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朝ごはんは一日の活力です!!」(2008/09/17 (水) 23:06:42) の最新版変更点

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少女の声が悲痛な現実を告げ、哀悼の時が世界に満ちていた。 ある者は涙流し、またある者は怒りに身を震わせる。義憤と故人を悼む気持ちが熱くなり、込み上げてくる。 しかし、泣こうが喚こうが世界は変わらない。生きている以上、人は日々の営みを忘れない。 いやむしろ怒り狂い泣き喚けば喚くほど、人々は自覚する。 何でもない日常の尊さを、日々の営みの大切さを。 時刻は午前六時過ぎ。場所は宇宙最強の機動戦艦ナデシコ――例え人格に問題があっても最高の人材が集う場所。 そこで人々のひもじさは限界を迎えていた。 「お~な~か~が~す~い~た~!!!」 *&color(red){第二次スーパーロボット大戦BR}  改め *&color(red){すちゃらか戦艦ナデシコ} *&color(red){朝ごはんは一日の活力です!! ◆7vhi1CrLM6} 「おかわり!」 威勢のいい声が六畳一間に響き渡った。赤毛の少女が茶碗を高々と掲げている。 「普通に? 山盛り?」 それにごく普通に栗毛の少女――宇都宮比瑪が受け取りながら返した。 再び元気の良い声が飛ぶ。 「山盛りで!!」 「はいはい。甲児君、食事中にゲキガンガーを見たらめっでしょ」 「だって比瑪ちゃん、今いいとこなんだぜ」 ちゃぶ台越しに杓文字を突きつけられ怒られた甲児がぶつくさと文句を呟く。 しかし、比瑪に臆した気配はなく「駄目です。消しなさい」とぴしゃりと言い切られて、渋々と甲児はそれに従った。 「ちぇっ! 仕方ねぇな」 「テニア、このくらいでいい?」 「うん! いっただきま~す」 「シャギアさん、新聞広げないでくれよ。食卓狭いんだからさぁ」 手回し式ダイヤルチャンネルのテレビの横で新聞を広げていたシャギアに注意が飛んだ。 六畳一間で五人の人間がちゃぶ台を囲っているのである。決して広くはない。 「む? すまんな、甲児君。テニア、そこの醤油を取ってくれないか?」 「ほれ? ひひよ。ほい」 「すまんな」 「箸を咥えたまま喋らないの」 「ごめんごめん。おかわり!」 微笑ましい団欒。心温まる一時。平和な日常。そんな単語が頭の中を駆け巡ったオルバは眩暈を覚えていた。 はっきり言ってこの光景は異常だ。異常なはずだ。だがしかし―― 「おかわり!!」 何膳目か分からない声をテニアが上げる。 何故、君は違和感なくすんなりと溶け込めるのだ? もしかして異常なのは……この僕? そんなオルバの様子に構うことなく視界の中のテニアはご飯を掻き込んでいる。 頭が混乱気味に為りながらそれを呆然と眺めていたら、ポンポンと意味ありげに甲児に肩を叩かれた。 見るとなにやら頷いている。そして、「大丈夫。任せときなって」と小声で囁かれた。 ――何なんだ、一体? グッと親指を突き出して見せた甲児にシャギアまでもが親指を突き出して返している。 ますます訳が分からず頭がこんがらかっていく。 本当に自分がおかしいのだろうか? だが、この団欒に誰もすんなりと溶け込んでいるわけではなかった。 素で障子を開け閉めし、立て付けの悪さを確認して、 「ふむ、この動かせばガタガタと鳴る音、ところどころ破けた障子、完全には閉まりきらぬ隙間……なんとも物悲しいな。これが侘び寂びの心というものか」 等と呟いているシャギアと、他の三人状態は異なる。 甲児は自棄食いに近い状態であるし、比瑪の態度は周りの空気を和ませようと、放送で皆が気落ちしないようにという優しさから来ている。 テニアはテニアでこの集団に馴染もうと、それでいて普段の自分の仮面を被り続けようと必死だ。 皆が皆、何かを考えた結果がこの奇妙に和やかな団欒なのだ。違和感は仕方がないとも言えた。 しかし、そんな事情は何処吹く風、違和感など微塵も感じ取っていない男シャギア=フロストが一つ話題を持ち出した。 「私なり色々考えた上での提案なのだが、二手に分かれるべきかと思う」 比瑪が怪訝な顔をし、甲児は何故か笑顔だ。テニアは丼片手に反応に困っているように見えた。 シャギアが首輪を取り出し、ちゃぶ台の中央に置きながら話を続ける。 「理由は単純なものだ。私はこれからオモイカネを使ってこれの解析に移る。その為にナデシコをここから移動させたい」 「基地に動くんだな」 思考を先読みした甲児が声を上げた。しかし、それにシャギアはかぶりをふる。 「いや、逆だ。ナデシコはG-1・G-2・H-1・H-2のつまり北東の四エリア、その中央を目指す。  確かに解析に有効な道具が予想される基地に行くのは悪くはない。普通はそう考えるだろう。  