ぐったりとした染谷の姿が目に飛び込む。

『私は龍門渕高校副将！　長野のアイドル・龍門渕透華ですわっ！！！』

突如として響き渡る、謎の大声。
その声は、機械越し故に音割れを起こしている。

『片岡優希とはじめの言葉に共感し、馳せ参じましたわっ！』

龍門渕透華とは、少しの間だけだったがこの島で一緒に居た。
本当に“居た”だけで、何かを共にしたわけではないけども。

『ハギヨシも一緒ですわ！　ですから、皆さん、恐れないでくださいましっ！』

龍門渕は、強かった。
ハリボテの厚顔さと虚勢で生きてる私なんかとは違う。
龍門渕は、本当に自分を信じ、自信満々に派手な立ち振る舞いをしている。
本当にタフで、強くて、気高くて――良い意味で、図々しかった。
私とは、全然違う。

『一緒に考えれば、こんな状況チョチョイのチョイで打破できましてよ！』

それに彼女は、しっかり前へ進んでいる。
彼女は確かに、事態を好転させている。
そして何より、彼女は優しい。
私なんかにも、優しく手を差し伸べてくれた。

『……と、いうことです。依然変わらず、山頂で待っています』

これはきっと、この島の皆に向けたメッセージだろう。
普通に考えるなら、そう解釈できるメッセージ。

けれどもここで自惚れさせて頂くと、このメッセージは私に向けられたものだと読み取れる。
これは、皆に向けたと見せかけた私へのメッセージじゃないだろうか。
ついていくことができなかった、恥知らずのバカ女へのメッセージ。

『私達は、これからも定期的に声を届けていきますわっ！』

合宿や今回の件を経て、分かった。
龍門渕は、あんな風でいて優しい。
それも、物凄く優しい。

『ですから！　気が向いたらでいい、勇気が出たらでいい――』

だからこうして、私に語りかけてくれる。
私のことを、それこそ受け入れてくれようとする。
きっと龍門渕なら、私のことを許そうとしてくれるだろう。

『それからでもいいですから、是非私達の声を頼りにここまで来て下さいまし』

でも――私は、顔を上げられなかった。
一歩を踏み出す勇気がなかった。
踏み出そうにも、邪魔をするものがあった。

（…………龍門渕、無事に合流したんだ……）

それは、とても分厚く重たい板。
要するに、とてつもなく巨大な壁。

私と彼女の間には、大きな大きな壁があった。
その壁は、私の前にどんと立ち塞がっていた。
そして前へと進むことを邪魔してくる。


――その壁は、『人殺し』という名前であった。


（行けるはず、ないし……だって……私はもう……）

その壁の前に、私は阻まれてしまった。
壁を登ることはできたはずなのに、その勇気が出なかった。

いや――本当は壁なんてないはずなのに。
向こう側とこちら側には、どうにもならない壁があると思い込んでいる。
一歩を踏み出す勇気があれば、簡単にその手を取れるのに。

それでも。
分かっていても、その壁は消えてくれはしなかった。
今でも私の目の前で、どーんと腰を下ろしている。

（どうして……こんなことになっちゃったのかな……）

殺意なんて、これっぽっちもなかったのに。
なのに気付けば、人殺しになってしまった。
そんな奴が、受け入れられるはずがない。
そんな奴が、堂々と会いに行っていいわけがない。

（やり直したい……やり直したいよぉ……）

めそめそしてても誰も助けてなんかくれない。
分かっていても、そう簡単に止められるものではなかった。
刻一刻と時間が浪費されていく。

『皆さん聞こえてますか？　龍門渕透華ですわ』

そして再び、龍門渕の声が聴こえてきた。
龍門渕が言っていた、定期的な呼びかけだろう。
再び呼びかけが行われる程の時間を、無駄に過ごしてしまった。
そのことに、また少し自己嫌悪する。

『私達は山頂に居ますわ。共に殺し合いを打破しようと考える方は是非来て下さいまし』

時間が経てば経つほどに、龍門渕の元に行けなくなってくる。
頑張っている彼女に、合わせる顔がなさすぎて。
時間が経てば経つほどに、「今更のこのこ出ていけない」という気持ちが強まって。

『またしばらくしたら呼びかけますから、その声を頼りにやってきて下さいまし。それじゃあ――』

結局また、顔ひとつ上げられずに呼びかけを無視してしまった。
助けてほしい、受け入れて欲しい――
なのに差し出されたその手を、素直に握り返せない。

（私は、どうしたらいいんですか……）

うじうじしてても何にもならない。
県大会決勝戦でそう学んだ。
だけど、人殺しという重い原因の今回は、そう簡単に立ち直ることが出来ないでいる。

（助けてください、キャプテン……）

想った。
聖女のようなあの人のことを。

思った。
あの人なら、何があっても私の味方でいてくれるんじゃないかと。

でも――同時に、思った。
あの人にまで見捨てられたら、きっと心が折れてしまうと。

だから、積極的に探して回ることすら出来ないでいた。

『あーあー、聞こえまして！？』

キィンという雑音の後、再び龍門渕の声が流れる。
先程と比べ、あまりにも早すぎる呼びかけ。
何事か、と俯いたまま考える。
もしかして、何かＳＯＳだろうか？
そうだとしたら、私は彼女を助けに行けるのだろうか？

『新たに呼びかけに応えて下さった方がいらしたから、紹介しますわっ！』

なるほど、そういうことか。
国広一と会った時にそうしたように、新たな仲間が出来た時も逐一報告しようというのだ。
声が異常に弾んでいるのも、そういうことなら納得できる。
龍門渕は、着実にゴールに近付いているのだ。

『ほら……何か言ってあげてくださいまし！』

そう言う龍門渕の声が、ほんの少し遠ざかる。
おそらくは、新しい仲間とやらに拡声器を渡したのだろう。

『え……っと。これでいいのかしら？』

――予想通り、聞こえてきたのは、龍門渕とは違う声だった。

『そう、よかった……えっと、こんにちは』

恐らく龍門渕に聞こえていると言われたのだろう。
挨拶をしてくるその声は、少しばかりホッとしているようだった。

「…………っ」

しかし、どうでもよかった。そんなことは。
最初の一文字を聞いて以来、些事は頭に入ってこない。
それまで呼びかけはぼんやりとした頭で聞き流していたが、今では全神経を傾けている。
よぉく知った声を聞き、意識が覚醒したのだ。

