星座で801 @ wiki内検索 / 「風3_01」で検索した結果

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  • 風3_01
    164 :超能力SS11:2008/09/11(木) 21 13 05 ID ???0  学校に忘れ物してたんで、休みだけれども取りに行った。  自分の教室に入り、机の中からプリントを取り出し、すぐに帰ろうとしたんだが。  奇妙なことに気づいた。  俺の教室からは旧校舎が見える。そこはもうすぐ取り壊しが決まっているので、立 ち入り禁止だ。  なのに、窓に、人影が見えた。  俺は幽霊系の話が苦手だ。しかしこの真っ昼間から幽霊でもないだろうと思い、旧 校舎に行ってみたのだ。  そいつは、理科室に居た。俺の知っているやつに、よく似ていた。  よーく似たやつだったが、俺の知っているそいつよりは、かなり若い。俺よりも年 下なんじゃないか? 「水瓶かよ!」  若くても、理数系の雰囲気をまとった水瓶は、俺を見て、へんな顔をした。 「なぜぼくの名前を知っている」 「そり...
  • 風3_03
     なら……、なら、俺は、今ちょっと思いついたことを、水瓶に言えるんじゃねえだ ろうか。  言っていいのか。言うか? むしろこれは、言うべきなのか。 「あのよ水瓶。俺が怒ってるのは、いまの川田だ。俺は嘘は言ってねえ」 「ぼくだって感情的になっているわけじゃない。客観的に判断しているつもりだ」 「おまえならそうだろうな。ってことはだ。むかしの川田がいいやつなのなら、きっ と今の川田に変わっちまうような、なにかの理由があったんだ」 「……」 「おまえ川田と友達なんだったら、そっちの川田をちゃんと守ってやれよ。性格変え ちまうような出来事から」  こっちの水瓶が嫌がってる「歴史を変える」ってのは、こういうことなのかもしれ ない。  けど、俺はためらわねえ。  水瓶が川田ってやつを、いいやつに変えてくれるんなら。それによって、みんなが 困らずにすむんだったら。  それに...
  • 風3_06
     俺の上に乗ったまま、現在の水瓶は言った。 「結論から言うと、川田の放った刺客が、いま牡羊を狙っている。光線をあやつる能 力者だ」  過去の水瓶がつぶやくように言った。 「すべて、本当なのか」  現在の水瓶が答える。 「本当だよ。きみが、今よりもさらに未来のぼくからの伝言を受け、調べあげた不幸 な事実は、すべて本当だ」  言いながら水瓶はふところに手を入れた。なにか丸いものを取り出す。 「光線をあやつる能力者の存在を知ってから、彼に対抗する術を考えていた。まあ簡 単だった。こうすればいい」  言いながら水瓶は、その丸い鏡をかかげた。  窓から飛んできた光は、入ってきたのときっちり同じ角度で、鏡に反射した。  光線の狙っている位置を知らなければ、できない行動だった。  水瓶は面白がるような目を窓に向けた。 「ちなみに能力者は向かいの校舎に居るんだ。光線は眉間から...
  • 風3_02
    「まあ気にすんなよ。俺でよければ、帰りのキスぐらいしてやるから」 「奇妙な能力だ。それで、この時代のぼくは、きみの弟なのか?」 「いや。今の水瓶は俺より年上だから、俺のほうが弟だよ」 「ぼくはずいぶん未来に来たんだな。当然、きみも何かの能力を使えるわけだね」 「おう。ものを動かせるんだ」 「それは普通だよ。……ああ、ぼくは川田くんのキスでここに来たんだけど、彼にも 事情を説明するべきだろうか。きっと、とつぜん消えて驚いている」  俺は驚いた。 「川田ぁ!?」 「知ってるのか。それでは彼は、ひょっとして、家族……」 「んなわけあるか! 川田は敵だ! 俺らあいつにひどい目に会わされてるんだよ!」  それから今までのことを話した。俺が体験したことや、俺が聞いた話を。  水瓶は戸惑っていた。 「どうも、信じられない。彼はそんな人間じゃない。ぼくの友人なんだ」  それから...
  • 風3_07
    「俺に会ってたこと、なんで隠してたんだ」 「べつに隠してたわけじゃない。どうせいずれは体験する出来事だと知っていたから、 あえて先立って言う必要を感じなかった。ちなみに僕の最初のキスは川田だが、その 次はきみだ。なので、きみは川田と間接……、どうでもいいか」 「どうでもよくはねえが、そこまで割り切って考えてたんなら、なんでここに来たん だよ」 「きみを救うために。未来を変えるために。きみはここで死ぬ運命だったから」  死にそうなほど驚いた。  さっき水瓶に突き飛ばされたとき、あの光線はたしかに、俺の立ち位置に放たれて いた。  ってことはだ。この水瓶は、俺の死んだ未来を、過去に、見ていたのか。  呆然とする俺に、水瓶はやっぱり、世間話みたいに語り続ける。 「なにが起こったのかわからなかった。きみはとつぜん、胸に穴をあけて倒れた。き みは血まみれになりながら僕にキス...
  • 風3_08
    「さっきも言ったとおり、ここから先の未来は、ぼくにもわからないんだ。きみの幸 福は保証できない」 「幸せのために必要なのは、保証じゃなくて努力だろ」  水瓶は黙って考えると、そうだな、と言った。  そうして俺たちは家に帰った。あたらしい時間の中を歩きながら。  ※※※  家に帰り着くと、騒動が起きていた。  ドアをくぐると同時に、天秤が天井から落ちてきて、水瓶に言った。 「言われた通りだった。しかし発見のタイミングが少しずれた。すまない」 「双子は無事か?」 「ああ。意識もはっきりしてる」  双子が体じゅうを切ったらしいのだ。自殺のためではなく、能力の発動のために。  鍵をかけた部屋に閉じこもった双子を、天秤が押し入って助けたのだという。  俺たちは双子の部屋に駆け込んだ。  血の匂いがした。床に沢山のタオルが積まれ、それらはたっぷりと流れたらしい血...