だがしかし、そこは人をひきつけやすい場所だ。危険が多く解析に打ち込める環境ではないだろう。  それに解析機器はオモイカネで十分。後は個人の力量と言えなくもない。  だから周囲の見晴らしが良く、なおかつ他の者が拠り所としそうな場所から遠いそこなのだ」 「他の巻き込まれている人達はどうする気?」 比瑪と甲児、二人の人の良さを考えれば当然の質問だった。だから当然のようにシャギアも答えも用意している。 「もっともな質問だ。その為に二手に分かれる。最初に集められた人数は50~60人。そして、放送で呼ばれた死者の総数が31人。  つまり大体20~30人の人間がまだ生存している計算になる。このうち我々が6人。Jアークに拠っているのが」 「キラ=ヤマトとソシエ=ハイム」 「そう、この2人にジョナサン=グレーンを加えた3人。これは再び遭遇すれば敵として扱うしかないだろう。  ただし、この内ジョナサンはテニアが確認してないことから別行動を取っているものと思われる」 テニアが入れた合いの手にシャギアが頷いて続けた。ロジャー=スミスとあの戦艦の接触は、あえて伏せたのだろう。 あの戦艦は敵。今の段階ではそう割り切らせるおいたほうが、分裂を起こす危険性が低い。 少なくともテニアを始末するまでは秘しておくべき、そう兄が考えるのは理解できた。 「そして、ロジャー=スミス。情報を統合したところ彼はトカゲ型の戦艦に身を寄せていたのだと私は考える。  となるとミスマル=ユリカが言っていた赤と黒の30m弱の機体に乗っている可能性が高い。出来れば接触を取りたい人間だな。  これにここまで接触のない伊佐未依衣子を加えた11人が、現状で生存を把握している人間だ。  ただし生死を把握しきれてない危険人物として黒いガンダムが挙げられる。あれはまだ生存していると見るべきだろう」 テニアが身を強張らせるのが見えた。表情も固い。 お茶を飲み干して一息ついたシャギアが再び声を重ねる。 「ということは我々が把握してない人間が、黒いガンダムを含めまだ8~18人程度生きていることになる。  その全てがすんなりとあの化け物に従っているとは考えづらい。反抗を考える者との接触は急務だ。  そこでナデシコは他者との積極的な接触を避けるかわりにオルバとテニアに別行動を担当してもらいたい」  ◆ 十分後、フェステニア=ミューズは甲板に係留されているベルゲルミルの最終チェックを行なっていた。 テニアが、自身の盾が薄くなるにも関わらず異義を唱えなかったのには理由がある。 フロスト兄弟の知らぬ情報をテニアは伏せている。その情報はマサキ=アンドーに関わるもの。 彼がJアーク組に属する以前に接触した者のうちカミーユ=ビダンとレオナルド=メディチ=ブンドルの二人の生存は確定している。 しかし、マサキを悪人として扱っている以上、そこの繋がりは邪魔なのだ。万が一接触が起これば矛盾が発覚する可能性がある。 だから彼らはテニアにとっての危険人物。ここでは知らぬ存ぜぬのほうが都合がいい。互いに面識はないのだ。 ナデシコは積極的な接触を避けると言っている。 ならば、接触ない今のうちに何らかの手を打っておくのが吉。その為に多少のリスクには目を瞑ってでも動くべきだろう。 お目付け役が邪魔になるようなら葬り去ればいい。場合によってはその責任を危険人物に擦り付けるのも悪くはない。 潰し合いが起こってくれれば、それは願ったり叶ったりなのだ。 涙の一つでも流しながら帰艦すれば、あのお人好し達のことだ。疑いもしないだろう。 「お人好し……お人好し、かぁ」 シートに体重を預け、沈み込みながら呟いた。疲れからか妙な脱力感を覚える。 頭の中にはカティアとメルアの顔が浮かんでいた。 チョコレートを美味しそうに頬張っていた少女と姉のようにいつも支えてくれた少女。 馬鹿だ。二人とも大馬鹿だ。 アタシと会えたことをあんなに喜んで、おとりになって……笑顔で死んでいって。 呼吸が浅く早い。胸が苦しかった。深呼吸を繰り返して息を整える。 浮かんだイメージを振り払おうとして別のことを考え、何故か比瑪が頭を過ぎった。甲板で叫んでいたあの横顔。 お人好しなんだ。誰も彼もがお人好し過ぎるんだ。 メルアも! カティアも!! ムサシも!!! 比瑪も!!!! 「泣いているの?」 気づくと通信が一つ。ナデシコのオペレーター席からだった。比瑪だ。 もう一度深呼吸。切れ切れの息を整える。 心配顔に「ううん。大丈夫」と返し、当たり障りのない会話で場を取り繕って通信を終えた。 本当にお節介で世話焼きだ。 メルアよりはカティアに似ているような気がする。でも全然違うような気もした。 泣いて悲しむのかなって思う。もしナデシコの誰かを殺したとして、それを知ったら比瑪は泣いて悲しむのだろうか。 それはちょっと嫌だった。あの顔には笑っていて欲しい、そんな感情が芽生え始めている。 