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Scapegoat

陰謀的倒錯愛






 陰謀的倒錯愛










 抱きすくめられた身体を、酷く冷たいと感じた。
「    」
 耳元で名を呼ぶ声は穏やかでも、内側から伝わる冷気に。―――震えがした。
「愛していますよ」
 口端が上がっていても、なぜだろう。泣いている気がする。目は笑っていないからだろうか。
「あなたが好きなんです」
 まるで呪いのように古泉は愛を口にする。
 違う、と直感的に思った。
 『それ』は、こんな感情のために使う言葉じゃない。
 …もしかしたら、本当に呪いたいと思っているのかもしれないが。
 おずおずと背に腕を回した。少しずつ、力を込める。折れてしまう気がした。
 そうすると、古泉も嬉しそうに更に力を込める。
「あなたが、愛しい……。とても。とても、愛しいです……」
 苦しいのだろうか。愛を口にする古泉は、どうしてこうも苦しそうなんだろうか。
 疑問に思う。抱きしめられているため表情は見えなかった。けれど、声音が酷く脆かった。
「    」
 古泉は名を呼び、俺の肩に手を置いて問う。やっと表情が見えた。笑っていた。

 相変わらず、目は笑っていなかった。

「あなたは、どうですか」
「僕のこと好きですか」
「愛してくれますか」
「僕は好きです」
「愛しています」
「だめですか。気持ち悪いですか。僕のこと嫌いですか」
 古泉は項垂れた。
 また、表情が見えなくなった。
 見えていても見えなくても同じようなものではあるが。
「好きです……。」
 あきらめのように、吐き出すように、古泉は呟いた。
 眉を困らせて覗き込む。
 覗いたそこに、表情はなかった。だから代わりに、すこしだけ微笑んだ。
 卑屈な笑み。
「心配ない」
「心配ない、古泉」
「愛してる」
「愛してる……」
 ぴくり、と古泉が身動きをした。ほんのすこし、表情が戻った。
 本当に微細に。
「……、……」

 それはまたしても、笑みのかたちだった。

 …………安堵したのだろうか。
「…あの」
「なんだ?」
 少しでも安心させようと声音をやわらげる。同情的なこころうちが悟られぬように、必死に。
「…キス、してもいいですか……」
「…」
 黙って了承する。
 触れるだけのものを数回繰り返して、そして古泉の舌は俺の口内へと侵入した。歯列をなぞり、古泉のものと絡み合うそれのなんと冷たいことか。
 口と口を離しても、二人の間は繋がっていた。それが切れてしまうと、お互いの顎をどちらのものともわからない唾液が伝っているのに気づく。
 冷たい熱に浮かされながら、ふと古泉と目が合った。
 ―――その視線は、澄んで鋭利で毒々しくて。
 ―――その瞳は、ほんのすこしも笑んでいなくて。

「愛しています」




 しかしその実、愛などないのを知っている。











もしかして古キョンかな?
あまり「俺」とは言ってませんね。

最終更新:2007年01月26日 16:42