  • 風3_05
     水瓶は、厳しい顔をしていた。 「久しぶりだな牡羊。きみにとっては10秒ぶりくらいか」  1秒ぶりくらいだよ。  いい加減、俺の唇を休ませてもらいてえ気もする。俺だってけっこう照れくさい んだ。  水瓶はしかし、照れなどみじんも感じさせない様子だった。  俺の両肩をつかみ、顔を見据えてきたのだ。 「確認する。きみにとって川田は悪か」  それについては、きっぱりと頷いた。 「ああ。俺の敵だ」 「こちらの僕は川田に背いた。そうだな?」 「そうだよ」  そのときだった。理科室のドアが開いた。  そして俺は、いま教室の真ん中で、目の前から聞いていた声を、ドアの方向からも 聞いた。 「きみはきみで、好きな運命を選べば良い」  俺のよく知っている、現在の水瓶がそこに居た。  むかしの水瓶は驚いていた。 「僕、か」 「ああ。僕だ」 「しかしこれは。僕が、僕に会って...
  • 風3_04
    「川田になにかあったのか?」  水瓶は苦しそうに「わからない」と言った。 「彼は変わってしまった。まるで別人だ」 「性格を変えるような何かがあったんだろ」 「二十四時間いっしょに居たわけではないが、僕が知る限りは、そんな出来事は無か ったと思う。しかし今の彼は、なんというか、きみの言っていた通りのことをしでか しそうな、そんな雰囲気を持っている」 「……」 「彼はきみの言ったとおり、能力者の組織化を計画している。しかしきみの言うよう な悪どい思想は、いまのところ出てきていない。……どうすればいい。彼を信じてい いのか。彼は能力者たちを助けたいと言っている。僕はどうすれば」 「悪どいことをやりそうになった時点で、止めればいいんだ」  簡単な話だと思うが。  能力者が固まってるってこと自体は、俺の今の家族だって同じようなもんだし、そ れ自体は、悪いことでもなんでもな...
  • 水3_01
    147 :超能力ss10:2008/09/04(木) 06 29 10 ID iAYos0PI0  夏休みに入った。  俺はピンチだった。体育の推薦で今の学校に入ったくせに、クラブやめた俺は、成 績が悪いことが許されねえ立場になっちまったのだ。  てんこ盛りの宿題を出された。それをこなさなきゃ、来年は二年になれないかもっ て先生に言われた。  とにかく家族に頼った。みんな協力してくれたんだが、読書感想文とかは、誰かに 教えてもらうってわけにもいかない。  困っていると、蟹がアドバイスをくれた。 「蠍に頼ってみなよ。そういうのは、彼に聞くのがいちばんだ」 「むずかしい漢字って、催眠で読めるようになるのか?」 「ちがう、ちがう。能力じゃなくて、職業に頼るんだよ。蠍は作家だから」  なるほど蠍はよく本を読んでいる。あれは趣味じゃなくて仕事の一環だったのか。  納得...
  • 火3_01
    136 :超能力SS9:2008/08/26(火) 23 17 12 ID TG477jk60  さいきん俺は、蟹に針と糸を借りて、針穴に糸を通す練習をしていた。能力を使っ て。  まず糸玉から、糸先を取り出す。  適当に念を込めたら、糸を引っ張りすぎて、糸玉が転がって、あわてて糸玉を引き 寄せたら、途中の糸がこんがらがった。  まあ、いい。次に針を持ち上げる。  小さな針穴に糸先を近づける。入らない。先をよじりあわせて、もう一度。……入 らない。  何度も、何度も、何度も何度も何度も入れようとして、俺のイライラは頂点に達し た。  俺はわめき声をあげながら髪をかきむしり、床をごろごろと転がった。  部屋に射手が出現した。  俺と室内の様子を見ると、針と糸を取り上げ、糸先を舐めて針に通す。  そして「はい」といって、俺にそれを差し出してきた。  俺は首を...
  • 土3_01
    190 :超能力SS13:2008/09/25(木) 18 27 17 ID ???0  毎日が話し合いと、作戦立てと、準備の日々になった。  活躍したのは乙女だった。なにかについて計画を立てたい、という場合において、 乙女の能力はとても役に立つ。  地図を広げて、どこかの状態を見たいと思えば、乙女に聞けば良かった。誰かの居 場所を知りたいと思えば、乙女に聞けばよかった。乙女に見えないものは無かった。  だから俺たちはちょっと、乙女に頼りすぎたんだと思う。  あるときのことだ。その日はみんなそれぞれ用事があって、外に出ている者もいれ ば、部屋に居る者も居た。  俺は、暇だった。力仕事が必要無く、頭を使い計略を立てる段階だったから、やる ことが無かったのだ。  だから居間で、牡牛と宿題をしていた。いや正確には、牡牛の宿題で俺のぶんの答 えあわせをしていた。  ...
  • 土3_05
     俺は力を解除したあと、こう条件をつけた。 「下に降りるだけ。作るのは俺がやる」 「牡羊が?」 「できるよ。まえの家では、おばちゃんの手伝いでよくやってたんだ」 「……」 「あんたは見てるだけだ。嫌だっつーんならもう、俺が疲労でぶっ倒れるまで、あん たをベッドにくっつけといてやる」  乙女は考えていたが、やがて溜息をついた。 「どうせ眼鏡が無いと、うまく動けないから……、牡羊にまかせる」  俺は乙女と連れ立って移動した。乙女は眼鏡が無いせいで、階段も怖そうだったが、 俺に手を貸されることは嫌がった。  すげえ意地っ張りだ。俺もそういうとこあるけど、ここまで酷くない。  で、台所に行くと、牡牛が居た。エプロンしめて、冷蔵庫から材料を取り出して、 作業台に並べていた。  俺たちに気づくと、こう言った。 「乙女がやるって聞いたから、かわりにやってやろうと思って」 ...
