“文学少女”と月花を孕く水妖 (ファミ通文庫 の 2-6-6)
「文学少女」シリーズ第六弾。時系列的には夏休み中の話しとなるため、「飢え渇く幽霊」と「繋がれた愚者」の間の話しとなる。井上心葉と天野遠子の関係性もその頃の物に遡っていると言う点で、読み進める際に注意が必要だが、これまで発表されてきた作品の中で、メインキャスト中唯一その心的葛藤が明示されて来なかった人物を主軸として物語は構成されている。血塗られた恋愛悲劇が招いた呪詛と妖の物語は、あまりにも物悲しく切なく胸に突き刺さる。「飢え渇く幽霊」が見せたサスペンス・ホラー的な要素を一歩押し進めたテイストの本作は、なぜ時系列を捻じ曲げてまでこの順番で刊行されたのか、と言うことを裏読みしながら読むのも味わい深い。もちろんそんな肩肘張ったことを言わずとも、純粋に楽しめる作品である。

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最終更新:2008年10月17日 13:25