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翼の唄 - (2009/05/23 (土) 22:40:35) のソース

【翼の唄】レビュー 
(2009/5/8リリース版・最終話まで) 

作者Webサイト
MFZ(Misaki Fantasy Zone)
http://members.at.infoseek.co.jp/MisakiFZ/


ベテラン作者みさき氏の最終シナリオとなった。全24話+エピローグ。
SRCで言うと「エレメンタルナイト」や「ナインナンバー」に代表されるいわゆる魔法ロボ系の世界観である。
「王道からの脱却」をテーマに始まったものの、最終的には王道モノになったと作者自身も認めている。

最初に結論から言うと、ハマる人と全く好きになれない人の両極端寄りが数多く出るであろう「万人には勧めがたいシナリオ」である。

※なお当レビューの筆者については、5,6年前に同作者のオリロボ系「AW戦記ツヴァイブレイド」をプレイしてからの、信者寄りのファンである。
記述は中立になるよう心がけるが、その点ご承知置き頂きたい。

&sizex(6){&color(blue){【全体の傾向】}}
このシナリオが万人には勧めがたい、と言った理由は幾つかある。
それをまとめると下記の三点に収束される。

1.ターゲットとなるプレイヤー層を最初から限定している
2.1.の層から外れるプレーヤーに対し、一切のフォローをしない
3.いわゆる「シナリオに対してプレイヤーが波長が合う」と感じるまでが長い

1.2.をまとめてさらに乱暴に一言で言ってしまうと「付いて来たい奴だけ付いて来い」という作者の製作姿勢が極端に出ているということである。
加えて、3.つまり、「自分がターゲット層である」と確信できるまでが非常に長い。詳細は後述するが、具体的に言うと約4話分かかる。

1.の「ターゲット層」を考えるに当たってはポイントが幾つかある。
下記の各要素を総合的に考慮し「多分合わないな」と思ったら回避するのが賢明だろう。
何故なら、本シナリオにおいてはその感覚はプレイしてから最終話が終わるまでに改善される可能性は殆どないだろうからである。

ターゲット層以外へのフォローは手薄にしたことで得たキャパシティは更新速度など別の部分に力を入れていた。
更新時に以前の話の改訂なども積極的に行っているが、ターゲット層以外のプレイヤーを呼び込むような仕掛けはほとんど見られない。
こういった製作姿勢は、作者の狙った層の目には非常に面白いシナリオに映るだろう代わりに、それ以外の層には駄作に感じられるだろう。
このシナリオを好きな人も嫌いな人も、信者もアンチも生まれてくるのは必然である。
むしろ、このようなシナリオの作り方は通常アンチの方がたくさん生まれてきて然るべきなのであるが、「結構楽しめる」という人をそれなり以上の数産み出すのは、みさき氏のシナリオ作者としての腕によるものであると思われる。

&sizex(6){&color(blue){【システム】 }}
結局のところ、あまりシステム面などでのオリジナル要素はないといっていい。
強いて言うなら、レミリアの能力サポートくらいだろうか。

魔法属性なども弱点設定などの戦闘に絡むものではなく、ストーリーの補足的、アクセント的な役割を持つものが多い。
蒼奏などでの様々なギミックはほとんどが見受けられず、そういったものを求めるプレーヤーには訴求力が乏しいシナリオである。

&sizex(6){&color(blue){【演出】 }}
AW戦記から一貫して、グラフィカルな部分は氏の弱点部分であったとも言える。
今回はリアル友人の油谷氏など、外部から協力者を募って大幅なテコ入れを図った模様。
オリジナルのキャラアイコンにカットインに、ド派手な必殺技アニメなど、非常に力を入れている点とも言える。
たが、これのうち、戦闘アニメがプレーヤーを選ぶ問題点の一つとなっている。

何故かというと、戦闘アニメを再生する為にマシンスペックがそれなりに要求されるのだ。
見栄えを重視したのか、アニメ用の画像フォルダだけで10MB程度のダウンロードは元より、
スムーズな再生の為にはネットブック程度では覚束ないのはもちろん、古いPCではかなり厳しいかもしれない。

なお、作者側もそれを見越して簡易版を用意しており、簡易版の方が「推奨」となっている。
が、最終話のある一場面では問答無用でフル版であるし、一部の敵の攻撃も省略されているとはいえ、速度は落ちる。
マシンスペックの自信がない場合、終盤いくつかの場面で我慢が必要になるだろう。