  • 水3_03
    「どっかで会ったことあるような」 「どうだろう。でも知ってもらえてはいるみたいだね。ぼくの名前はカラス。ただ別 の名前があって、それは……」  有名なバンドのボーカルの名前だった。  俺は、驚いた。カラスの別の名前に、というよりも、そんなやつと知り合いだとい う蠍に。  蠍はしかし、びっくりしてる俺に、静かな目を向けてきた。 「大丈夫。金が無くても、芸も無くても、牡羊は牡羊。……自信を持て」  それは、催眠の言葉だった。  俺の中に自信があふれてきた。芸能人がなんだ。カラスが何様だ。俺は俺だ。  カラスは蠍の言葉を聞いて、軽く笑っていた。 「ぼくも、あまり構えないでくれるほうが有り難い。今さらぼくらの昔の関係を、ど うこうと言うつもりはないんだ。同じように、今のきみたちの関係をどうこう言うつ もりも無い」  俺と蠍は家族だが、そういう意味じゃないのか?  自信...
  • 火3_08
     それに従って乙女が、俺たちの今までの居場所を視ていたみたいだ。不安いっぱい の目で。  そして蟹が獅子の心を読んで、「貴様、やせ我慢をしているが、本当は今、相当に 痛いのだろう」と獅子風に言った。  俺はぜんぜん気づいてなかった。蠍が獅子を眠らせ、魚が射手の麻痺を治し、ひと り無事な俺は、残りの面子に詳細を説明した。  説明しながら俺は、孔雀の気持ちが、ちょっと分かるような気がしてた。  偉そうで、たまにムカつくが、獅子はたしかに見ていて、男として憧れるようなと ころがある。  その憧れが自分を捨てたって事実は、そりゃあ辛いだろうなあと思うんだ。  俺はあの特撮番組が大好きで、出来ることなら、永遠に見ていたかったもんな。 火です。後半突入です。毎回コメントありがとうございます! 続き・水星座編へ 超能力SSメニューへ
  • 水3_05
     俺の疑問をカラスの笑顔がとろかしてしまう。すっげぇ格好いいなと思う。  俺もカラスが好きだ。ああ、こんなやつになら、何をされてもいいような……。  蠍が言った。 「牡羊。嘘だ。気づけ」  すっと頭が冷えた。  俺は気づいた。俺はカラスに嘘をつかれた! 当たり前だっ、なんで俺がカラスに 惚れられなきゃならねえんだ!  戸惑う俺にカラスが言う。 「でもぼくは牡羊を愛してるし、牡羊もぼくが好きだろう?」  ああ好きだ。なんでかわかんねーけど、今このときから、俺はカラスのものだ。  蠍が言う。 「嘘だ。魅了の能力だ。牡羊はカラスが好きじゃない」  そうだ俺はカラスが好きじゃない。なんだと能力だと。みりょーって何だ畜生。  しかしカラスがまた、 「能力でもいいじゃない。ぼくはきみを愛してるんだから」  と言ったので、なんか能力でもいいような気がしてきた。  この気持...
  • 火3_04
     孔雀は「よくぞ聞いてくれた!」と叫ぶと、両手を体の前で交差させ、なんかのポ ーズを取った。 「私の名は孔雀! ヒーロー孔雀! 世界の平和を守るため、悪人獅子を成敗しにき た!」  おれガキのころ、こういうのが好きだった。黄道戦隊ゾディアックとか。  いつかヒーローになりたいとも思っていた。  だからこのシチュエーションには違和感を覚えた。 「獅子が悪党? んじゃ俺は悪党の仲間か。成敗される立場かよ」 「そこの少年! それは違う。獅子は裏切り者ゆえ悪人なのだ。我々のグループを裏 切って逃走した」  そう……なのか?  しかし獅子はムっとしていた。腕組みをし、顔をあげ、大声で孔雀を怒鳴りつける。 「馬鹿が! 逃げたりなどするか! 俺がグループを抜けたのは、おまえが馬鹿だか らだ!」  孔雀は明らかにびくっとしていた。しかしそれを隠すかのように、腰に手を当てて 胸...
  • 土3_04
    「蠍と魚もついて行ったから、買い物そのものは楽なんじゃねえの」 「しかし食事の支度が出来ないからと、俺が頼まれていたんだった」  ベッドを降りようとする乙女を、俺は全力で押し留めた。 「なんで大人しく寝てられないんだよ!」 「病気でもないのに寝てられるか! 離せ!」  仕方が無いので、俺は能力を放った。  ベッドに固定された乙女は、俺に向かって、こんなやり方はずるいとかぬかしやが った。  俺は言い返した。 「メシくらい誰でも作れるだろ」 「誰もが忙しくて作る暇が無いから、俺が頼まれたんだろうが。ええい、離せという んだ」 「いやだっ」  乙女は刺すような目で俺を見た。  それから、ふっと息を吐いて、すごく落ち着いた声音でこう言った。 「牡羊。俺は大丈夫だ。いくらなんでも料理くらいはできる」  作戦を変えて、俺を説得することにしたらしい。  俺は考えた。 ...
  • 火3_03
     さらに何かを尋ねようとしたとき、俺たちは、笑い声を聞いた。  湖面を吹きわたる哄笑。俺たちは辺りを見回し、背後を振り返った。  ……俺は何を見つけちまったんだろう。  高い木が生えていて、その木のてっぺんに、へんなやつが立っていた。  真っ赤なボディースーツ。仮面。肩からかけた白いギター。青いスカーフが風にな びいている。  射手を見ると、目が輝いていた。  獅子を見ると、なんか嫌そうな顔をしていた。  俺は獅子のほうに尋ねた。 「なんだありゃ?」  獅子はやっぱり嫌そうに答えた。 「孔雀という。むかしのグループの仲間だ。俺が今の家族に参加する前の」  そりゃ初耳だ。獅子はむかし、川田ん所でもうちでもない、第三のグループに居た のか。  射手が移動した。高い木のてっぺん。ヒーロー風な孔雀の横に。 「なあ! おまえ何やってんだ?」  とつぜん現れた射手の大声...
