星座で801 @ wiki内検索 / 「ことり池攻略」で検索した結果

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  • ことり池攻略
    207 :やぎの夏休み(ことり池攻略):2008/09/30(火) 21 37 29 ID ???0  ことり池攻略の日、川田地方の朝は曇りだった。  平野部よりも標高が高いこの地方で山羊は涼しい朝を迎えたが、起きるなり窓の外の明るさ で天気がよくないことを知った彼は出発を少しばかりためらった。今日は神社からことり池 までかなりの距離を一人で歩かなければならない。どんなに途中で疲れても、最低でもバス停 まで歩かなければ自力で家には帰れないのだ。 「雨にぬれたらやだなあ。ザーッて降るのかな」  明日に延期してもいいけれど……そこまで考えて、思い直す。もし本当に雨が降るのなら 家の中にいたくない。することがなさすぎてまた考え事の虫が畳の隙間からわいてきそうな 気がするから。  結局リュックの中に折り畳み傘を追加し、ビニール袋ももう少し余計に入れた。先に起きて いた乙...
  • ことり池攻略5
     牡牛のそば屋からは車道沿いの看板で残り数字を数えながらの遠足になった。長い林道 だった道にも観光客相手の食べ物屋やお土産屋がぽつぽつ出てくる。歩けば歩くほど変わって いく景色に山羊が息を弾ませながら進んでいくと、山羊はとうとうことり池前の広場にまで たどり着いた。  ことり池前の広場は神社周辺に負けず劣らず人が多かった。知る人ぞ知る場所という予想 からは離れていたが、広場にある色とりどりの花壇に咲く花が森の花とは違う明るさで山羊 をやさしく迎える。  着いた!  山羊はばんざいのポーズからそのまま空に向けて思いっきり大きく伸びをした。ことり池は どうも植物園と隣り合った池のようだ。散歩道の木にはところどころ案内板やネームプレート がくくりつけられている。きょろきょろしながら他の観光客にまぎれて進んでいくと、散歩道 のある林からさらに奥に知らない植物の密生する池がちら...
  • ことり池攻略4
     しばらく無言で夢中で天ざるそばを食べた。味わうというにはがつがつした動きだったが、 山羊がようやく一息ついたのはお腹がいっぱいになって再度お冷を飲んだ後だった。 「おいしい」  まだそばが少し残っている。これもゆっくり味わって食べる。ことり池まではここから ならすぐだ。山羊が元気を出してうきうきしていると、不意にカウンター席の前の調理場に 調理着を着た男が一人現れた。  蟹とは違って、温厚だが物静かなたたずまいの四十男だった。じっと山羊を見ている。 山羊が自分に向けられた視線に気付いて緊張しながらぺこりと頭を下げると、男はそこから 微笑んで山羊が店員に預けた水筒をカウンターにおいてくれた。 「ようこそ。食べに来てくれてありがとう。そばは美味しかったかな」  山羊はなんとなく、雰囲気からこの男が店主の牡牛だと気付いて肩の力が抜けた。こくり とうなずくと牡牛の目尻が垂れ...
  • ことり池攻略7
     一人身の男が会ったばかりの他所の子どもを連れて歩くことがどれだけ警戒されるか、 射手という男は熟知していたのかもしれない。山羊が池のほかの場所に行くと言っても彼は ついて来なかった。山羊が一人でことり池と植物園を満喫して、ふたたび池のほとりに戻って くると射手はまた時間を忘れたようにことり池の絵を描いていた。 「絵うまいんだね」 「ありがとう。人に見せる絵でもないんだけどね。そう言ってもらえるとうれしいよ」 「射手さんは川田の街や森が好きなの?」 「好きだよ。子どもの時、ここに来てよく友達と遊んでた」  絵筆を動かし、遠くを見つめながら射手は山羊に喋り続けた。子どもの時にこの地方で 怪我をして左目を失ったこと。それを思い出すのが嫌で、大人になるまでしばらくはこの 地方に来られなかったこと。 「なんでも、怖くて一度引き返しちゃったところって余計にそうだろ。怖いと思って...
  • やぎの夏休み0
    ...り2 地図をつくる ことり池攻略 現在連載中 小説メニューへ
  • ことり池攻略2
     小さなスニーカーでとことこと歩き続けて、途中で一度止まって振り返ってみる。  それまで自分が立っていた地点がもうずっと遠くにまで離れているのを確認して、少し その場に立ち尽くしていた。今日は誰も止めにこない。何かあっても自分ひとりでどうにか する旅。 「もう神社がみえないや……」  ──僕は思ったよりもいっぱい歩けるんだ。  ──車なんかなくたって、大人なんか見ていなくたって、誰も見ていなくたって。森の木や 鳥や虫がそっと見ててくれる。僕は自分の足で、好きなところへ、どこまででも行けるんだ。 疲れてもその時は休んで、あきらめさえしなければ。  学校で暗くうつむいていた時のことを山羊は思い出さなかった。山の景色はどこを見ても 元気いっぱいで、林の木の並び具合やその辺に生えている草の葉っぱの形すら面白くて、 そんな昔を思い出していたらもったいなかったから。 ...
  • ことり池攻略3
     ようやく見えた最初の目的地に山羊は大きな声をあげた。蟹のそば屋以外に皆で行った ことがあるそば屋はここだけだ。そばの味は通を唸らせるほどの造詣だが、山奥にありながら 車での客を受け容れる駐車場がそれほど大きくなく、いつもそこに収容できる程度の客しか 受け付けない。そうやって客数をセーブすることで自然にそばの質を保っているのだと双子 だか乙女だかがうんちく交じりに語っていたのを山羊は聞いたことがある。  一気に気がはやって100mがとても長く感じた。車道の下り坂を降りた先に何台もの車が 並んで左折した列を作っている。駐車場が空かなくて順番待ちのようだ。山羊は出し抜く ような気持ちでその横をすたすたと通り過ぎていった。牡牛のそば屋は純和風なつくりで 駐車場と一緒にそびえ立ち、山羊がリュックサックを背負ってその自動ドアをくぐると 玄関に微かに溜まった松の香りで彼を出迎えた。 ...
