星座で801 @ wiki内検索 / 「超能力12>04」で検索した結果

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  • 超能力12>04
     そこまでは俺の頭でも理解できたんだが、その続きはわからない。俺は双子に聞い た。 「どーやってやるんだ? そんなこと」 「相手さんの正体がわからなかったら、やり方もわかんねーよ。だから水瓶に相談し たんだ」  時間スキルを持つ者どうしで話し合い、出した結論は。  俺が関わる確率が、高すぎるということだ。  水瓶は俺を見つめた。 「鍵になるのは、牡羊の存在だ。どうもすべての流れが、牡羊にとって不利に働くよ うに出来ている気がする。だからこそ決意した。牡羊の未来を、この僕が変えてみよ うと」  水瓶みたいな性格の人間にとっちゃ、それはすごく思い切った結論だったんだろう。  で、水瓶は行動を起こした。  双子自身には、しばらく未来を読まないことを指示しつつ、天秤に双子を監視させ た。これによって双子の重体を防ぐためだ。  射手に頼んで、俺の行動を監視させた。これは...
  • 超能力12_05
    「知らなかった。言ってくれりゃ家に居たのに」 「いや言ったら監視にならないだろ。でもって探してるうちに真夜中になって、しよ うがないから家に帰ったら、俺が部屋につくと同時に、蠍が部屋に飛び込んできて、 容赦なく襲われて、俺は手も足も動かねーのに、それはもう、えげつない……」  蠍が射手に手を伸ばし、口を容赦なくふさいでいた。  ふうん。あの日、蠍の制限は、射手で解消されてたらしい。チンコが麻痺ってなく て良かったな。  蠍は射手の口をふさいだまま、少し顔を赤くしていた。 「正直に言うと、制限が出てて……。あの日、ちょっとした戦いはあった。やはり牡 羊は、巻き込まれた形だったと思う」  やはり双子が読んでいない未来においては、俺はなにかに巻き込まれる。  そしてやっと、話は今に至る。今日、水瓶が俺を助けに出かけたあと、双子は部屋 に閉じこもって予知をはじめた。  出...
  • 超能力12_07
     そして双子は、もう俺たちが変えちまうことを決定している未来を、俺たちに話し 始めたのだった。 全員集合で、今までのまとめです。 次は土です。次々回からは属性関係なくなります。もうちょっとだけお付き合いくださいませ…。 続き・土星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 超能力12_01
    181 :超能力SS12:2008/09/18(木) 18 37 24 ID Pl6OomEg0  窓際のベッドの脇には、みなが集合している。  そしてベッドの上には双子と、馬乗りになった魚の姿がある。  双子は魚の治療を受けつつ、俺たち全員の姿を確かめると、青ざめた笑顔を見せた。 「あーあ。なんか大騒動になっちまって」  魚が怒って、双子の頭をポカっとぶった。 「びょうきのひとは、しゃべっちゃだめー」 「いったー。てめ、力は大人なんだから加減しろよ」  すると蟹が、魚をベッドから抱き下ろし、そのあと双子の頭を撫でた。 「僕はきみに、すまないと思う」  いたわるように、慈しむように、蟹は双子を撫でる。 「だれが未来と引きかえに、きみに傷ついてほしいと思うものか。天秤が間に合わな かったらきみは、この世でいちばん僕を傷つける死に方をするところだった。だけど そ...
  • 超能力12_06
     山羊が、むっとしていた。 「……駄目だろう、それは。完全に」 「分かってるよ」 「俺はおまえの犠牲になった姿なんて見たくないし、そんなおまえに能力を使いたく なんか無い」 「分かってるって。今のは照れ隠しだから」 「それは自己犠牲ではなく、自虐というんだ」  地味に痛い言葉の攻撃を受けて、双子はヘコんでいた。  俺は双子をかばった。 「あのさ。してもいないことで双子を怒ったって、双子が可哀想じゃねえか」  それで双子は立ち直った。 「こっちの俺は、天秤が俺を助けてくれるトコまで読んでたんだよ。だからそんな、 無茶やってたわけじゃねーって」  すると乙女が、双子を怒鳴りつけた。 「ふざけるな! 天秤を助けに寄越したのは水瓶だ!」 「あー……、そうだった」 「なぜみずから周りを頼らない。それに俺と違っておまえは、自分の制限をコントロ ールできるんだ。にもかか...
  • 超能力12_02
     双子の話は過去から始まった。俺が家族に加わる前の話だ。  ある日、双子は、俺という能力者が、獅子にかつぎこまれる未来を読んだ。  予知の中で獅子は双子にこう語った。俺を発見したのは偶然だと。散歩の途中で俺 を見つけたのだと。  老朽化した橋をわたろうとして、割れた足板から落ちた俺は、能力を発動し、足元 に岩を積み上げて、落下距離を縮めて助かったのだと言う。  からだを強く打った俺は、あちこちを骨折していたらしい。  しかしその未来を双子に聞いた、現在の獅子は、散歩の予定を、意図的な探索に切 り替えた。俺を見つけるため、って目的の。  ついでに、俺を骨折させる運命を持った橋を、燃やしてしまった。  ここで、いま俺の横に居る獅子が、双子の話を保証した。 「歴史は少し変わったらしいが、結論は同じだろう。牡羊は俺たちの所に来た」  魚は、俺の骨折と疲労を治すべき運命を、俺...
