『ガレキの瞳』 A:男性。主に主人公の行動描写を担当。 B:男性。主に主人公の心理描写を担当。 C:風景描写を担当。 D:男性。主人公以外の登場人物描写を担当。 A01「ここはどこだろう」 B01「僕は道に迷った」 A02「見たことのない住宅街だ」 B02「どこにでもある風景だ」 A03「たった1本通りを間違えただけなのに」 B03「近道できると思ったのに」 A04「すぐに引き返せばよかった」 B04「だけど冒険したくもあった」 A05「誰かに道を尋ねなきゃ」 B05「嫌だ。怖い。緊張で体が震える」 A06「けれど誰も通りかからない」 B06「胸の内ではほっとしていた」 C01「はらはらと雪が降ってきた」 A07「歩いても歩いても1人」 B07「街の静寂を僕の足音が切り裂いてゆく」 C02「白で覆い隠される世界」 A08「雪で視界が狭くなっていく」 B08「生まれて初めて雪を美しいと思った」 C03「彼の頭の上にも降り積もる雪」 A09「やがて雪の向こう側からコートを着た男が歩いてきた」 B09「傘を差していたので顔はよく見えなかった」 C04「家から出てきたばかりなのか、男の傘には雪が積もっていなかった」 A10「すみません、ちょっと道をお尋ねしたいのですが」 B10「精一杯の勇気を持って話しかけた」 C05「男は一瞬彼に目を向けただけで、立ち止まらずに行ってしまった」 D01「知らない子どもが俺をにらんでいた」 A11「僕は男を追いかけようと思った」 B11「しかしやめた。きっと、それは恥だと思った」 C06「男の姿は雪の中へ消えていった」 D02「にらまれたように見えたが気のせいだったのだろう。俺はイヤホンから聞こえてくる今週 の新曲に耳を傾けた」 A12「僕はまた歩きだした」 B12「なんて無機質な街なんだろう。家も人もまるで機械のようだ」 C07「灰色の空はその色をいっそう深め、街には街灯が瞬いた」 A13「冷たい風が鼻をかすめ、僕は1つくしゃみをした」 B13「冷たさを感じるだけ、雪のほうがこの無機質な街よりもずっとましに思えた」 C08「辺りの家々の窓に明かりが灯りはじめた。カーテンの奥で黒い影が不気味に蠢いていた」 D03「窓の外を覗くと、もうすっかり暗くなっていた。宵闇の中を子どもが1人歩いていた」 A14「どれだけ歩いても、もう誰かと会うことはなかった」 B14「どれだけ歩いても、この街には人間がいないようだった」 C09「おもちゃのような町並みはどこまでも続いていた」 D04「俺はため息を1つつくと、カーテンを閉め明かりを点けた。そうしてまた、パソコンのモニ タに向かった。椅子がぎしりと軋んだ」 A15「僕は歩く」 B15「1人ぼっちで」 A16「僕は歩く」 B16「きっとどこかへ」 A17「僕は歩く」 B17「僕は歩かなきゃいけない」 A18「僕は……!」 B18「息が苦しくなって、僕は空を仰いだ」 A19「雲の塊のような吐息を吐き出した」 B19「大粒の雪が目尻(まなじり)に落ちて溶けた」 C10「輝く白い雪が、音もなく、この街に降り注いだ」