  • 火3_06
     獅子が俺に言った。 「このあたりに石を置け」  俺は辺りを見回した。頭くらいのサイズの石を見つけたので、能力で浮かせて、指 示された場所におろした。  落とし穴が石を呑みこんだ。結構なサイズの落とし穴だった。  獅子は続いて辺りを見回すと、手をあげ、木々の間に張られたツタを指した。  ツタは発火して焼き切れた。同時に、巨大な木の振り子がぶんと降りてきて、獅子 の目前で揺れた。  続いて獅子は考えると、指を眉間にあてて、念じた。  同時に、矢が飛来した。しかし獅子の体に届く前に、燃え上がって灰になった。  矢が飛来した方向に獅子は目を向けた。そして足元に炎をたてると、目前の方向へ と、いっきに燃え広がらせていった。  あっという間に火事になった。範囲と方向が定まった奇妙な山火事は、木の間に隠 れていた孔雀をいぶり出したのだ。  空を飛ぶ孔雀は、発火していた。発火...
  • 土3_08
     乙女と呼びかける俺の声を、乙女は無視した。 「これは能力なのだと聞いて安堵した。俺は頭がおかしいわけじゃなかったんだ」 「ええと、よくわからねえが、だから納得したって話なのか?」 「納得は……、実は今でもできない。はっきりと思い出せるからだ。あのとき幻覚だ と思っていたものを」 「……乙女?」 「トラックが横転する。その横腹に突っ込んでいく乗用車。ぶつかって潰れてゆく車。 ガラスが割れる。座席にある二つの体が、揺れる。ぶつかる。不自然に首が折れる。 侵入してくるトラックの荷物。鉄骨だ。それがあっという間に、からだを貫いて……」  俺は乙女の肩を掴んで揺さぶっていた。  乙女はいま、能力を使っているわけじゃない。しかし、なにかの映像に捕らわれて いる。  山羊の言っていた通りだった。乙女は、自分で自分を傷つけ始めている。体をとい う意味でではなく。  どうしよう...
  • 水3_06
     やがて俺の様子を見つつ、カラスが言った。 「限界だね、彼」  蠍がカラスに、厳しい目を向けた。 「無駄だ、カラス。俺は牡羊を守る。なんど魔法をかけても打ち消す」 「そうだね。このままじゃ、きりがない。……仕方が無い」  二人はにらみ合った。  俺には長い沈黙に思えた。しかし実際には、ほんの数秒だろう。  二人は同時に言った。 「ぼくは蠍を愛してる」 「カラスは牡羊を愛してる」  たった一文に込められた二人の作戦を、俺は疲労した頭で考えた。  カラスのみりょーで、いま、蠍はカラスに惚れた。  蠍の催眠で、いま、カラスは俺に……ええっ!?  カラスがサングラスを外した。熱っぽい目で俺を見ている。  そしてそんなカラスを蠍が、湿度の高い目で見つめている。  なんなんだこりゃ。誰かカエルで蛇でナメクジなんだ。  俺は言った。 「みんな嘘だって! なんだよこりゃ、...
  • 火3_07
     獅子は考えると、首を横に振った。 「それは違う。あんなものと、それを同じにするな」 「ってことは、おまえも好きだったのか」 「ああ」  獅子は当然、水面に突き出た竹筒に火をつけた。  孔雀はもがきながら浮上し、げほげほ言ってた。  俺はもう孔雀が哀れになってきたので、孔雀の姿を空中に固定し、俺たちの手前ま で引き寄せると、手足を大の字に引き伸ばした。  俺は獅子をみつめた。視線には、もうラクにしてやれ、という意味を込めたつもり だ。  そして、獅子の全身全霊を込めたアッパーパンチをアゴに受けて、孔雀は泡をふい て気絶した。  射手が拍手した。 「すげえ。いいコンビだなーおまえら。格好いいなあ」  俺は悲しい気持ちで射手に問い返した。 「おまえ何も感じねえ? こいつを見て」 「哀れなくらい馬鹿で、可愛いと思うぜ。悪いやつじゃないんだろ?」  最後の問いは、...
  • 水3_02
    「金はねーし、芸もねーし。肩でも揉めっつーんならできるけど」 「時間をくれ。あしたつきあえ。出かける。ついでに書店にも寄って、牡羊に本を買 ってやる」 「いいよそんなの。貸してくれればそれで」 「駄目だ。まっさらな本を手に入れて、自分で読みながらラインを引いて、書き込み をして、折り目をつけて、手垢で汚して、そうしていけば、その本は自分だけのもの になるんだ。そういう習慣をつけるといい」 「夏休み終わるまでに間に合うかな」 「おまえがその本を気に入れば」  というわけで次の日、蠍と出かけた。  蠍は俺を先に本屋に連れて行って、分厚い新書を買ってくれた。  で、本を抱えて次に行ったのは、喫茶店だった。  地味で古い店だ。すみの席に俺が座ると、蠍は俺の隣りに座った。  なんでカップル座りなんだよと俺が文句を言うと、蠍はあっさりと答えた。 「対面に、知り合いが来るから...
  • 土3_06
    「いーじゃねーか。大きめに切ったんだから崩れても」 「出来上がったときに不恰好になるだろう」  俺は鍋の中身を取り出して、角っこを削っていった。  やがて角を取り終え、すべての材料を放り込み終えて、鍋に水を加えた。  調味料の器を持って、中味を鍋にあけようとしたら、また乙女の声が飛んできた。 「早い」 「……」 「火をつけて、煮立ってから三分後。でないと味を含まなくなる」  なんか、イライラしてきた。  しかし俺は黙って従った。乙女の好きにさせねえと。リラックスさせてやらねえと。  大鍋は沸騰するまで時間がかかった。俺は腕組みして待った。  やがてぐつぐつ言い始めたので、醤油の瓶を握りつつ時計を見て、三分待って、い ざ投下しようとしたら、また声が飛んできた。 「順番」 「なんだよ!」 「甘いものが先。砂糖とみりん。次に塩。醤油は材料が煮えてからだ」 「……」...