  • 超能力14_01
    216 :超能力SS14:2008/10/02(木) 21 06 04 ID GD1y3wxs0  眼鏡を外した乙女は、壁の時計を見つめている。  そして時計のあらわす時刻を読んでると同時に、見ているのは、この家のある山の ふもと。  山道の入り口で、戦いを始めようとしている天秤の姿だ。 「天秤は閉店した売店に潜り込んでいる。手を胸に当てている。いまシャツのボタン を開き始め」 「説明しなくていいよ、そんなこと」 「……俺だけ覗きなんて不公平だ」 「仕方が無いだろ」  乙女はしばらく微妙な表情をしつつ、天秤のストリップを遠視していた。  やがて口を開く。 「……時間通り。いま車が山道に到着。道路を走り、いま急なカーブを曲がっている。 減速した車に、山の斜面に待機していた天秤が飛び込んだ」  乙女は目を閉じて、視点の位置を変更しているみたいだった。 「車内...
  • 超能力15_08
     ものをぶつけようとしたら、牡牛がカラスを体の内側にかばいやがった。俺が悪い みたいじゃねえか!  殴りかかっていこうとしたら、牡牛は道路を後ずさりしつつ、次々と障害物(でか い彫刻とか)を並べていった。  誰が誰の敵で味方なんだか分からない状況の中、天秤が帰ってきた。  天秤はひと目で状況を把握したらしい。宙を向いて言った。 「乙女。射手を呼んで」  裸婦像の影に、射手がゲラ笑いしつつ現れ、抱き合う二人をさらに抱いて、消えた。  俺は天秤にすがりついた。 「どーなってんだ。どうなってんだこれは」  天秤は複雑そうな目で俺を見ていた。 「今の牡羊は敵なんだねえ……」 「おう。でもべつに天秤が嫌いなわけじゃねえぞ」 「素直な性格は変わらないんだな。じゃあなんというか、きみもカラスが心配だろう から、一緒に家に帰ろうか」  天秤はバイクを運転できるらしかった。カラ...
  • 超能力14_07
     髪をかきむしって考えていると、なぜか天秤は笑った。  そして俺の肩を抱いた。 「僕が悪かったよ。すこし判断を急ぎすぎた。すまない。本音を言うとね、焦ってい たんだ」  焦る? 天秤が?  天秤はなんか、はにかむみたいな顔をしていた。 「うん。焦ったんだな。牡羊がここに来るなんて予想外だったしね。これ以上、家族 ときみを、危険な目には会わせたくなくて」 「敵を焦らせるための作戦だったんだけど」 「それで僕が焦ってれば世話は無い。本当に悪かった。すこし歩いて頭を冷やそう」  そして天秤は宙を見上げた。 「乙女、視てるかい? 僕らは歩いて帰るよ」  ふたたび差し出した服を、天秤はやっぱり受け取らなかった。「実は裸のほうが歩 きやすいんだ」と言って。  たしかにそうみたいだ。裸の天秤には障害物が無い。樹木を通り抜け、落ちてくる 木の葉を透過させ、ただまっすぐに歩いて...
  • 超能力15_01
    228 :超能力SS15:2008/10/09(木) 21 30 26 ID fclKttsw0  俺たちは安全のためも兼ねて、なるべく獣道を歩いていた。  だが何回かは、道路を横断しなきゃならなかった。  そしてあるとき、道路に向かって、低い崖みたいになったところから滑り降りたと ころで、対面の木々のあいだから牡牛が出てくるのを見た。  牡牛は俺らを見て片手をあげると、道路の真ん中まで歩いてきて、それからこう言 った。 「もうすぐ、次の出来事が起こる。双子の先読みでも変更は無かった。だから俺が来 た」  タイムテーブルによると、あとすこしで、家に訪問者が来る予定になってた。  ってことは、その人物は、今くらいの時間に、この道路を通るはずだ。  牡牛は裸の天秤を見ると、「寒くないのか」と言った。  天秤は大丈夫と答えると、俺の聞きたかったことをかわりに聞いてく...
  • 超能力12_03
     それで双子は、しばらく騒動は無いと踏んだのだが、実際にはすぐに事件は起きた わけで。  俺と乙女が、牡牛と戦うことを、双子は知らなかった。 「知ってりゃ忠告したさ。牡牛の親も死なずに済んだかもしれねえ」  双子の言葉に、牡牛は目を伏せた。 「ああすれば良かったとか、こうすれば良かったとかいうのは、あまり考えても意味 が無い気がする。俺が乙女を殺そうとする前に、双子が未来を読まなかったのも、運 命なのだと思う」  それでも双子は説明した。水瓶の力を使えば、牡牛の両親は帰ってくると。  きっと牡牛だってそうしたいに違いない。しかしそれをやれば、そのかわりに、死 の運命の荷重はどこかに移動する。  牡牛は黙って首を横に振り、すべてを受け入れていることを伝えてくれた。強いや つだなと俺は思う。  双子のほうは、牡牛の様子に対して、不思議がるようなかんじを見せていた。 ...
  • 超能力14_04
    「大丈夫?」 「おう。手がかりがねえから、地面ごと浮こうかと思ってたところだ」 「能力の無駄遣いはやめよう。なにか掴まれるものが無いか探してみるよ」 「孔雀は?」 「孔雀って、敵の名前? 射手が遊んでる」  天秤は顔を引っ込めた。  しばらくすると、頭上からツタが振ってきた。  すがって登り、地上に立つ。そしてさらに上を見上げると、孔雀が空を逃げ回って いた。  飛ぶ孔雀の背中に、射手が出現してつかまる。孔雀は必死で振り落として逃げるん だが、射手は即座にジャンプして位置を変え、また孔雀をつかまえる。  遊んでるのはわかるが、射手の心臓が心配なので、俺は二人を近くまで引き寄せた。  孔雀は俺の上方に、水平に浮いている。その背中に射手がまたがっている。  孔雀は、必死の形相だった。 「な、なんという卑怯な能力だ」  射手が本気で卑怯だったら、おまえ今ごろ、どこか...
