そもそも桜井カービィ/非桜井カービィ騒動ってなに?

今や任天堂の看板タイトルの一つとして大人気な星のカービィシリーズ。


2017年には生誕25周年を迎え、ファンからもハル研からも祝われたことは記憶に新しい。
以前にも増し、カービィたちは柔らかさと可愛さが増していく日々である。



しかし、そんな楽しげでほのぼのと見えるカービィシリーズにも、
かつてファン同士の派閥と激しい対立があったことはご存知でしょうか?


いつの時代も好きな作品をめぐって論争は起こりうるものであり、決して珍しい事ではない。
星のカービィもまた例外ではなく、昔はギスギスした空気が漂っていたのだ…


ここで語るのは、ファン界隈で一時期起きていたとある騒動の記録である。






はじめに、このページ名でもある「桜井カービィ」「非桜井カービィ」とは何か、から触れねばならない。
まあ説明は簡単で、早い話が、


生みの親の桜井政博が 関わっている 『星のカービィ』・・・桜井カービィ

桜井政博が 関わっていない 『星のカービィ』・・・非桜井カービィ



という分類を表しているだけの事である。

(ただし、『カービィボウル』のような非アクション系は含まない事が多い)
桜井カービィは比較的大型のタイトルになりやすい傾向があり、
非桜井カービィはアイテムをコンプリートしないと真のラスボスと戦えない、という特徴があった。


この2つはあくまでもファンの造語であり、 非公式という点を留意すること。
くれぐれもオフィシャルに迷惑をかけないように。
何より、桜井氏が独立した現在では分類もへったくれも無くなったので完全な死語に近く、使用者は殆ど見られない。
「非桜井」と言い始めたら桜井信者か桜井アンチか疑おう。


  • 争いの歴史


生みの親とはいえ、桜井氏も会社の内では一人の社員(当時)。
『カービィボウル』をはじめとした番外編や、『星のカービィ2』などのように、
彼が開発スタッフとして関わらないカービィ作品は決して珍しくなかった。
では、どうしてこの2呼称が生まれ、盛んに用いられたのか?



全てのきっかけはあの『星のカービィ スーパーデラックス』からであった。


昨今のカービィ作品がスパデラのシステムを土台にしている事は、分かる人ならすぐに分かるだろう。
しかし、当時のファンにとってスパデラは 異端児 とも言うべき存在だった。
バイタリティに取って代わった体力ゲージ、多彩なコマンド技、格闘ゲームのような爽快感…
あらゆる意味で異質尽くめの革新を試みた本作は、多くのプレイヤー達を虜にし、熱狂的な人気を得た。
…いささか、熱が高すぎたと言うべきか。



問題がいよいよ表面化したのは、その後に発売された『星のカービィ3』。

この作品は仲間システムやアイテムコンプリートによる完全クリアなど、
『2』の系譜を色濃く受け継いだ作風が特徴の、俗に言う「非桜井カービィ」だ。
カービィらしさの原点に立ち返る堅実なゲーム性は、奇しくも異質なスパデラと対を成したものであり、ほのぼのした世界観に惹かれたプレイヤーも少なくなかった。

・・・あとは、発売時期さえ間違ってなければ言う事無しだったのだが。



この頃は既にスーパーファミコンも末期。
それだけならまだしも、よりによって スパデラの後発 というタイミングの悪さが災いし、
一部のファンからは肩透かしモノだと言われてしまったのである。
スパデラですっかり目が肥えていた人々は、誰もが後続にあの時のような派手さと爽快感を期待したのだ。
やがて桜井氏が関わっていないと分かった途端、一部のファンは、



「桜井が作っていないカービィはカービィじゃない」



などと声高に主張し始め、桜井カービィ派(桜井信者)が生まれた。
これに反発したファン達は、



「スパデラみたいに異質なカービィこそカービィに相応しくない」



と反論、非桜井カービィ派(非桜井信者)が生まれた。

皮肉な事に、スパデラが築いた人気の過熱ぶりが両者の間に、


「 桜井カービィ以外はカービィにあらず 」

「 非桜井カービィ以外はカービィにあらず 」


という 歩み寄りようのない溝 を生み出してしまったのだ…
(もっと言えば「カービィの最高傑作は スパデラ以外に認めない 」なんてトンデモ固執主義までいたのだが)

桜井氏が唯一無二の「生みの親=星のカービィのオリジン」という立場にあった事、
『2』~『64』が正統的ナンバリングタイトルの位置づけにある事も、桜井・非桜井の概念を後押しする一因となった。