『私は、風越女子高校の先鋒――』

弾かれたように、顔も上空に向かされた。
視線は真っ直ぐ、声のする方を向いている。
まるで、視線の先に求めるものがあるかのように。

『――福路美穂子です』

キャプテン。
私達の、キャプテン。
その声の主は、確かにずっと会いたかった人のもの。

『聞こえてる、華菜……？』

そしてその声は、確かに私の名を呼んだ。
「聞こえてるかな？」と言ったのかも知れないけど。
私の耳には、確かに、私の名前を呼んだように聞こえたのだ。

聞こえてます、キャプテン。
しっかりと、貴女の言葉は届いています。

『龍門渕さんから、話は聞いたわ』

息が、止まる。
まるで喉を絞めつけられたような感覚。

もし、もしもキャプテンが私を許してくれなかったら。
私は、私の心は、どうなってしまうのだろうか。

『皆も聞いてるから、あまり深くは言えないけれど……』

額に生まれた大粒の汗が、垂れ下がる眉を伝って頬へと垂れる。
抱き抱えた膝をぎゅうと握りながら、続く言葉を待った。

『私は、貴女の味方よ、華菜。何があっても』

その言葉は、とても短かったけれど。
それでも、分厚い聖書なんかよりよっぽど心の支えになるもので。
先程までとは違った意味での涙が目尻に溜まってきた。

『辛いなら、その辛さを私にも分けてほしい。
　苦しいなら、せめてその苦しさを私にも背負わせて欲しい。
　悲しいのなら、その悲しさが和らぐように、一緒に……隣に居てあげたい……』

嬉しかった。
キャプテンが、そこまで言ってくれることが。
キャプテンが、自分を受け入れてくれたことが。

申し訳ないけれど、龍門渕のそれとは受ける影響が全然違う。
龍門渕の慰めには、『共犯者からの慰め』という側面があった。
龍門渕に許されても、清澄の連中に許されなければ意味が無いという想いがあった。

けれど、今は。
許されたというだけで、前を向くことが出来る。
愛しい人に許されるというだけで、こうも重荷が軽減されるものなのか。

――キャプテンさえ居てくれたら、世界中が敵に回っても生きていける。

そんなことを思わせてくれた。
そんなことを、思わせてくれる人なのだ。

『かつて貴女がそうしてくれたように、私も貴女の傍で貴女の辛さを分かち合いたい』

ゆっくりと、立ち上がる。
飛び上がって走り出せるほど、気分は上昇していない。
それでも、ようやく立ち上がることが出来た。

『だから――ここに来て、華菜。また、貴女のその顔を見せて』

よろよろと足を前に運び始める。
それは“歩み”などという上等なものからは程遠い、腐肉か何かに誘引されるがままヨロヨロと動く亡者のそれのようだった。
ぎこちない足取りで、一歩一歩動いていく。

『待ってるわ――』

その言葉で、キャプテンの言葉は締め括られた。
待っている、という言葉が、頭の中で何度も再生される。
キャプテンは、私なんかを待っていてくれているのだ。

（染谷……）

視界の端に映り込む、物言わぬ骸と化した染谷まこ。
先程まで目を合わせることも出来なかった染谷の顔を、今なら見ることが出来る。
とは言っても、未だに恐る恐るだけど。
それでも、キャプテンの言葉のおかげで、少しだけだけど、向きあう勇気が持てた。

（ごめん……ほんと、ごめん）

そして、ありがとう。
こんな私を、仲間だって思ってくれて。

「……行くね」

この言葉は、声に出した。
ある種の宣誓である。

そして、ゆっくりとだが、歩き始めた。
見えなくなるまで、染谷の死体を振り返り続ける。
やがて見えなくなった頃に、再び拡声器から声が聴こえてきた。

『……と、いうことでしてよ』

どうやら、拡声器が再び龍門渕の手に渡ったらしい。
キャプテンの『私からは、以上です』という言葉からしばしの間が空き、再び声が聞こえてきた。
拡声器を受け取った龍門渕は、軽快に言葉を続ける。

『これで私達は私、はじめ、ハギヨシ、片岡優希に福路美穂子の５人組となりましたわ』

殺し合いの参加人数を考えると、かなりの大集団と言えよう。
そこに私が加われば、数の力で色々できるかもしれない。
私にも力になれるかもという希望が、足取りを軽くする。
依然表情は堅いままだが、それでも胸中は先程までと打って変わって明るいものとなりつつあった。

『山頂に変わらず居ますので、是非私達と力を合わせて脱出しましょう！
　どなたでもウェルカム、学校問わず待ってますわっ！』

キャプテンに会える。
それだけを原動力に、ただ足を動かし続ける。

人殺しの私なんかが、受け入れられるのだろうか。
そんな不安が、足取りを重くしてくる。

しかし――

『それと……片岡優希と、話をしましたわ』

龍門渕の声のトーンが落ちる。
それで、悟った。
きっと今から発する言葉は、先程キャプテンがそうしたように、自分に向けたものなのだと。

足取りが一層重くなる。
意識のほとんど全てが、龍門渕の声へと傾けられていた。
それでも、無意識の内に足は前へと運ばれていく。

顔色の悪さもあって、歩みを止められない亡霊兵士か何かのように見えることだろう。
それ、いっちにー、いっちにー。右、左、右、左。
さあ、何も考えずに足を動かしましょう。

『まだ、気持ちの整理が出来ていないそうです』

当たり前だ。
慕っていた先輩を失ったのだ。
そして――そして、自惚れの類でなければ、合宿ではトップクラスで仲良くやっていた相手である私が下手人なのだ。
簡単に、割り切れるわけがない。

『でも――許したい、と言ってましたわ』

何を、とは言わなかった。
私以外にも聞いている人がいるだろうし、私に配慮しているのだろう。
私の名前すら出していない。
けれどそれは、どう考えても私へのメッセージ。

『ですから――どうか、逃げないで下さいまし』

逃げたかった。
怖かった。
染谷のことを責められるのが、たまらなく恐ろしかった。

けど、今は。

『――待ってますわ』

今でも怖いし、逃げ出したい。
足はガクガク震えるし、皆に会うのを想像すると胃液が込み上げて来そうになる。
上手く合流出来るように、何度も何度も頭の中でシミュレートし、その度にマイナス思考に陥っているくらいだ。

それでも歩みは止まらない。
そこに確かに、希望が存在していたから。
許しという希望は、確かに大きな輝きを放っていたから。

その輝きは、決して幻なんかじゃない。
手の届く、確かな存在なのだ。
歩みを止めるわけがない。止まるわけがない。

――そう、思ってたのに。

「…………？」

ぷわぁん、という機械音。
よく知っている。
もう何度も耳にした、拡声器の発する音だ。

『あーあー、皆さん聞こえまして！？』

もう呼びかけが行われる時間だろうか？
随分短い間隔だと思った。
ただ単に、私が全然進んでいないだけだろうか。
今の徒歩速度の遅さを考えると、ありえない話じゃなかった。

『幸いなことに、更に仲間が増えましたわっ！』

しかし実際には、臨時呼びかけだったらしい。
龍門渕のその声は、先程以上に浮かれポンチだ。
龍門渕の連中でも来たのだろうか。
そんなことを考えながら、声を頼りに更に歩を進めていく。