  • 超能力15_04
     カラスはバイクから降り、牡牛を見た。 「きみは初対面だ」 「けれど俺はあなたを知ってる。アルバムも持ってる」 「そう。ありがとう。気に入ってくれてるのかな」 「とても」  カラスはちょっと嬉しそうだった。 「きみの名前は?」 「牡牛。能力は物体取り寄せ。制限は、自分の欲望の量がすくないものについては、 能力が発動しないこと」  正直すぎないか?  カラスも同じことを思ったようだ。意図をさぐるような目つきをしている。 「なにか狙いがあるのかな」 「べつに」 「ぼくの能力は知っているよね、当然」 「ああ。蠍に聞いた」 「……どうも、わからない」  牡牛の足元には、牡牛が暇にまかせて取り寄せた武器が、いろいろ転がっていて、 骨董市の出店みたいになってる。  しかし今、牡牛が手に握っているのは、またどっかの工場から盗んだんだろう棒ア イスだった。  そして...
  • 超能力15_05
     牡牛は馬鹿正直にうなずいていた。 「思ってた。銃で狙撃したら、たぶんもう勝ってた」 「なぜそうしなかったの」 「あんたの歌が好きだから。死んだら、もったいないから」 「嬉しいけどね。だけどその判断のせいで、きみが死ぬはめになるかもしれないよ?」 「それはない。あんたの能力は相手を利用するためのもので、相手を殺してしまって は意味が無い」 「そこまで読んでいたわけだ。頭が良いな」  牡牛は礼を言うように、すこし頭をうなずかせただけだった。  ……なんだかなあ。頭が良いっていうのかそれ。頭が悪いふうにも感じないか。  むしろ俺は牡牛って、肝が据わってんだか、にぶいんだか、よくわからないやつだ と思うんだ。  カラスは微笑み、俺を見た。 「川田の話だと、ぼくは何事も無く、きみらの家まで辿りつけるはずなんだけどね。 その予定がこうして狂っているということは、きみの家族...
  • 超能力15_03
     牡牛の能力は、能力そのものは戦いに向かない。むしろ自分を守るための力だから だ。  牡牛も考え込みつつ、「まあいいか」なんて言って、宙に手を差し出した。  その手に、がしゃっと、俺も知ってる装飾銃が握られた。  それを地面に置いて、また手を差し出す。  ひとつかみの金の銃弾を取り寄せた。それを俺に差し出し、込めてくれと言う。  俺が作業してる間に、宙から妖刀を取り出した。いやっ妖刀つーより、クレイジー ソードと呼ぶのがふさわしいアレだ。  それから考えて、また取り寄せる。綺麗なナイフを一ふり。  次にリンゴをいっこ取り寄せて、ナイフで剥きはじめた。  俺はとりあえず注意した。 「冷蔵庫の中身、勝手に食ったら、蟹に怒られるぞ」 「家のじゃない」 「どこのだ?」 「知らない」  いま日本のどこかの農園で、リンゴの木から、一個のリンゴが無くなってるんだろ う。 ...
  • 超能力15_02
     仕事をするためには、人数が多いほうが良いのは確実なんだ。  だけど情報収集や、心身の治療に関する能力を持っている連中は、他に仕事がある。  モノ系の能力者である俺は、家ではやることがないから、自由に動ける。  牡牛がうなずいた。 「獅子はそう思ってる。水瓶は反対してる。だから牡羊の判断にまかせることになっ た」 「残るよ。当然だろ」  天秤はそれでも気に入らないらしく、腕を組んで考えていた。 「……獅子に頭を下げて、射手にも謝って、蟹を安心させて、それからまた僕も引き 返して来よう」 「孔雀まだ殺すなよ?」 「殺さないよ」  手をひらひらと振ったあと、天秤はいっきに駆けていった。  どうも今までは、俺にあわせて、遅く歩いてくれてたみたいだな。  牡牛は道路の彼方を見ている。俺は尋ねた。 「双子の読んだ未来だと、敵の正体ははっきりしてるわけだけど」 「ああ」...
  • 超能力15_06
     カラスは言った。 「牡羊。愛してる」  俺がここに残った理由は、牡牛を助けるためだった。  それは間違いだったのか。いや正しかったのか。  俺はカラスを助けてやることができる。そうカラスに言ってやりたかった。  しかし俺は好きな相手には照れくさくなっちまうタイプなので、赤くなって黙り込 むしかなかった。  カラスは優しい目をしている。 「これで一人はぼくの味方だ」  そして、牡牛は不思議そうに俺を見ている。 「本当に、あんなひとことで良いのか」  俺のほうは、苦しい気分で牡牛を見上げた。 「牡牛が嫌になったわけじゃない。家族のみんなも敵だなんて思いたくねえ。でも今 の俺は、カラスを助けたいんだ」 「カラスのために、俺を攻撃できるか?」  それについては、俺はしっかりと頷いた。  俺は牡牛と戦える。たとえ牡牛が家族でも、友達でも。今の俺にとっては、いちば ...
  • 超能力15_07
     当たり前だ。そうしなきゃ、カラスが危ないじゃないか。  俺が降下を念じると、牡牛はなんか格好よい形にカラスを抱いたまま、地に降り立 った。  カラスも驚いていた。不思議がるように牡牛に尋ねる。 「聞いてもいいかな。どういうことか」  牡牛はうなずいた。 「たぶん俺にとっては、あなたの魅了は意味が無いんだ。もともと俺はあなたが好き だったから。あとは俺が、スピーカー越しの声だけでなく、あなたの実際の姿を知る ことさえできれば良かった。あなたは自動的に俺の能力下に入る」  手に入れたい、自分のものにしたい、食いたい触りたい感じたいという思いが、牡 牛の能力であると同時に、制限。  もともとカラスの声に魅了されていた牡牛にとっては、さらなる魅了は意味が無い。  むしろその魅了の力は、牡牛の欲望を深めるだけだ。  だから牡牛が選ばれたんだ。牡牛は対カラスの戦いにおいて、...
