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7CcGIiN10



51 名前:VIP村人c[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01:43:11.34 ID:7CcGIiN10
前スレ 女を助けた男から

男宅

ガチャ

「落ち着いた? 女ちゃん」
男「ああ」
「あんた達が帰ってきた時、お母さんびっくりしちゃった。女ちゃん、あんなにわんわん泣いてて」
男「……スマン」
「そうねぇ、女の子を泣かす男は最低ね」
男「……」
「……とにかく、守ってあげなさい。あんな良い子、他にいないんだから」
男「……はい」


続く


53 名前:VIP村人c[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01:49:09.91 ID:7CcGIiN10
いつも夢を見る。そこでは、私は普通の女の子だ。

誰かが笑っている。私も笑う。きっと幸せな夢なのだ、これは。

でも、そこで必ず闇が訪れる。

聞こえるのは、ざわざわとしたノイズ。

こわい こわいよ いやだよ こわいよ 誰か

男「おい!」
女「あ……!」
男「……」
女「……すいません」
男「なんで謝るんだよ……」
女「……ごめん」
男「……」


続く


55 名前:VIP村人c[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 01:55:27.09 ID:7CcGIiN10
「今日は泊めてく? 良いの? ……分かったわ。女ちゃんの親御さんにはお母さんから話しておく」

男の部屋

男「大丈夫か」
女「はい……少し、混乱しただけですから」
男「……」
女「……」
男「……なんか言えよ」
女「……すいません」
男「ああもう」
女「ひっ……!」
男「あ……いやその……」
女「……」
男「……ちょっと外出る」

ガチャ

女「……」


続く


61 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:01:13.54 ID:7CcGIiN10
おんな『見えないよ男ちゃん……私、見えないよぉ!』
おんな『いやだよぉ……男ちゃんの顔見たいよぉ……』


男「……」

女『別に見えなくても構いません。きっともう、必要ないんでしょう』

男「……」

ドタドタ ガチャ!

「おにいちゃん!」
男「どうした?」
「女さんが!」
男「くそぉ!」

続く


63 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:04:24.15 ID:7CcGIiN10
近所の公園

女「……」

どうして私の目が見えなくなったのか。それは分からないそうだ。

『おそらく心因的なものがあると思います。治る見込みはありますが……御本人次第です』

そして、私の目が光を拒絶する前後、私の記憶からすっぱりと抜け落ちている。

きっとそれが、私にとって閉ざされた光なのだろう。

果たして、それを開けていいのかさえ、私には分からない。

女「……木?」

ザワザワと流れる木の音は同時に、男さんに助けられた瞬間に壊れた鍵をこじ開けるきっかけとなった。


続く


66 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:07:29.37 ID:7CcGIiN10
「いたよー! おにいちゃん!」
男「女!」

女「……」
男「おい、女! 女!」
「おにいちゃん……」
男「返事しろ! 頼む、頼むよ……」
女「……お……とこ、さん……?」
男「ああ、俺だ! 探したんだぞ! おい!」
女「私、分かっちゃいました……」
男「え?」
女「もう私の目は、いりません……」
男「女……」


続く


67 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:10:43.78 ID:7CcGIiN10
病院

「全てを思い出したのですか……」
「ええ、そのようで……」
「あの子のご家族は?」
「あの子のご両親は、その時の事故で……今は祖母の家に暮らしてるんです」
「そうですか」


私は全てを思い出した。

私はあの時、公園で遊んでいた。お父さんとお母さんと遊んでいた。
バカな私は、道路まで行ってしまった。近づくトラック。気づかない私。
その後は……。

女「……」
男「……」
女「私の目はあの時……」
男「喋るな、もういい」
女「……」


続く


69 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:16:13.20 ID:7CcGIiN10
病院

ガチャ

男「女、元気にして」


「女さん、やめなさい!」

女「離して! 私もお父さんとお母さんの所に行かせて!」

男「……」

パシン

女「……」
男「……すいませんでした」
「……い、いえ」

女「どうして……」
男「……」


続く


70 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:22:15.61 ID:7CcGIiN10
男「……」

女『そういうところも大好きです』

女『いいんです。好きですから』

女『こんな日がずっと続けばいいなぁって』


ガチャ

そうだな。やっと、お前に伝える覚悟が


続く


74 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:29:25.38 ID:7CcGIiN10
病院

女「……」

カチャ

男「よぉ」
女「男さん……」
男「行くぞ」
女「行くぞって……キャ」

「ちょっと、なにやってるんですか!」

女「……男さん」
男「……」

タタッ!

続く


77 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:33:32.28 ID:7CcGIiN10
近所の公園

女「ここって、公園ですよね……?」
男「ああ」
女「……私を笑うために連れてきたんですか? 自分のせいで、お、親が死んだのにそのショックでこうなって……」
男「違う」
女「何が違うんですか!」
男「思い出せ! まだその記憶には欠けた部分があるんだって!」
女「え? ……でも……」

その時、私の記憶が、やっと全てを曝け出した。

そうだ 一緒に遊んでいたんだ この人と

そして 助けられたんだ 私と同じように 

命を賭すことで 助けられた もう一人の

私の目が 記憶が 私が 全てを 全てを受け止めた


続く


80 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:35:13.07 ID:7CcGIiN10
女「ああ……ああ……」


男「……見えるか? そうだ……俺も一緒に助けられたんだ。お前のお父さんとお母さんに」
男「お前が親を殺したのかもしれない。けど、俺も一緒に殺した……その罪を、半分こにすら出来ずに……」


違う そうじゃない


男「考えれば俺が悪いんだ……お前を道路の方まで連れて行った……俺が全てを背負うべきだった……なのに……」


だから なんで


男「なぁ……女……」
女「い、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


なんで あなたの片目は潰れているの?


続く


81 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:35:30.87 ID:7CcGIiN10
「失礼ですが、あなたの息子さんの片目はその時に……」
「いいえぇ。あの子なりの罪償いだったんでしょうねぇ。御両親を亡くされても気丈に振舞っていた女ちゃんにどこかあの子も
 思い詰める所があって。そしたらある日、女ちゃんの目の前で謝りながら鋏を……」
「そうだったんですか……」
「バカですよねェあの子も。女ちゃんを苦しめることでしかないのに。結局、それがトドメになって女ちゃんの目は見えなくなりました」
「……」
「でもね先生、ああやって、とても不器用だけど一緒に歩いてきた二人ですから。私はなーんの心配もしていません。
 二人とも、私の自慢の息子で娘です」


続く


82 名前:VIP村人d[sage] 投稿日:2006/11/21(火) 02:35:59.41 ID:7CcGIiN10
数年後

「おーい」

あの人の声。少し鈍くなった聴覚でも、絶対に忘れない声。

私は振り返る。

そこには

「それじゃ、帰るか」

「はい」


手を繋ぐ

眼前には夏の入道雲

私たちは やっと歩き始めたばかりだ


  • fin-



最終更新:2006年12月18日 13:32