『これで６人、全員が手を取り合える未来も随分近付きましたわ！』

参加者の五分の一が集まっている。
確かに、手を取り合える未来は近付いている気がした。
――手を取り合えるのなら、だけども。

『その子も入れたら、七人になるのかしら』
『正確には六人と一匹、ですわね。七人と言った方が、七人の侍みたいで格好良いですけど』

小さく、キャプテンの声がした。
恐らく、龍門渕への冗談を拡声器が拾ったのだろう。
その冗談に、龍門渕が冗談を返す。

しかし、私に取っては、冗談ではない話だった。

『それじゃあ、代わりますわ』

手を取り合いたいとは思ってる。
キャプテンにだって勿論会いたい。
でもまだ怖くて、会える気がしない奴らがいる。
今行けるのだって、あのタコス娘が私を許してくれたからだ。

『……皆さん、聞こえていますか？』

キャプテンと龍門渕の、あのやりとり。
何か分からないが、一人とカウント出来るような連れがいるということだ。
そしてあの言い草からすると、それは人間の類じゃない。
人ではない生命体のような見た目の何かを持っている者――
その条件で思い浮かぶ参加者は、ただ一人。

『宮永さん、聞こえていますか？』

背中が汗でぐっしょりと湿る。
息が荒くなってきた。
この声は、もう、間違いない。

『私です――[[原村和]]です』



足が、止まった。



【残り２５人】

----

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|[[第０４話&gt;確実に、堅実に-ﾃﾞｼﾞﾀﾙ-]]|COLOR(blue):原村和|[[第１９話&gt;のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-]]|
|[[第１２話&gt;ネガティブハート-ｶﾍﾞ-]]|COLOR(red):染谷まこ|―|    </description>
    <dc:date>2013-12-10T00:54:35+09:00</dc:date>
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    <item rdf:about="https://w.atwiki.jp/sakibr/pages/46.html">
    <title>のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-</title>
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    <description>
      ＊＊第１９話　のどっちの論理ショー-ﾎﾝｲﾂ-

「私は変わらず待っていますわ」

そう言って、龍門渕透華は拡声器の電源を切る。
そんな光景を眺めながら、[[原村和]]は手にした拳銃を弄んでいた。

ブローニング・ハイパワー。
ＦＮハイパワーとも呼ばれるこの拳銃は、装弾数が１３+１発と非常に多いのが特徴である。
シングルアクション自動拳銃の集大成とも言える武器であり、女子高生が扱うにはやや荷が重いように感じられた。

「落ち着かない？」

そんな和の姿は、不安でいっぱいに見えたのだろう。
共に見張りをしている、福路美穂子に声をかけられた。

「皆が心配よね……でも、焦っても仕方がないわ」

実際――和に不安はあった。
こうしている間にも、大切な友達の一人が危険な目に合っているのかもしれないのだから。
ここに居たというもう一人の友人も、離れた所で休んでいるためまだ再会は出来ていない。
もっとも、後者については、友人を休ませるため、休憩中と聞いた和が自ら行くのを自粛した結果なのだけど。

「その通り！　いつも通り冷静に、この状況を打開する策を考えるのが一番ですわ」

拡声器を手に、透華が無い胸を張ってそう言った。
透華のその言葉も、美穂子の口にした言葉も、和には薄っぺらいものに聞こえた。
根拠のない、虚しいだけの熱い言葉。
それに打ち震えられるほど、和のおつむは悪くなかった。
冷静で、知的。それ故に、二人の言葉には嫌悪感すら抱いてしまう。

（そんなに言うのなら、何か打開策を提案してみたらいいのに）

口には決して出さないが、心の中でそう毒づく。
無意味に苛立つのは、神経が磨り減っている証拠である。
いつどこで襲われるか分からないということは、予想以上のストレスだった。
警戒しすぎたせいか、学校からここまで移動するのにも相当な時間を要している。

「そういえば、さ……あんまりこんなこと言いたくはないんだけど……」
「なんですの、はじめ」

ストレス耐性は高い方だと思っていたが、どうやら自分を買いかぶっていたらしい。
和は密かに自分自身の予想以上の脆さに嘆いていた。
透華のように何も考えていないのではと思えるような人間の方が、ストレスには強いということなのかもしれない。
――もっとも、透華も何も考えていないわけではないのだけれど。

「どうしようか、武器の分配」

和にとって、国広一は有り難い存在だった。
透華と比べ、現実的な意見を口にしてくれる。
楽観的な透華の良い右腕という感じだ。
それ故に、味方でいる内はいいものの、敵にまわすと厄介だとも思っている。

「確かに……銃の数は足りませんね」

言って、和はその場の皆の武器を見渡す。
和の手には、透華に貰ったブローニング・ハイパワーが。
それをくれた透華はというと、拡声器しか持っていない。
一番真面目に見張りをしてくれている一は、会った時からずっとＳ＆Ｗ３５７マグナムを握り締めている。
そして、美穂子は――

「私は、別に無くても……」

その手に、他の誰のそれよりもしっかりした黒い塊を抱えている。
他のものの銃と違い、フォルムも長方形の箱に取っ手を付けたような形となっていた。

それを、人はサブマシンガンと呼ぶ。

「問題は、それを誰が持つかですよね」
「確かに……まあ、普通に考えたら揉めるよねえ」

一の言うよう、普通に行けば揉めるだろう。
サブマシンガンなんてものは、おそらくこの殺し合いの場じゃ最強威力を誇る武器。
それが手に入る機会をみすみす逃す阿呆はいない。

「私も、別にいりませんけど」

――と思っていたのだが、透華はどうやら阿呆に属するイキモノらしい。
平然と、この最強装備の入手を辞退してくれた。
真っ先に手放すことを容認した美穂子といい、ここには阿呆が多いらしい。
拡声器なんてものに応える連中だ、それも無理は無いのかも知れない。
何としてでも手に入れたい和としては、それは大変有り難いことである。

「というか、それは福路美穂子に持たせていればいいんじゃありませんの？
　私の武器を原村和に譲るだけ、とした方が、分かりやすいと思うんですけど」

しかしながら、透華のこの提案で、その入手は遠ざかるはめになった。
確かにあのサブマシンガンは美穂子が持って来たものだ。
美穂子が持つのが一番妥当と言えるだろう。

「……それだと透華が危ないよ」

この決定に不服なのは、和だけではないようだ。
一も、この決定には反対の意を示す。
もっとも、サブマシンガンが欲しいから反対したい和と違い、一は純粋に透華を危険に晒したくないという想いから反対しているのだけど。

「それなら、ボクが手ぶらになるよ」

そう言って、一は自身の手にしていたＳ＆Ｗ３５７マグナムを差し出した。
しかし、透華は受け取らない。

「大丈夫ですわ。こんな殺し合いなんかで、この私が命を落とすはずがない！
　それに――私は皆を信じると決めましたわ。
　なら、そんな無粋なものは持たない方がいい」
「でも……」
「それに、万が一危機が迫っても、貴女が助けてくれるんでしょう？」