  • 超能力14_02
     そして未来の予定が書き込まれたタイムテーブルの紙を、山羊が確認する。 「次の出来事が起きるまでは、しばらく間がある。いちど天秤を引き上げたほうが良 いんじゃないか?」  暇そうにしてた射手が、さっと手をあげた。 「じゃ、行ってくる」  待てと、獅子が止めた。 「射手、牡羊を連れて行け」  俺?  水瓶が反論した。 「それはよせ。牡羊は今回の出来事のキーだ。なるべく家に置いて守ったほうがいい」  正論だとは思う。しかし俺には、獅子の考えもわかる。  そして俺の予想通りの戦法を、獅子が語った。 「無駄だ。敵も未来を変える能力を持っているのだろう。なら、どう守っても意味が 無い。だったら攻めろ」  あえて敵前に俺をぶら下げて、ゆさぶってやりゃあいいんだ。敵の目的が見えるか もしれねー。  あと単純に、獅子は射手を心配してるってのもあるだろう。  そして俺のほう...
  • 超能力14_05
     しかし天秤の手が孔雀のからだと接触する直前、ジャンプした射手が、孔雀のから だに覆いかぶさった。  天秤はさっと手を引いたが、射手の体内をすこし傷つけたらしい。射手は痛そうに 呻いていた。  俺は叫んだ。 「なにやってんだよ、天秤!」  天秤は目を細めて二人を観察している。たぶん射手のからだの厚みと、その向こう の孔雀の体の位置をさぐっている。  それを悟ったらしい射手が、孔雀ごとジャンプした。10メートルほど遠い位置に 出現する。  天秤は顔をあげ、距離を計り、あきらめたように肩をすくめた。  二人のうち「移動する力」そのものは、射手のほうが強い。走り寄っても逃げられ るだけだと考えたんだろう。  俺はさっきと同じことを天秤に聞いた。なにを、って。  天秤は世間話みたいに答えた。 「獅子はあれで優しいからね。敵には容赦ないけど、むかしの身内に手を出せる男じ...
  • 超能力14_03
     射手は辺りを見回すと、大声で叫んだ。 「天秤ー。どこだー!」  がさがさと足音がした。  俺は警戒して身構えた。距離を取って、目前に意識を集中する。  しかし表れたのは天秤だった。どこかに置いてあったらしい服のボタンを止めつつ、 こちらに歩いてくる。  そして天秤は、首をかしげた。 「まあ大声でぼくを呼んでしまった時点で、これを言っても意味が無いんだけど。大 きな音を出すのは、やめたほうがいいんじゃないかな」  射手は、肩をすくめた。 「わざとやってるんだ。予定に無い行動」 「なぜ?」 「作戦らしいぜ。俺らがこうして、相手の行動を読んで行動しても、相手はさらにそ れを読んでるから、その予定をさらに……。わけわかんないな」 「うん。わからない」 「井戸マークに○×書いて遊ぶゲームに、勝手に△をつけてみよう、みたいな……」 「うん。やっぱりわからないから、早く...
  • 超能力14_06
    「僕は獅子の過去をすこし知ってる。なぜ獅子がむかし何故、自分がリーダーだった グループを抜けたのか知ってるかい?」  俺は首を横に振った。本当に知らなかったからだ。  天秤は裸のからだを、俺のほうに向けた。 「裏切り者が出たからだ。メンバーの誰かが獅子を裏切った。そして裏切り者の正体 は不明なままだ。獅子としては誰も疑いたくなかったんだろうね。狙いが自分なのは 明らかだったから、グループを解散するしかなかったんだよ」 「その裏切り者が、孔雀かもしれねえって?」 「あるいは。だから彼を家族に会わせるのは反対だ。仲間を裏切るような人間は、危 険だ」  天秤の言葉が、自嘲に聞こえたのは、俺の気のせいだろうか。  俺は天秤を説得することをあきらめた。そもそも向いてねえ。俺は俺の言葉でしか 語れねえ。 「天秤! 頼むからやめてくれ。この通りだ。天秤が正しいのかもしれねえが、...
  • 超能力SS0
    勝手に目次です 1週目 1.火星座 2.水星座 3.風星座 4.土星座 2週目 5.火星座 6.水星座 7.風星座 8.土星座 3週目 9.火星座 10.水星座 11.風星座 12.全星座 13.土星座 4週目 14.色々編その1 15.色々編その2 現在連載中 小説メニューへ
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    ご要望などありましたら、こちらへどうぞ - 2008-08-21 02 39 40 管理人様、いつもお世話になっております。12国王子のフラッシュが見られなくなっているようなのですが……何とかならないでしょうか - 2008-12-03 08 53 35 遅くなりました。うp主様の元のページに繋げさせていただきました。 - 2008-12-07 22 54 02 魚座 - 2010-09-03 04 49 40 水瓶 - 2010-10-03 14 33 50 蠍座 - 2011-02-28 18 12 50 メニュ - 2011-12-16 21 45 18 魚 - 2013-02-27 09 13 04 超能力 (2024-04-03 19 57 28)
  • 小説
    新しい作品は上に追加してゆきます 少しづつ改行を訂正させて頂きます 保管庫管理人様が、投下された一部の長編作品をまとめてくださいました 携帯にも対応しているそうなので、お言葉に甘えてリンクさせて頂きます 現在の収録作品は、「超能力SS」と「やぎの夏休み」 http //milky.geocities.jp/alal801/zodiac/toukou/top.html やぎの夏休み 蟹誕生日ネタ 七夕 獅子蟹 超能力SS 双子誕生日ネタ うーちゃんとさーちゃん 『雪の山荘』サウンドノベル風・羊視点 水月 カジノ・ロワイヤル ゾディアック学園 山羊視点/牡羊・双子・魚 五人囃子 飲み会 獅水編(ギャグ) 飲み会 天乙編(乙女バージョン) 水星座三兄弟 忍な天秤蠍 『ようこそ星座の村』(未完) 大正ネタ、警官乙女と探偵射手 大正浪漫 蟹×蠍 生徒会会長獅子×副会長蠍 十二...
