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イヴの口付け」(2010/10/24 (日) 16:59:52) の最新版変更点

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作者:Elika イヴ・クリス:宇宙で一番過激な女。宇宙の安全を守る警邏隊に所属する。 マイル・レーガー:イヴの相方。最初はクールでかっこいいかなって思ってたのにどんどん変態に。 ルーカス:マイルの上司。ヤラレ役のツボはしっかりとおさえてます。 ナレ01「宇宙で一番過激な女・イヴとその相棒マイルは、パトロール中にある施設からの救難信号を受信した。     すでに半壊状態の施設からはさしあたって、生体反応はみられない。     イヴとマイルは、施設の状況を調べるべくシャトルから降りた。     しかしその直後、シャトルを停泊させたメインドックが謎の爆発によりシャトルもろとも宇宙空間へと消えてしまった。     二人は脱出するべく、施設の機能を回復させようとメインコンソールへと向かった」 メインコンソール イヴ01「そっちはどうなっている?」 マイル01「……ひどい有様ですね。どこから手をつけていいのかわかりません」 イヴ02「冗談を言う暇はあるようだな。1時間でここまで修復できたんだ、やはりお前をパートナーに選んで正解だったよ」 マイル02「そちらこそご冗談を。メインコンソールからアクセスできる機能の一部を修復したに過ぎません」 イヴ03「それだけでも随分と進歩しているじゃないか、謙遜はいい。何かわかりそうか?」 マイル03「現段階ではまだなんとも……そちらはいかがでしたか?」 イヴ04「電気系統は、予備も含めて全てのラインを確保したが……通信網関係はやはりだめだな。救難信号すら発信できそうもない。内部通信網は一応修復できたが、外部に発信できないとなるとやはりな……」 マイル04「厳しいですね。しかし、内部通信網を修復してくださったおかげで、施設内のデータにアクセスできるようになりましたよ。見てください」 イヴ05「ん……?スタックルートアイテム?これはいったい……」 マイル05「惑星間通信のログデータです。通信に失敗したエラーログのみを抜粋してあるようです」 イヴ06「エラーログの抜粋なら、通信網整備に使う目的で保持しておくことも考えられるが……」 マイル06「ええ。それより、このログをよく見てください。なにか、ひっかかりませんか?」 イヴ07「……お、おい。なぜ、コントロールユニバースへのデータばかりなんだ?」 マイル07「問題はそこです。普通、惑星間通信にエラーが発生する理由は3つ。通信機器の異常、電磁妨害、通信拒否です」 イヴ08「最新エラーログのタイムスタンプは3日前か……」 マイル08「では、スタックしなかったログを見てみましょう」 イヴ09「……ほぅ」 マイル09「……通信機器に異常は見られませんでした。この施設は今でも、コントロールユニバースから制御することができるようです。信号を受け付けています」 イヴ10「では、こちらから送信ができないだけ、ということは考えられないか?」 マイル10「ありえませんね。このコロニー群に搭載されている通信機器は送信と受信が一体型になったユニゾンタイプのものです。送信ができない場合は受信もできなくなりますね」 イヴ11「では通信機器の異常ではないのか……電磁妨害はどうだ?」 マイル11「それこそありえません。電磁妨害を受けた場合はスタックルートアイテムではなく、ブロックルートアイテムに保存されます。ですが……ごらんのとおり、ブロックルートアイテムには何も記録されていません」 イヴ12「なるほど……通信拒否、ということか」 マイル12「そうなると、今でも信号を受け付けている理由がわかりません」 イヴ13「む、そうか……普通なら、送受信全ての回線を断つだろうからな」 マイル13「はい。それに、我々が救難信号を受信したのはつい3時間前。電磁妨害も通信機器の異常もなく、普通に発信されていましたし──これ、見てください」 イヴ14「アイテムのプロパティか?……どういうことだ?」 マイル14「スタックルートアイテムの詳細を見ていくと、ある共通点が浮かび上がってきます」 イヴ15「コントロールユニバースへの送信データ、というだけじゃなく……」 マイル15「はい。全て、他惑星の軍事力に関する調査報告データです」 イヴ16「なんだかきな臭くなってきたな」 マイル16「ええ。しかも────」 イヴ17「全て……惑星リブラーのものか」 マイル17「はい。この施設を破壊したのは、リブラーの息のかかったものだと思われます」 イヴ18「コロニー群ごと破壊されなかっただけまだマシというものだな。150万人の住民もろとも跡形もなく消し飛ぶところだったのか」 マイル18「念のため、全住民を難民コロニーへ移動させましょうか?」 イヴ19「それを決定するのは私たちではなく、上だ。詳細報告をまとめて、一刻も早くここを出よう」 マイル19「では、引き続きログを漁ります」 イヴ20「頼んだぞ。私はメインドックへの連絡通路を使えるようにしてくる。あとは生存者の確認か……」 マイル20「生存者の確認は、こちらのモニターでいけそうですが」 イヴ21「熱感知モニターは、優しく生存者を保護してくれるのか?」 マイル21「……やはり、あなたのパートナーになって正解でした」 イヴ22「からかうな。宇宙で一番過激な私のパートナーになって、誰が喜ぶものか」 マイル22「瓦礫の奥で、足音が通り過ぎていくのを聞く絶望は、体験したことのない人間にしかわからないですから」 イヴ23「まだそんなことを気にしているのか。早く忘れろ」 マイル23「忘れたくても、忘れられません。私には、あなたが女神に見えたのですから」 イヴ24「……時間が惜しい。私はもう行くぞ」 マイル24「よろしくお願いいたします。モニターで反応があればお知らせいたします」 イヴ25「それが正しいモニターの使い方だ。忘れるな。人間を助けるのは人間だ。機械ではない」 マイル25「……はい。────あれで結構、照れ屋なところもあるんですよね」 イヴ26「何か言ったか?」 マイル26「いいえ、別に」 イヴ27「内部通信は異常なく使えるようだな。