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長門有希の暴走
~腐女っ子ユキちゃんラブラブキューピッド大作戦~
とある日の放課後――――、
部室のドアを開けると、そこには古泉一樹の姿のみが確認された。
ひとり寂しく詰め将棋なんかやってやがる。浮かべた微笑がそれを助長している。
「…お前だけか」
パイプ椅子を引き出して古泉の向かいに置き、鞄を適当に放る。
「ええ、ホームルームが早く終わってしまいましてね…涼宮さんはどうされましたか?」
「ハルヒなら腕章をどっかに置いてきたとかで調達に行ったぞ」
どこに行ったかは知らないがね。
頬杖。また厄介なことにならないといいんだが。
「そうですか、ならどうです?将棋でも」
…他にするべきことはないからな。
古泉は盤面を崩した。
「…ん?」
俺は声を上げる。
「駒が一つ足りなくないか?」
俺の飛車くんがどっかに旅立ってしまっている。古泉の手元を探すが、どうやらない。
「おや、落としてしまいましたか…」
古泉が机の下に潜り、俺もそれに続く。
しかしや、いくら男二人で机の下を眺めても、飛車のひの字も感じられない。
仕方なく、俺と古泉で二人仲良く部室の床に這いつくばってたかが将棋駒を捜す羽目になった。
朝比奈さんが毎日掃除してくださるお陰か埃一つない。ピカピカと輝きが感じられる。流石です。
「ありませんね…」
「箱の中かもな」
そう行って立ち上がろうとした――――その時、視界にひっかかるものがあった。
膝を突いて捜索する古泉の裏返った爪先。その先に、ぽんと飛車らしき駒が投げ出されている。
なんだ、そこにあるじゃないか―――ー、そう言いかけてそれに手を伸ばした俺は――――
…その、なんだ。
ベタだ。
非常に、ベタなのだが、
手を滑らせて………………
古泉を押し倒す、という形になってしまった。
困惑のため一時微笑を休止する古泉。目を見開いて俺を見る。
心なしか頬が赤い。やめろ、キモイ。でも原因は悲しいことに俺である。
しかもタイミングの悪すぎで、その時ちょうどドアが開いてしまった。
そしてそこに――――。
長門有希の姿があった。
無表情にほんの少し動揺を含めて、長門は俺と古泉――――、と、その異様な光景を僅かに目を見開いて凝視する。
やばい。ヒッジョーにやばい。
朝比奈さんやハルヒでないだけマシだが、誤解されたに違いない、でもこいつならきっとわかってくれるだろう――――あのな、長門これは――――、
言いかけた俺を制止するように長門はおもむろに右手にグーを作って俺と古泉に突き出す。
え?
ちょ、長門さん?宣戦布告か何か?
そして更にそのグーを縦にすると――――、
「いい」
ぐっ、と親指を押し上げた。
えー?
長門の頬はほんのわずかに染められておりかわいいなぁ、ってかあんた今なんつった長門さん。
「王道的に考えれば通常『受け』に回るのはあなた。でもわたしはずっと古泉一樹の『受け』を推奨してきた。通常古泉一樹は滅多に表情を崩さない。けれどあなたによってその微笑が崩落していくさまはとても萌え。生徒会長が『攻め』でも可。谷口国木田田丸兄弟荒川執事も可。でも、一番適しているのはあなた。普段は古泉一樹に対して冷たくありつつもいつもその存在を気にしている。あなたの属性はツンデレ。ゆえにいつも素直になれずついつい辛口な態度を取ってしまう。けれどここ一番という時はたまらなく優しくなる。古泉一樹はそんな貴方が大好き。そんなふたりの組み合わせをわたしは奨励する。なおリバは不可」
え、ちょ、なが…
「わたしはあなたたちを援護する。とりあえず今日は涼宮ハルヒ、朝比奈みくるの両名を誘導し部室には来させないようにする。よって、ふたりきりの密室がつくられる」
長門はくるりと俺たちに背を向け、ちらりと横目で見ると、
「楽しんで」
ドアを閉ざした。
沈黙が降りる。
おおおおおおおおおおい!!!!長門!!長門さん!!!カンバックプリーズ!!!違うんだ!!!これは単なる事故に過ぎないんだ!!俺と古泉がデキてるわけがないじゃないか!!ていうかそんな性癖があったんだ?!
そう叫んで長門を戻そうとしたが、部室のドアにはなぜか外側から鍵がかかっており、内側を解除しても一向にドアは開く気配を見せない。
ずるずるとへたりこみ、古泉を見る。
いまだ微笑は戻らず、呆然と、そして羞恥で顔を真っ赤にしていた。
最終更新:2007年02月18日 14:43