  • ことり池攻略6
     絵を描いている男の左目は義眼であった。子供の山羊の言い方で言えば、「右目が動いて いるのにこっちだけ動いていない目」。描写対象の池に向ける表情はすっきり透徹して美しい 印象すらあるのに、全体の動きの中でついていけずに眼窩にとどまっている左目の存在だけが どうにも不自然に見えた。  悪いものを見た気がして、山羊はつい顔を横にそむけた。それがまたちょっと遅かった。 「こんにちは」  声をかけたのは男のほうだった。気さくな声が響く。山羊がびっくりして、視線を男の 胴体あたりにそらしながら「こんにちは」と返事をすると、男は山羊の声から緊張ぶりを 感じ取ったのか苦笑して目を伏せ左目を手で隠した。 「ごめん。びっくりしたか。これならびっくりしない?」 「あ、いや……ごめんなさい」 「いや、こっちこそごめんな。左目が作り物なんだ。いつもは色眼鏡かけてるんだけど、 絵を描くときは...
  • ことり池攻略8
     面白がっている射手と話しているとさびしい気分も抜けていく。山羊はその場で射手を 友達認定すると、リュックから取り出した乙女のおにぎりを射手と半分こにして食べた。  なんだか振り返ると川田に来てから知っている人の数がどんどん増えている気がした。 乙女の家を出る時には帰りも徒歩でと思っていた山羊だったが、射手と話しているうちに バスで帰ろうと思い直す。義眼を晒しながら朗らかによそでの冒険譚を笑い話交じりに語る 射手の姿は、山羊にはとてもものめずらしく見えた。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 牡牛と射手編でした。どうにかペースを巻き返していければ……。 お腹がすきました。 やぎの夏休みメニューへ
  • 地図をつくる2
    ...羊は子供がてらに ことり池攻略のために一日準備日を作ったのだった。  まずリュックサックに入れるものをチラシの裏に書いて準備する。水筒。大きいおむすび 一個。攻略マップ(チラシの裏)。サインペン。お財布。乙女おじさんの携帯電話。レジャー シート。ハンカチ。ティッシュ。ビニール袋二枚。レインコート。絆創膏三つ。なんとなく いろんなことが不安で替えの服も入れたほうがいいだろうかと乙女にたずねたが「リュックに 入らん」とあっさり一蹴された。代わりに帽子を渡される。日射病にとくに気をつけるように とのことだった。  朝出発してことり池に行く途中で、牡牛のそば屋に立ち寄って水筒の水を補給してもらう ようにと乙女に言われた。順調にいけば牡牛のそば屋で早めの昼食になる。 続き
  • 地図をつくる3
    ...笑った。  ことり池攻略について話がてら、山羊はねのと参りの途中でにょろに触ったという話を 水瓶にした。それまでお兄さん面していた水瓶もこれには目の色を変える。 「やはり君はにょろに親和性があるのかもしれない。あいつらは暗闇を好むという仮説が あったが、それも間違ってなかったようだ」  知性の光る落ち着いた口調で真剣にそう言われたものだから、山羊はまじめな面持ちに なって”やっぱりあそこにはにょろがいたんだ”という確信を強くした。虫たちが盛大に ざわめくトラック脇の木陰でにょろ捜索隊の密談は続いた。 「風みたいにさわさわしてたんだ。あのね、手の産毛をさわさわーって触ってきたんだ」 「さわさわした感触か……思ったより湿度がないのかな。あるいは髪の毛や何かみたいな 体毛に近いものが触れたのか」 続き
  • 地図をつくる5
    ...です。 続き・ことり池攻略 やぎの夏休みメニューへ
  • プラグイン/ニュース
    ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【まおりゅう】八星之紋章交換のおすすめ交換キャラ - AppMedia(アップメディア) Among Us攻略Wiki【アマングアス・アモングアス】 - Gamerch(ゲーマチ) マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」:時事ドットコム - 時事通信 マニ...
  • 晩ごはん02
     乙女おじさんはそんな山羊の姿を悲しそうな顔で見つめていた。 「何でそんなに自分をいじめるような決め付け方をするんだ?」  それが第一声だった。乙女はうつむく山羊の前にしゃがみこみ、少しでも山羊に自分の声を 届かせようと下から山羊の顔を覗き込んだ。 「おとうさんは心配してたよ。お前のかたくなさを。話をしたいけどできないって悩んでた」  山羊は眉間に眉を寄せたまま黙っていた。双子は自分の兄に嘘をついた。本当の双子は話を したいといいながらいつもご機嫌とりばっかりで、本当に大事なことは一度も話そうとして くれなかった。 「本当の親子だから、いろいろ上手くいかないこともあるんだろうとおじさんは思う。おじ さんは山羊のお父さんがまだ話してないことがあると思ってるけど、聞き出すには時間が なかったからとりあえず山羊をうちで預かることにした。  山羊が、本当に困ったときいつでも逃...
  • 超能力14_01
    216 :超能力SS14:2008/10/02(木) 21 06 04 ID GD1y3wxs0  眼鏡を外した乙女は、壁の時計を見つめている。  そして時計のあらわす時刻を読んでると同時に、見ているのは、この家のある山の ふもと。  山道の入り口で、戦いを始めようとしている天秤の姿だ。 「天秤は閉店した売店に潜り込んでいる。手を胸に当てている。いまシャツのボタン を開き始め」 「説明しなくていいよ、そんなこと」 「……俺だけ覗きなんて不公平だ」 「仕方が無いだろ」  乙女はしばらく微妙な表情をしつつ、天秤のストリップを遠視していた。  やがて口を開く。 「……時間通り。いま車が山道に到着。道路を走り、いま急なカーブを曲がっている。 減速した車に、山の斜面に待機していた天秤が飛び込んだ」  乙女は目を閉じて、視点の位置を変更しているみたいだった。 「車内...
