イリーガル・ガイ

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イリーガル・ガイ」を以下のとおり復元します。
「いやぁ君が噂の四加一樹君かぁ!うんうん、特別な少年ともなるとさわり心地もやっぱりいい感触だねぇ。」
「やっぱりデストロンとか抜きでもこの人変態だぁ~!?」
「もうお父さん、誤解を招くようなことしないでよ!みんな見ているのに恥ずかしいじゃない!」

太陽系全体を巻き込んだ一大騒動が集結し、地球防衛軍本部であるビルドベースに帰還した一同。
事態が分からないまま途中から同行した四加一樹は、真田長官と会いようやく事情を落ち着いて聞くことができた。
いきなり抱きついて頬ずりされたことで良くも悪くも緊張感は腑ぐれたが、話の内容はもちろん真剣なものだった。


*第13話「イリーガル・ガイ」


先刻、ロディマスに乗りこみ街を散策した一樹はつらい現実に向き合ってきていた。
並行世界、こちらの世界にも聞かされていた話だったとは俄かには信じ切れなかった話だったが、
三月と共にロディマスに乗って街を周り、両親までが自分のことを知らず気味悪がる現実に触れ認めざるを得なかった。
そもそも先の騒動で月で闘っていたロボットたちは、どれも元の世界で自分にしか見えなかったビジョンの中に映っていた顔ぶれだったのだ。
かつて自分が変人扱いされた理由であり、ネット小説の題材にもしていた世界は、決して一樹にとって甘い夢の世界とはならなかった。

「先輩は……どうしてロボットのパイロットになったんですか?」
「もちろん元の世界に戻るためよ、君を探す間ロディマスも私もただの無駄飯食らいって訳にはいかなかったというのもあったけどね」

元の世界に戻るためには、とにかくまずは真田長官を研究に専念できるような世界情勢にすることが不可欠だと一樹に語る三月。
もっともファザコン気味な三月が父親の役に立ちたくてこの場にいることは付き合いの浅い一樹にも容易に推測できた。
もし君もパイロットになるのなら、と真田長官はコアロボットについての説明を一樹に始めた。

コアロボットは、そもそも螺羅博士に持ち逃げされた遺跡のオリジナルをレプリカしたものだ。
その総数は今まで大空魔竜と共に各地で戦った三月の赤い2号機を含めて3機。
残りの2機、一樹がなりゆきで搭乗した彼が「ハルツィ―ネン」と名付けていた白い機体は1号機、そしてもう一体の青い機体が3号機だ。

青い3号機に乗るのは遺跡に唯一眠っていた異星人の少女、通称D。
ただしオリジナルの体の損傷の激しさから真田長官と司馬博士が共同で開発した仮の器に意識を移植している。
彼女とその愛機は先のノーザ戦での大破以後実戦から遠ざかっていたが、今後は三月と同じく大空魔竜への出向が決まっていた。
そしてもう一人一号機の本来のパイロット、弥生・シェバイルは一樹収容の時、大空魔竜の医務室で治療を受け現在快方に向かっているが、もうコアロボットを動かせそうにはないらしい。
一樹は自分の意思で彼が言うところのハルツィ―ネンを引き継ぐかどうかを問われているのだった。
ロボットの操縦には興味があったが、戦争に参加するのは民間人である一樹には怖かった。
ひとまず保留してもらい、一樹は地球防衛軍の活動を当面見学させてもらうことにした。


一樹と並ぶ突然来訪したビッグゲストと言えばあちらの世界のサイバトロン総司令官コンボイである。
先行して地球防衛軍に協力していた部下、ロディマスとウルトラマグナスの労をねぎらった彼は、グランドコンボイとの歴史的会談を行った。
こちらの世界のデストロンをもその影響圏に置こうとしているメガトロンに対し、二つの世界のサイバトロンは一丸となって対処していくことになった。
もちろん元の世界のTFたちの諍いに巻き込まれた一樹と三月へのお詫びとして
二人だけでも一刻も早く戻れるようサイバトロン随一の発明家ホイルジャックに時間を見つけ真田長官の研究に協力するようにと配慮もした。
今回の事件で地球圏に広がったTFへの一般民衆の恐怖感は想像以上に大きい。
N.E.S.Tの結成は言うに及ばず、ブルーコスモスはここぞとばかりにTF排斥運動を扇動している。
異星人排斥の気運を戦端を再び開いたプラントのコーディネ―ターたちへの嫌悪感と結びつけようという狙いも見える。
連邦政府もこの流れを無視できずサイバトロンと繋がりの深い地球防衛軍に監督官たちを送りこんできた。
その中にはグランドコンボイらと深い交流を持つアレクサなどの姿も見えたが、その多くはTFに対して好意的な感情を持っていないようだった。
前途多難なサイバトロン同盟……、それを眺めるこの場に残った唯一人のデストロン兵士アイアンハイドの心中は穏やかなはずがなかった。