反面、スムーズにアニメを再生できるプレーヤーから見れば、この必殺技アニメは非常に魅力的に映るかもしれない。
特に主人公機「ルインシェイズ」の最終技は、機体の状態によって数種類の性能に分かれるのだが、その全てに別のアニメがついてくる。
最終盤にしか使えない技だが、シナリオ最高潮の場面で満を持して登場するそれは一見の価値はあるのではないだろうか。

筆者の場合は所持している工人舎のSC3WX06GS(ネットブック)ではマトモな再生ができず、自作のCore2マシンでは非常にスムーズに再生ができた。
ただし上下の幅が極めて大きいため、これはあまり参考にはならないかもしれない。

&sizex(6){&color(blue){【戦闘】 }}
本シナリオの戦闘はストーリーを盛り上げる為のものであり、特に序盤数話はイベント戦闘と割り切るしかない。
本番は5話からで、クリアするだけならそれなりに簡単であるが、ストーリー展開にのめりこめる人には戦闘時会話が多い本シナリオではシチェーションもあって燃える展開も多いだろう。

ただし、ボスからの撤退戦でボスを撃墜するなどをした場合、ボーナスアイテムが出るという上級者への挑戦状的な戦闘もある。
ここでボーナスアイテムを狙う場合、戦闘が得意な人でない限り、クイックロードを多用しないと厳しいかもしれない。
このあたりのバランスについては一部を除きベテラン作者らしくしっかりと調整されている。
なおこのシナリオだが、蒼奏にあった「コンプリート条件」のような「熟練度」にあたるものが表示されない。
基本的には倒す必要のないボスを倒すなどの優秀な戦績を残せばゲットできるものではあるが、この点不親切に感じるプレーヤーもいるかもしれない。

第一部終盤になると凶悪な性能を持ったサポート艦が敵陣営に現れたり、第二部でボスが超火力でこちらを一撃で殺しに来たりする。
中盤以降は蒼奏以上に難易度が上がるため、しっかり戦略を練って望みたい。

なお、あっさり倒れすぎとの不満が各所で見受けられたラスボスは後日の改訂時にパワーアップして帰ってくるようだ。
これはみさき氏の掲示板で明言されている。拍子抜けしてしまった人はラスボスのパワーアップに期待してみてはどうだろうか。
掲示板などのログを見る限りでは第三形態への変化などはなさそうではあるが……

隠し機体は1体のみ。第二部に入ってからフラグを立て、使用可能時期も終盤である。
SPが一人分増えるなどメリットが大きい為、できれば狙いたい。

&sizex(6){&color(blue){【キャラ】 }}
ネームドは合計23人。氏お得意のヒロイン選択システムは結局搭載されず。

過去の人だったりすぐに退場するのはそのうちの数人でどのキャラも結構長い間出てくるが、
人物の深い掘り下げは数人に絞られている。
反面、戦闘での役割は各自得手不得がはっきり分かれており、使っていて非常に面白い。
戦闘会話は非常に多い、というか、ほぼ全てのボス戦で、ほぼ全てのキャラに戦闘会話が用意されており、
ストーリー中で深く掘り下げられない面々もノリノリである。

●上園つばさ● 
性格だけ見れば実に主人公らしからぬ主人公。
このシナリオは「彼女の変化」がテーマの一つになっているようで、特に後半(後述の第二部)はそれが顕著である。
3話までは戦闘に参加しないため全く存在感がないが、4話からはレミリアと共に前線に赴く。
素のパイロット性能はダントツに低いが、レミリアのサポート能力も脅威のSPもあり、機体が強化される最終盤はまさにルインシェイズ無双である。

●レミリア・ルインシェイズ●
初期3話はサードファング所属の主人公機の中の人。
4話からは色々とトバしているつばさを影に日向に支えるパートナーとして、見守っていく役どころである。
性格的に色々と難のあるつばさに代わり割とプレイヤーと共感し易い性格をしている為、個人的には視点を彼女に据えて物語を見ていくのをオススメする。
反則的なサポート性能を持つ。

●サードファングの面々● 
最序盤の中心に描かれ、終盤まで一貫して描写の多い重要なキャラクター達である。
闇属性ロボ「ルインシェイズ」と光属性ロボ「セインガーディアス」の操者及び中の人で構成される白黒カルテット。
2話冒頭の帝国皇女の例えが全てを表していると言っても過言ではない。