  • 超能力15_01
    228 :超能力SS15:2008/10/09(木) 21 30 26 ID fclKttsw0  俺たちは安全のためも兼ねて、なるべく獣道を歩いていた。  だが何回かは、道路を横断しなきゃならなかった。  そしてあるとき、道路に向かって、低い崖みたいになったところから滑り降りたと ころで、対面の木々のあいだから牡牛が出てくるのを見た。  牡牛は俺らを見て片手をあげると、道路の真ん中まで歩いてきて、それからこう言 った。 「もうすぐ、次の出来事が起こる。双子の先読みでも変更は無かった。だから俺が来 た」  タイムテーブルによると、あとすこしで、家に訪問者が来る予定になってた。  ってことは、その人物は、今くらいの時間に、この道路を通るはずだ。  牡牛は裸の天秤を見ると、「寒くないのか」と言った。  天秤は大丈夫と答えると、俺の聞きたかったことをかわりに聞いてく...
  • うーちゃんとさーちゃん3
    夏も終わって、僕ら水泳部や大きな大会のない部活の連中の間ではエロ本が流行っていた。 僕は女の人の裸体を見てもぴくりともしなかった。「ガキだな」って馬鹿にされたけど。 自分の中で起こっていることがそういうことじゃないのを、本当は知っていた。 うーちゃんもエロ本を見せられていた。よくわかってない不思議な顔をしていた。 うーちゃんがあのエロ本を後で思い出して、一人で気持ちいいことをするのかなと思った。 僕はそんなうーちゃんの姿ばかり妄想していた。誰もいない部屋でそれをやると切なくなって、 僕は疼いてたまらない場所をこっそり我を忘れるまで擦っていた。 我を忘れたあとで元に戻って、涙がこみあげた。 僕の声は多分そこそこ低い。だけどうーちゃんの声はもっと低くて、それを聞くと僕はだめになってしまう。 僕の距離の取り方はあんまり不自然で、それなのに僕は毎日うーちゃんを見ずにいられな...
  • 土3_10
     そのあと俺は、またやることが無くなっちまったので、台所に戻った。  牡牛が米を研いでる横で、道具を洗いつつ、メシの仕上がりを待った。  だけど煮物はやっぱり時間がかかった。みんなが帰ってきても間に合わなくて、け っきょく、カップラーメン12個つくって食った。  メシのあと、俺は牡牛に、さっきの乙女との出来事を話した。  牡牛はなんか、不気味な笑みを浮かべた。 「けっきょく乙女は眠れなくなったのか」 「かもな。大丈夫かな。ラーメン食ってるときも目がうつろだった」 「時々、牡羊は策士だなって思う。けどそんなことはないから、牡羊はタチが悪い」  意味がわからねえ。 「おれの態度がアホすぎて、乙女が呆れちまったって意味か?」 「ぜんぜん違う」 「もうちょっと詳しく説明しろよ」 「人間、なにかに悩み出したら、べつの悩みには気が回らなくなるってことだよ」  乙女を悩ませた...
  • 火3_03
     さらに何かを尋ねようとしたとき、俺たちは、笑い声を聞いた。  湖面を吹きわたる哄笑。俺たちは辺りを見回し、背後を振り返った。  ……俺は何を見つけちまったんだろう。  高い木が生えていて、その木のてっぺんに、へんなやつが立っていた。  真っ赤なボディースーツ。仮面。肩からかけた白いギター。青いスカーフが風にな びいている。  射手を見ると、目が輝いていた。  獅子を見ると、なんか嫌そうな顔をしていた。  俺は獅子のほうに尋ねた。 「なんだありゃ?」  獅子はやっぱり嫌そうに答えた。 「孔雀という。むかしのグループの仲間だ。俺が今の家族に参加する前の」  そりゃ初耳だ。獅子はむかし、川田ん所でもうちでもない、第三のグループに居た のか。  射手が移動した。高い木のてっぺん。ヒーロー風な孔雀の横に。 「なあ! おまえ何やってんだ?」  とつぜん現れた射手の大声...
  • ねのと参り2_03
     乙女おじさんは山羊の頭を撫でると拝殿から山羊を連れて自分の家に帰る。その晩は二人で 同じ部屋に布団を並べて寝た。ひそかにいくじなしと馬鹿にされるかもしれないと思っていた 山羊だったが、乙女おじさんは”霊がかかわることはそれぐらいで別にいいんだ”と割り 切ってあっさりしたものだった。  次の日、山羊はねのと参りの話をしようと朝から蟹のそば屋に立ち寄った。蟹は山羊の話 を聞いて眉を八の字にしながら笑っていたが、朝はどうも忙しいらしく「また遊びにおいで」 といって従業員用のそば飴を二つ山羊に持たせてくれた。  人がたくさん居るように見える時期でも、この地方に定住している人間は少ない。  水瓶のところにもにょろの生態を報告しにいこうと思ったが、いかんせん移動青果店なので 朝方の水瓶の居場所は杳として掴めなかった。二人の話し相手のイベントが終了すると山羊は またし...
  • 水3_08
     徹夜で読んだ。本は分厚かったけれど、文章は綺麗で、話はわかりやすくて、読み やすかった。  いや、知らない人間にはそう思えるだろうって事だ。  俺は蠍を知っているから、その美しい文章の向こうに、すごく深いものが描かれて いることや、わかりやすい話の奥に、めちゃくちゃ複雑なものがあらわされているこ とを理解できる。  話はこうだ。ある男が、ある女に出会う。男は売れない歌うたいで、女は作家のタ マゴ。  男はいいやつだ。単純で優しくて馬鹿。歌うだけしか能が無い。  そして男は、病気だか呪いだか、よくわからんマイナスポイントを持ってて、その せいで、人を好きになることができない。  ……この病気ってのは、能力のことだろう。そして惚れられねえってのは、制限の ことだ。  女は男を好きになったので、男を応援する。  ……応援な。間違いなく蠍は、カラスに能力を使ったんだろ...