言いながら向けられた微笑みに、一は顔を赤くする。
よくもまあ、そんなことを自信満々に言えたものだ。

「そりゃあ、守るけど……」
「なら、ノープロブレム！　私ははじめを信じてますしね」

そう言われると、もう一には言い返しようがなくなってしまう。
一は、理解しているのだ。
ピンチが訪れた時、自分が他の者を全て見捨ててでも透華を助けるだろうことが。
そして、その事を透華も分かっているのであろうということが。
だから、他の二人のどちらかの武器を透華に持たせるなんてことは画策しない。
上記のことを理由にされ、辞退されるのが目に見えてるから。
一としては、無駄なことをして透華の評価を落としたくはない。

「何か、悪いわ。私なんて非力だし、上手く扱えるか分からないのに」
「それ、ウージーだっけ？」

申し訳なさそうに言う美穂子に、一が銃の名前を聞く。
一は透華達と行く海外旅行で射撃の経験があるらしく、この中では一番銃のことは詳しかった。
それでも、そこらのミリタリー同好会の人間よりもお粗末な知識だけれども。

「ええ。ウージー９ミリサブマシンガンって書いてあったわ」
「確か、狙いを付けるのは比較的容易だったはずだよ」
「説明書にもそう書いてあったわ。けど……」

一拍置いて、困ったように眉を下げて美穂子は言った。

「私、機械の扱いは苦手なの」
「いや、機械っていうか……うん……」
「まぁ……容易と言っても、私達はあまり肉体派じゃありませんからね。
　コントロールが効かなかったときに被害が増大しそうですし、ここぞと言う時以外は使わない方がいいかもしれませんわ」

確かに、銃の反動は思っていたよりも大きい。
和自身、それは試射で痛感していた。
自身の位置を知らせる行為になるためあまり数を撃てなかったが、その数回で銃の扱いの難しさは痛感している。
男性であるハギヨシや、射撃経験のある一には、大きなアドバンテージがあると言ってもいいのではないか。

「試し撃ちをしてみたらどうですか」

だから、和はウージーを欲したのだ。
透華にとっては、仲間を誤射する危険性のある危ない武器でも、
ほとんどの者を撃ち殺す気の和にとっては、狙い付けが曖昧でも仕留める可能性を秘めた有り難い武器なのだ。
よって、美穂子が「扱えない」と判断して手放すように、試射を提案してみる。
もっとも、期待はあまりしていなかったけど。

「それは出来ませんわ。そんなことをしたら、怯えながらこちらに来ていた方が逃げてしまうかもしれませんし」

そして案の定、これは透華に却下された。
再び、場を沈黙が支配する。
和は、一旦サブマシンガンの入手を諦めることにした。
親友である片岡優希がここに居る以上、どの道すぐには手を出せないのだ。
ゆっくり懐柔していけばいい。
それに――自分には、上手く隠したコルトパイソンという切り札もある。
今は、機を窺おう。

「…………」

誰も言葉を発しない。
それぞれが、何かを考えている。
美穂子は俯き、一は外を警戒している。
各々が、腹に一物抱えているように見えた。
ただ、目の前に座る透華だけが、沈黙を気まずそうに視線をうろつかせている。

（さすがに……むやみに言葉を発するほど愚かではない、ということですか）

和は、そんなことを思う。
実際は美穂子が来た後で、気まずい沈黙を打ち破るように透華が一人で喋りまくってたのだが、一に注意されたのだ。
それくらい、透華の声は大きく、周囲を危険に晒すものだと言える。
透華自身は、駆けつけた人がここを見つけやすくなるからと主張したのだが、その駆けつけた人の足音が消されるという意見の前に封殺された。
結局、透華は渋々ながら口を閉じることとなる。
ゴリ押しすることもできるが、理が相手にある状況で立場を笠に好き放題をするほど、透華は落ちぶれていない。

「はぁ……はぁっ……！」

しかし――かつての透華と同じく、静かに出来ない者はもう一人いる。
その少女は、息を荒げてやってきた。
バキバキと容赦無く枝を踏みつけているため、接近してきていることが和達にはよく分かった。

「誰！？」

音のする方に銃を向け、一が音の主に問う。
和も、ワンテンポ遅れて銃を構えた。
そんな二人に透華は顔をしかめる。
美穂子はと言うと、透華の忠告に従ってか、サブマシンガンを掲げることをしなかった。
というか、脇に置いたままである。
せめて持て。

「私だじぇ！！」

姿が見えるよりやや早く、聞き慣れた声が飛んでくる。
おかげで飛び出してきた影を反射的に撃たずに済んだ。
それでも、銃を下ろすのは間に合わなかったけれども。
一体何故、何に間に合わなかったかって？

「のどちゃん！！！」

不意をつくように親友に飛びつかれてしまったから、だ。
折角の再会なのに、銃などという無粋なものを掲げたままになってしまった。
もっとも、そのおかげで、腕を下ろしているよりも数秒早く抱き返すことが出来たのだけど。

「優希……優希っ……！」

抱きしめた、小さな背中。
その温もりが嬉しくて、視界がじんわりと滲んできた。
滲む視界に、ハギヨシが現れる。

「ハギヨシ……起きたんですのね」
「ええ。原村様がやってきたことを告げたら、矢のように飛んできてしまいました」
「構いませんわ……本人達も、嬉しそうですから」

嬉しくないわけがなかった。
ようやく、ようやく会うことが出来たのだ。
大切な、私の親友。

「よかった……優希が無事で、本当に……」

優希は、和にとって唯一無二の親友だ。
ずっと昔から、自分の親友でいてくれている。
かけがえのない存在。

「のどちゃんも……生きててくれてよかったじぇ……」

ぎゅうと、互いの体をきつく抱く。
もっと、ずっと、こうしていたい。
大切な友人と、こうして再会を喜んでいたい。

しかし、そういうわけにもいかないことは、和自身が百も承知だった。

「……とにかく、これで今いるメンバーは全員集まったわけだね」

ある程度再会を噛み締めさせてくれた所で、一が口を開いた。
和が知る限り、このメンバーでは一と透華が意見を出す役割を担う。
場を仕切るのも、往々にしてこの二人だ。

だがしかし、現実的かつ有益な意見を出す者は、一だけだと言える。
透華の意見は、その大多数が善意という基板のもとに成り立っている脆い空想の押し付けであり、とてもではないが役に立つとは言い難かった。
もっともそれはあくまで和の主観であり、人を疑う気がない優希辺りにしたら、透華の意見は非常に心地がいいものなのかもしれなかったが。

「改めて、情報交換でもしておこうか」

優希とハギヨシは、美穂子と和の情報を聞いていない。
そして、透華や一も美穂子と和に津山睦月と文堂星夏の死については未だ教えていなかった。
ハギヨシから簡単に聞いただけだったので、上手く伝える自信がなかったというのもあるし、今伝えてもしょうがないと考えたというのもある。