お前の独り言もきれいに拾ったぞ」 マイル27「それはよかったですね」 イヴ28「都合が悪くなった、の間違いではないのか?」 マイル28「無人の施設で一人コンソールに向かう寂しさは、体験したことのない人間にしか────」 イヴ29「もういい。とっとと仕事をしろ。回線は開いておくから」 マイル29「ありがとうございます」 メインドック連絡通路 イヴ30「しかし、ひどい有様だな……こうも瓦礫が多くては進むのも一苦労────ん?」 (SE:がらっ、とかそんな瓦礫音) イヴ31「誰かいるのか!?おい、いたら返事をしろ!!」 マイル30「どうしましたか?」 イヴ32「このブロックの生体反応を調べろ今何か音がしたぞ!おい!!聞こえるか!!」 マイル31「了解しまし────逃げてください!!」 (SE:咆哮のような) イヴ33「っ!!」 (SE:シャッター閉まるような) マイル32「そんな……っ、非常シャッターが!!」 システムボイス「EMERGENCY 被験生命体コードBB-8、施設外逃亡 第7ブロックを隔離します」 マイル33「なんですって……?!……緊急解除コードを受け付けない!!」 イヴ34「おい、どうなってるんだ!」 マイル34「防衛システムがまだ生きていて、あなたのいるブロックが隔離されてしまったようです!」 イヴ35「なんてことだ──っっっ?!」 マイル35「ブロック内に異常な生体反応があります、今緊急避難ルートを探しますから!!」 イヴ36「その異常な生体反応に今襲われた!!」 マイル36「な────っ!!」 イヴ37「動きはそこまで素早くないから避けられるが、空振ったヤツの攻撃が、壁を砕いたぞ」 マイル37「できれば食らわないようにしてください」 イヴ38「食らったら死ぬだろうが!!お前は早く避難ルートを探せ!!」 マイル38「すでに探しています!!」 イヴ39「避けるくらいしか能がないと思われるのも癪だが……っと!今はっ、それくらっ、いしかっ!!」 マイル39「そのまま北へ100m!!緊急ハッチを開きます!!」 イヴ40「急げ!10秒後には閉じられるようにしておけ!!」 マイル40「了解しました!」 イヴ41「あそこかっっ……!!」 マイル41「急いでください!!」 イヴ42「急いでいる!!閉じろ!!」 マイル42「……ふぅ。なんとかなりましたが……」 イヴ43「ここはどこなんだ……」 マイル43「奇遇ですね、私も同じことを聞こうと思っておりました」 イヴ44「素直にわからないと言えばいいものを……」 マイル44「わかりません」 イヴ45「いまさら遅い!……見たところ、端末しかないが……生きているのか?」 マイル45「それもわかりません。どうですか?」 イヴ46「生きてはいるが……発信のみだな。受信はしていない」 マイル46「データサンプルは取れますか?」 イヴ47「いや、無理だろう。まずはここから脱出する術を────」 マイル47「奥にコントロールルームらしきものがあるのを確認しました」 イヴ48「もうさっきみたいな化け物は出てこないだろうな」 マイル48「保障は致しかねます」 イヴ49「このブロックは既に封鎖されているようだからな。素直に通してくれればいいが」 マイル49「こちらからも緊急解除できるようなルートを模索してみます」 イヴ50「ああ、ついでに他の通信機能の回復も頼む」 マイル50「ラジャー」 コントロールルーム イヴ51「誰だ、ここをコントロールルームといったのは」 マイル51「私はコントロールルームらしきもの、と言ったまでです。何かありますか?」 イヴ52「飼育ポッドか……?さっきの化け物と似たような生命体がそれぞれ、ポッドにおさまっているぞ」 マイル52「生きていますか?」 イヴ53「そうだな……生きている、といって差し支えないだろう。脳がむき出しでも、呼吸も拍動もあるようだ」 マイル53「脳がむき出し?」 イヴ54「おそらくデータを取っているのであろうな。電極が刺さっているようだ」 マイル54「この施設は表向き、コロニーにおける住環境の研究施設のはずですが」 イヴ55「どうやらそれはあくまでも『表向き』のようだな」 マイル55「リブラーの軍部はそれに気づいたのかもしれませんね」 イヴ56「どうだ、経路は確保できそうか?」 マイル56「あなたは時々、気持ち悪いタイミングで話題を振ってきますね。今そちらからドックへ抜けるルートを見つけたところです」 イヴ57「気持ち悪いか。なかなかいい言葉だ、覚えておこう」 マイル57「ロックを解除しました。そこからは一本道です」 イヴ58「手動で開けろ、ということか」 マイル58「ええ、なぜなら────」 イヴ59「な────っっ!!」 マイル59「私も、ここへ来ているからです」 イヴ60「ご丁寧に銃まで構えて、か」 マイル60「申し訳ありません。あなたを裏切るつもりはないのです。信じてください」 イヴ61「ふぅ……どういうことだ」 マイル61「信じてください」 イヴ62「……確かに一本道だったな」 マイル62「……ええ。逃げ場のない、一本道です」 メインドックへの緊急ルート イヴ63「目的のデータは回収したのか」 マイル63「データの回収が目的ではありません」 イヴ64「誰の差し金だ」 マイル64「言えるとお思いですか?」 イヴ65「そうだな……では話題を変えよう。どこまでが演技だ?」 マイル65「変わってませんよ。……最初からです。難民コロニーへ向かうシャトルで起きた爆発事故から、全て演技です」 イヴ66「まさか……!」 マイル66「はい。全て私がやりました。観光衛星のテロも、難民シャトルの爆発事故も全て、あなたをおびき出すためのえさです」 イヴ67「つまり、目的は私か」 マイル67「いいえ。あなたは手段に過ぎません。あなたのように正義感が強く、頭の切れる方がほしかっただけです」 イヴ68「最高のほめ言葉だな」 マイル68「でしたらもう少し嬉しそうな顔をしてください」 イヴ69「正面から喉元に銃を突きつけられて嬉しそうな顔ができるほど、私はマゾではない」 マイル69「そうですか。では私はサドなのかもしれませんね」 イヴ70「見るからに嬉しそうだからな」 マイル70「ええ。あなたのように気が強く、美しい女性を好きにできるのですから」 イヴ71「目的は……私ではないのだろう」 マイル71「声が震えていますね。