  • 水3_07
    「それは違う、蠍」 「違わない。俺はカラスを愛してるから、カラスとは一緒に居られない」  カラスも困ったように微笑み「わかってる」と言った。  俺には意味がわからなかった。  つまりこいつらは昔、そういう関係だったんだ。だけど、別れちまったんだ。  けどなんで。愛してるから別れた? 俺には意味が分からない。  俺に惚れきっている状態のカラスが、俺に言った。 「ぼくも同じ気分なんだ。今のぼくは、牡羊を心から……、ん、だから、牡羊を連れ ていくべきではないね」  そう言ってカラスは席を立ち、伝票を取った。 「いちおう魅了を解いておこうか。蠍、やっぱりぼくは、蠍を愛していない」  蠍は一瞬、うろたえた様子を見せたあと、途方にくれたようにカラスを見上げた。  カラスはサングラスに表情を隠すと、さよならと言って、店を出て行った。  俺はしばらく放心し、それから蠍を心配した。...
  • 土3_09
     腕を掴もうとすると、乙女は顔を真っ赤にして、身をひいてよけた。  俺のほうも、照れも手伝って、大声で怒鳴りつけてしまった。 「そこで意識すんなよっ!」 「……俺はただ、これは性格だから、気にするなと言いたかっただけなんだ」  妙に弱弱しい声だった。俺は戸惑った。  乙女はそっぽを向いたまま、小声で、早口で語る。 「べつに牡羊が嫌いなわけでも、怒っているわけでもないから、気にするな、と」 「う、うん。わかってる」 「……」 「……なんも気にしてねえよ、俺」 「部屋に戻る。一人で大丈夫だ」  言いながら乙女はふらっと立った。危なっかしい足取りで歩いて、階段を上がって いった。  俺は後を追えない雰囲気になっちまって、その背中を見送った。  それから視線を上にあげて、二階の手すりから身を乗り出してこちらを覗きこんで いる山羊の姿に気づいた。  山羊は乙女が自室に...
  • 水3_08
     徹夜で読んだ。本は分厚かったけれど、文章は綺麗で、話はわかりやすくて、読み やすかった。  いや、知らない人間にはそう思えるだろうって事だ。  俺は蠍を知っているから、その美しい文章の向こうに、すごく深いものが描かれて いることや、わかりやすい話の奥に、めちゃくちゃ複雑なものがあらわされているこ とを理解できる。  話はこうだ。ある男が、ある女に出会う。男は売れない歌うたいで、女は作家のタ マゴ。  男はいいやつだ。単純で優しくて馬鹿。歌うだけしか能が無い。  そして男は、病気だか呪いだか、よくわからんマイナスポイントを持ってて、その せいで、人を好きになることができない。  ……この病気ってのは、能力のことだろう。そして惚れられねえってのは、制限の ことだ。  女は男を好きになったので、男を応援する。  ……応援な。間違いなく蠍は、カラスに能力を使ったんだろ...
  • 土3_02
     見ていた山羊が、それで良いというふうに頷いた。 「不安神経症、パニック障害。過呼吸症候群。制限によるものだ」  山羊の説明によると、本人は死ぬほど苦しいらしいが、どこが悪いというわけでも ないんだそうだ。過度の不安が神経を狂わせているだけらしい。  辛い制限だなと言うと、山羊は悩ましげに眉を寄せた。 「からだの問題は、癒えさえすれば問題ないが、心の問題は尾を引く。俺も制限のあ いだは心を失っているが、正直、怖いよ。究極に無防備な自分をさらすわけだから」 「なにかされても、どうしようもないわけだ」 「ああ。まわりの人間を疑ってしまう自分が嫌になる」  心を縛る制限。だから魚よりも、蠍の領域なのだが、どちらも外出している。  薬箱をあさろうかと言うと、山羊は考えるようにうつむいたあと、やはり首を横に 振って、俺の耳元に口を寄せた。 「それよりもむしろ、心配なのはこのあ...
  • 土3_07
    「わかんね。けど、あるのかなとも思う」 「俺は確実に、あると思う。なければ困る」 「困る?」 「ああ。俺はこの能力に目覚めたのは、いまの家族に出会ってからだ。しかしそれま でにも、それらしい兆候はあったんだ」  乙女はいったん、黙った。  それから視線をうつむけて、言いづらそうにこう聞いてきた。 「牡羊は、球技が得意だったんだな」 「おう。だから野球やってた」 「しかし得意だと思っていたそれは、実は自覚していない能力の結果だったかもしれ ない。そう思ったことはないか?」  ある。はっきりと。  うなずくのには勇気がいった。自分のずるさを告白しているような気分になったか らだ。  しかし乙女は、俺を責めなかった。かわりに自分のことを説明しだした。 「俺は子供のころからよく、幻覚を見ていた。ありえないものを見て、知りえないは ずのことを知った。だから昔の俺は自分...
  • 水3_09
     ただし俺は、大切なものにラインなんて引かねえし、書き込みなんてしねえし、折 り目も、手垢もつけねえけどな。  明け方に読み終えて、目をこすりながらロビーに降りた。  台所でコーヒー飲んでると、魚が寝ぼけ顔で入ってきた。 「あれ……、牡羊おはよう。早いね」 「おう、本読んでた。魚もはえーな」 「僕は昨日が早寝だったから。……あっ!」  魚は、俺のかかえてた本を見て、ぱっと顔を輝かせた。 「それ、蠍の新刊だね。読んだの?」 「ああ。魚も読んだのか」 「うん。良い話だよねえそれ。ロマンティックで」 「ろ……、ろまんてぃっく?」 「そう思わない? 二人ともすごく愛し合ってるんだ。最後が悲恋になってしまった のが悲しいよ。でも天使の出てくるシーンは美しかったなあ」  その美しい天使は、あんたのことだと思うんだが。 「魚ってさ、蠍、好き?」 「好きだよ。なんで?」 ...