その事を伝えるべき時と人は、きっと今。
ハギヨシ本人の口から、語られるべきなのだろう。

「まあ、知ってると思うけど、一応、ボク達から先に情報を言った方がいいのかな？
　全員、簡単に情報開示って言うことで」
「私達は、南西の村でスタートして、そこでバッタリ出会ったんだじぇ！」

和と再会したことで、優希は目に見えて明るさを取り戻した。
友人である和にとってもそれは喜ばしいことだし、チームを組む一達にも喜ばしいことだった。

「大体、地図で言うとI-02くらいだったんじゃないかな？」
「そこで確か、試し撃ちをしてる音を聞いて駆けつけて遭遇したんだよな！」
「そうそう。一応、どんなもんか試したかったからね」

そう言って、一はＳ＆Ｗ３５７マグナムを軽く掲げる。
透華が武器の所持を放棄した今、透華の身を守る一番の武器は一の持つコレということになる。

「素人には難しいって説明書にあった通り、ちょっと反動は強かったかな。
　でも、何とか使いこなせそうではあったよ。何発か撃ってみたけど、感覚は掴めたし」
「……試射済み、というのは大きいですね。
　誤って仲間を撃つ可能性も減りますし」
「携帯性に優れてるし、護身用には丁度いいしね」

素直に、和は一に敬意を払う。
この短時間に試射を済ませ、ある程度使えるようにまでしていたとは。
和自身は、試し撃ちを行ったものの、その難しさを痛感するだけで実用レベルにまで精度を向上させることは出来なかった。
というか、大半の者は出来ないとみていいだろう。
やはり、一は優秀だと言える。

「でもその銃、確か所謂コンバットマグナムですわよね？」

Ｓ＆Ｗ３５７マグナム。
その名称は、その名の通り３５７マグナム弾を使用しているからである。
より正しい製品名はＳ＆Ｗ　Ｍ１９。
取扱説明書にも、こちらの名前で記載されていた。
そして透華が口にした通り、この銃こそが、かの有名な『コンバットマグナム』なのである。

「ああ、うん……３５７マグナム弾を使ってるから、Ｓ＆Ｗ３５７マグナムとも言うけどね」

一が敢えてその言い方をしていたのは、コンバットマグナムの知名度故のことである。
フィクション世界でも大活躍する銃なだけあり、名前だけなら知ってる者がいてもおかしくはない。
「何か漫画で見たことのある強い銃」という印象だけでも、極力殺傷行為を避けたがる透華達はあまりいい顔をしないだろう。
実際この場に居る者の大半は名前だけなら知っていたわけであり、その判断は正解だったと言える。
もっとも、一番その威力を知られたくなかった相手は、物を見ただけでコンバットマグナムだと特定してしまったけど。

「お二人とも詳しいんですね、銃」

美穂子が驚きの声を上げる。
和としても、少々意外ではあった。
確かに和にもコンバットマグナムという単語は聞き覚えがあったが、それをデザインから特定するのは不可能といってもよい。

「まぁ、これでも一応、はじめと一緒に海外で銃を撃ったことがありますから」

ふふん、とやや自慢気に透華が無い胸を張る。
実のところ透華の記憶に残っているスミス・アンド・ウエッソン社製の拳銃がコンバットマグナムだけであったというだけの話なのだが、そのことを透華は伏せておいた。
そうして、透華はささやかな優越感を手に入れる。

（……意外な所で、有能な可能性が出てきましたね）

そんな透華を和は冷静に分析する。
お人好しなだけの無能だと思っていたが、少し情報を修正する必要がありそうだ、と。

「それで……コンバットマグナムだと、何か不都合でも？」
「原村和。貴女もドラマか映画で聞いたことありませんこと？
　コンバットマグナムという銃の持つ威力の高さを」

和は別に、銃に詳しいわけではない。
知識と言えば、コルトパイソンの取扱説明書に書かれていたことくらいだ。
そしてその中に、弾丸が３５７マグナム弾であったことが書かれていたのを覚えている。

有限である弾薬は、どこかで調達せねばならない。
いつか銃が集まった時、弾薬を使い回せる銃を中心に持ち運べるよう、真っ先にその情報は頭に叩きこんでおいた。
特にコルトパイソンは隠し持つことに決めていたため、かさばる取説は破棄してきていた。
念のため、ビリビリに破きトイレに流してある（最も、それが原因でトイレは見事に詰まったが、まあ、問題ないだろう）

とにかく、コルトパイソンもコンバットマグナムと同じ弾丸であることは間違いない。
３から始まる連続した奇数ということもあって、非常に覚えやすかった。
万が一忘れてもいいように、一応携帯のメールボックスにメモが残してあるが、確認するまでもないだろう。

「そんなに、強いんですか？」
「私の記憶違いでなければ、９０年代半ばに拳銃で最強と言われてた弾丸ですね、３５７マグナム弾は」
「あと、確か、コンバットマグナムは、コルトパイソンと同程度の威力を誇ると聞きましたわ」

透華の口から、コルトパイソンの名が挙がる。
一瞬ヒヤッとしたが、和は決してポーカーフェイスを崩さない。
コルトパイソンを隠し持っていることがバレていても、今ならどうとでもできる。
そう己に言い聞かせて、黙って話を聞くことにした。

「あ、それなら知ってるじぇー。漫画で結構見たからな！」
「人体を貫通し、向こうにいる者にも当てられる程の威力があります」
「そういえば、冴羽リョウも左手で威力を殺してたじぇ。結構危険なんだなー」

どうやら、バレている様子はない。
話は、徐々に脱線していった。

「ええ。ですから、極力使わない方がいいですわ。威嚇に使うにしては、威力が高すぎますし」
「なるほどなー。じゃあ、威嚇とかの時は私のコイツでやった方がいいのかー」

言って、優希はレミントン・ダブルデリンジャーをポケットから取り出した。
そのことに、和はぎょっと目を丸くする。

「優希の武器って……」

ちらりと、拡声器に視線を移す。
和は、拡声器が優希の武器だと思っていた。
しかし、優希はこうして銃を持っている。
ハギヨシも、肩から銃をかけているのに、だ。

どう考えても数が合わない。
それとも、この拡声器は島の中で拾ったということなのだろうか。

「……片岡優希様の支給品は、先程まで使っていたあの拡声器ですよ。
　それは、元は染谷まこ様のものでした」

その視線に気がついたハギヨシが、淡々と事実を告げる。
告げないわけにはいかないことが分かっているためだろうか、透華も気不味そうに俯くだけで何かを言うことはなかった。