あまり私をぞくぞくさせないでください」 イヴ72「あのときのおまえほど震えてはいないと思うがな」 マイル72「そうですね。もっと震えていただけるとより扇情的なのですが」 イヴ73「……この変態が」 マイル73「いいですね、その反抗的な目……最高です」 イヴ74「なにをす────んっっ……ふ……ぅっ!!」(チューされちゃったわよ、チュー) マイル74「申し訳ありません。あまりにもかわいらしかったのでつい」 イヴ75「……どういうつもりだ」 マイル75「そのままです。さあ、ご理解いただけましたらおとなしく協力していただきますよ」 イヴ76「……痴れ者が」 マイル76「お褒めに預かり光栄でございます」 イヴ77「これからどうするつもりだ」 マイル77「そうですね。時間を稼ぎましょうか」 イヴ78「なるほど……迎えがくるのか」 マイル78「あなたのように聡明な女性はなかなかいらっしゃいませんよ」 イヴ79「先ほどからやたらと女を強調するな」 マイル79「ええ。ご自身が、女性という弱い生き物であると認識していただきたいと思いまして」 イヴ80「何を────」 マイル80「なんでしたら、その身に刻んでもいいんですよ?いかに弱いかを。女として」 イヴ81「救いようのない変態だな……反吐が出そうだ」 マイル81「奇遇ですね。私も何かが出そうです」 イヴ82「お前は少し黙っていろ」 マイル82「では、黙っているとしましょうか。その方が都合がよろしいでしょうしね」 メインドック マイル83「メインドックに到着しました。間もなくシャトルが横付けされるはずです」 イヴ83「こちらも状況が理解できたところだ」 マイル84「よほど先ほどのキスが効いたようですね」 イヴ84「おかげさまでな。さすがはテクノロジーの進んだ惑星出身なだけがある」 マイル85「お褒めに預かり光栄でございます」 イヴ85「シャトルには何人乗っているんだ?」 マイル86「小型ですから、私とあなたを含めても6人乗れればいいところでしょう」 イヴ86「では、最大でも4人か。それ以上となると裁ききれそうにないな」 マイル87「5人以上は相手にできそうもない、ということですね」 イヴ87「……お前が言うとどうしてこうも下品に聞こえるんだろうな」 マイル88「さあ、皆目見当もつきません──ああ、来ましたね」 イヴ88「…………」 ルーカス01「ご苦労だったな」 マイル89「な……なぜです!!?なぜ工作員が6人も搭乗しているんですか?!」 ルーカス02「当然だろう。施設とともに爆破するのだから。その女も、お前も」 マイル90「そんな……!!」 イヴ89「ふふ……あっはははははははははははははは!こいつは傑作だぞ、なあ!」 マイル91「話が違う!軍部にはまだ私の技術力が!!」 イヴ90「不要なんだよ、お前も、この私も!今の宇宙には必要ないのさ!!あっはははははははははははは!!」 ルーカス03「拘束しろ」 イヴ91「おまえの惑星には変態しかいないのか?」 マイル92「そんな……そんなことは……」 イヴ92「しかしこいつらは私たちを縛り上げようとしているぞ、まるで変態ではないか」 マイル93「そんな……」 イヴ93「だがな──生憎と、おとなしく縛られる私ではない!!」 ルーカス04「何っ?!」 イヴ94「6人もいたとなっちゃ厳しいが、仕方がない。こいつに頼まれていたからな。おい、もう演技はいいぞ」 マイル94「ふぅ。もう演技はこりごりですよ」 ルーカス05「どっ、どういうことだ!!」 マイル95「どうもこうもありませんよ、最初から全てわかっていました」 ルーカス06「なんだと……っっ!?」 イヴ95「見くびっていたのか、それともモニタに甘えていたのか……そんなことは知ったこっちゃないがな。    最初からこっちは、気づいていたんだよ。お前達が、私たちもろともこの施設を爆破するつもりだったことなんて」 ルーカス07「し、しかし気づいていたとしても!!お前にそれを教える機会なぞなかったはずだ!!」 マイル96「監視カメラがついていようが会話をモニタリングしていようが……恋人同士のキスまでは監視できなかったようですね」 ルーカス08「……っは!あの時!!」 イヴ96「実際お前の部下は優秀な技術者だよ。舌の裏に精神感応型のナノマシンを仕掛けてくるんだからな」 ルーカス09「なんという……ええい、構わん!こいつらを先に始末しろ!!」 イヴ97「やっても構わないか?」 マイル97「ええ、お願いします。宇宙で一番過激で美しいあなたの技を、存分に披露して差し上げてください!」 イヴ98「お前達に教えてやるよ、なぜ私が宇宙で一番過激な女と言われているのかをな!!」 (SE:戦闘的な音) イヴ99「さて……。あとはお前だ。どこから削られたい?」 ルーカス10「ふ……ふはははははははははははははッッ!」 マイル98「気でも触れましたか?」 ルーカス11「なるほど、確かに過激だが──詰めが甘いようだな!!」 マイル99「コントロール端末……!!爆破の!!?」 ルーカス12「俺がこれを押せば、施設内にお前が仕掛けた全ての爆破装置が連鎖的に作動するおっと!動くなよ、このスイッチは異様に押しやすくてなぁ!!」 イヴ100「そのチンケなリモコンが、何を爆破するって?」 ルーカス13「さあ、何だったかな?押してみればわかるかな?押すのは俺がシャトルに戻ってからだがな!!」 マイル100「やめろ!!」 ルーカス14「ははははははははははははは、さらばだ!宇宙の塵になるがいい!!」 (SE:ちゅどーん) イヴ101「おー……汚い花火だな」 マイル101「私は一応止めたんですけどね」 イヴ102「あいつはバカだったな。お前と私が舌下のナノマシンで意思の疎通をしていると、わざわざ教えてやったのに」 マイル102「ええ、救いようのない馬鹿でしたね。仕掛けた爆破装置は全て、イヴさんが暴れてくださってる間に私がシャトルに移しましたよ、まで教えてあげればよかったのでしょうか」 イヴ103「教えるつもりなどなかったくせに、よく言う。しかし、よく開発したなこんな物……」 マイル103「ぶっつけ本番でしたが、開発が間に合ってよかったです」 イヴ104「しかしそれなら最初から舌下に入れるよう言っておいてくれればよかったものを……」 マイル104「ああするしかなかったのです。あの状況でなければきっと、あなたは私とキスなんてしてくれなかったでしょう?」 