  • 火3_05
     しかし獅子も、俺にこう言った。 「手を出すな、牡羊」  そして獅子は空を見上げた。  空中のビンは、手前のものから次々と爆発していった。そして最後に、孔雀が発火 した。  燃えながら孔雀は飛び、湖の中に飛び込んだ。  そしてふたたび飛び上がってくると、また得意げになった。 「はっはっは! 水のそばでは貴様の攻撃も効かんぞ。これで私の……あちちち!」  またふたたび発火した孔雀は湖に飛び込み、頭をちりちりパーマにして上がってき た。 「卑怯だぞ獅子! まだセリフの途中……あちちちち!」  発火した孔雀は湖に飛び込み、今度は上がってこなかった。  俺は心配した。ギターの中身を。酸って水の中で、ちゃんと分解するんだろうか?  獅子は湖面を見つめている。浮いてくる孔雀でもって、炎のもぐら叩きをやるつも りなんだろう。  孔雀が上がってきた。今度の動きは素早かった。さ...
  • 火3_02
     射手はふたたび俺を連れてジャンプし、獅子のかたわらに立った。 「獅子。邪魔しに来た」  射手が言うと、獅子は横目で俺らを見た後、ふたたび数本の炎を湖面に走らせた。  たしかに綺麗だった。青い湖の上に描かれる、放射線状の火模様。続いてわきあが る水蒸気の雲。  なるほど、水に火を放てば、簡単に消火できるから、残り火のことを考えずにすむ んだ。  獅子はやっと俺たちを正面から見た。 「邪魔だ」 「だから邪魔しにきたんだって。はい忘れ物」  射手は鎮痛剤のビンを差し出した。  獅子は無言で受け取ると、中身を手のひらにあけて飲んでいた。  俺は湖面を見た。水蒸気が晴れて、水面には空が映りこんでいる。  そしてその水面の、雲の影のあたりに、なにかが浮かんでいる。  念じて持ち上げ、手元に引き寄せてみると、それは魚のマスだった。 「みごとに茹で上がってるぜ」  そう言...
  • 水3_04
    「ぼくはいま、川田のグループに所属している。今日は指令を受けてきた。蠍を引き 抜けと」  つまり、こいつも能力者なのか。  蠍を見ると、やっぱり、作ったみたいな無表情だった。 「俺は行かない」 「ああ。しかし知っての通り、蠍を連れて行くのは簡単だ。ぼくが、ぼくの能力を使 えば」 「俺は行かない。行けるわけが無い」 「ぼくも蠍の意思を無視するのはいやだ。しかし川田には逆らえない。困ったよ実際」  なにを言ってやがるんだこいつは。  俺のメンチを受けて、カラスは首をかしげていた。 「ぼくは所属のことを話しているだけで、蠍はこれからも、変わらずきみのものだ。 それでも不満なの?」  俺は、きっぱりと言った。 「蠍は行かねえ。あんたは手ぶらで帰る。そんだけだろ」 「いや、きみを連れて帰るという手もあるんだ。そうすれば蠍は、自分の意思でつい て来てくれるかもしれない」...
  • 土3_03
    「あれが無いと何も見えない。仕事にならない」 「今日はゆっくりしてたらいいんじゃねえの」 「そうはいかない。時間もないし、出来る準備は完ぺきに整えておかないと」  言いながら乙女は身を起こし、宙を睨んだ。 「……山道の工事が、終わってる。道具を撤去している。やはりルートの変更は無い から……」  俺は、驚いた。いま制限で倒れたばかりなのに、また能力を使ってるのかこいつは。  ベッドに飛び乗って手を伸ばし、乙女の目をふさいだ。けどそれじゃ意味が無いっ てことも知ってた。  だからとりあえず、くすぐっておいた。  ひとしきり乙女を暴れさせたあと、もう何も見てないと確認してから、俺は手を離 した。  乙女は肩で息をしつつ、俺を睨んだ。 「なんなんだ、いったい」 「今日は休むんだよ乙女は。神経が参ってるんだから」 「いま思い切り暴れさせておいて、休めもくそも無いだろう...
  • 絵板
    新しい作品は上に追加してゆきます 20件づつ更新中 絵板ログ 0121_0140(作成中) 絵板ログ 0101_0120 絵板ログ 0081_0100 絵板ログ 0061_0080 絵板ログ 0041_0060 絵板ログ 0021_0040 絵板ログ 0001_0020
  • カジロワ63_08
    カジノ・ロワイヤル 射手と水瓶と牡牛と魚と羊 774チップ 2007/10/04(木)10 54 続きです。 牛が放った一石は羊を皮切りにして、弧を描くように他の人間にも波及してゆく。 射手は朝から身支度を済ませると水瓶の部屋へ押しかけ、テレビを前にしてメモ帳へ優勝者予想を 書き留めるのに余念がなかった。純粋に決勝戦などと盛り上げられるとのってしまうたちだ。 かといって予想券を買う気でいるかと思えばそうでもない。予想だけするのが楽しいらしい。 射「(鼻歌まじりに)なあなあなあなあなあ、この番組なんかオッズおかしいんだけど!   おかしくねえ?」 水「僕は君が朝から僕の部屋にいることのほうが不思議なんだが」 射「だってヒマなんだもん。オトの部屋行ったら誰もいねーし。いやそれよりこのオッズだよ   ガメ君。ヒツが一番倍率高いんだぜ! 2.4倍! そ...