「え……？」
「――私と、透華お嬢様は、染谷様に会っているのですよ」

間抜けにも、和の口はぽかんと開け放たれていた。
敢えて泥を被ろうとするハギヨシを遮って、今度は透華自らが口を開いた。

「私が、いけなかったんですわ。
　視界の悪い森の中で、深く後先も考えず、染谷まこと――池田華菜の元に、現れたから」

池田華菜。
唐突に出てきたその名前だが、和にとってはそこまで意外ではなかった。
美穂子が華菜に名指しでメッセージを告げたときに、何かがあるとは思っていた。
そして、染谷まこと同時に名前が挙がる。
そうなると、次に続く言葉は簡単に予測が出来た。

「だから、その――池田華菜は、染谷まこを庇おうとして……」
「結果、それが不幸な事故に繋がったわけです」

事故死。
それが、先輩として敬っていた人の死因。

「事故……ですか……」
「ええ。恐らく、透華お嬢様の持っていた銃から庇おうとして突き飛ばしたのでしょう。
　突き飛ばされたような格好で、木の枝を目に突き刺し死んでいました。
　おそらく、脳まで貫通して即死でしょう」

美穂子が、うっと呻いた。
少し顔色が悪くなっている。
死に様まで克明に伝えられ、想像してしまったのだろう。

「そう、ですか……」

だがしかし、和は違った。
美穂子同様その死に様を思い浮かべはしたが、抱いた気持ちはまるで違う。

――よかった。

それが、和の感じたことだ。

「痛みも恐怖も感じずに、逝けたのではないでしょうか」

ハギヨシなりに、一応気を使ったことを言う。
必要と有らば冷酷なことも言える男だが、必要がなければ基本的には優しさ溢れる執事である。

そして、ハギヨシが言った通りのことに、和は少し安堵した。
和としても、敬愛する先輩二人は極力殺したくなかった。
自分の与り知らぬ所で、出来るだけ楽な死に方をしていてほしい。
それが、和の望みだった。

（本当に、よかった……）

嬲られたわけでも、裏切られて傷ついたまま死んだわけでもなくてよかった。
本心から、そう思う。

――自分が殺した須賀京太郎のように、即死できなかったわけでも裏切られたと知って死んだわけでもなくてよかった、と。

大好きな先輩だったからこそ、本心からそう思えた。
それから、僅かばかりの黙祷を捧げる。

「本当に、事故だったんだと思いますわ。だから、その……」
「……許せるかは分かりません。けど、恨むとまでは言いませんよ」

透華が、少しだけほっとしたように表情を綻ばせる。
和としては、正直許すも糞もない。
むしろ感謝しているくらいだし、そもそも感謝していようが許さないでいようが殺す気なことに変わりはないのだ。

「それと――私は、文堂星夏様と津山睦月様にも会っています」

俯いていた美穂子の顔が、弾かれるように上げられた。
死んでしまった、大切な後輩。
その後輩の顛末を、聞けるかも知れないのだ。

（……ということは、もう一つ支給品があるということですか）

まこ以外にも死んだ者に会っている、ということは、和にしてみればそれほど意外なことではなかった。
１人どころか２人であったということまでは、さすがに予想出来なかったが。

というのも、和が透華達の元へ辿り着いた時、そこにいた透華達３人はそれぞれに銃を持っていたからだ。
にも関わらず、透華は当然のように拡声器を手にしており、そして一の傍らにはナタが無造作に置かれていた。
だから最初、拡声器とナタはその場に居ない優希とハギヨシのものだと思った。
優希と一が呼びかけを始めたのだと聞いたため、優希に拡声器が支給され、ハギヨシにはナタが支給されたのだろうと確信に近い予想をしたのだ。
そして二人共支給品を透華達見張り組へと託し、手ぶらで眠りについたのだろう、と。
いくらなんでも無用心だと内心呆れたくらいだ（それでも、襲われるなら目立つ透華達の方だから優希らは安全、という主張ももっともだと思ったため、優希らの元に飛んでいくことはしなかったが）

しかし、ハギヨシは肩に銃をぶら下げたままやってきた。
その時点で、和の仮説は崩れ去る。
そこで、一と優希が村から来たと聞いたのを思い出し、拡声器を現地調達品なのだと考えた。
もっともそんな考えも、優希がレミントン・ダブルデリンジャーをポケットから取り出したことで消し飛んだのだが。

そんなわけで、和にしてみたら、誰か死んだ人の武器も持っているのだろうと思うのは難しいことではなかった。
和に驚いた点があるとしたら、ハギヨシが放送で呼ばれている５人の内３人もの人間に会っていたということだろう。
正直この割合は、ハギヨシが殺し合いに乗っていたからこそ出る数値と言われてもおかしくないくらいである。
――実際、その内２人はハギヨシが殺したのだけど。和達にそれを知る由はないが。

「自殺、でした。二人揃って、崖から身を投げてしまいました。
　どうやら、この巫山戯た催し物に反発し、誰も殺さない内に誰の手も汚さないよう自ら舞台を降りたようです。
　止められずに、申し訳ありません」

頭を深々と下げるハギヨシ。
彼の言葉に、嘘は感じられなかった。
（もっとも核心は喋っていないのだけど、和達にそれを知る由はない）
美穂子の目から、雫が溢れ出してきた。

しくしくと、美穂子の泣き声だけが響く。
誰も、何も言わなかった。

それから３分程経ってからだろうか。
その沈黙を、美穂子自らが打ち壊した。

「ごめんなさい……つい、感情的になって……」
「いえ……普通のことですわ。大切な仲間の、その……そういう話を、聞いてしまったんですから」

死という言葉を、透華は意図的に避けた。
その言葉を受け入れるには、まだ早いという判断だろう。
しかし――受け入れがたくとも、受け入れなくてはならない。
生きている者が生き残っていくためにも、いつまでも死者に縋るわけにはいかない。

「それで……お二人の支給品は、何だったんですか？」

和は、淡々と質問をする。
京太郎にそうしたように無力で怯える少女を演じてもいいが、主導権を握りやすくしておくためにも冷静な判断が出来る所を見せておきたい。
露骨に相手を傷つけることは避けながらも、きっちり話は進めていく。

「どちらがどちらだったのかは分かりませんが、一つは、そのナタです。もう一つは……」
「このビニール紐だね」

言って、一がデイパックから引越しで使うようなビニール紐を引っ張り出す。
どうやら、所謂ハズレ武器のようだった。

「紐、ですか……」
「原村和と被ってますわねぇ」

三味線糸。
和は、自身に支給された武器を京太郎から奪い取った三味線糸だと嘘をついていた。
ボーガンは置いてきたし、コルトパイソンは隠し通したいのだから、当然の選択と言えよう。

「のどちゃんもハズレ武器だったのかー。
　さすが嫁だけあってシンクロニシティだじぇー」
「そんなオカルトありえません」
「まあでも、変な縁は感じるかもね。糸と拡声器なんて、どっちもすごいハズレ武器だし」

どちらも人を殺せないとは言わないけれど、と一は心の中で付け加えた。
三味線糸などは返り血を浴びず殺害できる手段であるが、メインウェポンには向いていない。
透華から銃を譲られた今となっては使われることがないだろう。
もしそれを使って牙を向こうにも、透華以外は銃を使って反撃してくる恐れがあるし、その透華には自分がべったりくっついているのだから。

