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エレクトリカ - (2008/10/15 (水) 00:23:03) のソース

(本レビューの原文は08/10/5(日)に作成したものです)

&bold(){【エレクトリカ】}

「遠い遠い未来の話、0と1との電子世界――
 AIたちは電子の浮島で暮らしていた
 ある者は戦闘に没頭、ある者は情報処理に埋没
 『意義』と『未練』に挟まれて、
 それでも一応幸せと思っていたら、さあ大変

 何故だか邪魔する謎の勢力、支える亡霊これまた無力
 とにかく家が壊れるんじゃたまったもんじゃないと
 起きた住処の崩壊にAIたちは立ち上がる?

 「それじゃ、グッドラック?」

 気楽に行こうぜ兄弟、楽しけりゃそれでいい!
 どこか気のいいAIたちの大騒ぎ、ここに開幕。」

同氏の手がけたシナリオ、「かみうみ逃避行」のその後(別視点)を描いたお話らしい。
その作品は未プレイだが、やってなくても大丈夫というコメントを見かけたので挑戦。

ちなみに自分は「人間が主人公じゃなくたっていいじゃない」系統の作品とはなんか
相性が良いらしく、ある時は【建築勇者ダイクウガー】で勇者と操者とのやりとりに
ニンマリできたものを感じたり、またある時は【戦場の花束】で、HA達の生き様に
思いっきりキュンと来たりボロ泣きしたりその後に祈りを捧げたりと、
熱中できたり、楽しいだけに大事にしておきたい思い出が多い。
本作は作品解説文の時点でいかにも人外なキャラたちがサイバースペースで
お話を展開することが読めたので、楽しみな気持ちでDL→開封→プレイとあいなる。

&bold(){・グラフィック、演出}
ほぼ大半は「それも私だ」謹製アイコン。実のところこのアイコン群に
シナリオで触れることは今回が始めての機会だったりする。
ブログで単独として見る分には、一部イロモノ志向に偏っているんじゃ
ないかなぁと思わされたが、集中して集めている=統一感が高まるということで
シナリオを進めるうちに、そういうのを気にせず楽しめるようになった。

演出に関しては、普段一枚絵背景が主体のところに戦闘アニメとかで
瞬間的に、視覚に訴えてくれたり、SEの連続再生だけで進めたりする場面があったりで
ワクワク感を駆り立ててくれたものだと思う。
尚、本作を遊ぶ場合はGSCから効果音パックをDLしてSRC本体か
このシナリオフォルダに放り込むよう。意図しただろう音使いを楽しむためにも是非。

&bold(){・キャラクター}
サイバー系における人外(ロボット、電子プログラムの類、エーリアーン)の類というのは、
ある程度例外はあれど、純粋というか無垢というかプレイヤーにとって窺い知れないものを
滲み出させない、隠していない、感じさせないというイメージが第一に来る。この辺りは人の
捉え方によって解釈や印象は異なるのだろうけれど…
まぁ、そんな感じのキャラクターによる活劇を楽しませてもらえることを期待していたのは確か。

結果は思ったよりもアタリの印象だった。最初は電子世界でも人型とか町並みとかで
そこまで電子世界ってモノかなぁとかAIはどうなっているんだろうなぁとか不安みたいな
ものを抱きもしたが、大体2話ぐらいで消えうせてどんどん熱中していった記憶がある。

「意義」の元、キャラクターの性質とかで強調性みたいなモンがあるのだが、これが中々
キャラクターのポジションのわかりやすさ、人間的な造形だけどいちいち言い回しとか行動理念や
ホロリと語られる背景とかで、人っぽいが人とは遠い位置にあるのかという認識を持たせるのに
一役買ってくれた、と思う。特に戦闘的な連中に関しては戦闘騒ぎに
野次馬のごとく乱入してくるシーンに「おまwww」と思わされたものだ。
「意義」についてはキャラごとに被ったりする例もある(ゲッコーとビリーナ、ブラックとヨモギ)
が、それでも意義とは別の仕事や、置かれている立場というものが反映されてて、キャラ被りは
あんまり感じさせない。これから起こらないことは祈るが、多分大丈夫…かなぁ。
ついでに、戦闘時の会話イベントはとても豊富。気力にも関わるので起こす意義もアリアリ。
いちいち言い回しのあたりにはじめの方で述べた純粋とか無垢とか裏がないとかそんなイメージを
ストレートに感じさせてくれるので、毎回の反応見たさについ熱中した。
こういうのが嫌いじゃない人にとってはアタリだろうと思う。