  • 風2_01
    97 :超能力SS7:2008/08/12(火) 11 46 27 ID tdNbtX160  蟹は読心のほかに、つくろい物というスキルを持っていた。  そのスキルはたいしたもんで、すぐに破れたがる俺の制服を、ケガを治す魚以上の 力で、完璧に癒してれた。  しかし蟹ばかりに負担をかけるわけにはいかないと、天秤が言い出したのだ。 「新しい制服を買っておいた方が早いんじゃないかな。あと普段着も足りないだろう。 靴も」 「金ねえもん」 「学生がお金の心配なんてしなくていいんだよ。僕がおごるから」 「いいよ。悪いし」 「あのね。きみのために言ってるんじゃなくて、きみの服を縫う蟹や、きみの毎日の 泥だらけっぷりに苛々している乙女や、きみの清貧さに心を痛めている魚のために言 ってるんだ」  そして俺の身なりのかまわなさが気に食わない天秤のためだろうか。  すげえ面倒く...
  • 火2_01
    72 :超能力SS5:2008/07/30(水) 02 29 30 ID ???0  家が山奥にあるせいで、登校がものすごくめんどくせえ。  帰るのも遅くなる。クラブがあるからだ。  だけど頑張らないと、もうすぐ試合なんだと説明すると、射手は表情をくもらせた。  この人の、こんな表情は珍しいから、不思議に思って尋ねた。 「腹でも痛ぇの?」 「いや。胸が痛い」 「ええっ! 麻痺か!?」  たいへんだ。射手は、そういう危険があるから、気をつけなきゃならないんだ。  しかし射手は首を横に振ると、ふつうの顔でこう言った。 「なんでクラブ辞めないんだ?」  遅くなるのを心配されてるのかと思った。  しかしそういうことじゃなかった。射手は俺にこう聞いてきた。 「野球、遊びでやってるならいいけど、牡羊は本気でやってるんだろ?」 「ああ。2年になったらレギュラーになりたい...
  • 水2_01
    82 :超能力SS6:2008/08/05(火) 11 45 32 ID PESIy+eo0  クラブ辞めて暇になった俺は、能力の特訓をするようになった。  なぜかというと、「敵」についての詳しい話を聞いたからだ。  教えてくれたのは魚だった。俺の催促に降参したみたいに、魚は弱りきった様子で 話してくれた。 「みな、あまり「敵」のことは語りたがらないと思うよ。辛いから。敵といってもそ の中には、かつての味方もいたのだし」  俺らみたいな能力者の集団があるらしい。  能力者のまとめ役は川田ってぇやつで、そいつ自体は能力者でもなんでもない、普 通の男なんだそうだ。  しかし回りにいる人間が厄介で、なんつーか、独特の思想を持っているらしい。魚 曰く、 「自分たちを、進化した存在だと考えてる」 「偉そうな連中なんだな」 「そう言えるのかもしれない。だけど僕には、あ...
  • 土2_01
    117 :超能力SS8:2008/08/19(火) 19 39 15 ID ???0  夏休みに入る直前、学校に転校生が来た。  それは牡牛だった。友達とかは驚いていた。秀才北高から大馬鹿南高への転入って のが、ちょっと珍しいかんじだったからだ。  俺は知っていたから驚かなかったけど、もったいないな、とは思っていた。  休み時間、学校内を案内しながら、俺は牡牛に尋ねた。 「俺らの家からでも通えるだろ、北高。なんでわざわざこっちに来たんだ」 「みんなに薦められた。牡羊と一緒に行動したほうが、身を守るには便利だろうと」  それは初耳だ。 「俺のためかよ」 「いや、俺のほうのためだと思う。早く新しい家族に馴染むためにも、そっちのほう がいいという判断かな」  俺らの家族に加わる条件は、天涯孤独の身であること、だった。  牡牛は両親を失ってはいたが、遠い親戚がいて、...
  • 絵板ログ 0101_0120
    07/12/28(金) さし > 先日のスレを見張る水瓶というのにとても興奮して勢いで…今までROMっていましたが初めて書きます やっと落ち着いた…と一人ホッとしながら眼鏡を外す、イメージです 07/12/26(水) 7氏 > ダレモイナイ…ラクガキハルナライマノウチ… なにネタのというわけでもない個人的な水瓶イメージ せっかく描いたのでこっそり貼るよ! 07/11/03(土) 名無し > 641-643さんのネタで 兄弟の様子を想像すると和むよ いて「とりっくおあとりーと!おかしをくれなきゃいたずらするぞ」 がめ「…するぞ」 うお「するー」 てん「??…下で覚えてきたの?」 さそ「(こいつら…ひとの気も知らないで)」 やぎ「(3人だけでたのしいことしてきたんだ...
  • 超能力14_01
    216 :超能力SS14:2008/10/02(木) 21 06 04 ID GD1y3wxs0  眼鏡を外した乙女は、壁の時計を見つめている。  そして時計のあらわす時刻を読んでると同時に、見ているのは、この家のある山の ふもと。  山道の入り口で、戦いを始めようとしている天秤の姿だ。 「天秤は閉店した売店に潜り込んでいる。手を胸に当てている。いまシャツのボタン を開き始め」 「説明しなくていいよ、そんなこと」 「……俺だけ覗きなんて不公平だ」 「仕方が無いだろ」  乙女はしばらく微妙な表情をしつつ、天秤のストリップを遠視していた。  やがて口を開く。 「……時間通り。いま車が山道に到着。道路を走り、いま急なカーブを曲がっている。 減速した車に、山の斜面に待機していた天秤が飛び込んだ」  乙女は目を閉じて、視点の位置を変更しているみたいだった。 「車内...
  • 超能力12_01
    181 :超能力SS12:2008/09/18(木) 18 37 24 ID Pl6OomEg0  窓際のベッドの脇には、みなが集合している。  そしてベッドの上には双子と、馬乗りになった魚の姿がある。  双子は魚の治療を受けつつ、俺たち全員の姿を確かめると、青ざめた笑顔を見せた。 「あーあ。なんか大騒動になっちまって」  魚が怒って、双子の頭をポカっとぶった。 「びょうきのひとは、しゃべっちゃだめー」 「いったー。てめ、力は大人なんだから加減しろよ」  すると蟹が、魚をベッドから抱き下ろし、そのあと双子の頭を撫でた。 「僕はきみに、すまないと思う」  いたわるように、慈しむように、蟹は双子を撫でる。 「だれが未来と引きかえに、きみに傷ついてほしいと思うものか。天秤が間に合わな かったらきみは、この世でいちばん僕を傷つける死に方をするところだった。だけど そ...