そして、テニアは決めた。 「うん。決めた。最初にしよう」 別行動から戻ってナデシコの誰かを殺すとき、出来ればだけど最初に比瑪を殺そう。 そうしたら、仲間の死を知って、自分の裏切りに気づいて、比瑪の顔が悲しむことはない。 彼女は幸せなまま逝く事が出来る。 最初に殺す。それがテニアの出来る精一杯の好意。 他人に任せる気はない。他人に任せたら比瑪が苦しんでしまうかもしれない。 自分の手で殺す。それが彼女に対する精一杯の恩返し。 少女は笑った。 ちょっとした名案を思い浮かんだように、ちょっとした思い付きが気に入ったように、ただ赤毛の少女は笑っていた。  ◆ ぼんやりと眺めていた視界の中で、皿に一つ残された厚焼き玉子がシャギアの目を惹いた。 何気なく箸が伸びる。それは目標を掴む前にカチャリと音を立てて別の箸の妨害にあった。 ムッとしたシャギアと甲児の視線が交わり、火花が散る。瞬間、二対の箸が駆け抜ける。 厚焼き玉子が宙を舞い、追う箸がそれぞれその両端を掴んだ。 「「ふ……ふふふふふふふふふふふふふ……」」 不気味な笑い声が響きあう。真剣勝負。互いに油断も隙も見当たらない。 力む余り卵が崩れてしまっては台無し。それを歴戦の二人は実によく理解をしている。 卵はギリギリの力加減で左右に引っ張られていた。 汗が頬を伝って落ちていく。消耗戦。神経の削り合い。 最後の一切れなのだ。次はない。その重みが二人の動きを慎重にさせている。しかしこのままでは埒があかない。 そんな中、先に動いたのは甲児だった。揺さぶりをかける。 「シャギアさん、粗食は体にいいって言うぜ。もう歳なんだからこれは食欲旺盛な育ち盛りの俺に任せなって」 「何を言う、甲児君。育ち盛りほど栄養のバランスが重要だ。私の見たところ君の食生活には偏りがあるようだ。これは私に任せたまえ」 シャギアが切り返す。互いに笑顔なのが妙に怖い。 「ところでさぁ、シャギアさん。オルバさんに渡してたあの紙の束は一体なんだったんだ?」 「あれか。あれは本来のナデシコ乗組員の写真付き名簿だ。脱出方法の一つとして有用なデータがオモイカネから見つかってな。  ボソンジャンプという。そこでついでにA級ジャンパーを探して貰おうという考えだ」 「ふ~ん。それでボソンジャンプって?」 会話を交わしながらも厚焼き玉子は二膳の箸によって宙に固定されたままである。 このままでは本当に埒があかない。 勝負を仕掛けよう。そう思ったシャギアが心の中でカウントを始めた。  3  2  1 どっか~ん ちゃっちゃかちゃ~♪ ちゃっちゃかちゃ~♪ ちゃかちゃかちゃ♪ 突然、巨大なモニターが現れ、場違いな音楽が流れた。 シャギアと甲児が固まり、厚焼き玉子が地に落ちる。しかし、そんなことでこの流れは終わらない。 「おーい! みんなー、あつまれーっ! なぜなにナデシコのじかんだよー」 「あつまれー」 モニターの中にはウサギの着ぐるみとどう見ても年若のお姉さん、それに白衣の女性が立っている。 ウサギに見覚えがないこともないような気がする。いやきっと気のせいだ。 「こんにちは、お久しぶり、はじめまして。ナデシコ医療班ならびに科学班担当のイネス・フレサンジュです」 甲児が口走った「それでボソンジャンプって?」という何気ない一言。 それが『こんなこともあろうと』で用意されていたなぜなにナデシコを再生させたことに二人が気づくのは、当分先のこと。 ナデシコでの迂闊な質問は説明おばさんを呼ぶ。ボソンジャンプの説明は、終わりを知らず延々と続いていた。 【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)  パイロット状態:良好、テニアを警戒  機体状態:EN60%、各部に損傷  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ和室)  第一行動方針:誰? この説明おばさん??  第二行動方針:人気がなく見晴らしのいい場所へ移動  第三行動方針:首輪の解析を試みる  第四行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める  第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除  最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)  備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。  