――勿論、和が既に糸を使って誰かを殺害している、という可能性は、一にも思い至った。

しかし、すぐにその可能性を打ち消す。
もしそうなら、隠しやすい三味線糸の方を公表する意味が無い。
殺した相手がハズレ武器を持っていたのなら、油断させる意味も込めてそれを公表すればいい。
殺した相手がアタリ武器なら、それこそそれをメインウェポンにしておくべきだ。
それに――そもそも、もう死に様が判明していない参加者は井上純と須賀京太郎の二人だけだ。
どちらも女子と比べれば体格がよく、和が三味線糸で無傷で完勝出来る相手ではない。

「ええ……ですから、原村和には私の支給品であるブローニング・ハイパワーを差し上げましたわ」

一は、ミスを犯している。
和が“乗っている”などとは、もうほとんど思っていない。
そう考えた根幹には、透華が関わっていた。
透華が、和と手を組むことを心底望んでいるから――だから、心のどこかで透華の幸せが崩れぬよう和を善人と思おうとしていたのだ。
この判断が何を招くか、この時の一は知らない。

「一応、取扱説明書は読みましたわよね？」
「はい。ただ、試射はしてませんし、これも威力と引き換えに扱いにくいのかもしれませんけど……」
「まあ、その辺は慣れるしかないよねぇ……扱いやすくても、やっぱり装填数２発じゃあ心許ないし」

一が苦笑いを浮かべる。
和が譲り受けたブローニング・ハイパワーが１３＋１発という装填数を誇るのに対し、
優希が譲り受けていたレミントン・ダブルデリンジャーはたった２発しか装填出来ない。
銃撃戦になった時、確かにこれでは心許なかった。

「あくまでデリンジャーは威嚇用。本格的な戦闘になったら、私が前線に出ます」

そう言って、ハギヨシは肩にかけたカラシニコフを軽く掲げる。
透華はやはり戦闘のことを想定するのに不服そうだが、口に出しはしなかった。
あくまで自分達（というか、自分）を想ってやっているのだと分かっているから。
だから、不服そうにとりあえず話を進めるだけにした。

「ハギヨシの支給品は、それだったんですのね」
「ええ。私はこのカラシニコフを支給されて、G-08からスタートしました」
「G-08ってことは……あいつらの居る辺りかー」

優希の言う『あいつら』とは、この巫山戯た催し物を開いたボケクソ共のことである。
……失礼。言葉遣いが少々乱れた。
しかし、このくらい文句を言っても許されるであろうくらいの所業をしている連中なので、多少の暴言は許して頂きたいものである。

「ええ。ですから私は真っ先にそこの観察に赴きました」
「そうでしたの！？」

これには、一も透華も目を丸くした。
今までそんなことは言っていなかったではないか。
しかしハギヨシは、平然と言ってのけた。

「ただ見ることが出来ただけで、近付けそうにありませんでした。
　地面に線が引かれているわけでもないため、禁止エリアがどこからなのかも分かりませんでしたので。
　あまりに成果がなかったため、特に伝えることはないだろうと思い、今まで言いませんでしたが」
「うーん……やっぱり、首輪をどうにかしなくちゃいけないね……」
「となると、やはり智紀と早く合流したい所ですわ」

沢村智紀。
透華や一と同じく、龍門渕高校のメンバー。
眠っていたため和は彼女をよく知らないが、どうやらこの状況で頼りになる相手らしい。

「その智紀さん……なら、首輪をどうにかできるんですか？」
「多分、出来るんじゃないかな。ともきー、ハッキングの腕も結構なものみたいだし」
「本部の首輪管理システムに不正アクセスできれば、どうにかなると思われますよ」

そうですか、とだけ答え、和は少々考えこむ。
一達が嘘を言ってる様子はない。
身内贔屓や平和ボケといった気がある透華だけでなく、比較的冷静な意見を述べるハギヨシや一もそう言っているというだけで、信憑性はグッと増す。
もしそれが本当だとしたら、自分と、自分の大切な人――優希と、そして[[宮永咲]]が生き残るために、非常に有用な人物となるかもしれない。
３人で帰れるなら、それに越したことはないのだから。

「そういえば……その、ちょっと聞きにくいんだけど」

智紀がキーパーソンだという大事な話に区切りが付いたと判断し、一が再び話題を変える。
ちらりと美穂子を見やった後、申し訳なさそうに口を開いた。

「２人が死んでいたっていう場所、教えてもらってもいいかな」

死者の情報も、今後何らかの形で生きてくるかもしれない。
情報は、あって困るものではないのだ。
一としては、聞ける内に聞いておきたかった。
それに、悲しみに打ちひしがれるあまり、美穂子が話を阻害するようなことをしてくるかも確かめたい。
しかし、美穂子は唇を噛むだけで、これといって文句を言う事はなかった。

「南東の、崖の辺りです。
　島の端から本州が見えるのかを確かめに行き、そこで彼女達が身を投げるのを目撃しました」

半分嘘で、半分本当。
ハギヨシが目撃したのは身を投げようとする所であり、実際に文堂星夏が落下したのはハギヨシの仕業である。
今も崖の端には津山睦月の銃殺死体が横たわっており、もし行かれたら即座に嘘がバレるだろう。
もっとも、弔うべき死体が海の中だと言ってしまえばわざわざ崖の端まで行く理由などなくなるし、
念のため座標までは言わないでいたので、その心配はないと考えているか。

主である透華に嘘をつくことに若干心を痛めるが、必要なことだと割り切っていた。
ハギヨシは、この島にいる誰よりも“オトナ”なのだ。
津山睦月の銃殺も必要だったと自分に見事言い聞かせたし、
弔うことも海に捨てることもしなかったことも、衣服に血をつけないためだからと未練もなく諦めていた。

「そこで、大きな銃声を聞き、森の中で急いで引き返しました」

その銃声とは、勿論ハギヨシ本人が睦月に向けて放ったものだ。
本当は、自身が殺した相手への後ろめたさもあって、早々に立ち去っただけ。

「誰が撃ったか、確認はしなかったのですか？」
「ええ。恥ずかしながら、目の前で人が亡くなって少々取り乱してしまい、確認することも忘れて森の中へと駆け出してしまいました。
　カラシニコフがあれば戦えたかも知れませんが……そこまで頭は回りませんでした」
「まあ、それに、カラシニコフは命中精度もよくないしね。確か、故障防止に特化してるんじゃなかった？」

一の言う通り、カラシニコフは命中精度が高くはない。
カラシニコフことＡＫ－４７を製造したソビエトは、精度よりも確実に作動することと生産性に重きを置いていた。
それ故に、現在も各所でゲリラに使われている突撃銃である。