イヴ105「そ、それはまぁ……確実に、ありえないが」 マイル105「おそらく、施設内を探索した際にあなたなら爆破装置をすべて回収している、と踏んだのです」 イヴ106「それで慌ててナノマシンを?」 マイル106「はい。メインコンソール内は監視カメラを殺してあったので、頭の中の設計図を元に組みました」 イヴ107「全く……気が抜けない男だ」 マイル107「それでも、キスをした時のあなたは大変気が抜けていらっしゃったようですよ」 イヴ108「思い出させるな!」 マイル108「気が抜けて、すぐに感応波を感知して驚いた顔をして……ああ、思い出すだけで頬が緩んでしまいそうです」 イヴ109「十分緩んでいる!!全く……」 回想シーン イヴ110「なにをす────んっっ……ふ……ぅっ!!」(使いまわします) マイル109「聞こえますか?イヴさん」 イヴ111「どういうつもりだ……」(使いまわします) マイル110「申し訳ありません。あまりにもかわいらしかったのでつい。(使いまわします)    ナノマシンを舌の裏に仕込みました。会話はモニターされています、声に出さずに、思ってください。聞こえますね?」 イヴ112「あ、ああ……」 マイル111「では、会話を私に合わせて。後ほど説明させていただきます」 マイル112「私がひどいことを言いますので、黙っていろ、と言って下さい」 イヴ113「お前は少し黙っていろ」(使いまわします) マイル113「では、黙っているとしましょうか。その方が都合がよろしいでしょうしね」(使いまわします) マイル114「歩きながら聞いて下さい。私はリブラーのスパイとして送られてきました」 イヴ114「ならばなぜ、このような面倒なことを……」 マイル115「あなたが好きだからです。好きになってしまったから、と言った方が正しいでしょうか」 イヴ115「な……っ!」 マイル116「声に出ています。あと、顔にも。できるだけ平静を装って下さい」 イヴ116「……やりづらいな」 マイル117「今、リブラーの軍部は宇宙の覇権を掌握すべく軍備を調整しています。    それと同時に、他の惑星の軍事開発を妨げるべく、各施設を秘密裏に、事故に見せかけて破壊しています。    私はその破壊工作員です」 イヴ117「信憑性のある話だ」 マイル118「武力による圧倒的な支配がリブラーの目的です。ですが……この数ヶ月、あなたと行動をともにしてわかったことがあります」 イヴ118「……言ってみろ」 マイル119「人を救うのは人、ということです。機械、ましてや武力では人は救えない」 イヴ119「スパイのくせに、情に流されたか」 マイル120「元々、リブラー軍部のやり方にはあまり納得がいっていなかったのです。そこに、こんな素敵な女性が現れたのですから」 イヴ120「ナノマシンを介して言うような台詞ではないだろう」 マイル121「いえ、このナノマシンを介して伝えることができるのは、真に自分が思ったことだけです。嘘はつけないんですよ」 イヴ121「思ったことしか伝えられない、ということだな」 マイル122「はい。私はあなたが好きです。パートナーとしても、女性としても。だから助けたい。    なんとかして二人で、この施設から無事に離脱しなければならないんです」 イヴ122「策はあるのか?」 マイル123「はい。迎えのシャトルが来たら、あなたにひと暴れしていただきます。    他の工作員もいるとは思いますが、おそらくあなたならどうということもないでしょう」 イヴ123「ずいぶんとかわれているな」 マイル124「強いところも好きですから」 イヴ124「……迎えのシャトルを乗っ取るつもりなんだな」 マイル125「はい。ですが、万が一の状況に備えておく必要がありますね」 イヴ125「できればすんなりと進んでほしいところだがな」 マイル126「相手はリブラー軍部です。それ相応の覚悟はしておくべきかと」 イヴ126「対策は?」 マイル127「施設内で爆破装置を回収しましたね?」 イヴ127「……仕掛けたのはおまえか」 マイル128「はい。イヴさんにわかりやすいように、マークアップしておきました」 イヴ128「どういうつもりかわからなかったからあえてつっこまずに回収しておいたが……」 マイル129「まだお持ちですね?」 イヴ129「ああ。置くタイミングもなかったからな。まだあるぞ、14枚」 マイル130「では、その基盤をあとで私に下さい。合図は私が出します」 イヴ130「なるほど。わかった、あとはまかせる」 イヴ131「万が一の状況になってしまって、私が目くらまししている間にシャトルに仕掛けるとはな……」 マイル131「ええ。しかし、困りましたね……帰るシャトルがなくなってしまいました」 イヴ132「元よりお前には、帰る星もないのではないのか?」 マイル132「ええ。軍部を裏切ってしまいましたからね」 イヴ133「まあいいさ。母星なんて不要だ。……ああ、このナノマシンももう不要だな」 マイル133「そうですか?まぁ、出してしまってもいいですよ。何度でも仕込みますから」 イヴ134「おまえ、自分がそうとう気持ち悪いことを言っている、ということに気がついているか?」 マイル134「私はまだ、答えを聞いていません」 イヴ135「答え?なんの話だ」 マイル135「私の気持ちに対するあなたの答えです」 イヴ136「……っっ!やはりナノマシンは出しておく」 マイル136「照れていらっしゃるのでしょうか」 イヴ137「そんなわけがないだろ────っっ……んぅぅ……」(またチューかよ!) マイル137「予備のナノマシン、仕掛けさせていただきました。さあ、答えてください。私は、あなたが好きになりました。あなたは?」 イヴ138「私は、おまえみたいな変態なんて……!!」 マイル138「変態なんて……?」 イヴ139「……愛している」 マイル139「いやあ、困りましたね」 イヴ140「なんだ……」 マイル140「故障じゃないといいのですが。どうしましょうか」 イヴ141「知るか!!」 マイル141「もしかしたら故障かもしれません。ナノマシンを抜いてもう一度、今度は声で聞かせてください」 イヴ142「絶対にごめんだ!!!」 ナレ02「人を救うのは人──それは、いつの時代も、いつの銀河も変わらない真実なのかもしれない。     その後、二人は全宇宙を巻き込んだ戦争でひっそりと活躍するのだが……     それはまた、別の話」  