「戦争を止める為に」戦争の当事者の2国家に戦争を仕掛けるという明らかに某アニメの某陣営を意識しており、さらに前半(後述の第一部)の終盤までこの陣営のスタンスの否定が非常に大きなウェイトを占めている為、某アニメ某陣営のファンには辛い内容だろう。
某陣営のアンチに対しても、最序盤(後述の0部)では主人公そっちのけで大暴れするし、第一部前半はその片割れが戦闘中に乱入して理不尽なまでに味方を蹂躙していく場面もあるため、胃がムカムカしてしまう展開になるのではないだろうか。
いずれにせよ、序盤は話に付いていくプレイヤーに対する大きな壁となって立ちはだかる組織である。

●帝国●
三千院ナ○な皇女とそのお付として登場。序盤から主人公陣営として活躍が多い。
皇女は特に描写部分が多く、また性格的なところから裏主人公と言っていい扱いを受けている。
また、話数が進むごとに修羅の国編以降のラオウのごとき神格化がされていった極悪皇帝兄貴や、終盤そこそこ出張る弟などキャラの描写は多い。
反面、部下たちは味方暦も長いのに、皇女との会話以外の場面にほとんど出てこない。
皇女の乗艦の中の人が戦闘系の相談を一人でこなしてしまっている弊害か。

皇女の乗艦「ヘヴニィペンデュラム」の持つ最大火力はクリアに必要ない強ボスの撃破には必須とも言っていい。
気力の管理で頭を悩まされる反面、使いこなせるようになるととても面白い。

部下二人は回避系で、ノアードは切り込み隊長として、月音は「マルチアクション」を活用して回復役として頼りになる。

●王国● 
色々と性格的に問題がある王族3人の下で働く苦労人の部下二人。特に王女は第一部の展開もあり、第二部でのつばさの理解者的な立場からも描写が非常に多い。
部下二人も第一部では敵としてよく登場するので、帝国メンツ二人に比べて喋る場面が多い。
王子の乗機とは逆に重装甲な面々が揃っており、一撃も重くボス戦で活躍する。
特に第二部では使う機会も多く、頼りになるだろう。

これは個人的な感想になってしまうが、ウォーラスとシグウェルのサード・ファングに対する姿勢が図鑑に書かれているほど書き分けられていなかったのが残念。

●第四の勢力●
第二部になって登場する勢力。力押しが多いみさき氏のシナリオの敵対勢力にしては割と頭が回る。
特殊能力やボス同士の連携を頻繁に使ってパーティを窮地に陥れる。

●その他●
「蒼奏」よりリノアが帝国陣営で登場。
ファンサービスはあるものの、特に「蒼奏」のプレイは必須ではない。
このシナリオでもメカニックにムードメーカーにと、活躍の場面は多い。

特に序盤は機体特性も相まってチート級の活躍を見せるが、これでも弱体化している。
リリース初期はEN回復可能範囲がもっと広くてさらにチートだった。
リノア自身もかく乱要員として本作でも使いどころは多い。

&sizex(6){&color(blue){【ストーリー】 }}
ギャグほとんどなしのシリアス寄り。
当然ながら、野球ネタは皆無。よって巨人党も安心してプレイができる。

リリース時のコメントから、みさき氏が最も力を入れていると思われる点。 
だが、ここが本シナリオで最も問題となる部分だろう。

 問題点を語る前に一つ注釈。みさき氏の公式では、15話までを第一部、その後を第二部と定義している。
 これに加えて本レビューではさらに、1~3話を第一部から分割して「第0部」とさせて頂くこととする。

本シナリオの最大の問題点は、4話までのレビューでも書いたのだが、第0部があまりにもストレスが溜まる仕様になっており
プレーヤーが投げ出し易いという点なのだ。

主人公らしき少女「つばさ」は放っておかれ、戦闘は数人が大暴れしているだけ。
話がすすむごとに主人公であるはずのつばさの異常性がクローズアップされる。
戦闘で味方が少ないこともあり、本当に長い3話に感じられるだろう。
特に主人公に感情移入しながらプレイするタイプのプレーヤーにとっては辛い展開だと思う。

このシナリオの主人公であるつばさは、おおよそ主人公としてプレーヤーが共感できる性格をしていない。
パートナーとしてより共感し易い性格のレミリアがいる上、つばさよりもレミリアの方がよりプレーヤーに
とってわかり易いセリフを言う為、恐らく感情移入タイプのプレーヤーはレミリア視点でプレイした方が楽しめる。
後述するが、つばさはテーマとしてスポットライトを当てるタイプの主人公なのだ。