  • 土3_10
     そのあと俺は、またやることが無くなっちまったので、台所に戻った。  牡牛が米を研いでる横で、道具を洗いつつ、メシの仕上がりを待った。  だけど煮物はやっぱり時間がかかった。みんなが帰ってきても間に合わなくて、け っきょく、カップラーメン12個つくって食った。  メシのあと、俺は牡牛に、さっきの乙女との出来事を話した。  牡牛はなんか、不気味な笑みを浮かべた。 「けっきょく乙女は眠れなくなったのか」 「かもな。大丈夫かな。ラーメン食ってるときも目がうつろだった」 「時々、牡羊は策士だなって思う。けどそんなことはないから、牡羊はタチが悪い」  意味がわからねえ。 「おれの態度がアホすぎて、乙女が呆れちまったって意味か?」 「ぜんぜん違う」 「もうちょっと詳しく説明しろよ」 「人間、なにかに悩み出したら、べつの悩みには気が回らなくなるってことだよ」  乙女を悩ませた...
  • 火2_07
    「全裸で行ってきたのか!?」 「大丈夫。ちゃんと金は払った」  俺は思う。俺はたしかに馬鹿だ。間違いなく馬鹿だ。  だけど射手ほどじゃねー。さすがの俺も裸でコンビニには行けねぇ。そんな行動は 取れねー。  三人でアイス食って帰った。無茶な夜遊びは楽しかった。  けど家では乙女が待ち受けてて、俺ら滅茶苦茶に怒られた。 続きです。毎回、感想有難うございます。 続き・水星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 土2_09
     俺はこう尋ねた。 「なー乙女。あんたって潔癖だよな」 『は? なんだ突然』 「すごく良い道具があるんだ。けどケガレてるんだ。どうすりゃいいんだろ」  乙女はこう答えた。 『消毒して使えば良いんじゃないか』  そういうわけで、刀はあとでお払いすることにして、トラックに積んで持って帰っ た。 土ですが、前回かわいそうだった牡牛を、ちょっと幸せにしてみました。 もう最後まで突っ走ります。読んでくださって感謝です。 続き・3週目火星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 土11
     牡牛の体からいましめのロープが落ちた。双子が切ったのだ。  たしかにそれは、もう必要ないだろう。  牡牛は両手をもちあげ、手のひらをじっと見ると、その手で頭をかかえて、ゆっくりと背中を丸めていった。  そして牡牛の目の前で、蟹が、牡牛と同じように、頭をかかえて背中を丸めていった。  俺はといえば、双子の予知能力がなくても分かる、確定した未来に思いをめぐらていた。  牡牛は、蟹の言うところの、「家族」になるんだろう。  俺といっしょに、俺がまだよく知りもしない「家族の敵」と戦うことになるんだろう。 土です。これで火水風土を一周しました。感想有難うございました。 ……もう一周して良いですか……? 続き・2週目火星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 水3_10
     俺は、きょとんとした。  魚は、わかってるのか、わかってないのか、わからない笑顔を見せていた。 「僕は最初っから、牡羊は凄いと思っていたよ。きっと、きみが来てくれたおかげで、 蠍もずいぶん救われてる」  ナニ的な意味で……ってことじゃないよな? だってアレに関しちゃ、俺はてんで 子供で、蠍のスキルになんて対抗できねえ。  俺は魚を見つつ、なんか納得できたような、できないような気持ちを感じつつ、あ とは色んな本の話をした。 水の中でも蠍話です。 やぎの夏休み姉さん毎回乙です! こちらもいつも読んでますW 続き・風星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 水7
    「あのう、蠍、さん」 「……」 「俺、制限ってやつのせいで、すげえ疲れてるっぽいです」 「……ああ」 「あんたも能力使いっすか?」 「暗示。催眠。制限は発情」  は、発情!?  驚きが顔に出てたらしく、蠍は恥ずかしそうにそっと目を反らした。 「さっき獅子を眠らせてきた」 「……はぁ」 「だから、制限が出てた。すまない」 「……?」 「一回への階段は、北の奥。エッシャーの絵の横」 「あ……」  ありがとうを言う前に、蠍はそばのドアをあけて、入って行ってしまった。  なんだろう。なにか変な気がする。なにか大切なことを言わなければならないのに、忘れてるみたいな。  あと、なんで蠍は、俺が一階に行きたがってるって知ってたんだろう。  そのあと建物じゅうをぐるぐる歩き回り、俺は、ひとつの結論を出した。 水で続きを書いてみました。ご感想ありがとうございました。...
  • 水3_01
    147 :超能力ss10:2008/09/04(木) 06 29 10 ID iAYos0PI0  夏休みに入った。  俺はピンチだった。体育の推薦で今の学校に入ったくせに、クラブやめた俺は、成 績が悪いことが許されねえ立場になっちまったのだ。  てんこ盛りの宿題を出された。それをこなさなきゃ、来年は二年になれないかもっ て先生に言われた。  とにかく家族に頼った。みんな協力してくれたんだが、読書感想文とかは、誰かに 教えてもらうってわけにもいかない。  困っていると、蟹がアドバイスをくれた。 「蠍に頼ってみなよ。そういうのは、彼に聞くのがいちばんだ」 「むずかしい漢字って、催眠で読めるようになるのか?」 「ちがう、ちがう。能力じゃなくて、職業に頼るんだよ。蠍は作家だから」  なるほど蠍はよく本を読んでいる。あれは趣味じゃなくて仕事の一環だったのか。  納得...