作者:Elika イヴ・クリス:宇宙で一番過激な女。宇宙の安全を守る警邏隊に所属する。 マイル・レーガー:イヴの相方。最初はクールでかっこいいかなって思ってたのにどんどん変態に。 ルーカス:マイルの上司。ヤラレ役のツボはしっかりとおさえてます。 ナレ01「宇宙で一番過激な女・イヴとその相棒マイルは、パトロール中にある施設からの救難信号を受信した。     すでに半壊状態の施設からはさしあたって、生体反応はみられない。     イヴとマイルは、施設の状況を調べるべくシャトルから降りた。     しかしその直後、シャトルを停泊させたメインドックが謎の爆発によりシャトルもろとも宇宙空間へと消えてしまった。     二人は脱出するべく、施設の機能を回復させようとメインコンソールへと向かった」 メインコンソール イヴ01「そっちはどうなっている?」 マイル01「……ひどい有様ですね。どこから手をつけていいのかわかりません」 イヴ02「冗談を言う暇はあるようだな。1時間でここまで修復できたんだ、やはりお前をパートナーに選んで正解だったよ」 マイル02「そちらこそご冗談を。メインコンソールからアクセスできる機能の一部を修復したに過ぎません」 イヴ03「それだけでも随分と進歩しているじゃないか、謙遜はいい。何かわかりそうか?」 マイル03「現段階ではまだなんとも……そちらはいかがでしたか?」 イヴ04「電気系統は、予備も含めて全てのラインを確保したが……通信網関係はやはりだめだな。救難信号すら発信できそうもない。内部通信網は一応修復できたが、外部に発信できないとなるとやはりな……」 マイル04「厳しいですね。しかし、内部通信網を修復してくださったおかげで、施設内のデータにアクセスできるようになりましたよ。見てください」 イヴ05「ん……?スタックルートアイテム?これはいったい……」 マイル05「惑星間通信のログデータです。通信に失敗したエラーログのみを抜粋してあるようです」 イヴ06「エラーログの抜粋なら、通信網整備に使う目的で保持しておくことも考えられるが……」 マイル06「ええ。それより、このログをよく見てください。なにか、ひっかかりませんか?」 イヴ07「……お、おい。なぜ、コントロールユニバースへのデータばかりなんだ?」 マイル07「問題はそこです。普通、惑星間通信にエラーが発生する理由は3つ。通信機器の異常、電磁妨害、通信拒否です」 イヴ08「最新エラーログのタイムスタンプは3日前か……」 マイル08「では、スタックしなかったログを見てみましょう」 イヴ09「……ほぅ」 マイル09「……通信機器に異常は見られませんでした。この施設は今でも、コントロールユニバースから制御することができるようです。信号を受け付けています」 イヴ10「では、こちらから送信ができないだけ、ということは考えられないか?」 マイル10「ありえませんね。このコロニー群に搭載されている通信機器は送信と受信が一体型になったユニゾンタイプのものです。送信ができない場合は受信もできなくなりますね」 イヴ11「では通信機器の異常ではないのか……電磁妨害はどうだ?」 マイル11「それこそありえません。電磁妨害を受けた場合はスタックルートアイテムではなく、ブロックルートアイテムに保存されます。ですが……ごらんのとおり、ブロックルートアイテムには何も記録されていません」 イヴ12「なるほど……通信拒否、ということか」 マイル12「そうなると、今でも信号を受け付けている理由がわかりません」 イヴ13「む、そうか……普通なら、送受信全ての回線を断つだろうからな」 マイル13「はい。それに、我々が救難信号を受信したのはつい3時間前。電磁妨害も通信機器の異常もなく、普通に発信されていましたし──これ、見てください」 イヴ14「アイテムのプロパティか?……どういうことだ?」 マイル14「スタックルートアイテムの詳細を見ていくと、ある共通点が浮かび上がってきます」 イヴ15「コントロールユニバースへの送信データ、というだけじゃなく……」 マイル15「はい。全て、他惑星の軍事力に関する調査報告データです」 イヴ16「なんだかきな臭くなってきたな」 マイル16「ええ。しかも────」 イヴ17「全て……惑星リブラーのものか」 マイル17「はい。この施設を破壊したのは、リブラーの息のかかったものだと思われます」 イヴ18「コロニー群ごと破壊されなかっただけまだマシというものだな。150万人の住民もろとも跡形もなく消し飛ぶところだったのか」 マイル18「念のため、全住民を難民コロニーへ移動させましょうか?」 イヴ19「それを決定するのは私たちではなく、上だ。詳細報告をまとめて、一刻も早くここを出よう」 マイル19「では、引き続きログを漁ります」 イヴ20「頼んだぞ。私はメインドックへの連絡通路を使えるようにしてくる。あとは生存者の確認か……」 マイル20「生存者の確認は、こちらのモニターでいけそうですが」 イヴ21「熱感知モニターは、優しく生存者を保護してくれるのか?」 マイル21「……やはり、あなたのパートナーになって正解でした」 イヴ22「からかうな。宇宙で一番過激な私のパートナーになって、誰が喜ぶものか」 マイル22「瓦礫の奥で、足音が通り過ぎていくのを聞く絶望は、体験したことのない人間にしかわからないですから」 イヴ23「まだそんなことを気にしているのか。早く忘れろ」 マイル23「忘れたくても、忘れられません。私には、あなたが女神に見えたのですから」 イヴ24「……時間が惜しい。私はもう行くぞ」 マイル24「よろしくお願いいたします。モニターで反応があればお知らせいたします」 イヴ25「それが正しいモニターの使い方だ。忘れるな。人間を助けるのは人間だ。機械ではない」 マイル25「……はい。────あれで結構、照れ屋なところもあるんですよね」 イヴ26「何か言ったか?」 マイル26「いいえ、別に」 イヴ27「内部通信は異常なく使えるようだな。お前の独り言もきれいに拾ったぞ」 マイル27「それはよかったですね」 イヴ28「都合が悪くなった、の間違いではないのか?」 マイル28「無人の施設で一人コンソールに向かう寂しさは、体験したことのない人間にしか────」 イヴ29「もういい。