だが命中精度が低いことと、扱いにくさはイコールではない。
カラシニコフは今なおゲリラで数多く使われている。
少年兵が持っていることも少なくないのだ。
扱いにくい、とまで言ってしまうことはできない。

「……その後、衣様や透華お嬢様を探して奔走していた所、地面に透華お嬢様の書き置きを発見し追跡したというわけです」

カラシニコフの扱い易さの一因に、フルオート機能がある。
引き金を絞り滅茶苦茶に弾を吐き出し続けるだけで、相手にある程度は当たる。
当たらなくても、ダメージにはなる。
その仕様のおかげで、素人でも『戦う』レベルで十分に運用できる武器である。

――とはいえ、『確実に殺して回る』レベルにまで引き上げるのは、なかなか骨がいる作業に思われた。
というのも、先述の通り命中精度はそれほどでもなく、狙撃には向かないのだ。
乱戦で弾幕を張るのには適していても、一人がメインウェポンにして殺して回るには少々不向きと言わざるを得ない。
特に、支給された弾薬が有限の場合は。

「そこからは、さっき話した通りというわけですわね？」
「はい。お嬢様と合流し、池田華菜様と別れ、そして今に至ります」

勿論これらの長所と短所は自動小銃全てに共通しているのだが、この島に突撃銃はカラシニコフしか存在しない。
連射機能という点においては、サブマシンガンもそうなのだけども。
とにかくこの島唯一の突撃銃であるカラシニコフは、弾薬の有限性故あまり乱用が効かない。
それを理解したからこそ、ハギヨシは津山睦月らの“始末”の際に実験を行ったのだ。
一発ずつ発射をした場合、どのくらい思い描いた着弾点と現実のそれがズレてしまうかを、確かめるために一発ずつ撃ったのだ。
そして微修正を施し、いざ戦闘になった際に単発の射撃で相手を狙えるようにはしている。
別に、相手を殺さないためにではない。
単純に、“いざ”という時が訪れ島の全員を殺害する必要に迫られた際、弾切れを犯さないよう考えただけのことだ。

「私は、残念ながら誰にも遭遇していません」

そんなハギヨシの腹の中を、和は知りようもない。
警戒はしているが、まさか既に人を殺しているだなんて思ってもいない。
それは、和のミスと言えるだろう。

和は、必要に迫られたから泣く泣く友を手にかけた。
罪には問われないだろうし、きっと脱出した後にその話を聞いた誰もが人殺しを強要された和の立場に涙を流してくれるだろう。
けれど、和は自分をクズだと考えている。
どんな理由があろうと、信用してくれた友人を手にかけたのだ。
並の神経で出来ることではない。

「学校でスタートさせられて、それからずっと、一人で色々考えながら、ずっと彷徨い歩いていました……」

本当に、学校を出た後は色々と考えた。
いやに冷静な思考回路が、自分の行った行為の下劣さを筋道建てて説明する。
それを受けても発狂できないくらい、心は冷静だった。

否、冷静を装い続けた。

今更引き返せないのだ。
この島で有数のクズに、悪鬼に、下衆に、悪魔に、外道に、咎人に、畜生に、身を落としたのが自分なのだ。
だから、受け入れなくてはならない。
そんなことを思いながら、冷静な思考回路を持って自身を虐め歩いてきた。

「学校の方かぁ……目立つ建物だから、誰か居そうなものだけど」

探りを入れているのか、一がそんなことを言う。
――その通り。学校には、井上純がやってきていた。須賀京太郎もそこにいた。
二人共、もうこの世にはいないけれども。和が、手を下したから。

「ごめんなさい。暗くて怖い、というのもあって、すぐに離れてしまいましたから……」
「まったくのどちゃんは怖がりだじぇー！　そこが可愛いんだけどなー！」
「……確かに、森が多いですから出会えなくても不思議ではありません、ね」

だから和は、この島の中で誰よりも強力なカードを持っている。
ハギヨシが持っていた情報を、一方的に引き出した気になっている。

――『原村和ただ一人が、５人の死者全員の死に様を把握している』

半ば事実であるこのことは、和を有利にもするだろう。
だがしかし、今現在この情報は負の効果をもたらしていた。

『この島で、人殺しは自分一人』

ハギヨシの嘘を鵜呑みにしたわけではない。
だがしかし、筋道建てて考えた結果、嘘を吐いている可能性が低いと考えてしまっている。
それは、自分と同様、殺人を忌避する者のために殺しを行ったなら、殺した相手の接触自体を隠すだろうと思ったからだ。
ハギヨシの奪った武器が、殺害行為がバレるリスクを犯してまで持ち運ぶようなものではなかったこともあり、
きっと本当に自殺を見ただけなのだろうと思い込みつつあるのだ。

『つまり、ハギヨシは自分ほど腐れていない。透華のために、衣のために人を殺せるレベルに無い』

その考えが、ハギヨシへの侮りへと繋がっていく。
ハギヨシを、そして彼の忠誠心を、見くびる形となって。

「私も……誰にも会いませんでした」

どこか申し訳なさそうに、美穂子が会話に口を挟む。
和は一応、美穂子のことも警戒はしていた。
誰も殺害していないことは判明しているが、サブマシンガンという武器は途中で裏切り牙を剥くのに持って来いの武器である。
それ故に、何としてでも奪い取っておきたい。

「私は森の中でスタートして、情けない話ですけど、どうしたらいいのか分からなくて……」

和は、すぐに動くことは出来ない。
下手に動くと優希を危険に晒してしまう恐れがあるから。
だから、今は手を出せない。
だけど、冷静に品定めは進めておく。

「ずっと彷徨い歩いていて……それで、さっき呼びかけが聞こえて――」

努めて冷静に振る舞う。
脳みそをフル回転させ計算する。
だって和は、勝ち残らねばならないのだ。
咲と優希を、生きて帰らせるために。

――脱出出来るものならば、和だってそれを望む。
格差が生じたとはいえ、優希にだって生き延びてほしいから。
だからこそ、こうして透華達と手を組むことにしていた。

和の想いは純粋ではなく、確固たる混じり気がある。
場合によっては人を切り捨て、たった一人の優勝者を決めてしまうという覚悟。
そしてそれは彼女だけの話ではない。
一と、そしてハギヨシもそうなのだ。

彼女達は脱出という同じ方向を向いているようで、実は内に爆弾を抱えている。
似たようでいて、起爆条件が異なる爆弾。
チンイツというよりは、ホンイツと呼ぶべきメンツ。

だがしかし――二種類の者が混ざり合いながらも統一感のあったメンツも、もう間もなく崩壊する。
和がふと、『救いた人』を天秤にかけてしまうことで、殺し合いは加速していく。
まるでドミノ倒しのように、多くの者を巻き込んで。

「それで、あの……一ついいでしょうか？」

そしてドミノは倒される。
和でなく、美穂子の手により。

「別行動を、取らせてもらいたいのだけど……」

ドミノは静かに倒れ始めた。



【残り２５人】

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