  • 火3_01
    136 :超能力SS9:2008/08/26(火) 23 17 12 ID TG477jk60  さいきん俺は、蟹に針と糸を借りて、針穴に糸を通す練習をしていた。能力を使っ て。  まず糸玉から、糸先を取り出す。  適当に念を込めたら、糸を引っ張りすぎて、糸玉が転がって、あわてて糸玉を引き 寄せたら、途中の糸がこんがらがった。  まあ、いい。次に針を持ち上げる。  小さな針穴に糸先を近づける。入らない。先をよじりあわせて、もう一度。……入 らない。  何度も、何度も、何度も何度も何度も入れようとして、俺のイライラは頂点に達し た。  俺はわめき声をあげながら髪をかきむしり、床をごろごろと転がった。  部屋に射手が出現した。  俺と室内の様子を見ると、針と糸を取り上げ、糸先を舐めて針に通す。  そして「はい」といって、俺にそれを差し出してきた。  俺は首を...
  • 火3_08
     それに従って乙女が、俺たちの今までの居場所を視ていたみたいだ。不安いっぱい の目で。  そして蟹が獅子の心を読んで、「貴様、やせ我慢をしているが、本当は今、相当に 痛いのだろう」と獅子風に言った。  俺はぜんぜん気づいてなかった。蠍が獅子を眠らせ、魚が射手の麻痺を治し、ひと り無事な俺は、残りの面子に詳細を説明した。  説明しながら俺は、孔雀の気持ちが、ちょっと分かるような気がしてた。  偉そうで、たまにムカつくが、獅子はたしかに見ていて、男として憧れるようなと ころがある。  その憧れが自分を捨てたって事実は、そりゃあ辛いだろうなあと思うんだ。  俺はあの特撮番組が大好きで、出来ることなら、永遠に見ていたかったもんな。 火です。後半突入です。毎回コメントありがとうございます! 続き・水星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 風2_10
     こいつに理屈をこねられると、俺はなにも言えなくなる。  双子はやっぱり素早くなにかを悟ったようで、俺の頭をくしゃくしゃに撫でてきた。 「要するに、おまえ、天秤に気に入られたんだよ。愛されてんの」 「好かれるようなこと言ってねーぞ今日の俺は。グサっと言っちまった」 「グサっと言っちまったのは敵のせいだろ。最近は、おまえばっか危険な目にあわせ てるな。悪いな」 「それはいいんだよ。けどさ」 「良くねーって。これからはもう、そんな目にはあわせねえから。大丈夫だから」  言いながら双子は俺のあたまをグシャグシャにする。  水瓶と目が合った。水瓶は、なんか変な目で双子を見ていた。  そのときの俺には、水瓶がそんな目をしたことの意味が、まだわかっていなかった。  風の中でも天秤に焦点を。まいど読んでくださって有難うです。 続き・土星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 水2_13
     蠍が俺の前に立つ。なぜか溜息をついている。 「ふつう催眠というのは、もっと複雑な言葉が必要なんだ。相手の心に添わせるよう な」 「そうなのか?」 「ああ。こんな単純なやつは初めてだ。ただのひとことだぞ」 「へえ。それって凄いのかよ」 「誉めてはいない」  馬鹿にされてるらしい。  そのあと俺は「来い」のひとことで、蠍といっしょに蠍の部屋に行った。 「喋れ」のひとことで、カジキにヤられかけたことを含めて、洗いざらい喋らされた。  すると蠍は俺の記憶を呼び戻した。蠍となんかした記憶。鼻血が出そうなほどやら しいセックス。  赤くなる俺に蠍は「この記憶にくらべれば、たいしたことはないだろう?」なんて 酷い慰めの言葉を言いつつ、俺に、ちょっと言葉で言い表すのが難しいようなことを させて、俺の回復したばかりの体力を削った。ひでえ。  そのあとは蠍のベッドで、ぐっすり眠...
  • 風4
     ……そのとき俺の脳裏に、ある光景が浮かび上がった。  ガキのころ。暑い夏の昼下がり。公園。ベンチに腰かけてアイス食ってる兄ちゃん。 「僕はこの双子や天秤と違って、誘惑のための交渉というやつが苦手で……」  兄ちゃんが羨ましかった。なにせ暑かった。それに、うすいビスケットにアイスを挟んだそれは、高級品だった。 「成人女子にキスをねだるのは問題だが、まあ子供だし、男の子だから良いかと。そしてふだん魚を見ているから、子供にはおやつが……」  ――にーちゃんいいな。それうまそうだな。  ――いいよ、あげるよ。……ぼくが口にくわえてるやつなら。  俺はコノヤローとわめきつつ水瓶に殴りかかった。俺にはその権利があった。俺の人生最初のキスは、文字通り大人の都合で奪われていたわけだ。俺には怒る権利があった。周囲の家具も俺に答えてくれた。  舞い飛ぶ家具の中を、天秤がすいすいと移動していく...
  • 火5
    射手の腕を振り解いて、獅子が歩み出た。夕暮れの暗い中でもわかるくらいに顔色がわるい。俺を見下ろす目もさらに尖ってて、偉そうだった。 「痛みはあるのか? あるいは、体のどこかが動かない、とかは」  なんのことだ。俺は疲れて死にそうなんだ。さっさとどっかに行ってくれ。行く気が無いならもう、俺を燃やすなりなんなり、好きにしてくれ。限界だ。  体を支えていた腕から力が抜けた。俺の体は完全に地に伏した。  制服のえりの後ろを誰かが掴んだ。獅子が俺をネコみたいに持ち上げているようだ。声が聞こえる。 「連れて行くぞ、射手」 「ええっ。誘拐はまずいだろ」 「魚に診せる。どんな制限が出ているのかが分からない以上、放っておいてはまずい」 「そりゃ分かるけど、そいつに魚を使ったら、おまえが魚を使えなくなる」 「おまえもな。腕の力が抜けているようだが、しばらく我慢しろ」 「我慢か。俺の苦手な言...