数日が過ぎ、土星圏の危機を知らせてくれたイオラオスらの要望もあり、グランドコンボイがアルゴノートのセイバートロン駐留を快く引き受けた頃、
ようやく帰宅する暇ができ、自宅のリビングで三月やロディマスらと共に晩餐を取っていた真田長官だったが……

「このくそ忙しい時に限ってあいつは。螺羅の阿呆め、少しは空気を読めというに」

テレビの電波をジャックし、お茶の間にまで流れてくるカミングスーンの予告に顔をゆがめていた。
けばけばしい格好のミス・ラ―が性懲りもなく宣言する今回の指定地域、それはよりにもよって地球防衛軍本部ビルドベースが含まれる地域だったのだ。


指定日当日宙は、カミングスーン開始前に最近ビルドベース近辺の湖で時より観測されている不審な磁気反応を1人探っていた。
特殊な磁気反応はハニワ幻人の持つ特徴なのだ。
ただでさえビルドベースがカミングスーンで狙われるという前代未聞の事態に、邪魔大王国とダリウスの連合にまで攻めてこられては溜まったものではない。
他の面々に黙って出てきたのは、1人で最近ずっと頭によぎる自分の体への疑問、そして邪魔大王国が血眼になって捜す銅鐸について父にどう聞けばいいか考えたかったからだ。
思えば父が一度死にマシンファーザーとして現れてから激動の日々が始まり、ゆっくりと親子で話をする機会もなかった。
今回のカミングスーンももしかしたら銅鐸を求めての指定だったのでは、という考えが頭によぎって、今日の戦いが終わったらなんとしても親父を問いただすと決意をした時、異変が起こった。
静かだった湖面が急に荒れ出しているのを見て思わず飛びこみ何事か確かめようとした宙は、湖底を進む巨大な何かにぶつかりそのまま気を失ってしまったのだった。
 

迫りくる螺羅帝国のエンシェントアームズ軍団を必死に駆逐していく地球防衛軍の面々。
数度のカミングスーンへの参加でこの遠隔操作で動く敵兵器への対応を大体のメンバーが慣れてきていたのだが、
如何せん今回は敵もこちらの拠点のある地域を手に入れることが目的とあって気合の入り方も違う。
遠目にミス・ラ―が直接戦いを見物し、時より遠隔操作している部下に色々支持している光景も見えた。
螺羅側も螺羅側なりに先の騒動で太陽系ののっぴきならない状況を自覚し、本格的な地球圏統一に乗り出したということなのだろうか。

そんな中やはり鋼鉄ジーグの力も必要と判断した真田長官とマシンファーザーの指示で、
捜索くらいならと志願した一樹が乗るコアロボット1号機と素人の一樹が心配だと三月の2号機が消息を絶った宙を探しに行く。
パートナーである自分もと美和がビッグシューターも捜索に使おうと発進しようとした時、突如数体のハニワ幻人ガルガが水しぶきと共に穴をあけビッグシューターの発進通路に出現する。
宙と接触した巨大な何かはこのガルガの一体だったのだ。
ビルドベースの地下格納庫から先の湖まで繋がる長大な発進通路は今やガルガらとそれに着いてきた他のハニワ幻人、ハニワ兵士とドロイド兵ら白兵戦要員に占拠されてしまった。
奥の方には幻魔要塞ヤマタノオロチの姿も見える。
今回の作戦の進展具合に指揮をするミマシも上機嫌で、イキマとアマソに俺にだって頭を使った作戦の一つや二つできるのだと自慢していた。