ちなみに自分が目を離せないのはコトナシ以外だとヨモギ。危うく明るいけれど
背景とか考えると儚く思える感じにゾクッ、ですよ。案外このまま疾走するかもしんけれど。
他にも暗躍している雰囲気があるので、まだこれから増えるのだろうが…
後、ノンネームドの「自立型スパイウェア」さんが一番印象深かった。電子世界である、
というものを知らせるインパクトがあったと思う。敵としては誰かをコピーされたら
どうしようとか、実害でも不安を煽るヤツだが活躍に期待したくなるのであった。

&bold(){・シナリオ}
現在リリース分では、電子の浮島「エレクトリカ」が存在すること、その中では
多種多様なAI達が、自身の意義に忠実に静けさあり荒事ありの気ままな生活を満喫して
いたこと、そこに謎の言語プログラムの無いAIが漂着してきたこと、その日を境に
このエレクトリカに危機が迫り、異変も起き出していること・・・が順を追って判明していく。
次回のリリースに備えた区切り具合も中々美しい。これはフォルダを大事に取って置こう。
そう俺は思った。
謎っぽいことを感じたり、キャラの把握とかで混乱しても、事典インクルードによって
わかった情報がどんどん明かされ蓄積されていくので、前作をやっていない人にも、
初めてだったりブランクが空いたりしちゃう人にもひと安心の設計である。

当初このシナリオは単独モンだと思ったら、まさか前作のあるシナリオとは
思ってなくてありゃ! と思わされたのはまぁ普通の思い出。まぁ何でそう思ったのかと
いうと、要・前作や関連作の知識を要されるシナリオの重要点とか楽しみドコロが
含まれていた場合、置いてけぼりになってグハっとなるのではないかと危惧していたから。

だが、本作は今のところ前作の知識を要される…という雰囲気の場面には直面していない。
ひょっとしたら、ブラック&ヨモギ周りのお話は前作「かみうみ逃避行」を遊ぶ事で
より一層わかる仕組みなのかもしれないが、それが無くても彼らの直面した場面や
本領みたいなのを伺えるシーンを中心に構成されているので、安心して遊べる。
むしろ前作にも興味が沸いてきたが、遊ぶかどうかやる気の問題で迷うところ。

そんなシナリオの流れだが、劇的に熱かったり鬱かったりするイベントが飛び込んでくる
雰囲気とは遠いものがある。ある意味創作書物…絵本とか、ふわーっとした雰囲気の
SFマンガの中の世界的な味わいはあるかも。実際に目にした人によって印象は
変わると思うのだが、その中のひとつとして参考にしてくれれば幸い。

&bold(){・戦闘バランス}
1eveがサクサクと進むのがこのシナリオの特色の一つ。会話パートも、戦闘パートも
幾重ものクリックとか、ウェイトとか、長い長い位置取りにターンをかけさせるという
要素がほとんど無く、結果スルスルと先に進める実感を提供してくれたんだと思う。