備考2:首輪を所持】 【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α)  パイロット状態:良好、テニアを警戒  機体状態:EN60%、各部に損傷  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ甲板)  第一行動方針:テニアの殺害  第二行動方針:A級ジャンパーを見つける  第三行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める  第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除  第五行動方針:首輪の解析  最終行動指針:シャギアと共に 生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)  備考:ガドルヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)、自分たちの交信能力は隠している。】 【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)  パイロット状態:良好  機体状態:EN100%、ミサイル20%消耗  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ和室)  第一行動方針:誰? この説明おばさん??  第二行動方針:ヒメ・フロスト兄弟と同行  第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める  最終行動方針:アインストたちを倒す  備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容  備考2:ナデシコ甲板に旧ザクを係留】 【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)  パイロット状態:良好、ナデシコの通信士  機体状態:EN100%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル20%消耗  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコブリッジ)  第一行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行  第二行動方針:依々子(クインシィ)を探す  最終行動方針:主催者と話し合う】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)  パイロット状況:非常に不安定  機体状況:左腕喪失、マニピュレーターに血が微かについている、ガンポッドを装備  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ甲板)  第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る  第二行動方針:どのように行動を取ればうまく周りを騙せるか考察中  第三行動方針:危険人物の排除  第四行動方針:参加者の殺害  最終行動方針:優勝  備考1:甲児・比瑪・シャギア・オルバ、いずれ殺す気です  備考2:首輪を所持しています】 【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)  パイロット状態:パイロットなし  機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ格納庫内)】 【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)  パイロット状況:神経圧迫により発声不可、気絶中、顔に落書き(油性マジック)  機体状況:MS形態       落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ医務室)  第一行動方針:新たなライブの開催地を探す  最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる  備考:自分の声が出なくなったことにまだ気付いていません】 【二日目6:25】 ---- |BACK||NEXT| |[[悪魔降臨・死の怪生物(インベーダー)たち]]|[[投下順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/11.html]]|[[命の残り火]]| |[[leaving me blue]]|[[時系列順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/12.html]]|[[戦いの矢>戦いの矢(1)]]| |BACK||NEXT| |[[夜明けの遠吠え]]|シャギア|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|オルバ|[[計算と感情の間で]]| |[[夜明けの遠吠え]]|甲児|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|比瑪|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|テニア|[[計算と感情の間で]]| |[[夜明けの遠吠え]]|バサラ|[[命の残り火]]| ----