とっとと仕事をしろ。回線は開いておくから」 マイル29「ありがとうございます」 メインドック連絡通路 イヴ30「しかし、ひどい有様だな……こうも瓦礫が多くては進むのも一苦労────ん?」 (SE:がらっ、とかそんな瓦礫音) イヴ31「誰かいるのか!?おい、いたら返事をしろ!!」 マイル30「どうしましたか?」 イヴ32「このブロックの生体反応を調べろ今何か音がしたぞ!おい!!聞こえるか!!」 マイル31「了解しまし────逃げてください!!」 (SE:咆哮のような) イヴ33「っ!!」 (SE:シャッター閉まるような) マイル32「そんな……っ、非常シャッターが!!」 システムボイス「EMERGENCY 被験生命体コードBB-8、施設外逃亡 第7ブロックを隔離します」 マイル33「なんですって……?!……緊急解除コードを受け付けない!!」 イヴ34「おい、どうなってるんだ!」 マイル34「防衛システムがまだ生きていて、あなたのいるブロックが隔離されてしまったようです!」 イヴ35「なんてことだ──っっっ?!」 マイル35「ブロック内に異常な生体反応があります、今緊急避難ルートを探しますから!!」 イヴ36「その異常な生体反応に今襲われた!!」 マイル36「な────っ!!」 イヴ37「動きはそこまで素早くないから避けられるが、空振ったヤツの攻撃が、壁を砕いたぞ」 マイル37「できれば食らわないようにしてください」 イヴ38「食らったら死ぬだろうが!!お前は早く避難ルートを探せ!!」 マイル38「すでに探しています!!」 イヴ39「避けるくらいしか能がないと思われるのも癪だが……っと!今はっ、それくらっ、いしかっ!!」 マイル39「そのまま北へ100m!!緊急ハッチを開きます!!」 イヴ40「急げ!10秒後には閉じられるようにしておけ!!」 マイル40「了解しました!」 イヴ41「あそこかっっ……!!」 マイル41「急いでください!!」 イヴ42「急いでいる!!閉じろ!!」 マイル42「……ふぅ。なんとかなりましたが……」 イヴ43「ここはどこなんだ……」 マイル43「奇遇ですね、私も同じことを聞こうと思っておりました」 イヴ44「素直にわからないと言えばいいものを……」 マイル44「わかりません」 イヴ45「いまさら遅い!……見たところ、端末しかないが……生きているのか?」 マイル45「それもわかりません。どうですか?」 イヴ46「生きてはいるが……発信のみだな。受信はしていない」 マイル46「データサンプルは取れますか?」 イヴ47「いや、無理だろう。まずはここから脱出する術を────」 マイル47「奥にコントロールルームらしきものがあるのを確認しました」 イヴ48「もうさっきみたいな化け物は出てこないだろうな」 マイル48「保障は致しかねます」 イヴ49「このブロックは既に封鎖されているようだからな。素直に通してくれればいいが」 マイル49「こちらからも緊急解除できるようなルートを模索してみます」 イヴ50「ああ、ついでに他の通信機能の回復も頼む」 マイル50「ラジャー」 コントロールルーム イヴ51「誰だ、ここをコントロールルームといったのは」 マイル51「私はコントロールルームらしきもの、と言ったまでです。何かありますか?」 イヴ52「飼育ポッドか……?さっきの化け物と似たような生命体がそれぞれ、ポッドにおさまっているぞ」 マイル52「生きていますか?」 イヴ53「そうだな……生きている、といって差し支えないだろう。脳がむき出しでも、呼吸も拍動もあるようだ」 マイル53「脳がむき出し?」 イヴ54「おそらくデータを取っているのであろうな。電極が刺さっているようだ」 マイル54「この施設は表向き、コロニーにおける住環境の研究施設のはずですが」 イヴ55「どうやらそれはあくまでも『表向き』のようだな」 マイル55「リブラーの軍部はそれに気づいたのかもしれませんね」 イヴ56「どうだ、経路は確保できそうか?」 マイル56「あなたは時々、気持ち悪いタイミングで話題を振ってきますね。今そちらからドックへ抜けるルートを見つけたところです」 イヴ57「気持ち悪いか。なかなかいい言葉だ、覚えておこう」 マイル57「ロックを解除しました。そこからは一本道です」 イヴ58「手動で開けろ、ということか」 マイル58「ええ、なぜなら────」 イヴ59「な────っっ!!」 マイル59「私も、ここへ来ているからです」 イヴ60「ご丁寧に銃まで構えて、か」 マイル60「申し訳ありません。あなたを裏切るつもりはないのです。信じてください」 イヴ61「ふぅ……どういうことだ」 マイル61「信じてください」 イヴ62「……確かに一本道だったな」 マイル62「……ええ。逃げ場のない、一本道です」 メインドックへの緊急ルート イヴ63「目的のデータは回収したのか」 マイル63「データの回収が目的ではありません」 イヴ64「誰の差し金だ」 マイル64「言えるとお思いですか?」 イヴ65「そうだな……では話題を変えよう。どこまでが演技だ?」 マイル65「変わってませんよ。……最初からです。難民コロニーへ向かうシャトルで起きた爆発事故から、全て演技です」 イヴ66「まさか……!」 マイル66「はい。全て私がやりました。観光衛星のテロも、難民シャトルの爆発事故も全て、あなたをおびき出すためのえさです」 イヴ67「つまり、目的は私か」 マイル67「いいえ。あなたは手段に過ぎません。あなたのように正義感が強く、頭の切れる方がほしかっただけです」 イヴ68「最高のほめ言葉だな」 マイル68「でしたらもう少し嬉しそうな顔をしてください」 イヴ69「正面から喉元に銃を突きつけられて嬉しそうな顔ができるほど、私はマゾではない」 マイル69「そうですか。では私はサドなのかもしれませんね」 イヴ70「見るからに嬉しそうだからな」 マイル70「ええ。あなたのように気が強く、美しい女性を好きにできるのですから」 イヴ71「目的は……私ではないのだろう」 マイル71「声が震えていますね。あまり私をぞくぞくさせないでください」 イヴ72「あのときのおまえほど震えてはいないと思うがな」 マイル72「そうですね。もっと震えていただけるとより扇情的なのですが」 イヴ73「……この変態が」 マイル73「いいですね、その反抗的な目……最高です」 イヴ74「なにをす────んっっ……ふ……ぅっ!!」