  • 風3_08
    「さっきも言ったとおり、ここから先の未来は、ぼくにもわからないんだ。きみの幸 福は保証できない」 「幸せのために必要なのは、保証じゃなくて努力だろ」  水瓶は黙って考えると、そうだな、と言った。  そうして俺たちは家に帰った。あたらしい時間の中を歩きながら。  ※※※  家に帰り着くと、騒動が起きていた。  ドアをくぐると同時に、天秤が天井から落ちてきて、水瓶に言った。 「言われた通りだった。しかし発見のタイミングが少しずれた。すまない」 「双子は無事か?」 「ああ。意識もはっきりしてる」  双子が体じゅうを切ったらしいのだ。自殺のためではなく、能力の発動のために。  鍵をかけた部屋に閉じこもった双子を、天秤が押し入って助けたのだという。  俺たちは双子の部屋に駆け込んだ。  血の匂いがした。床に沢山のタオルが積まれ、それらはたっぷりと流れたらしい血...
  • 土2_01
    117 :超能力SS8:2008/08/19(火) 19 39 15 ID ???0  夏休みに入る直前、学校に転校生が来た。  それは牡牛だった。友達とかは驚いていた。秀才北高から大馬鹿南高への転入って のが、ちょっと珍しいかんじだったからだ。  俺は知っていたから驚かなかったけど、もったいないな、とは思っていた。  休み時間、学校内を案内しながら、俺は牡牛に尋ねた。 「俺らの家からでも通えるだろ、北高。なんでわざわざこっちに来たんだ」 「みんなに薦められた。牡羊と一緒に行動したほうが、身を守るには便利だろうと」  それは初耳だ。 「俺のためかよ」 「いや、俺のほうのためだと思う。早く新しい家族に馴染むためにも、そっちのほう がいいという判断かな」  俺らの家族に加わる条件は、天涯孤独の身であること、だった。  牡牛は両親を失ってはいたが、遠い親戚がいて、...
  • 風2_01
    97 :超能力SS7:2008/08/12(火) 11 46 27 ID tdNbtX160  蟹は読心のほかに、つくろい物というスキルを持っていた。  そのスキルはたいしたもんで、すぐに破れたがる俺の制服を、ケガを治す魚以上の 力で、完璧に癒してれた。  しかし蟹ばかりに負担をかけるわけにはいかないと、天秤が言い出したのだ。 「新しい制服を買っておいた方が早いんじゃないかな。あと普段着も足りないだろう。 靴も」 「金ねえもん」 「学生がお金の心配なんてしなくていいんだよ。僕がおごるから」 「いいよ。悪いし」 「あのね。きみのために言ってるんじゃなくて、きみの服を縫う蟹や、きみの毎日の 泥だらけっぷりに苛々している乙女や、きみの清貧さに心を痛めている魚のために言 ってるんだ」  そして俺の身なりのかまわなさが気に食わない天秤のためだろうか。  すげえ面倒く...
  • 夜の楽しみ
    144 :やぎの夏休み(夜の楽しみ):2008/08/28(木) 04 09 56 ID ???0 超能力SSの姐さんも乙です! いつも楽しみにしていますw こちらもプチ投下です。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *  さて、ここまで何度か看過されてきたテレビだが、乙女の家のテレビは山羊の家がある 地方と番組の放送枠が違っていた。 「おじさんの家のテレビってブロックみたい」  山羊の父親である双子は早い時期から薄っぺらなプラズマテレビしか買っていない。真剣 な顔で乙女の家のテレビを見ながらそんなことを言う山羊に乙女は内心軽いカルチャーショ ックを感じていたのだが、山羊は山羊で夜の六時になってチャンネルを変えたとたん流れ 出したアニメのラインナップに著しく首をかしげたようだ。 「これこの前見た。再放送やってるのかなあ?」 ...

  • 46 :超能力SS3:2008/07/15(火) 17 59 41 ID 933E/Xew0  ここはいったい、どこなんだ。  この建物は山の中にあるらしい。窓から外を見ても木しか見えない。玄関を出ると原っぱが有ったが、その彼方に見えるのはやはり山だった。  外に出ても迷いそうだったから、脱出するのはやめた。  腹も据わってきた。とことんつきあってやろうという気になったのだ。このおかしな出来事に。  ロビーで椅子に腰かけて、この結論に闘志を燃やしていると、足音が聞こえた。  二階の廊下を誰かが歩いていた。階段を降りてくる。  俺は相当に身構えていたらしい。ロビーにあらわれるなりそいつは、へんな顔をした。 「なんで睨むんだよ。俺おまえになんかしたっけ。初対面だよな?」  ああ、やっとマトモに、他人として、はじめての会話をしてもらえた気がする。  深い安堵感を感じてい...

  • 58 :超能力SS4:2008/07/22(火) 22 55 03 ID aBll4PuQ0  乙女は俺に聞いた。 「いいんだな?」  俺は頷いた。  それで結論が出たので、俺は乙女と一緒に、俺の暮らしていた施設に戻ったのだった。  乙女は眼鏡をかけた、頭の良さそうな、神経質そうな、なんかとっつきにくい感じのやつだった。  その乙女がつくったストーリーはこうだ。乙女は寮母のおばちゃんにこう言った。 「電話で申し上げたとおり、橋への落雷の衝撃で、牡羊くんは川に落ちたようです。 幸いすぐに、私どもの仲間が彼を発見しました。それで病院に連れ帰り、手当てをしておりました」  これが、俺が今まで帰ってこなかった理由。嘘だけど。  そして次が、俺がもう、二度とここに帰ってこない理由だ。乙女のつくった物語の続き。 「病院での検査の結果、牡羊くんの脳には特殊な障害があることが判...