少女の声が悲痛な現実を告げ、哀悼の時が世界に満ちていた。 ある者は涙流し、またある者は怒りに身を震わせる。義憤と故人を悼む気持ちが熱くなり、込み上げてくる。 しかし、泣こうが喚こうが世界は変わらない。生きている以上、人は日々の営みを忘れない。 いやむしろ怒り狂い泣き喚けば喚くほど、人々は自覚する。 何でもない日常の尊さを、日々の営みの大切さを。 時刻は午前六時過ぎ。場所は宇宙最強の機動戦艦ナデシコ――例え人格に問題があっても最高の人材が集う場所。 そこで人々のひもじさは限界を迎えていた。 「お~な~か~が~す~い~た~!!!」 *&color(red){第二次スーパーロボット大戦BR}  改め *&color(red){すちゃらか戦艦ナデシコ} *&color(red){朝ごはんは一日の活力です!! ◆7vhi1CrLM6} 「おかわり!」 威勢のいい声が六畳一間に響き渡った。赤毛の少女が茶碗を高々と掲げている。 「普通に? 山盛り?」 それにごく普通に栗毛の少女――宇都宮比瑪が受け取りながら返した。 再び元気の良い声が飛ぶ。 「山盛りで!!」 「はいはい。甲児君、食事中にゲキガンガーを見たらめっでしょ」 「だって比瑪ちゃん、今いいとこなんだぜ」 ちゃぶ台越しに杓文字を突きつけられ怒られた甲児がぶつくさと文句を呟く。 しかし、比瑪に臆した気配はなく「駄目です。消しなさい」とぴしゃりと言い切られて、渋々と甲児はそれに従った。 「ちぇっ! 仕方ねぇな」 「テニア、このくらいでいい?」 「うん! いっただきま~す」 「シャギアさん、新聞広げないでくれよ。食卓狭いんだからさぁ」 手回し式ダイヤルチャンネルのテレビの横で新聞を広げていたシャギアに注意が飛んだ。 六畳一間で五人の人間がちゃぶ台を囲っているのである。決して広くはない。 「む? すまんな、甲児君。テニア、そこの醤油を取ってくれないか?」 「ほれ? ひひよ。ほい」 「すまんな」 「箸を咥えたまま喋らないの」 「ごめんごめん。おかわり!」 微笑ましい団欒。心温まる一時。平和な日常。そんな単語が頭の中を駆け巡ったオルバは眩暈を覚えていた。 はっきり言ってこの光景は異常だ。異常なはずだ。だがしかし―― 「おかわり!!」 何膳目か分からない声をテニアが上げる。 何故、君は違和感なくすんなりと溶け込めるのだ? もしかして異常なのは……この僕? そんなオルバの様子に構うことなく視界の中のテニアはご飯を掻き込んでいる。 頭が混乱気味に為りながらそれを呆然と眺めていたら、ポンポンと意味ありげに甲児に肩を叩かれた。 見るとなにやら頷いている。そして、「大丈夫。任せときなって」と小声で囁かれた。 ――何なんだ、一体? グッと親指を突き出して見せた甲児にシャギアまでもが親指を突き出して返している。 ますます訳が分からず頭がこんがらかっていく。 本当に自分がおかしいのだろうか? だが、この団欒に誰もすんなりと溶け込んでいるわけではなかった。 素で障子を開け閉めし、立て付けの悪さを確認して、 「ふむ、この動かせばガタガタと鳴る音、ところどころ破けた障子、完全には閉まりきらぬ隙間……なんとも物悲しいな。これが侘び寂びの心というものか」 等と呟いているシャギアと、他の三人状態は異なる。 甲児は自棄食いに近い状態であるし、比瑪の態度は周りの空気を和ませようと、放送で皆が気落ちしないようにという優しさから来ている。 テニアはテニアでこの集団に馴染もうと、それでいて普段の自分の仮面を被り続けようと必死だ。 皆が皆、何かを考えた結果がこの奇妙に和やかな団欒なのだ。違和感は仕方がないとも言えた。 しかし、そんな事情は何処吹く風、違和感など微塵も感じ取っていない男シャギア=フロストが一つ話題を持ち出した。 「私なり色々考えた上での提案なのだが、二手に分かれるべきかと思う」 比瑪が怪訝な顔をし、甲児は何故か笑顔だ。テニアは丼片手に反応に困っているように見えた。 シャギアが首輪を取り出し、ちゃぶ台の中央に置きながら話を続ける。 「理由は単純なものだ。私はこれからオモイカネを使ってこれの解析に移る。その為にナデシコをここから移動させたい」 「基地に動くんだな」 思考を先読みした甲児が声を上げた。しかし、それにシャギアはかぶりをふる。 