作者:Elika 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんはランパブではっちゃけに、おばあさんは街へ逆ナンしに行きました。 おばあさんが街でブイブイ言わせていると、大きな桃が高架下を どんがらがっしゃーん、どんがらがっしゃーんと、人や車をなぎ倒しながら近づいてきました。 おばあさんは、自慢の鶴の構えで迎え撃ちました。 潰された人々の怨念や、リコールにもめげずに「いい物を作りたい」と一生懸命車を組み立てた たくさんの人々の血と汗と涙の結晶を、いともたやすく刹那の内に無に帰してしまった巨大な桃は、 邪悪な黒いオーラをまとって音速で近づき、おばあさんをも一のみにしようとしました。 よもやこれまで、と覚悟を決めたその時────! 漆黒の禍々しい邪念の渦を切り裂く白刃が、凄まじい轟音と共におばあさんの視界に光をもたらしました。 それはまさに一筋の光明、悪を絶つ神の一撃でした。 鶴の構えのまま、あまりのまばゆさに目を細めたおばあさんの双眸に飛び込んできたのは──── 荒ぶる鷹のポーズのまま手刀を構え、表情ひとつ変えずにおばあさんを見据えるおじいさんの姿でした。 ああ、私はこんなにも愛されている、世界はこんなにも愛に満ちているのだ、とおばあさんは 頬を伝う雫を止めることもできず、その場にがくりとひざをつきました。 おじいさんは体勢を戻し、おばあさんに囁きました。 「ごめん、客引きに騙されてお金足りなくなったから貸して」