(チューされちゃったわよ、チュー) マイル74「申し訳ありません。あまりにもかわいらしかったのでつい」 イヴ75「……どういうつもりだ」 マイル75「そのままです。さあ、ご理解いただけましたらおとなしく協力していただきますよ」 イヴ76「……痴れ者が」 マイル76「お褒めに預かり光栄でございます」 イヴ77「これからどうするつもりだ」 マイル77「そうですね。時間を稼ぎましょうか」 イヴ78「なるほど……迎えがくるのか」 マイル78「あなたのように聡明な女性はなかなかいらっしゃいませんよ」 イヴ79「先ほどからやたらと女を強調するな」 マイル79「ええ。ご自身が、女性という弱い生き物であると認識していただきたいと思いまして」 イヴ80「何を────」 マイル80「なんでしたら、その身に刻んでもいいんですよ?いかに弱いかを。女として」 イヴ81「救いようのない変態だな……反吐が出そうだ」 マイル81「奇遇ですね。私も何かが出そうです」 イヴ82「お前は少し黙っていろ」 マイル82「では、黙っているとしましょうか。その方が都合がよろしいでしょうしね」 メインドック マイル83「メインドックに到着しました。間もなくシャトルが横付けされるはずです」 イヴ83「こちらも状況が理解できたところだ」 マイル84「よほど先ほどのキスが効いたようですね」 イヴ84「おかげさまでな。さすがはテクノロジーの進んだ惑星出身なだけがある」 マイル85「お褒めに預かり光栄でございます」 イヴ85「シャトルには何人乗っているんだ?」 マイル86「小型ですから、私とあなたを含めても6人乗れればいいところでしょう」 イヴ86「では、最大でも4人か。それ以上となると裁ききれそうにないな」 マイル87「5人以上は相手にできそうもない、ということですね」 イヴ87「……お前が言うとどうしてこうも下品に聞こえるんだろうな」 マイル88「さあ、皆目見当もつきません──ああ、来ましたね」 イヴ88「…………」 ルーカス01「ご苦労だったな」 マイル89「な……なぜです!!?なぜ工作員が6人も搭乗しているんですか?!」 ルーカス02「当然だろう。施設とともに爆破するのだから。その女も、お前も」 マイル90「そんな……!!」 イヴ89「ふふ……あっはははははははははははははは!こいつは傑作だぞ、なあ!」 マイル91「話が違う!軍部にはまだ私の技術力が!!」 イヴ90「不要なんだよ、お前も、この私も!今の宇宙には必要ないのさ!!あっはははははははははははは!!」 ルーカス03「拘束しろ」 イヴ91「おまえの惑星には変態しかいないのか?」 マイル92「そんな……そんなことは……」 イヴ92「しかしこいつらは私たちを縛り上げようとしているぞ、まるで変態ではないか」 マイル93「そんな……」 イヴ93「だがな──生憎と、おとなしく縛られる私ではない!!」 ルーカス04「何っ?!」 イヴ94「6人もいたとなっちゃ厳しいが、仕方がない。こいつに頼まれていたからな。おい、もう演技はいいぞ」 マイル94「ふぅ。もう演技はこりごりですよ」 ルーカス05「どっ、どういうことだ!!」 マイル95「どうもこうもありませんよ、最初から全てわかっていました」 ルーカス06「なんだと……っっ!?」 イヴ95「見くびっていたのか、それともモニタに甘えていたのか……そんなことは知ったこっちゃないがな。    最初からこっちは、気づいていたんだよ。お前達が、私たちもろともこの施設を爆破するつもりだったことなんて」 ルーカス07「し、しかし気づいていたとしても!!お前にそれを教える機会なぞなかったはずだ!!」 マイル96「監視カメラがついていようが会話をモニタリングしていようが……恋人同士のキスまでは監視できなかったようですね」 ルーカス08「……っは!あの時!!」 イヴ96「実際お前の部下は優秀な技術者だよ。舌の裏に精神感応型のナノマシンを仕掛けてくるんだからな」 ルーカス09「なんという……ええい、構わん!こいつらを先に始末しろ!!」 イヴ97「やっても構わないか?」 マイル97「ええ、お願いします。宇宙で一番過激で美しいあなたの技を、存分に披露して差し上げてください!」 イヴ98「お前達に教えてやるよ、なぜ私が宇宙で一番過激な女と言われているのかをな!!」 (SE:戦闘的な音) イヴ99「さて……。あとはお前だ。どこから削られたい?」 ルーカス10「ふ……ふはははははははははははははッッ!」 マイル98「気でも触れましたか?」 ルーカス11「なるほど、確かに過激だが──詰めが甘いようだな!!」 マイル99「コントロール端末……!!爆破の!!?」 ルーカス12「俺がこれを押せば、施設内にお前が仕掛けた全ての爆破装置が連鎖的に作動するおっと!動くなよ、このスイッチは異様に押しやすくてなぁ!!」 イヴ100「そのチンケなリモコンが、何を爆破するって?」 ルーカス13「さあ、何だったかな?押してみればわかるかな?押すのは俺がシャトルに戻ってからだがな!!」 マイル100「やめろ!!」 ルーカス14「ははははははははははははは、さらばだ!宇宙の塵になるがいい!!」 (SE:ちゅどーん) イヴ101「おー……汚い花火だな」 マイル101「私は一応止めたんですけどね」 イヴ102「あいつはバカだったな。お前と私が舌下のナノマシンで意思の疎通をしていると、わざわざ教えてやったのに」 マイル102「ええ、救いようのない馬鹿でしたね。仕掛けた爆破装置は全て、イヴさんが暴れてくださってる間に私がシャトルに移しましたよ、まで教えてあげればよかったのでしょうか」 イヴ103「教えるつもりなどなかったくせに、よく言う。しかし、よく開発したなこんな物……」 マイル103「ぶっつけ本番でしたが、開発が間に合ってよかったです」 イヴ104「しかしそれなら最初から舌下に入れるよう言っておいてくれればよかったものを……」 マイル104「ああするしかなかったのです。あの状況でなければきっと、あなたは私とキスなんてしてくれなかったでしょう?」 イヴ105「そ、それはまぁ……確実に、ありえないが」 マイル105「おそらく、施設内を探索した際にあなたなら爆破装置をすべて回収している、と踏んだのです」 イヴ106「それで慌ててナノマシンを?」 