 ※プレーヤーと同じような世界からファンタジー世界に現れた主人公であることから
 序盤のプレーヤーはつばさに感情移入してプレイしようとする為、このレミリア視点というのは
 恐らくみさき氏が意図している(レミリアの方がプレーヤーライクなセリフが多い)はずではあるのだが、
 非常にわかり辛い構造である。

さて、この第0部を無事に切り抜けて4話に到達すると、前3話の反動もあり俄然面白くなってくると感じられるだろう。
展開もスピーディになり、いい意味でストーリーの「無駄」がなくなって、気付いたらクライマックスまで到達しているはずだ。
が、それまでにどれだけのプレーヤーがこのシナリオを投げるだろうか。
少なくとも、筆者は作者としてのみさき氏に期待が大きい人でないと4話に到達するのは難しいと思う。

だが。この第0部を切って、4話を「1話」として途中からプレイした方がいいか、というと実はそうでもない。

先述のレミリア視点で話を見ていった場合、第0部→第一部→第二部と段階的にレミリア視点でのつばさが描写されている為、
4話からいきなり入ってもわかり辛いだけなのだ。

第0部ではつばさとレミリアの出会いと等身大のつばさ自身の個性(主体性が皆無であることなど)の説明され、
第一部でさらにロボに一緒に乗るパートナーとしてのつばさの異常性の露見し、
第二部でそのつばさ自身の変化が話を重ねるごとにレミリアやプレーヤーにも見えてくる。

第一部こそ帝国対王国の戦争やサード・ファングの因縁などの要素が目立つが、第0部の存在や第二部での描写量から考えると
やはり本シナリオのメインは「レミリアを語り部としたつばさの物語」なのだろう。

※もっともこれも筆者の見方でしかない。
先述のサード・ファングという「戦争を止めるために戦争をする」組織の是非も(一方的ながら)描いている上、
そのサード・ファングの中の人間、とりわけエーベルを中心とする人間模様も会話が多く、様々な楽しみ方があると言える。

第一部以降、これらが休みナシに展開されていくスピード感が本シナリオの魅力の一つと言えるのだが、それを可能としているのも実はこの第0部である。
第0部の時点で第一部、第二部の進行に必要な一部の伏線やキャラクターの顔見せシーンを詰め込んでいる。
これが第一部、第二部の進行速度を加速しているのだ。

ただし、それはあくまでも終盤近くまでプレイした人間だからこそ気付けることである。
最初からプレイするプレーヤーにそれがわかるはずもなく、最初の3話で脱落する人にとっては
「よくわからないけど脇役が暴れててつまらんかったんで途中で切った」シナリオに過ぎない。

このシナリオの最大の問題点を再度言うが、構成の問題から肝心の序盤の牽引力に欠けることにある。
反面、4話に入ってしまえばいい意味で中弛みは一切なく、山あり谷ありでどっぷりハマるプレーヤーもいるだろう。
序盤で完全に切る人と終盤までどっぷり浸かる人が出てくるストーリー構成なのである。

また、このシナリオにはキャラ、ロボ、用語の図鑑が存在する。
この図鑑も困りもので、図鑑にのみ伏線が記述されるケースがあるのだ。

 【例】15話でのボス戦における主人公機の優位性については、少なくとも14話までの本編(初回リリース版)では語られていない。
 これは図鑑のみに記載されている事項であった。
 ※修正が入っている可能性もあるので、現在は不明。

図鑑に関してはプレーヤー毎に様々なスタンスがあると思うが、
上記のような状況が存在する為に「図鑑を気にせず本編のみを突貫プレイする」
という人には少々厳しいかもしれない。

さらに、個人的に特に気になった点が23話~24話。
過去シナリオの某話と展開が全く同じなのである。
シナリオの最高潮の場面であるだけに、非常に悔やまれる。

なお、エンディングは主人公が女性であることとヒロイン選択がないだけで、いつものみさき氏のシナリオである。以上。


&sizex(6){&color(blue){【総評】}}
繰り返し本レビューで申し上げていることなのだが、このシナリオは好き嫌いが極めて分かれ易い。
しかも、このシナリオを好きになるには、少なくとも4話目まではプレイしないと難しいだろう。