  • 水2_01
    82 :超能力SS6:2008/08/05(火) 11 45 32 ID PESIy+eo0  クラブ辞めて暇になった俺は、能力の特訓をするようになった。  なぜかというと、「敵」についての詳しい話を聞いたからだ。  教えてくれたのは魚だった。俺の催促に降参したみたいに、魚は弱りきった様子で 話してくれた。 「みな、あまり「敵」のことは語りたがらないと思うよ。辛いから。敵といってもそ の中には、かつての味方もいたのだし」  俺らみたいな能力者の集団があるらしい。  能力者のまとめ役は川田ってぇやつで、そいつ自体は能力者でもなんでもない、普 通の男なんだそうだ。  しかし回りにいる人間が厄介で、なんつーか、独特の思想を持っているらしい。魚 曰く、 「自分たちを、進化した存在だと考えてる」 「偉そうな連中なんだな」 「そう言えるのかもしれない。だけど僕には、あ...
  • 風3_01
    164 :超能力SS11:2008/09/11(木) 21 13 05 ID ???0  学校に忘れ物してたんで、休みだけれども取りに行った。  自分の教室に入り、机の中からプリントを取り出し、すぐに帰ろうとしたんだが。  奇妙なことに気づいた。  俺の教室からは旧校舎が見える。そこはもうすぐ取り壊しが決まっているので、立 ち入り禁止だ。  なのに、窓に、人影が見えた。  俺は幽霊系の話が苦手だ。しかしこの真っ昼間から幽霊でもないだろうと思い、旧 校舎に行ってみたのだ。  そいつは、理科室に居た。俺の知っているやつに、よく似ていた。  よーく似たやつだったが、俺の知っているそいつよりは、かなり若い。俺よりも年 下なんじゃないか? 「水瓶かよ!」  若くても、理数系の雰囲気をまとった水瓶は、俺を見て、へんな顔をした。 「なぜぼくの名前を知っている」 「そり...

  • 17 :超能力SS:2008/06/30(月) 23 44 17 ID o56+fdok0  なにがなんだかわからない。  俺はただ、いつものように、学校行って、授業寝て、弁当食って、クラブやって。  クラブ終わって、チャリ置き場行ったら、チャリのタイヤがパンクしてたから、歩いて帰ろうと思って。  近道して。山に入って。  山ン中には川があって、川には橋があって、そこを渡れば家への近道なんだ。  なんで、橋が燃えてるんだ?  いやそれはいい。それはまだわかる。なんか橋に雷でも落ちたのかもしれない。今日は晴れてるけど。  なんで橋の炎が、地面を走って、俺のほうに伸びてきて、俺を取り囲んでるんだ?  煙がからい。咳き込みながら辺りに目をやる。  河原に誰か立ってる。男だ。腕を組み、じっと俺を見据えてる。  俺は男に向かって、助けてくれって言おうとして、やめた。  ...
  • 火2_01
    72 :超能力SS5:2008/07/30(水) 02 29 30 ID ???0  家が山奥にあるせいで、登校がものすごくめんどくせえ。  帰るのも遅くなる。クラブがあるからだ。  だけど頑張らないと、もうすぐ試合なんだと説明すると、射手は表情をくもらせた。  この人の、こんな表情は珍しいから、不思議に思って尋ねた。 「腹でも痛ぇの?」 「いや。胸が痛い」 「ええっ! 麻痺か!?」  たいへんだ。射手は、そういう危険があるから、気をつけなきゃならないんだ。  しかし射手は首を横に振ると、ふつうの顔でこう言った。 「なんでクラブ辞めないんだ?」  遅くなるのを心配されてるのかと思った。  しかしそういうことじゃなかった。射手は俺にこう聞いてきた。 「野球、遊びでやってるならいいけど、牡羊は本気でやってるんだろ?」 「ああ。2年になったらレギュラーになりたい...

  • 36 :超能力SS2:2008/07/08(火) 21 17 42 ID ???0  あーだるい。だるいけど、眠っているわけでも、起きているわけでもないみたいだ。  意識がぼうっとして、溶けたみたいになって、急にはっきりして、また消える。  その繰り返しの中に、俺は誰かの顔を見た。  大人の顔だった。優しそうな目をしていた。そいつが俺にこう言った。 「大丈夫だからね。すぐに治してあげる」  冷たく心地よい良い手が、俺のひたいに触れる。続いて頬に。首、肩、胸、腹。  あんまり気持ちよくて、俺はぐっすり眠ってしまった。  そして目覚めると、知らない天井が見えた。  あわてて身を起こす。俺は俺のものじゃないベッドに寝ていた。  あたりを見回すと、そばに椅子があって、そこに、夢うつつに見たあの、優しそうな男が座っていたのだ。  なんとなく助けられたんだってわかった。だか...
  • 土3_01
    190 :超能力SS13:2008/09/25(木) 18 27 17 ID ???0  毎日が話し合いと、作戦立てと、準備の日々になった。  活躍したのは乙女だった。なにかについて計画を立てたい、という場合において、 乙女の能力はとても役に立つ。  地図を広げて、どこかの状態を見たいと思えば、乙女に聞けば良かった。誰かの居 場所を知りたいと思えば、乙女に聞けばよかった。乙女に見えないものは無かった。  だから俺たちはちょっと、乙女に頼りすぎたんだと思う。  あるときのことだ。その日はみんなそれぞれ用事があって、外に出ている者もいれ ば、部屋に居る者も居た。  俺は、暇だった。力仕事が必要無く、頭を使い計略を立てる段階だったから、やる ことが無かったのだ。  だから居間で、牡牛と宿題をしていた。いや正確には、牡牛の宿題で俺のぶんの答 えあわせをしていた。  ...
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