その分、戦闘シーンはサッと済んだり、数ターン凌げばクリアというのがある代わりに
味方も敵も装甲がヤワい上に回避は期待しづらい環境なので、油断するとすぐ倒される。
だが、不確定要素に頼らなかったり(自分は最新話の耐久ステージだけ頼った)、援護を
主軸にしたりすることで、スムーズさを保ちつつ有利に戦うことができるバランスだ。
勿論援護だけに頼ろうとせず、コトナシの突入性能を有効に活用してやったり、
援護防御の利用をよく考えて決めたり、スパイウェアの脅威をどう交わしてやったりとか
それなりに頭を使わないと押され負けするシチュエーションも、決してなくはない。
一部のキャラは変形によって、消耗もするけれど強さの変動をすぐに実感させられる
味わいも楽しませてくれる。なかなか活用しがいがあった。だがヨモギ、アンタだけは
射程1や耐久ステージ多発で実感がなかなか沸かなかった…今後に期待ってか。

ちなみにゲームオーバーになると、ヒントや初登場キャラクターについての
解説が拝める。本当に不慣れな方は、そうしながら進むのもまた一興だろう。
ついでに条件達成時にボーナスが来るシステムでやる気もモリモリ。

&bold(){・BGM選曲}
本作が、SF系統でもフワッとした感じをもたらしているのはこの項目も一役買って
いるのではないかと思わされた。どっちかというとギターとかピコピコとした電子音よりも、
ピアノだかオルガンだか、その手の楽器が活きた曲やファンタジー風味の選曲が
この「エレクトリカ」を印象付けるものとなっている。無機的で重く、激しかったり
電子的な空間に電子音が響き渡る…ということに頼っていないので、自分が予想していた
テラサイバーな雰囲気というより、ファンタジックなSFワールドの面を強く感じた。
ちと中身を覗いてみたが、これから先もその路線を貫いてくれそうな期待を持てる。

ハード! クール! 刺激的! 燃える! というのとは違うけれど、
この手の選曲の纏め方はアリ。

&bold(){・トータルバランス}
作者のおすすめ対象である「サクサク進めたい」、「かみうみ逃避行、その後
(別視点)が気になる」、「仲間同士の隣接会話が好き」、「人間が主人公じゃなくたって
いいじゃない」に関わる条件を満たしているかと言えば、今のところは充分に満たせている。
作者の推しておきたい点も、それが盛り込まれた中身も、全体のどこかワクワクして見守りたく
なる雰囲気も、崩れた感じはそんなに感じさせない、高い部類だろう。
まぁ、個人的には初期に「このテーマで、妙に人間社会的なたたずまいと人間的なAI存在か…」
と思わなくも無かった点はあるので、そこだけ引っかかるかな。という程度。

&bold(){・ちと惜しいなーと思ったところ}
完結::等身大(オリジナル)に登録されているが、この作品はまだ更新途中だろう。
まぁシナリオDLページに行けば割とその間違いには気がつけるけれどね。

&bold(){・総評}
DLページにおける
&bold(){ ・サクサク進めたい}
&bold(){ ・仲間同士の隣接会話が好き}
&bold(){ ・人間が主人公じゃなくたっていいじゃない}
ここら辺が全て当てはまるのならお薦め。また、人間外の存在に純粋さや真っ直ぐさを
見出して燃えたり萌えたりしている方にも、やっぱりお薦めしてみたい。ついでに
この作品、どちらかといえば明るい盛り気質の連中を見守る感じで進める、それが一番
浸れる楽しみ方だと思う。コトナシも、本来なら名前付けれる主人公とかそんな気配…
も、したけれどやはり一人の役として受け止めた方がいいんじゃないかな。

一方で、シナリオは劇的に心情を燃やしてナンボだとか、無機的存在が人間らしくなる
ということについて期待している人や、重厚な物語をチマチマクリックして楽しむのが
好きなタイプにとっては、今のところはお薦めしにくい。他にも、作品に対して我を強く
持って突っ込みながら楽しんだりするのが基本のタイプにも不向きだろうか。
(自分もなくはないが、ダメだと思っていない場合はそこまでする気質ではない)

個人的には結構な「アタリ」のシナリオだったので、前回を考えると
こういった感想が頭の中から溢れてきてくれたことが嬉しかったり。
そんな気持ちで、今はまひぴぱ氏のことを応援したいと思う。