とにかく序盤3話である。

・序盤を乗り切れるか
・乗り切った後にすぐに楽しめるか

という二点で評価が著しく分かれるであろうシナリオである。

みさき氏自身のSRCのファイル製作技術的なところ、独自システムなどの面でいうと過去作を、特に「蒼奏」を超える部分はない。
が、弱点とも言えた演出的な部分を「外注」し、システム的なところの代わりにストーリー展開、
キャラクター描写に力を入れている氏のどの過去作とも違った味のあるシナリオである。

特にいい意味でも悪い意味でも無駄を作らないスピーディーさ、そして
「主人公の成長(変化)」に関する描写についてはギャルゲのような恋愛に力と話数を裂かざるを得なかった他作と比べると格段に良い部分である。
恋愛などよりもそういったシナリオが好きならば、プレイする価値はあるだろう。

逆に「フラグ」などの単語に心ときめくみさき氏の旧長編作のプレーヤーには
売りとなるものは少ないかもしれない。

何度も同じ言を重ね申し訳ないのだが、本作は万人向けではなく、
またプレイした感想・評価も大きく分かれるであろうシナリオである。

本シナリオについて誰かと語る場合、「自分の感想と他人の感想が同じとは限らない」という点に
殊更留意する必要があるだろう。

 (※もっともBlogなどで本人も明言している通り、みさき氏のシナリオは例外なく「万人向けに作られていない」。
 今までの長編系はテーマやシナリオの持つ属性、システムへの挑戦要素などがターゲット層を広くしていただけで、
 最初に決めたターゲット以外の層はそのシナリオ内では一切取り込もうとしない。
 ターゲット層の判定がギャグセンスのフィーリングの合否のみである「狂○曲」の系統は特に合う/合わないは顕著であり、
 万人向けに作られていないみさき氏のシナリオの筆頭と言えるだろう)

●みさき氏のシナリオをプレイしたことがない人 
他のシナリオとのリンクは「蒼奏」のみ。 
しかも「蒼奏」をプレイしていないとわからない部分、というのはほとんどない。
よって、このシナリオから入っていっても全く問題はない。 

ただ、知らないシナリオ作者のストレスが溜まる3話、というのは
相当にキツいと思うので、このシナリオの前にみさき氏の他シナリオを
プレイしてみるのもいいかもしれない。

●みさき氏の別シナリオをプレイしたことのある人 
ストーリーラインそのものは4話以降はいつもの「みさき節」とも言える
長編連載のパターンである。「蒼奏」など、他のシナリオをプレイして
氏の作風を気に入った人には割とオススメできる出来。
ヒロイン選択がないことだけ注意して、一気に3話の戦闘クリアまで進めてしまえば
安心してプレイができるのではないか。

●みさき氏のファンの人 
「魔法の言葉は《A》と【B】」と同系統で、システム面の挑戦よりもむしろ
ストーリーやキャラクター描写に重点を置いたシナリオである。
とにかく4話まで頑張って進む必要があるものの、みさき氏の最終シナリオに
ふさわしいボリュームである。時間のある時にプレイしよう。

ストーリー的には、AWアナザーのXルート分岐直後数話や、ツヴァイブレイド外伝のノリが好きな人はフィーリングが合いそう。 

いずれにせよ、みさき氏は掲示板で最終ステージなどの小改訂を明言していたので、改訂後のプレイもあり。

&sizex(6){&color(blue){【おまけ:本シナリオの傾向変化について】}}
今回が最終シナリオである、という氏のサイトなどでの公式発表があったのは第一部の途中あたりからであった記憶がある
(現在、掲示板のログが見られない状況にある為、ソースはなし)。

本シナリオの連載開始時は少なくともそのようなアナウンスは公式にはなかった覚えがあるので、
シナリオ連載中の引退の決断だったのだろう。
(引退原因はBlogから見るに「みさき」としてのしがらみに疲れたものと思われる。
某リレーを初めとして、原因となりそうなものはいくつか思い当たる)

本シナリオ発表時は「王道からの脱却」をテーマに連載が始まったものの、最終的には王道の展開に収まっている。
ひょっとしたらラストシナリオになったことで、みさき氏の意識無意識は不明ながら自身の集大成的なシナリオにしようとしたのかもしれない。

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以下、4話までプレイ時における第一回目のレビュー。序盤の参考までに。

【翼の唄】レビュー
(2008/2/9リリース版・4話まで)