  • 水6
     気持ちよくて、すごく気持ちよくて、頭がぼうっとしてきた。  その、ぼうっとした頭に、蠍の声だけが響いている。  ――脱げ。脱がせろ。寝ろ。触れ。ここ。ちがう、ここ。――  俺は彼を綺麗だと思っている。言われたとおりに舐めて噛んで吸って、好きでたまらないものをむさぼっている。  彼の、細いからだが好きだ。しっとりした皮膚が好きだ。小さい乳首が好きだ。  へそも、尻も、……なんか絶対に触ったりしゃぶったりしたくないはずの男のアレも、好き。すげえ好き。  だけど俺は男の抱き方なんか知らないから、蠍は俺を上向きに寝かせて、俺の腰の上に乗っかって、自分で挿れた。  そして蠍の声が命じる。 「感じろ」 「……ッ!」 「もっと。もっと感じられる。牡羊はいま気持ちいい。感じろ」  感じる。蠍を感じる。俺の弱いところは今、蠍の腹に飲まれて、蠍のすべてに包まれている。  達することは...
  • 七夕獅子蟹2
     雨のせいでしっとりとした片手をジーンズのポケットに押し込みながら、もう片手に差した 傘の先に商店街の風景を見つける。  子どもの頃から変わらない街並みと人々。いつもこの時期になるとモールの中にテントが 張られ、商店街で買い物をした客に笹竹の引き換えチケットが手渡されるのだ。毎年たくさん のカップルと家族連れがテントの前に長い列を作る。  今年は獅子と二人で過ごす初めての七夕なんだ……買い物をして人々の列に並びながら蟹が 小さくキラキラ星の口笛を吹いていると、少しずつ列が動いてテントが近づいてくる。  雨の中に人々の熱気が仄白いけむを巻いていた。蟹は揺れる人の列の中に愛する男の背中を 見つける。それまで温かった微笑がぱっと輝き、彼は遠くから声をかけようと口を開けた。 「──え?」  口まで開けたのに、彼の喉は男の名を搾り出しはしなかった。  列の先で傘をさ...
  • 風2_08
     水瓶は手に新聞を持っていた。それを俺に向かって突き出してくる。 「読め」  今日の事件が記事にでもなってるのかと思った。あわてて新聞をひらいて読み上げ る。 「えーっと、ゾディアック社にインサイダー疑惑……」 「ちがう。日付だ。日付を読め」  日付くらい覚えてるんだが、俺は素直に読んだ。  水瓶は深く頷き、ひとりで納得していた。 「間違いない。今日だ。今日が記念日なんだ」  俺は脳みそと口のあいだにモノが挟まったような気分になり、うまく喋れなかった。  かわりに双子がつっこんだ。 「水瓶。あんたは賢いくせに馬鹿だから、ちゃんと順番に説明する癖をつけなきゃ駄 目だぜ」 「失礼な。僕は馬鹿じゃない馬鹿にするな」 「今日がどうかしたのか?」 「むかし、未来の天秤に聞いたんだ。今日は記念日だと。牡羊のことで決断をした最 初の日だと彼は言っていた」  むかし、未来...
  • 水4
    「家族?」 「まあ、すぐに結論を出せとは言わないから、とりあえずゆっくり休んでなよ。まだ洗った制服も乾いてないし」  言われて身をさぐると、俺は俺のものじゃない服を着ていた。  蟹はベッドを離れながら、ついでのように言った。 「僕は仕事に戻るね。牡羊も退屈なら、建物の中だったら自由に歩いてもらってかまわない。だけど勝手に逃げ出そうとは思わないこと。……無駄だから」  最後の一言が、やけに強く聞こえた。  しかし蟹は、キツさなど微塵も感じさせない、人の良さそうな笑顔を浮かべたまま、部屋を出て行った。  俺は助けられたんじゃなくて、捕まった、のか?  ※※※  しかし出歩いても良いと言ったのはむこうだ。  遠慮なく出歩こうじゃねえの。出歩きついでが遠出になっちまうかもしれないけど、それは逃げ出したことになるのかもしれないけれど、仕方が無いよな?  スリッパを履...
  • 土2_07
     牡牛の先祖は武士だった。たくさんの武功をたてて、褒美として、殿様に、この刀 を貰ったんだそうだ。  しかしその刀は、敵の武将の遺品でもあった。  刀は血を求め、牡牛の先祖にとり付き、牡牛の先祖を狂わせた。 「先祖はある日、この刀を持って、家中の人間を惨殺したのだという。それ以来、俺 の一族に武士はいなくなった。みな農民として暮らした。そうすると刀は一族を呪わ なくなった」  じゃあこの刀は、いま現在は、別に呪いグッズでもないわけだ。  俺がそう言うと、牡牛はうなずいた。 「今は武士の居ない世の中だし、刀が価値のある品物だということは間違いない。だ から鑑定はいらない」  しかし、山羊が言った。 「牡牛がこれから、一度も戦わないということは、あり得るんだろうか」  俺らは黙った。  武士ってのは、殿様のために戦う人だ。  うちには別に殿様はいねえけど、俺、戦い...