「いや、逆だ。ナデシコはG-1・G-2・H-1・H-2のつまり北東の四エリア、その中央を目指す。  確かに解析に有効な道具が予想される基地に行くのは悪くはない。普通はそう考えるだろう。  だがしかし、そこは人をひきつけやすい場所だ。危険が多く解析に打ち込める環境ではないだろう。  それに解析機器はオモイカネで十分。後は個人の力量と言えなくもない。  だから周囲の見晴らしが良く、なおかつ他の者が拠り所としそうな場所から遠いそこなのだ」 「他の巻き込まれている人達はどうする気?」 比瑪と甲児、二人の人の良さを考えれば当然の質問だった。だから当然のようにシャギアも答えも用意している。 「もっともな質問だ。その為に二手に分かれる。最初に集められた人数は50~60人。そして、放送で呼ばれた死者の総数が31人。  つまり大体20~30人の人間がまだ生存している計算になる。このうち我々が6人。Jアークに拠っているのが」 「キラ=ヤマトとソシエ=ハイム」 「そう、この2人にジョナサン=グレーンを加えた3人。これは再び遭遇すれば敵として扱うしかないだろう。  ただし、この内ジョナサンはテニアが確認してないことから別行動を取っているものと思われる」 テニアが入れた合いの手にシャギアが頷いて続けた。ロジャー=スミスとあの戦艦の接触は、あえて伏せたのだろう。 あの戦艦は敵。今の段階ではそう割り切らせるおいたほうが、分裂を起こす危険性が低い。 少なくともテニアを始末するまでは秘しておくべき、そう兄が考えるのは理解できた。 「そして、ロジャー=スミス。情報を統合したところ彼はトカゲ型の戦艦に身を寄せていたのだと私は考える。  となるとミスマル=ユリカが言っていた赤と黒の30m弱の機体に乗っている可能性が高い。出来れば接触を取りたい人間だな。  これにここまで接触のない伊佐未依衣子を加えた11人が、現状で生存を把握している人間だ。  ただし生死を把握しきれてない危険人物として黒いガンダムが挙げられる。あれはまだ生存していると見るべきだろう」 テニアが身を強張らせるのが見えた。表情も固い。 お茶を飲み干して一息ついたシャギアが再び声を重ねる。 「ということは我々が把握してない人間が、黒いガンダムを含めまだ8~18人程度生きていることになる。  その全てがすんなりとあの化け物に従っているとは考えづらい。反抗を考える者との接触は急務だ。  そこでナデシコは他者との積極的な接触を避けるかわりにオルバとテニアに別行動を担当してもらいたい」  ◆ 十分後、フェステニア=ミューズは甲板に係留されているベルゲルミルの最終チェックを行なっていた。 テニアが、自身の盾が薄くなるにも関わらず異義を唱えなかったのには理由がある。 フロスト兄弟の知らぬ情報をテニアは伏せている。その情報はマサキ=アンドーに関わるもの。 彼がJアーク組に属する以前に接触した者のうちカミーユ=ビダンとレオナルド=メディチ=ブンドルの二人の生存は確定している。 しかし、マサキを悪人として扱っている以上、そこの繋がりは邪魔なのだ。万が一接触が起これば矛盾が発覚する可能性がある。 だから彼らはテニアにとっての危険人物。ここでは知らぬ存ぜぬのほうが都合がいい。互いに面識はないのだ。 ナデシコは積極的な接触を避けると言っている。 ならば、接触ない今のうちに何らかの手を打っておくのが吉。その為に多少のリスクには目を瞑ってでも動くべきだろう。 お目付け役が邪魔になるようなら葬り去ればいい。場合によってはその責任を危険人物に擦り付けるのも悪くはない。 潰し合いが起こってくれれば、それは願ったり叶ったりなのだ。 涙の一つでも流しながら帰艦すれば、あのお人好し達のことだ。疑いもしないだろう。 「お人好し……お人好し、かぁ」 シートに体重を預け、沈み込みながら呟いた。疲れからか妙な脱力感を覚える。 頭の中にはカティアとメルアの顔が浮かんでいた。 チョコレートを美味しそうに頬張っていた少女と姉のようにいつも支えてくれた少女。 馬鹿だ。二人とも大馬鹿だ。 アタシと会えたことをあんなに喜んで、おとりになって……笑顔で死んでいって。 呼吸が浅く早い。胸が苦しかった。深呼吸を繰り返して息を整える。 浮かんだイメージを振り払おうとして別のことを考え、何故か比瑪が頭を過ぎった。甲板で叫んでいたあの横顔。 お人好しなんだ。誰も彼もがお人好し過ぎるんだ。 メルアも! カティアも!! ムサシも!!! 比瑪も!!!! 「泣いているの?」 気づくと通信が一つ。ナデシコのオペレーター席からだった。比瑪だ。 もう一度深呼吸。切れ切れの息を整える。 心配顔に「ううん。大丈夫」と返し、当たり障りのない会話で場を取り繕って通信を終えた。 本当にお節介で世話焼きだ。 メルアよりはカティアに似ているような気がする。でも全然違うような気もした。 