「蒼が奏でる鋼響曲」の完結も記憶に新しい、
ベテラン作者みさき氏の新作オリロボシナリオ。

全体的には、「プロローグ」としか言えない。

【システム】
目新しいものは特になく、ベーシックなものでまとめられている。
強いて特徴を挙げるなら「武装の名前と特徴がAWシリーズ~蒼奏で使用されていたものと
ほぼ一致する為、これらのシナリオをプレイしていた人間にはわかり易い」程度だろう。
AW系列の野心的な試みと比べると、いささか特徴に乏しい。

……というか、ファンタジー系ロボで「火」やら「水」やらパイロットについてるのに
武装に属性が付いていないのが実に謎。

【演出】
タイトルコール時の演出微強化や会話時の背景の追加、蒼奏から流用された戦闘アニメパターンの微増等。
今までの氏のシナリオに比べると、色々と強化しているように思う。
とは言え、氏は今までこの点がかなり弱かったところがあるので、ここが売りというよりは
弱点の補強という方が正しい。

【戦闘バランス】
何とも言えないところ。全話丸ごとほぼイベントのようなものなので、次話以降に期待したいところ。
ちなみに、味方の性能が凶悪過ぎる為にそんなに難しくない。
地形効果と「集中」を活用すればさらに楽。

【キャラ】
4話現在、氏の得意とするギャルゲライクなヒロイン選択システムはない。
今のところ、主人公と周囲の数キャラ程度しか顔見せがされていない。

●主人公●
壊れ主人公。
3話までは全く存在感がないが、4話でようやくロボに乗った。
乗ったというよりは「なった」が正しいかも知れんが。

●サードファング●
2話冒頭の皇女の例えが全てを表していると言っても過言ではない。
ここまで主人公そっちのけで大暴れする為、
話に付いていくプレイヤーに対する大きな壁となって立ちはだかる。

●帝国●
三千院ナ○な皇女とそのお付。今のところ、雷電役と虎丸役でしかないが
今後帝国側にストーリーが移行しそうなので、クローズアップされるかも。

●王国●
王女様と真っ直ぐ隊長。
王女様は4話冒頭で陰謀喋りまくる時の表情はかなり素敵だと思う。

会話はいつものみさき氏のノリ。ベテラン作者であるだけに、きっちりしていると思う。

【ストーリー】
リリース時のコメントから、みさき氏が最も力を入れていると思われる点。
が、序盤はプレーヤーにはかなりストレスが溜まる仕様。
異世界にいきなり放り込まれた主人公にシンクロする為か、
プレーヤーにも最初は説明はない。
さらに1~3話までは完全に振り回され、感情移入先の主人公は
選択肢らしい選択肢をロクに与えられない。
そういった意味で、主人公が動き出す4話まで完成してからリリースした
みさき氏の判断は正解だと思う。2話あたりまででリリースされていたら俺は多分投げてた。
個人的には、話のノリがわかるもう数話まで作ってから見せて欲しかったとは思うが。

ただ、単独でリリースしているシナリオは全て完結している人なので、
俺としてはこのストーリーがどう完結するかだけでも楽しみではある。

【総評】
非常にスローペースな立ち上がりであり、
現時点でオススメするにはまだ早い。
この手の話を完結させる作者は個人的にはあまり見たことがないので、
みさき氏の完結力に期待をしたいところ。

●みさき氏のシナリオをプレイしたことがない人
氏の作品にしては珍しく、他のシナリオとのリンクが現在全くない状態。
このシナリオから入っていっても全く問題はない。
ただ、オープニングが終わってこれから……というところで
4話が終了の為、もう少しプレイ開始は待つ方がいいかも。

●みさき氏の別シナリオをプレイしたことのある人
今までシステム面で様々な意欲作をリリースしてきた氏だが、今回は
ストーリー面にその意欲が向かっている。
ただ、肝心のストーリーが序盤もいいところなので、
もう数話リリースされてからプレイを始めた方が良いと思う。

●みさき氏のファンの人
システム・戦闘周りの部分を言うと、氏の作品で例えるなら
この「翼の唄」はAWシリーズというよりはギャグ短編系のそれに近い。
蒼奏のような、システム的な大掛かりな仕掛けは今のところ
期待しない方がいいが、むしろ短編のようなバランスを求めるのなら
こちらの方が向いていると思う。

ストーリー的には、AWアナザーのXルート分岐直後数話のノリが好きな人は
フィーリングが合いそう。

以上