  • 晩ごはん03
     夕飯はハンバーグだった。乙女おじさんが手作りで作ってくれたようだ。子供にはとりあ えずハンバーグを作れば喜ばれるという思い付きはどこの大人でも変わらないらしい。 「僕ね、昼間に外のわらの屋根からへんなのが出たのを見たんだ」  乙女と二人で夕飯の食卓を囲みながら山羊は昼間の化け物の話をした。乙女はわらの屋根 について「かやぶき屋根だ」と訂正しながら、同じ口で物の怪がいるのかもしれないなと オカルトな話をした。 「信じるの? そういうのがいるって」 「おじさんの家は見えないものを相手にしてご飯を食べさせてもらってる。物の怪も八百万の 神様もいることにしといたほうが上手くいくんだ。なんでもそうだ」 「あれ何だったんだろう」 「おじさんの知識が追いつかない物の怪か新種の物の怪だな。また見たら教えてくれ」  テレビではアニメも流れておらず、つまらなかった山羊は「僕ハンバーグも...
  • 風3_06
     俺の上に乗ったまま、現在の水瓶は言った。 「結論から言うと、川田の放った刺客が、いま牡羊を狙っている。光線をあやつる能 力者だ」  過去の水瓶がつぶやくように言った。 「すべて、本当なのか」  現在の水瓶が答える。 「本当だよ。きみが、今よりもさらに未来のぼくからの伝言を受け、調べあげた不幸 な事実は、すべて本当だ」  言いながら水瓶はふところに手を入れた。なにか丸いものを取り出す。 「光線をあやつる能力者の存在を知ってから、彼に対抗する術を考えていた。まあ簡 単だった。こうすればいい」  言いながら水瓶は、その丸い鏡をかかげた。  窓から飛んできた光は、入ってきたのときっちり同じ角度で、鏡に反射した。  光線の狙っている位置を知らなければ、できない行動だった。  水瓶は面白がるような目を窓に向けた。 「ちなみに能力者は向かいの校舎に居るんだ。光線は眉間から...
  • 七夕獅子蟹6
     怖かった。ドアの向こうの人々に答えることが。  またすぐに、気持ちがこみ上げて醜態を晒してしまいそうで。 「蟹! もしかしてさ、蟹は女の人を連れた獅子を見なかった!? 長い髪の。  そのせいだったら絶対勘違いしてるから! 開けて」 「そ、そうだ! 俺のせいじゃないぞ」  なにが獅子のせいじゃないって? 「どうしてうちにまで来るんだよ……」  怒りに震えた声が思ったよりも小さくて、急に腹が立ってくる。なにが獅子のせいじゃない って? こんなに、こんなに酷い思いで一日動けなかったのに。  蟹は泣きながら怒りにかられてゆっくりと立ち上がった。ものものしい足取りで、玄関に 立ってドアを開ける。音だけで不穏な感情が溢れ出ているのを知らしめながら。  来客は三人いた。一人は魚。そしてもう一人は獅子。それから長い髪でスカートを履いた男。  なんとな...
  • 土3_03
    「あれが無いと何も見えない。仕事にならない」 「今日はゆっくりしてたらいいんじゃねえの」 「そうはいかない。時間もないし、出来る準備は完ぺきに整えておかないと」  言いながら乙女は身を起こし、宙を睨んだ。 「……山道の工事が、終わってる。道具を撤去している。やはりルートの変更は無い から……」  俺は、驚いた。いま制限で倒れたばかりなのに、また能力を使ってるのかこいつは。  ベッドに飛び乗って手を伸ばし、乙女の目をふさいだ。けどそれじゃ意味が無いっ てことも知ってた。  だからとりあえず、くすぐっておいた。  ひとしきり乙女を暴れさせたあと、もう何も見てないと確認してから、俺は手を離 した。  乙女は肩で息をしつつ、俺を睨んだ。 「なんなんだ、いったい」 「今日は休むんだよ乙女は。神経が参ってるんだから」 「いま思い切り暴れさせておいて、休めもくそも無いだろう...
  • 蟹誕生日ネタ
    51 :蟹誕生日ネタ:2008/07/17(木) 15 48 21 ID ???0 双子誕生日ネタにレスをいただきありがとうございました。 終了の一文がなかったり読みづらかったりと大変失礼致したにもかかわらず、 本当にうれしかったです。 そこで今回だけ蟹でリベンジ挑戦させてください。社会人・蟹視点で相手は牡羊です。  閉じたままのまぶたに太陽の白い光を感じて、俺はゆっくりと目を開けた。 いつも隣にあるはずの牡羊のからだがそこにないことに少し戸惑ったが、視線を反対側に移すと、 冷蔵庫の前にしゃがみこんでひとりごとをつぶやく幼なじみの姿があった。  時計を見ると、まだ7時前。 牡羊がこの時間に起きているなんて、ましてや俺より先に起きて朝食の準備をしているなんて、 一体何事なのだろう。 「どうしたの?今日、起きるの早いね」  俺はベッドに寝転んだまま、ガス...
  • 七夕獅子蟹7
     蟹は獅子と水瓶にアパートの廊下で土下座させ、結局泣きながら何度も同じ繰り言を喚き 散らしていた。自分でも欠点だとわかっているのに、一瞬でここまで頭にきてしまって止め られない。 「なんでそういう、人の気持ち無視したことするかなぁ!?  最低だよ。見えてなきゃいいと思ったのかよ。おまえらのそういうところ……ああ」 「すまん、蟹! 許してくれ! 出来心で」 「事実を検証する前に喚かれても正直どうしようもないんだが」 「お前はちょっと黙っとけ! この」  獅子が土下座したまま横にいる水瓶の頭をはたき倒す。水瓶と比べて獅子が滑稽で、 それだけ自分のために折れてくれているのがわかって哀しくなった。  蟹の勢いが弱くなってくるのを見計らって、横から魚がティッシュを貸してくれた。 「ね。水瓶にはあとで僕がきつーく言っとくから。蟹もとりあえずおさめて。あとは獅子と...