『星のカービィ64』でも、これまた非桜井カービィであることから論争が勃発。
いや、正確には前2作が世に出たその時から、桜井カービィ派と非桜井カービィ派が、
互いのカービィ作品を比較して罵倒し合う という不毛な争いがズルズルと継続していた。
爽快感が無い、カービィらしくない、と・・・・・・これでは子供のケンカである。

リアルではどうだったか知る由もないが、少なくともネット上では、そんな論争が盛んに頻発したのだ。
どっちのカービィも平等に好きなファン からしてみれば、非常に肩身の狭かった時代と言える。
(両派閥にとって味方に付く気のない人間など論外だった)


そして・・・この泥沼とも言える抗争を余計にこじらせる事態が起きた。




テレビアニメ版『星のカービィ』の放送である。





今度は桜井氏監修でありながら、ゲームとも漫画とも大幅に異なる世界観、大量のオリジナルキャラクターが当時のファン界隈で賛否を引き起こした。
で、ただでさえ対立の激しい2大派閥は更にゲーム派、アニメ派に分裂するというややこしい展開に。
ゲーム版からのキャラクター選出も、彼らにとって均等であるとは言い難いことも争いを加速させた。

具体的にはアニメ版には「カービィ64」のキャラクターは全く出ていなかった。
また、デデデのゲームとのキャラの違いは多くのアンチを生んでいる。

なお、非桜井信者がアニメ版を叩くだけでなく、桜井信者もアニメを叩いていたことはよく槍玉に挙げられている。
アニメオリジナルキャラクターが気に食わないという者もいた。

何より、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)ではアニメキャラクターや非桜井カービィキャラクターの自殺AAを作るものまで現われていた始末。


ファンサイトのネットウォッチ、監視・・・
二次創作でも「擬人化」ではアドレーヌとリボン、アニメオリジナルキャラクターをあからさまに省く、
非桜井および桜井カービィを誹謗中傷する掲示板・・・

そんな混沌とした環境であった。


『夢の泉デラックス』『カービィのエアライド』と桜井氏の関わる作品が立て続けに発売され、
不毛な論争は一向に収まる気配を見せなかった。
そんな中、2003年・・・・・・ファン界隈に衝撃的な一報が届く。




桜井政博のハル研究所退社。




この上ないビッグニュースである。
彼が現場を離れる以上、終わりの見えない争いも長くはないだろうと思う人もいた。
桜井カービィも非桜井カービィも関係なくなっていくのだから。





実際は真逆だった。





彼がハル研を辞めるというニュースが知れ渡るや否や、今度は桜井派が、
「 桜井がいなくなったら良作は見込めない 」「 星のカービィはおしまいだ 」などと騒ぎ立てたのである。
…昨今の『Wii』や『トリプルデラックス』の好評ぶりを見てきた人には、さぞかし滑稽な話と思えるだろう。
しかしあの一報は、派閥と関係無しにショッキングな出来事であった。
実際、桜井氏が抜けた後に星のカービィはどうなってしまうのか?
そんな行く末に対して不安が渦巻いていた、当時の環境を考慮せねばならなかったことを付記しておく。


その後、「参上!ドロッチェ団」や「毛糸のカービィ」でアニメ版のデデデ城やデデデの口調が逆輸入された際はコミュニティが大きく荒れてしまい、公式が以後アニメ版の要素をおまけ以外に入れなくなったこともあった。





こうまで醜い争いがヒートアップしたのは、かつて桜井氏の周りでウワサされていた、
「アンチ非桜井カービィ」疑惑が少なからず関わっている。


それと言うのも当時は、桜井・非桜井でキャラクターの枠が殆ど独立していた為。
分かりやすく例を挙げると、メタナイトが非桜井カービィ側に一切出演せず、
逆にアド、アドレーヌが桜井カービィ側に出演しない、という状況だった。

しかも、アド達の件でダメ押しとなったのがテレビアニメ版。
桜井氏が放送前のインタビューで「(世界観上のルールとして)人間を出さない」と発言した内容が、
桜井カービィ派からはイコール「人間キャラを軽々しく出した非桜井カービィが嫌い」と拡大解釈されたのである。
(冷静に見ると、 「世界観を守るために人間を出さない」以上の意図があったという確証はどこにも無い。 )


本人も知ってか知らずか不用意な言動を避けているようで、
独立以降はカービィの話をコラム上で語ることがあっても、自分の関わっていないカービィ作品を具体的に言及したことは殆ど無い。
(退社以前から監修として関わることを予定していた『鏡の大迷宮』は例外)
逆に言えば、桜井氏が 何かしら臭わせる要素を出すだけで騒ぎ立てられた のが当時の環境であった。
リックら仲間達の扱いしかり、スマブラシリーズでのフィギュア・シールでの扱いしかり…