自分の仕事は警備だ、とビルドベースの傍で愚直に敵を迎撃していたアイアンハイドが、
デストロンは信用できないと敵視し横で監視していたロードバスター共々、いち早く駆けつけてくれたおかげでどうにか敵のビルドベース侵入は防げていた。
エンシェントアームズを蹴散らし続々と駆けつけてくれる地球防衛軍の精鋭たちのおかげで、なんとかこの危機的状況を脱せられるかに思われた。
だが今回の邪魔大王国の作戦は何時になく巧妙だった。
なんと突破されていないはずなのに今度はビルドベース内に新手のハニワ幻人が現れ暴れ始めたのだ。
地下から来た同胞に付着していた小さなアメーバ―状の状態に変化できるハニワ幻人ヌメメがまんまとビルドベースの中までもぐりこみ、元々のサイズに巨大化したのだ。
司令部のある部位は緊急避難機能が付いており咄嗟にビルドベースから切り離されたが、そこに含まれていない重要施設こそが敵の狙いだった。
マシンファーザーの安置されたコンピュータールームに一目散に向かうヌメメを阻めるものは居らず、為す術もなくコンピュータールームは破壊されてしまった。
憐れ司馬博士はまたもや邪魔大王国の手でその命を散らすことになってしまったのだ。

「このハニワ共め、よくも2度までも父さんを……!!
ミッチー、ジーグバズーカ―で敵討ちだ!」

三月たちに発見され、ようやく意識を取り戻し急ぎ帰ってきた宙は怒りに震える拳を合わせ、
一気に鋼鉄ジーグに変身するとまだ試したことのない新兵器ジーグバズーカ―でヌメメを吹き飛ばす。
そのまま鬼神のごとく残ったハニワ幻人を蹴散らしていく鋼鉄ジーグだったが、
どれだけ敵を倒そうと父を失った悲しみを癒すことはできなかった。 


地上の方でもなんとか螺羅側は撃退されようとしていた。
だが宙に遅れて帰ってきてビルドベースの惨状に呆然 していた一樹のコアロボット1号機は、運悪く生き残りのエンシェントアームズたちに取り囲まれてしまう。
負け試合なら負け試合でせめて相手に損害を残そうと判断したミス・ラ―が隙だらけのコアロボットを標的に選んだのだ。
通常の操縦は三月以上の筋の良さで完ぺきにこなし先の初陣では見事敵も倒している一樹だったが、いきなりの集中攻撃を受けパニック状態になる。
咄嗟にそんな一樹を庇うためエンシェントアームズに接近した三月だったが、今度三月のコアロボット2号機が敵に鷲掴みにされいいように蛸殴りにされてしまう。

「た、助けて……」

その時三月の助けを呼ぶ声に反応し、戦闘不能と思われていたコアロボット1号機が再起動、反撃を開始する。

「な、なんだ……?助けに行くのかハルツィ―ネン?
いや……違う……僕だ、僕の意思で助けようとしているんだ!うぉぉぉ!!」

恐怖を抑え込みただ三月を助けるためだけに初めて自分の明確な意思で敵に立ち向かっていく一樹。
迫りくる敵のミサイル攻撃を潜り抜け、見違える動きで敵を駆逐していく。
残りの敵を片付けた味方も加わり、エンシェントアームズ達はあえなく全機破壊されたのだった。
半壊した愛機から脱出した三月は、少しはやるじゃないと一樹に笑顔を向ける。
これならすぐに私が守ってあげる必要なんてなくなるかも、などと思っている時に視界にコールサイン(降伏の合図)を送り徹底していくミス・ラ―に映り、
初めて直接見た相手の感想をしみじみと漏らす三月であった。

「本当趣味の悪い格好の女ねぇ……」


父を再び失った悲しみに涙する宙だったが、彼の下を訪れた真田長官はマシンファーザーが健在である可能性を話した。
改めてコンピュータールームに残った残骸を調べてみたところ、マシンファーザーのデータの入っていたメインコンピューターの残骸がまったく見つからなかったのだという。
もしかしたら邪魔大王国は破壊すると見せかけてマシンファーザーを持ち去ったのかもしれない。
同じように父を捜すダイヤらに励まされ、宙は父を取り戻すことを固く決意する。
そしてその時にはやはり今度こそ自分の不死身の体について全て話してもらわなければならない。
今回宙は実に数時間の間、湖の中で気を失っていた。
宙は今度こそ自分の身体の異常を確信してしたのだった。

一方、一樹もまたパイロットになることを真田長官に申し出ていた。
無理強いはしないよ、と念押しする真田長官に対し、怖い目にもあったがそれ以上に目の前で誰かが危険な目にあっているのを放っておく方がつらいと答える一樹。
この後、一樹の決意を余所にしゃべる愛車(ロディマス)がいるとは言え、若い女性との二人暮らしを気まずく思っていた真田長官によって一樹が真田邸3人目の居候になり、
今までとは違う意味で波乱万丈な毎日が始まってしまうのだがそれはまた別の話である。