  • 地図をつくる
    201 :やぎの夏休み(地図をつくる):2008/09/25(木) 21 15 06 ID ???0 超能力SS姐さん乙です!連投みたいな形になってすみません。失礼します。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *  神社の中、近所のそば屋、お土産屋、移動青果店。  少ない道路沿いにひとりで歩ける領域を広げていきながら、山羊はまだ森の中を歩いた ことがなかった。土地勘がない上に森歩きというものがどういうものかよくわかっていな かったのだ。チラシの裏に今まで歩いたところの地図を描いてみると、広範に広がっている 未開の領域をただ「森」という一文字で済ませるしかない。山羊はテーブルにもたれながら 森を示す斜線部分に思いを広げるのだった。 「おじさん。森って入っちゃだめ?」  仕事を終えて居間で座椅子に座っていた乙女にたずねると、乙女...
  • カジロワ15_59
    カジノ・ロワイヤル 天秤と牡牛(+双・射・水) 1/2 774チップ 2007/09/17(月)17 34 58の続きです。 賭博場から遠く離れた客室の一つで、天秤が気絶したように眠っている。 獅子の爪が体に残した傷痕は大きかった。本来もっともっと休息が必要だったのに、 少年は午後になると再びノックの音で跳ね起きることになった。 起きた瞬間、すぐとなりに獅子がいる幻覚を見てぞっとした。 実際にドア越しに立っていたのは獅子ではなく、双子の伝言を受けた水瓶だった。 天「はい」 水「双子と契約を結んだ人ですか」 天「! ……はい、そうですが」 水「双子から伝言です。契約が果たせそうなので今すぐ賭場に来てほしいと」 天「──はい。わかりました。準備をしてすぐ行きます」 水「良かった。それでは失礼する」 水瓶は用事を済ませるとさっさと賭博場へと...
  • 絵板ログ 0061_0080
    06/08/27(日)水エレ三兄弟 774 > 本スレ130姐さんからネタ拝借いたしました。 個人的に蟹・蠍・魚の水組が仲良くしているところが想像できないため試みに描いてみたのですが… まったく似てない兄弟に…orz 遅すぎレスですが、前回コメントくださった方々ありがとうございました( ´∀`) リシャール知らなくてぐぐりましたw 06/08/26(土)八頭身(?)魚 78 >  本スレより  なんか描きたくなってしまいました。  こんなのに萌えられる人なんかいないって・・・  OTL 06/08/22(火) 77 > 「・・・早く読め」 「その前に、ひとくち!」 指定読書の本を牡牛(右)に借りた双子(左)。 描いてるうちに双が魚っぽいような気もしてきた・・・ 牛...
  • 飲み会 獅子編(ギャグ)2
    「ああ?!」  俺はヤンキーヨロシク、顔をギリギリまで近づけて睨んでやった。座布団の後ろから「ケンカを止めないと」「山羊、野暮なことしないの!」とか声が聞こえたが一応無視。そして俺はその色気の無い声で頭が一瞬冷えたせいか、あることに気が付いた。  こいつとの距離は、いつも40センチはあった。近づいても、絶対に同じ分だけ離れようとするやつなんだ。だのにこんな近くにいる。 「……おい、今日はずいぶん近づいてもいいんだな」 「あ、そう、だね――」  水瓶が動揺している。さっきまで平然と合わせていた筈の目が下のほうを泳いでいる。おい、もしかして本当に傷ついてるんじゃないのか。ショックすぎてオレとの距離のとり方すら間々ならないんじゃないのか。こらこら、今更離れようとするんじゃない。往生際が悪いな。俺は逃げようとする水瓶の胸倉を掴んだまま、うっすらと赤くなっていくヤツの頬を見つめていた。 ...
  • 超能力14_04
    「大丈夫?」 「おう。手がかりがねえから、地面ごと浮こうかと思ってたところだ」 「能力の無駄遣いはやめよう。なにか掴まれるものが無いか探してみるよ」 「孔雀は?」 「孔雀って、敵の名前? 射手が遊んでる」  天秤は顔を引っ込めた。  しばらくすると、頭上からツタが振ってきた。  すがって登り、地上に立つ。そしてさらに上を見上げると、孔雀が空を逃げ回って いた。  飛ぶ孔雀の背中に、射手が出現してつかまる。孔雀は必死で振り落として逃げるん だが、射手は即座にジャンプして位置を変え、また孔雀をつかまえる。  遊んでるのはわかるが、射手の心臓が心配なので、俺は二人を近くまで引き寄せた。  孔雀は俺の上方に、水平に浮いている。その背中に射手がまたがっている。  孔雀は、必死の形相だった。 「な、なんという卑怯な能力だ」  射手が本気で卑怯だったら、おまえ今ごろ、どこか...
  • 七夕 獅子蟹
    26 :風と木の川田さん:2008/07/07(月) 09 03 52 ID ???0 七夕にまかせて書き逃げスマソ。獅子蟹。  七月七日だというのに、薄鼠色に湧きたった空からは次々と大きな雨粒が滴り落ちていた。 傘を差し、素っ気なくジーンズにビーチサンダルを履いただけの足で黒いアスファルトを 踏んで歩いていくと道端に咲き誇ったくちなしの花が甘い匂いを青年の身体にまとわり つかせる。  蟹座の男は梅雨か夏に生まれる。  いつだったか、獅子が自分を名指しして「おまえも夏生まれか」と物珍しそうにいっていた。 自分と違っていつも暑苦しいオーラのあるあの男を夏生まれだと言って疑う奴はそういない だろう。蟹は仕事のある日はともかく、今日のような休日に雨が降るのは嫌いではなかった が、獅子のほうがその感性を理解できるかどうかはほとほと怪しかった。  ──ああ、笹竹と...