泣いて悲しむのかなって思う。もしナデシコの誰かを殺したとして、それを知ったら比瑪は泣いて悲しむのだろうか。 それはちょっと嫌だった。あの顔には笑っていて欲しい、そんな感情が芽生え始めている。 そして、テニアは決めた。 「うん。決めた。最初にしよう」 別行動から戻ってナデシコの誰かを殺すとき、出来ればだけど最初に比瑪を殺そう。 そうしたら、仲間の死を知って、自分の裏切りに気づいて、比瑪の顔が悲しむことはない。 彼女は幸せなまま逝く事が出来る。 最初に殺す。それがテニアの出来る精一杯の好意。 他人に任せる気はない。他人に任せたら比瑪が苦しんでしまうかもしれない。 自分の手で殺す。それが彼女に対する精一杯の恩返し。 少女は笑った。 ちょっとした名案を思い浮かんだように、ちょっとした思い付きが気に入ったように、ただ赤毛の少女は笑っていた。  ◆ ぼんやりと眺めていた視界の中で、皿に一つ残された厚焼き玉子がシャギアの目を惹いた。 何気なく箸が伸びる。それは目標を掴む前にカチャリと音を立てて別の箸の妨害にあった。 ムッとしたシャギアと甲児の視線が交わり、火花が散る。瞬間、二対の箸が駆け抜ける。 厚焼き玉子が宙を舞い、追う箸がそれぞれその両端を掴んだ。 「「ふ……ふふふふふふふふふふふふふ……」」 不気味な笑い声が響きあう。真剣勝負。互いに油断も隙も見当たらない。 力む余り卵が崩れてしまっては台無し。それを歴戦の二人は実によく理解をしている。 卵はギリギリの力加減で左右に引っ張られていた。 汗が頬を伝って落ちていく。消耗戦。神経の削り合い。 最後の一切れなのだ。次はない。その重みが二人の動きを慎重にさせている。しかしこのままでは埒があかない。 そんな中、先に動いたのは甲児だった。揺さぶりをかける。 「シャギアさん、粗食は体にいいって言うぜ。もう歳なんだからこれは食欲旺盛な育ち盛りの俺に任せなって」 「何を言う、甲児君。育ち盛りほど栄養のバランスが重要だ。私の見たところ君の食生活には偏りがあるようだ。これは私に任せたまえ」 シャギアが切り返す。互いに笑顔なのが妙に怖い。 「ところでさぁ、シャギアさん。オルバさんに渡してたあの紙の束は一体なんだったんだ?」 「あれか。あれは本来のナデシコ乗組員の写真付き名簿だ。脱出方法の一つとして有用なデータがオモイカネから見つかってな。  ボソンジャンプという。そこでついでにA級ジャンパーを探して貰おうという考えだ」 「ふ~ん。それでボソンジャンプって?」 会話を交わしながらも厚焼き玉子は二膳の箸によって宙に固定されたままである。 このままでは本当に埒があかない。 勝負を仕掛けよう。そう思ったシャギアが心の中でカウントを始めた。  3  2  1 どっか~ん ちゃっちゃかちゃ~♪ ちゃっちゃかちゃ~♪ ちゃかちゃかちゃ♪ 突然、巨大なモニターが現れ、場違いな音楽が流れた。 シャギアと甲児が固まり、厚焼き玉子が地に落ちる。しかし、そんなことでこの流れは終わらない。 「おーい! みんなー、あつまれーっ! なぜなにナデシコのじかんだよー」 「あつまれー」 モニターの中にはウサギの着ぐるみとどう見ても年若のお姉さん、それに白衣の女性が立っている。 ウサギに見覚えがないこともないような気がする。いやきっと気のせいだ。 「こんにちは、お久しぶり、はじめまして。ナデシコ医療班ならびに科学班担当のイネス・フレサンジュです」 甲児が口走った「それでボソンジャンプって?」という何気ない一言。 それが『こんなこともあろうと』で用意されていたなぜなにナデシコを再生させたことに二人が気づくのは、当分先のこと。 ナデシコでの迂闊な質問は説明おばさんを呼ぶ。ボソンジャンプの説明は、終わりを知らず延々と続いていた。 【シャギア・フロスト 搭乗機体:ヴァイクラン(第三次スーパーロボット大戦α)  パイロット状態:良好、テニアを警戒  機体状態:EN60%、各部に損傷  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ和室)  第一行動方針:誰? この説明おばさん??  第二行動方針:人気がなく見晴らしのいい場所へ移動  第三行動方針:首輪の解析を試みる  第四行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める  第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除  最終行動方針:オルバと共に生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)  備考1:ガドル・ヴァイクランに合体可能(かなりノリノリ)、自分たちの交信能力は隠している。  