マシンファーザーを奪った相手、それは邪魔大王国ではなかった。
ヌメメの攻撃の衝撃でフリーズ状態が続くマシンファーザーを見つめる全身甲冑の怪しげな人物。
邪魔大王国の同盟者、ダリウスの誇る四天王の一人南方将軍プロイストである。
ダリウス側は今回の作戦をビルドベース壊滅作戦として立案だけして、実際の作戦は邪魔大王国に丸投げしていた。
ミマシは自分の作戦と言い張っていたが、全てはプロイストがお膳立てしたものだったのである。
だがその真意はマシンファーザーを破壊に見せかけ、邪魔大王国すら欺きまんまと連れ去ることにあった。

「こちらの戦力をほとんど貸さず、同盟相手の心証を悪くしたかもしれんな。まあいい目的は果たした、悪くはない……」

普段あえて他の3人より目立たぬように心がけるこの鎧の怪人物の思惑を知る者は今はまだいない……。



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チェックポイント

・サブタイトル
前回の執筆者の方の希望では「闇に包まれる宇宙」 でしたが、
前回の流れから一度デュアルの主人公に重点を置いた話を作るほうがいいだろうと判断し、デュアル3話のサブタイトルを拝借。
12話の方申し訳ありませんでした。

・コアロボットの解説
いい機会なので原作知らない人に一樹と一緒に改めて要点を押さえてもらおうとまとめてみました。
一応前にもあった解説と多少被るので要らなかったかもと今更後悔。
Dはよくよく考えたらちゃんと大空魔竜の方に出向していなかったと思ったので正式加入させました。

・TFを取り巻く状況
アレクサを地球防衛軍側に居続けさせる理由づけをしておいたので、これで幾らでもナイトスクリームとのイベントねつ造し放題?
アイアンハイドに関してはもうすぐ復活するであろうスパリンガルバトロン復活で元の上司の元に帰る前に
気まじめな性格のせいで板挟みになっているよって描写が欲しかったのでちょっとだけ出番を与えました。
まあ原作通り若いロードバスターが因縁つけているんで別離の時はここら辺の関係掘り下げてみたいですね、
ついでにアイアンドレッドに生まれ変わってからのサイバトロンとの絡みの無さも解消したいところ

・アルゴノート
とりあえず身の置き場がそろそろ必要だろうと思ったので、セイバートロン星に駐留してもらうことにしました。
これなら必要に応じて地球との間行き来できるので悪くはないかなと。
イオラオスらは当面この時代のことを知るためにも出向という感じで。

・ボロボロになったビルドベース
今回でかなりボロボロになったので、今度からはもうすぐ完成するエネルゴングリッドで防御は完璧になるオーシャンシティあたりにお引っ越しかも。
もちろんそのままビルドベースに留まってもいいのでそれは今後の作者さんの判断で。

・ハニワ幻人
今回使ったハニワ幻人はガルガとヌメメの2種類。
それぞれ原作11話、18話に登場。
共にビルドベースの直接攻撃に使われたハニワ幻人ということでチョイス。
ガルガの方はスパロボにも出てきた4足歩行の奴です。

・攫われたマシンファーザー
当初の予定ではイオラオスのテレポート能力で救出される予定でした。
「私にいい考えがある、イオラオス、君ののテレポート能力を貸せ!」
「私の能力を?一体何をしようと?」
「いいから貸すんだ!」
といった具合で初代TFでのランボルから無理やりロケットブースターを借りるコンボイ司令官のネタを入れようかなーと。
ちなみに原作では借りた後、ごく普通に攻撃され何もしないままあえなく墜落して、コンボイは心配して駆け寄った部下になぜかマジギレします。
とりあえずプロイストは古代ダリウス人と銅鐸を残した古代文明の関係を知っていて、自分の為に役立てようとしている感じです。


三月とミス・ラ―
ミス・ラ―はこの世界における三月。
向こうの真田長官の奥さんがこっちでは螺羅博士と結婚しているために、今のところ三月は一樹と一緒で自分はこの世界に存在しないと思っています。
ミス・ラ―の方はケバい衣装と化粧を脱ぐと、素に戻って家庭的なお姉さんになります。

・次回
そろっとZナイトを起動させる話がいいかな、などとも思ったのですが
先にマリンカイザー出しておくべきだろうし一旦置いておくべきかなと思いサブタイトルは保留させていただきました。
すぐにマシンファーザー救出の流れをやるなら、
前から意見の出ていたいろんなキャラの父と子の話にスポットライトを当てる話にするといい感じかもしれません。

復元してよろしいですか?