  • 絵板ログ 0101_0120
    07/12/28(金) さし > 先日のスレを見張る水瓶というのにとても興奮して勢いで…今までROMっていましたが初めて書きます やっと落ち着いた…と一人ホッとしながら眼鏡を外す、イメージです 07/12/26(水) 7氏 > ダレモイナイ…ラクガキハルナライマノウチ… なにネタのというわけでもない個人的な水瓶イメージ せっかく描いたのでこっそり貼るよ! 07/11/03(土) 名無し > 641-643さんのネタで 兄弟の様子を想像すると和むよ いて「とりっくおあとりーと!おかしをくれなきゃいたずらするぞ」 がめ「…するぞ」 うお「するー」 てん「??…下で覚えてきたの?」 さそ「(こいつら…ひとの気も知らないで)」 やぎ「(3人だけでたのしいことしてきたんだ...
  • カジロワ47_91
    カジノ・ロワイヤル 天秤と牡牛と乙女(中間成績) 774チップ 2007/09/29(土)12 10 続きです。ターン終了していませんがとりあえず中間成績。 実は牡牛の性格がうまく掴みきれていなかったりします。 船内にいる乗客のために主催者側では常に一つのチャンネルを用意している。 小さなローカル局が船内にあるのだろう。賭博場のプレイヤーの様子は逐一中継され、 録画の危険性を考慮してかストリップからまな板ショーまでの一連のショーはカットされて 現場で見るよりも清潔なカジノのイメージを視聴者に提供していた。 現在のプレイヤーの順位は  1位、山羊 元手分に射手から奪ったチップと射手の撃破ボーナスを追加  2位、牡羊 元手分に獅子・蠍から奪ったチップと獅子・蠍の撃破ボーナスを追加  3位、双子 元手分に他プレイヤーから奪ったチップと牡牛の撃破ボ...
  • カジロワ37_81
    カジノ・ロワイヤル 乙女と射手(+牛) 774チップ 2007/09/27(木)19 14 80の続きです。 それぞれがそれぞれの行動をとる中、 射手は油性マジックを片手に片耳でラジオを聞いていた。乙女の部屋だ。 目の前には眠っている牡牛がいる。危機を察知したのかうなされているようだ。 ぐずぐずしてはいられない。勝負は一瞬で決する。 一番大事なのは額に「肉」と書くべきか「オー○ービーフ」と書くべきかそこのところだ。 乙「おい」 後ろから乙女のツっこむ声がしてひゃっと身体が跳ねた。 乙「お前何か書こうとしてたろ」 射「ち、チガウヨー。ほら、手にオッズ書こうとシテタンダヨー」 乙「そんなあからさまなポジションに座って言い訳がきくかっ! お前本当に目が離せん奴だな!」 射「ダッテ、ダッテヒマナンダヨー(涙)」 乙「そのカタコト言葉やめ...
  • 大正浪漫 蟹×蠍2
    「お、おやめください! 私は、そんな…」 蟹は蠍の肩をつかみ、夢中で自分から引き離そうとした。 目が合った。愕然とした。 いつもうつろな無表情だった蠍が、婉然と微笑んでいる。淫らな気配が熱気に変わって、蠍から自分へと吹き付けてくるようだ。 いつか漏れ聞いた、侯爵と川田の密談が記憶に甦った。体に成分が蓄積されたせいで、近頃は投薬しなくても不定期に発作を起こすようだと、言っていた。今、それが起きたらしい。 「若様、いけませ…ううっ!」 再び唇が重なった。侵入してきた舌に口の中を探られた瞬間、蟹の体から力が抜けた。蠍の指が素早く動いて、蟹の襟元をくつろげ、帯を解いている。 (いけない…こんな、こんなことは…) 蠍をはねのけ、殴ってでもやめさせなければならない。このままでは自分は、あの川田という男と同じになってしまう。 そう思うのに、唇が離れても蟹は動けなかった。しっとり潤んだ蠍...
  • カジロワ13_57
    カジノ・ロワイヤル 双子と牡牛(中間成績) 774チップ 2007/09/17(月)12 46 56の続きです。この回でとりあえず全員第二ターン終了みたいな感じで。 SSのつもりがものすごく長くてすみません。終わりどころがわかりません。どこまでやる気なんでしょう。 午前中のまな板ショーが終わって、会場にはまだ異様な熱気の残り香が漂っている。 双子は天秤が舞台から消えた後も事務的な顔で舞台を見つめていた。 舞台の前の飲食テーブルには、取り押さえられていた牛が開放され無残な姿で酔いつぶれている。 ショーの生贄にされた弟を助けられず、かといって見舞いにもいかず、 酒を飲む以外にはテーブルから動けずにいる牛に双子は軽蔑の視線を向けていた。 現在のプレイヤーの順位は  1位、牡牛。 蠍・乙女のチップを奪った分と乙女の撃破ボーナスが丸々残っている。 ...
  • カジロワ51_95
    ステージの上は淫靡な色合いのライトがきつくて、眼下の人々の視線がほどよい緊張感に繋がる。 水瓶はいざステージの上に立ってこの先の方針に困った。溜め息をつくが周囲は彼の脱衣に期待満々だ。 水(本当はここで全部の電源を落として逃げる予定だったんだけど……まあ仕方ないか。   人体の研究だと思って割り切れば結構早く済むかな) 見ると、遠くに射手と獅子が来ている。射手や蠍のように上手くショーを見せる自信がなかったので とりあえず手先からハトを出してみた。観客からおおっと歓声が上がり、 愛らしい生きた白いハトが水瓶の手にあわせて飛んでゆく。 射(ガメすげええええええ!! ……え、あと普通に脱ぐの。ハトの意味は?) 獅(あいつはスーツの中に一体何を仕込んでるんだ……いや、それよりアレを探さねば) 全裸になった後のじゃんけんはほとんど八百長のようなものだった。 ...
