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土3_06 - (2008/10/02 (木) 22:53:41) のソース

「いーじゃねーか。大きめに切ったんだから崩れても」
「出来上がったときに不恰好になるだろう」
 俺は鍋の中身を取り出して、角っこを削っていった。
 やがて角を取り終え、すべての材料を放り込み終えて、鍋に水を加えた。
 調味料の器を持って、中味を鍋にあけようとしたら、また乙女の声が飛んできた。
「早い」
「……」
「火をつけて、煮立ってから三分後。でないと味を含まなくなる」
 なんか、イライラしてきた。
 しかし俺は黙って従った。乙女の好きにさせねえと。リラックスさせてやらねえと。
 大鍋は沸騰するまで時間がかかった。俺は腕組みして待った。
 やがてぐつぐつ言い始めたので、醤油の瓶を握りつつ時計を見て、三分待って、い
ざ投下しようとしたら、また声が飛んできた。
「順番」
「なんだよ!」
「甘いものが先。砂糖とみりん。次に塩。醤油は材料が煮えてからだ」
「……」
「しかもちゃんと量を計ってない。目分で入れると味が狂う。辛すぎてはどうしよう
も……」
 俺は乙女の首を抱くようにして台所を出た。
 ロビーを横切る途中で、乙女が椅子に腰をぶつけたので、いったん立ち止まった。
 乙女は痛そうに腰を撫でながら、俺を見た。
「どうしたんだいきなり」
「乙女、やっぱり寝てたほうがいい。あんた目を開いている限り、なにかにピリピリ
し続けるから」
 乙女は口を開いて、なにか言いかけ、その言葉を飲み込んだ。
 それから皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「能力と性格には関係があると思うか?」
 いきなりの話題変換に驚いた。
 だが乙女は、いま腰をぶつけたばかりの椅子に座って、俺の返事を待っていた。
 だから俺も別の椅子をひいて、そこに座った。

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