しかし、本人が 具体的に否定も肯定もしていない以上はタダの疑惑止まりに過ぎない。
単に「よそはよそ、うちはうち」で下手に取り扱わないだけだった可能性も十分考えられる。
そもそも完全にだんまりを決め込んだ現在となっては、これ以上追求するだけ野暮というものである。

だが・・・



2014年、「大乱闘スマッシュブラザーズfor3DS/forWiiU」が発売されたことは記憶に新しいだろう。
この中で、カービィシリーズが登場していることは言うまでもない。

ここで、理由は不明だが新規ステージが「GBプププランド(初代)」「洞窟大作戦(SDX)」となり、
桜井氏独立後の非桜井カービィキャラのフィギュアが4つおよび非桜井カービィのBGMアレンジがなしと少々さびしいものとなった。
ウルトラソードが実装されたため、気にしない者もいたのだが・・・


ここで、ある非桜井信者がこう思ってしまった。

「桜井氏のアンチ非桜井カービィ思考は本当だった」

ウルトラソードが実装され、後に毛糸のカービィステージを実装予定だったことをコラムで明かしたことからそんなことはないはずなのだが、
界隈にはびこった桜井氏の噂は最早収拾不可能となっていた。


そして、不満を漏らす非桜井信者と新規カービィファンに対し桜井信者が活発化してしまう。

「スマブラに非桜井カービィは不必要」
「桜井さんは格付けして非桜井カービィがカービィでないことを証明した」


このような発言をするものが再び現われたのだ。
中にはマホロア、バンダナワドルディといった人気キャラクターのアンチ行為をするものまで・・・

こうして、不満を持った層は桜井アンチと化してしまい、今度はスマブラコミュニティが荒れる事態となってしまった。

その余波はカービィ界隈にも流れ込み、スマブラおよび桜井氏の話題は極力避けられることが多々あるようになってしまった。


この時、カービィ3・カービィ64のキャラクターたちはほとんどゲームおよびメディア展開に再登場できておらず、界隈全体に不安が漂っていたことも悲劇の一端を担っていた。
特に、「トリプルデラックス」ではキーホルダーに「カービィ64」のキャラが省かれ、アドの名前を露骨に避けていた。


もちろんだが、桜井氏にそのような意図があったとは明言されていない。
むしろ、カービィオーケストラではリック・クー・カインの話題に自ら乗っかったり、次作「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL」ではマスクドデデデ・Wii以降のカービィダンスの実装、と改善の兆候が見られている。

また、現カービィスタッフもカービィ3・カービィ64キャラクターの扱いを改善し、ついにはアドレーヌの再登場という歴史的な一歩を踏み出している。


このようにカービィ・スマブラ両方がこの騒動の収拾を図っているわけ・・・なのだが、
桜井信者はアンチ憎しでこの流れをさえぎろうとしている。

もし興味がある方がいればニコニコ大百科の各種カービィ記事、スマブラ関連の記事を探るといいだろう。
バンダナワドルディをアンチするものをはじめ、桜井氏をダシにして多くのものを傷つけようとする桜井信者が今もそこにいる。

桜井信者にとって、桜井氏はただの都合のいい神輿であり道具なのだ。




それから・・・


桜井氏が抜けたという事は、わざわざ分類付けて争う意味が無くなった事を意味し、
年月を経るにつれて当時の過熱した空気は徐々に冷え込んでいった。

そして、「スターアライズ」でメタナイトとアドレーヌが共演し、ようやく長きに渡る抗争が終息を迎えたのである。


現在では「荒れる原因になるから話題に出すな」と、本スレでも桜井・非桜井をほじくり返すような書き込みは半ばタブーとされている。
あ、スマブラのタブーじゃなくて。
決着がつかない言い争いをしたところで、無駄なレスの消費に終わるのは目に見えているからだ。
それを差し引いても、『星のカービィWii』を皮切りに新規ファンが多く参入したことも重なり、
派閥抗争そのものに現実味が湧かないという人は少なくない。
(まず 桜井氏が独立している事自体を知らない 人もいる)


しかし、今でもたまに「桜井が作ったカービィでなければ嫌だ」と言ってはばからない人がいるのもまた事実。
そういう人は最早放っておくしかないだろう。
どんなに喚いたところで、彼はもう「ハル研の桜井政博」ではないのだから。






最後に、この争いは価値観のすれ違いと押しつけ合いから起きた不毛な論争である。
当時関わっていた人がこのページを読んでいるかは存じ上げないが、一ファンとしてこれだけは言える。





食わず嫌いはよくない。


みんなも桜井信者と桜井アンチを見かけたらそっとスルーすることをオススメする。
その時間で、カービィの楽しい話題をしよう。

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最終更新:2018年08月04日 22:12