  • 超能力15_01
    228 :超能力SS15:2008/10/09(木) 21 30 26 ID fclKttsw0  俺たちは安全のためも兼ねて、なるべく獣道を歩いていた。  だが何回かは、道路を横断しなきゃならなかった。  そしてあるとき、道路に向かって、低い崖みたいになったところから滑り降りたと ころで、対面の木々のあいだから牡牛が出てくるのを見た。  牡牛は俺らを見て片手をあげると、道路の真ん中まで歩いてきて、それからこう言 った。 「もうすぐ、次の出来事が起こる。双子の先読みでも変更は無かった。だから俺が来 た」  タイムテーブルによると、あとすこしで、家に訪問者が来る予定になってた。  ってことは、その人物は、今くらいの時間に、この道路を通るはずだ。  牡牛は裸の天秤を見ると、「寒くないのか」と言った。  天秤は大丈夫と答えると、俺の聞きたかったことをかわりに聞いてく...
  • 風3
     尻もちをついたままの俺と、天秤のあいだの空間が、奇妙に歪んだ。  目に油でも入ったような感じだった。手で目をこすり、その手を下ろすと、 俺の目の前には、またまた別のやつが立ってた。  いかにも理数系な雰囲気のその男は、俺を見た。じっと、じっと。  そして双子を見て、天秤を見ると、眠そうにあくびをした。  でもって去っていこうとした。  双子があわてて止めていた。 「そんな自己紹介があるかよ水瓶。牡羊困ってんじゃん」 「しかし、僕はもう、彼を知っている」 「こいつはおまえを知らないの。初対面なの。説明してもらわなきゃ意味わかんないの」 「ああ。それもそうか」  水瓶はくるっと俺を振り返った。 「僕は水瓶だ。趣味は読書。仕事は特に無いが特許収入で生活している。好きな食べ物は無い。ていうか食べることにあまり興味が無い。スポーツもよくわからない。芸能は嫌いだ。能力はタイム...
  • 絵板ログ 0081_0100
    07/03/21(水)本スレ293インスパイア 774 > ご近所の平和は、ぼくらが守る!! 07/02/18(日)本スレ116~118より 名無し > はじめまして。 遅いんですけど、「12星座の新しい春」のネタに萌えたので描かせていただきました。 この二星座に萌えです。 07/01/11(木) 77 > 節分ラムちゃんコスな双子(手前)と射手 を描こうと思ったら色が塗れなくなったよorz 双子がパンツから取り出してるのはお豆・・・ 悪戯開始五分前~ 07/01/06(土)獅子兄さんと魚君蟹君 ななすぃ > あけましておめでとうございます なんとなく獅子兄さんは弟達とよく衝突しそうなイメージがあります。 相手に年齢をあわせる事が出来なさそうな。 魚(青...
  • 絵板ログ 0121_0140
    作成中
  • 超能力12_05
    「知らなかった。言ってくれりゃ家に居たのに」 「いや言ったら監視にならないだろ。でもって探してるうちに真夜中になって、しよ うがないから家に帰ったら、俺が部屋につくと同時に、蠍が部屋に飛び込んできて、 容赦なく襲われて、俺は手も足も動かねーのに、それはもう、えげつない……」  蠍が射手に手を伸ばし、口を容赦なくふさいでいた。  ふうん。あの日、蠍の制限は、射手で解消されてたらしい。チンコが麻痺ってなく て良かったな。  蠍は射手の口をふさいだまま、少し顔を赤くしていた。 「正直に言うと、制限が出てて……。あの日、ちょっとした戦いはあった。やはり牡 羊は、巻き込まれた形だったと思う」  やはり双子が読んでいない未来においては、俺はなにかに巻き込まれる。  そしてやっと、話は今に至る。今日、水瓶が俺を助けに出かけたあと、双子は部屋 に閉じこもって予知をはじめた。  出...
  • 絵板ログ 0001_0020
    05/10/17(月) 射手王子とおおかみ ななし > 神のフラッシュがあまりに素敵すぎたので ハピーエンドにしてやりたい射手です。 各国の紋章動物に萌え。 05/10/16(日) 蠍国の王子 ななし > ネ申フラッシュに感動してサソ王子 ふ、雰囲気壊してないか…(*1))ガクガクブルブル 05/10/11(火) 秋の行楽 名無し > 965姐さんのレスに萌えたので。 きっと牛に飛びつくとき、ついでに頭突きもかましてると思った。 05/10/03(月) よくわからんけど ナナシス > 風星座は軽そうなのでいまいち把握できませんでしたが 「フツーに仲の良い男子高生」を想像したら 結構いけましたw 05/09/28(水) 獅子蠍山羊 ...
  • 風2_05
     俺はさっと路地に飛び込んだ。飛び込むと同時に、反対側の建物の壁に穴があき、コ ンクリートのかけらが散るのが見えた。  俺はそのまま路地を走る。角をいくつも曲がり、駅を目指す。  真っ昼間から、人の多いところで力を使うのはヤバいと思ったのだ。なるべく戦い は避けたい。  しばらく路地を走って立ち止まった。  俺の目の前に現れたのは、三角。先回りしたらしい。  背後を振り返った。  俺の後ろに現れたのは、レチクル。近道して追ってきたらしい。  逃げ切れれば良かったんだが、無理だったか。  とりあえず文句を言った。 「俺はあんたらを、なるべく傷つけないようにしてやってんだぞ」  これが獅子あたりだったら、こいつらとっくに焼死してる。  俺は色々経験したにもかかわらず、まだそこまで思い切りよくはなれずにいたのだ。  三角が、目じりを吊り上げた。 「ふざけんなこのクソ...
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