マイル106「はい。メインコンソール内は監視カメラを殺してあったので、頭の中の設計図を元に組みました」 イヴ107「全く……気が抜けない男だ」 マイル107「それでも、キスをした時のあなたは大変気が抜けていらっしゃったようですよ」 イヴ108「思い出させるな!」 マイル108「気が抜けて、すぐに感応波を感知して驚いた顔をして……ああ、思い出すだけで頬が緩んでしまいそうです」 イヴ109「十分緩んでいる!!全く……」 回想シーン イヴ110「なにをす────んっっ……ふ……ぅっ!!」(使いまわします) マイル109「聞こえますか?イヴさん」 イヴ111「どういうつもりだ……」(使いまわします) マイル110「申し訳ありません。あまりにもかわいらしかったのでつい。(使いまわします)    ナノマシンを舌の裏に仕込みました。会話はモニターされています、声に出さずに、思ってください。聞こえますね?」 イヴ112「あ、ああ……」 マイル111「では、会話を私に合わせて。後ほど説明させていただきます」 マイル112「私がひどいことを言いますので、黙っていろ、と言って下さい」 イヴ113「お前は少し黙っていろ」(使いまわします) マイル113「では、黙っているとしましょうか。その方が都合がよろしいでしょうしね」(使いまわします) マイル114「歩きながら聞いて下さい。私はリブラーのスパイとして送られてきました」 イヴ114「ならばなぜ、このような面倒なことを……」 マイル115「あなたが好きだからです。好きになってしまったから、と言った方が正しいでしょうか」 イヴ115「な……っ!」 マイル116「声に出ています。あと、顔にも。できるだけ平静を装って下さい」 イヴ116「……やりづらいな」 マイル117「今、リブラーの軍部は宇宙の覇権を掌握すべく軍備を調整しています。    それと同時に、他の惑星の軍事開発を妨げるべく、各施設を秘密裏に、事故に見せかけて破壊しています。    私はその破壊工作員です」 イヴ117「信憑性のある話だ」 マイル118「武力による圧倒的な支配がリブラーの目的です。ですが……この数ヶ月、あなたと行動をともにしてわかったことがあります」 イヴ118「……言ってみろ」 マイル119「人を救うのは人、ということです。機械、ましてや武力では人は救えない」 イヴ119「スパイのくせに、情に流されたか」 マイル120「元々、リブラー軍部のやり方にはあまり納得がいっていなかったのです。そこに、こんな素敵な女性が現れたのですから」 イヴ120「ナノマシンを介して言うような台詞ではないだろう」 マイル121「いえ、このナノマシンを介して伝えることができるのは、真に自分が思ったことだけです。嘘はつけないんですよ」 イヴ121「思ったことしか伝えられない、ということだな」 マイル122「はい。私はあなたが好きです。パートナーとしても、女性としても。だから助けたい。    なんとかして二人で、この施設から無事に離脱しなければならないんです」 イヴ122「策はあるのか?」 マイル123「はい。迎えのシャトルが来たら、あなたにひと暴れしていただきます。    他の工作員もいるとは思いますが、おそらくあなたならどうということもないでしょう」 イヴ123「ずいぶんとかわれているな」 マイル124「強いところも好きですから」 イヴ124「……迎えのシャトルを乗っ取るつもりなんだな」 マイル125「はい。ですが、万が一の状況に備えておく必要がありますね」 イヴ125「できればすんなりと進んでほしいところだがな」 マイル126「相手はリブラー軍部です。それ相応の覚悟はしておくべきかと」 イヴ126「対策は?」 マイル127「施設内で爆破装置を回収しましたね?」 イヴ127「……仕掛けたのはおまえか」 マイル128「はい。イヴさんにわかりやすいように、マークアップしておきました」 イヴ128「どういうつもりかわからなかったからあえてつっこまずに回収しておいたが……」 マイル129「まだお持ちですね?」 イヴ129「ああ。置くタイミングもなかったからな。まだあるぞ、14枚」 マイル130「では、その基盤をあとで私に下さい。合図は私が出します」 イヴ130「なるほど。わかった、あとはまかせる」 イヴ131「万が一の状況になってしまって、私が目くらまししている間にシャトルに仕掛けるとはな……」 マイル131「ええ。しかし、困りましたね……帰るシャトルがなくなってしまいました」 イヴ132「元よりお前には、帰る星もないのではないのか?」 マイル132「ええ。軍部を裏切ってしまいましたからね」 イヴ133「まあいいさ。母星なんて不要だ。……ああ、このナノマシンももう不要だな」 マイル133「そうですか?まぁ、出してしまってもいいですよ。何度でも仕込みますから」 イヴ134「おまえ、自分がそうとう気持ち悪いことを言っている、ということに気がついているか?」 マイル134「私はまだ、答えを聞いていません」 イヴ135「答え?なんの話だ」 マイル135「私の気持ちに対するあなたの答えです」 イヴ136「……っっ!やはりナノマシンは出しておく」 マイル136「照れていらっしゃるのでしょうか」 イヴ137「そんなわけがないだろ────っっ……んぅぅ……」(またチューかよ!) マイル137「予備のナノマシン、仕掛けさせていただきました。さあ、答えてください。私は、あなたが好きになりました。あなたは?」 イヴ138「私は、おまえみたいな変態なんて……!!」 マイル138「変態なんて……?」 イヴ139「……愛している」 マイル139「いやあ、困りましたね」 イヴ140「なんだ……」 マイル140「故障じゃないといいのですが。どうしましょうか」 イヴ141「知るか!!」 マイル141「もしかしたら故障かもしれません。ナノマシンを抜いてもう一度、今度は声で聞かせてください」 イヴ142「絶対にごめんだ!!!」 ナレ02「人を救うのは人──それは、いつの時代も、いつの銀河も変わらない真実なのかもしれない。     その後、二人は全宇宙を巻き込んだ戦争でひっそりと活躍するのだが……     それはまた、別の話」  

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