作者:Elika 宅急便のおにいさんが、荷物を届けにきました。 ああ、ちなみに宅急便といった場合には某ネコの会社をさすんだそうです。 他の会社は宅配便と言わなければならない決まりがあるそうです。 で、おにいさんは「ハンコかサインください」って言うんです。 サインするしかないじゃないですか。 いえ、うちにはハンコがないんです、っていうわけじゃなくて。 この日のために、サインの練習してきたんですから。 いかにしてかっこよくサインするか、そこが瀬戸際です。 一生懸命練習して、一番最初にわかったことは 「自分の名前そのままじゃぜんぜんかっこよくならない」ってことです。 だから芸名を考えました。一生懸命考えました。 カタカナとか入るとかっこいいことに気がつくまで、そう時間はかかりませんでしたね。 かっこいいカタカナってなんだろう、って考えました。 もちろん字面だけではなく、響きにもこだわりましたよ。 その結果たどりついたのは「ポリプロピレン」でした。 ポリプロピレンの後につけるのは、やはりシンプルなものが一番だと直感でわかりましたので、迷わず「伊藤」ってつけました。 「ポリプロピレン伊藤」 ヤバい。完璧だ。完璧すぎる完璧すぎて涙がでる。 ポリプロピレン伊藤、この名前にわびさびとスタイリッシュさと洗練されたキレとコク、とにかくすべてが内包されている。 感動で涙があふれて、前が見えなくなったね。 それでも一生懸命練習して、最高にかっこいいサインを会得しました。 そして、ついにそれが日の目を見る日がやってきたんです。 クロネコのお兄さん、ありがとう。 震える手で、しかしわりとしっかりと、サインしましたよ。 ポリプロピレン伊藤、ってね。 でもそのおにいさん、ひどいんですよ。 「あーごめんなさい、本名でいただいていいッスか?」 半笑いで!血と汗と涙の結晶のポリプロピレン伊藤のサインを半笑いで! 否定しやがった!! 怒ったね。今世紀最大の怒りで、すべて支配されたね。 だから今、宅配便のダンボールを梱包してます。 中身ががたがたうるさいから、カッター突き刺したら黙りましたけど。 またいつ暴れだすかわからないから、早く取りに来ないかな、佐川さん。