  • カジロワ23_67
    カジノ・ロワイヤル 乙女と天秤と牡牛 1/2 774チップ 2007/09/22(土)04 31 66の続きです。第四ターンに突入します。長々スレをお借りしてすみません。 ──長い夜の中で、乙女は強度の不眠に苛まれている。 すこしドアから物音が鳴ると心臓が跳ね上がり、うつらうつらしたらしたで 起きた瞬間にあの男が側にいるのではないかと鳥肌が立つのだ。 テーブルランプ以外の明かりを消した環境で、 もう闇があの男──山羊自身ではないかと錯覚してしまうほどだ。 「あの」と横から少年の声がして、そのときも乙女は心臓が恐怖に痛むのを感じた。 見返すと、そこには目にくまを作った天秤が立っていた。 天「(侘しげに微笑みながら)……ミルクティー、如何ですか。缶ですけど」 テーブルに座り、乙女と一緒にミルクティーを飲む天秤の目はやはり乙女と同じように、...
  • カジロワ6_50
    カジノ・ロワイヤル 蟹と蠍(と天秤と双子) 774チップ 2007/09/15(土)09 20 まだまだ萌えを追求できそうなのでもう少し板をお借りして、 とりあえず二周目いってみたいと思います。 49の続きです。冒頭のシャワーシーンは只の趣味です。 豪華客船の中はいくつもの船室に分けられている。 特にギャンブルに参加するプレイヤーはゲーム時以外でも破格の扱いを受け、 会場では貴重なシャワーを自由に使える個室をそれぞれあてがわれていた。 丸窓からのぞく午前中の海に湯気が漏れ出て行く。 爽やかな窓からの光に浴室のライトもつけず、蠍は薄暗がりの中でシャワーを浴びていた。 水滴以外をまとわぬその体にはいくつもの古傷があったが、それも蠍の魅力を損なうものではない。 シャワーを浴び終えると栓を閉め、腰にバスタオルを巻いて部屋の中をうろつく。 ドアの下の隙間から一...
  • 五人囃子
    五人囃子 名無し 2007/03/04(日)17 47 現行スレ(11)218-220で五人囃子な人たち CP(獅魚、獅蠍、他出来かけ) ※時代設定はとりあえず昔。他細かいところは丸無視で書きました。  宮中。そこは雅やかな貴族達の世界。常に唄を詠み、雅楽を奏で、政が上手くいくよう取り仕切る場所。  ――のはずなのだが。 羊「聞いたか? 蟹のヤツ遂に三人官女入りだって! 苦労するぜ、絶対」 蠍「そうだろうな。学問も今から仕込むんじゃあ一仕事になるぞ」 天「そこは双子も山羊も手伝ってくれるし。魚だって頑張るはず、だと思うよ」 水「ずいぶん自信のなさそうな”頑張る”だねえ、天秤君」 射「仕方ねえさ。魚は今までそういった勉強してきてねえワケだし」  今年桃の節句で五人噺となった面々は、宮中に来たての魚姫のことで話題が尽きなかった。本来噂などは進んでは話さな...
  • 生徒会会長獅子×副会長蠍
    出来たので投下します 長いので分割 前スレ950ですが 2006/04/16(日)14 50 生徒会会長獅子×副会長蠍で蠍の一人称ぐだぐだ語り。 あまりプラトニックじゃないのは、蠍がエロいからだと思ってくださいorz ++++++++++++++++ 949 お互いの幸せを思いあうゆえのプラトニックラブ やけに左半身が暑いと思い、今まで資料に落としていた目を其方に向ければ、今まさに夕日が沈もうとしているところだった。 紅い。朱い薄衣が、生徒会室(ここ)を覆っている。 古びた無数の資料が散らばる机も、背もたれの無い緑のカヴァーが付いた丸椅子も。 全てが只赤に。 沈んでいく太陽は血反吐を吐いているようで、酷く痛々しい。 どうしてああも姿を変えるのだろう、昇り征く陽は何処までも気高く、欠片の汚れも持たずはね除けるような強さを持っているというのに。 ...
  • カジロワ63_08
    カジノ・ロワイヤル 射手と水瓶と牡牛と魚と羊 774チップ 2007/10/04(木)10 54 続きです。 牛が放った一石は羊を皮切りにして、弧を描くように他の人間にも波及してゆく。 射手は朝から身支度を済ませると水瓶の部屋へ押しかけ、テレビを前にしてメモ帳へ優勝者予想を 書き留めるのに余念がなかった。純粋に決勝戦などと盛り上げられるとのってしまうたちだ。 かといって予想券を買う気でいるかと思えばそうでもない。予想だけするのが楽しいらしい。 射「(鼻歌まじりに)なあなあなあなあなあ、この番組なんかオッズおかしいんだけど!   おかしくねえ?」 水「僕は君が朝から僕の部屋にいることのほうが不思議なんだが」 射「だってヒマなんだもん。オトの部屋行ったら誰もいねーし。いやそれよりこのオッズだよ   ガメ君。ヒツが一番倍率高いんだぜ! 2.4倍! そ...
  • カジロワ62_07
    カジノ・ロワイヤル 牡牛と羊と魚 774チップ 2007/10/04(木)05 31 続きです。 射手、水瓶、羊のいずれを最初に訪ねるかと考え込んで牛が真っ先に目指したのは羊の部屋であった。 射手と水瓶はこの船内ではしょっちゅうつるんでいる上、射手に対しては一連の勝負で負けた気負いがある。 射手がもうすっかり忘れてしまっているのは見てもわかるのだが、 それでも乙女や天秤の仲立ちなしに一人で行くとなると多少の奮起が要る。 牛(今回のカジノ・ゲーム、おそらくは羊が優勝の最有力候補だろう。資産で一番遅れをとって   いるのはいただけないが、あの判断の早さは他の奴には真似できない。   蟹や山羊といったか。あの辺は不気味ではあるな。   ……双子はあの傷で本当にゲームに出る気だろうか。高額賭けで短期決戦に持ち込めば   勝機もあるだろうが、逆にこれまでよ...
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