備考2:首輪を所持】 【オルバ・フロスト搭乗機体:ディバリウム(第三次スーパーロボット大戦α)  パイロット状態:良好、テニアを警戒  機体状態:EN60%、各部に損傷  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ甲板)  第一行動方針:テニアの殺害  第二行動方針:A級ジャンパーを見つける  第三行動方針:比瑪と甲児を利用し、使える人材を集める  第四行動方針:意に沿わぬ人間は排除  第五行動方針:首輪の解析  最終行動指針:シャギアと共に 生き延びる(自分たち以外はどうなろうと知った事ではない)  備考:ガドルヴァイクランに合体可能(かなり恥ずかしい)、自分たちの交信能力は隠している。】 【兜甲児 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)  パイロット状態:良好  機体状態:EN100%、ミサイル20%消耗  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ和室)  第一行動方針:誰? この説明おばさん??  第二行動方針:ヒメ・フロスト兄弟と同行  第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める  最終行動方針:アインストたちを倒す  備考1:ナデシコの格納庫にプロトガーランドとぺガスを収容  備考2:ナデシコ甲板に旧ザクを係留】 【宇都宮比瑪 搭乗機体:ナデシコ(機動戦艦ナデシコ)  パイロット状態:良好、ナデシコの通信士  機体状態:EN100%、相転移エンジンによりEN回復中、ミサイル20%消耗  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコブリッジ)  第一行動方針:甲児・フロスト兄弟に同行  第二行動方針:依々子(クインシィ)を探す  最終行動方針:主催者と話し合う】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)  パイロット状況:非常に不安定  機体状況:左腕喪失、マニピュレーターに血が微かについている、ガンポッドを装備  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ甲板)  第一行動方針:ナデシコの面々に取り入る  第二行動方針:どのように行動を取ればうまく周りを騙せるか考察中  第三行動方針:危険人物の排除  第四行動方針:参加者の殺害  最終行動方針:優勝  備考1:甲児・比瑪・シャギア・オルバ、いずれ殺す気です  備考2:首輪を所持しています】 【パイロットなし 搭乗機体:ぺガス(宇宙の騎士テッカマンブレード)  パイロット状態:パイロットなし  機体状態:良好、現在ナデシコの格納庫に収容されている  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ格納庫内)】 【熱気バサラ 搭乗機体 プロトガーランド(メガゾーン23)  パイロット状況:神経圧迫により発声不可、気絶中、顔に落書き(油性マジック)  機体状況:MS形態       落ちたショックとマシンキャノンの攻撃により、故障  現在位置:C-8市街地北東(ナデシコ医務室)  第一行動方針:新たなライブの開催地を探す  最終行動方針:自分の歌でゲームをやめさせる  備考:自分の声が出なくなったことにまだ気付いていません】 【二日目6:25】 ---- |BACK||NEXT| |[[悪魔降臨・死の怪生物(インベーダー)たち]]|[[投下順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/11.html]]|[[命の残り火]]| |[[leaving me blue]]|[[時系列順>http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/pages/12.html]]|[[家路の幻像>家路の幻像(1)]]| |BACK||NEXT| |[[夜明けの遠吠え]]|シャギア|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|オルバ|[[計算と感情の間で]]| |[[夜明けの遠吠え]]|甲児|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|比瑪|[[命の残り火]]| |[[夜明けの遠吠え]]|テニア|[[計算と感情の間で]]| |[[夜明けの遠吠え]]|バサラ|[[命の残り火]]| ----

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